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第2章
想定外
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「久しぶりね、芽愚」
香織は白けた表情で事務的な挨拶を投げかけてきたが、混乱した芽愚には一切届いていなかった。
(どうして母さんがここにいるの…?私のことなんて忘れたんじゃなかったの?っていうか、今その男の愛人やってんの?)
疑問が次から次へと湧き出てきたが、裕璃が「メグ姉…」と呟くように呼びかけたのを聞き、ハッと我に返り自分が戦闘真っ只中だということを思い出した。
「どういうこと?」
聞きたいことがまとまらなかったので、取り敢えず無難に返事が返ってきそうな質問をする。
男の、「何でも人に聞けばいいという考えは感心しないなぁ」という台詞にイラッとしたものの、あっさりと芽愚の質問には答えてくれた。
「どういうことも何も、私はさっき君たちが殺した人間の雇い主なのだよ。浅倉組の組長でもあるがね。そしてこのこちらのビューティフルな女性は数カ月前に知り合った私の愛すべき女(ひと)、香織だ。もっとも、君達が親子関係にあると知ったのはたった一週間ほど前の話だけどもね。」
(こいつ、なんかキモい喋り方すんなぁ…)と思ったが、スルーすることに決め込む。
「取り引き相手を潰された恨みで私を呼び寄せるために、今回カモフラージュとして運び屋の殺害を依頼したんだと思っていたんだけど?それにしても、大事な仲間を犠牲にするなんて正気じゃないわね」
「なあに、あんなのはいくらでも替えがきく、ただの捨て駒さ。取り引き先にしても、いないなりにどうにでもできる相手だ。私が君を呼び寄せたのは、香織が君との再会を望んだからなのだよ」
浅倉はそのように言うが、芽愚にはどうも母親が純粋に自分との再会を望んでいるとは思えなかった。しかし、今の芽愚との再会に対して何を求めるのかは全く検討がつかない。
ここで、完全に忘れており起動すらしていなかったが、負傷した方とは逆の耳に着けていた通信機の存在を思い出す。これに付いたボタンを押すと、こちらから信号が送れるのである。
芽愚はこの想定外の状況を打破しようと、ヘルプを示す信号を送った。するとすぐに颯太郎から返事が届いたが、「できれば殺しておきたいが…実母だとはなぁ…」といった内容であった。
取り敢えず男の方から片付けようかと向き直ると、浅倉も「まずは君を捉えようか…!」と言って銃口を芽愚の足に向けて構えた。
足を負傷すると自分で自由に動き回ることが困難になるため、生き延びたければ撃たれるわけにはいかない。芽愚も急いでレッグホルスターにしまった銃を、敵の額を狙うように構えた。
…一方、しばらくは悠々とその様子を眺めていた香織だったが
「さ、私は赤毛のカワイコちゃんを潰しにいきますか。ほんと、すんなり行けるところを邪魔してくれたわぁ」
と呟くと勝ち誇った表情で懐からサバイバルナイフを取り出した。
しかし、背後から覇気のある声が聞こえ、驚いた顔で振り返る。
「メグ姉の邪魔なんてさせない!!」
「…随分と威勢がいいじゃない。さっき腕斬られたことを忘れたの?かなり深い傷だったと思うけど?」
「煩いなぁ~!!こんなの、シャツ破いて巻き付けときゃ大丈夫だっての。」
言葉通り、芽愚たちがやり取りしている間、裕璃は自分のシャツの裾を破き、包帯代わりに巻いて圧迫止血を施していた。
麻痺した状態ではあるが、ほとんど痛みも引いたので応戦できると判断したのだ。
シースに入れていた細身のナイフを数本取り出し、瞳孔を開いて邪悪に笑う。
「ボクが息の根止めてあげるッッッ」
「うふふ…それは楽しみね…!」
そうして、芽愚と浅倉、裕璃と香織の、殺し合いが始まった。
香織は白けた表情で事務的な挨拶を投げかけてきたが、混乱した芽愚には一切届いていなかった。
(どうして母さんがここにいるの…?私のことなんて忘れたんじゃなかったの?っていうか、今その男の愛人やってんの?)
疑問が次から次へと湧き出てきたが、裕璃が「メグ姉…」と呟くように呼びかけたのを聞き、ハッと我に返り自分が戦闘真っ只中だということを思い出した。
「どういうこと?」
聞きたいことがまとまらなかったので、取り敢えず無難に返事が返ってきそうな質問をする。
男の、「何でも人に聞けばいいという考えは感心しないなぁ」という台詞にイラッとしたものの、あっさりと芽愚の質問には答えてくれた。
「どういうことも何も、私はさっき君たちが殺した人間の雇い主なのだよ。浅倉組の組長でもあるがね。そしてこのこちらのビューティフルな女性は数カ月前に知り合った私の愛すべき女(ひと)、香織だ。もっとも、君達が親子関係にあると知ったのはたった一週間ほど前の話だけどもね。」
(こいつ、なんかキモい喋り方すんなぁ…)と思ったが、スルーすることに決め込む。
「取り引き相手を潰された恨みで私を呼び寄せるために、今回カモフラージュとして運び屋の殺害を依頼したんだと思っていたんだけど?それにしても、大事な仲間を犠牲にするなんて正気じゃないわね」
「なあに、あんなのはいくらでも替えがきく、ただの捨て駒さ。取り引き先にしても、いないなりにどうにでもできる相手だ。私が君を呼び寄せたのは、香織が君との再会を望んだからなのだよ」
浅倉はそのように言うが、芽愚にはどうも母親が純粋に自分との再会を望んでいるとは思えなかった。しかし、今の芽愚との再会に対して何を求めるのかは全く検討がつかない。
ここで、完全に忘れており起動すらしていなかったが、負傷した方とは逆の耳に着けていた通信機の存在を思い出す。これに付いたボタンを押すと、こちらから信号が送れるのである。
芽愚はこの想定外の状況を打破しようと、ヘルプを示す信号を送った。するとすぐに颯太郎から返事が届いたが、「できれば殺しておきたいが…実母だとはなぁ…」といった内容であった。
取り敢えず男の方から片付けようかと向き直ると、浅倉も「まずは君を捉えようか…!」と言って銃口を芽愚の足に向けて構えた。
足を負傷すると自分で自由に動き回ることが困難になるため、生き延びたければ撃たれるわけにはいかない。芽愚も急いでレッグホルスターにしまった銃を、敵の額を狙うように構えた。
…一方、しばらくは悠々とその様子を眺めていた香織だったが
「さ、私は赤毛のカワイコちゃんを潰しにいきますか。ほんと、すんなり行けるところを邪魔してくれたわぁ」
と呟くと勝ち誇った表情で懐からサバイバルナイフを取り出した。
しかし、背後から覇気のある声が聞こえ、驚いた顔で振り返る。
「メグ姉の邪魔なんてさせない!!」
「…随分と威勢がいいじゃない。さっき腕斬られたことを忘れたの?かなり深い傷だったと思うけど?」
「煩いなぁ~!!こんなの、シャツ破いて巻き付けときゃ大丈夫だっての。」
言葉通り、芽愚たちがやり取りしている間、裕璃は自分のシャツの裾を破き、包帯代わりに巻いて圧迫止血を施していた。
麻痺した状態ではあるが、ほとんど痛みも引いたので応戦できると判断したのだ。
シースに入れていた細身のナイフを数本取り出し、瞳孔を開いて邪悪に笑う。
「ボクが息の根止めてあげるッッッ」
「うふふ…それは楽しみね…!」
そうして、芽愚と浅倉、裕璃と香織の、殺し合いが始まった。
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