あの日咲かせた緋色の花は

棺ノア

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第4章

職場体験

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普段、ほとんど外食をしない芽愚は、カフェにも滅多に入らない。
そのため、飲食店の店員といってもオーダーを通すことと配膳、レジ打ちくらいだろうと甘く捉えていたのだが、客が快適に過ごすために全体をずっと注意しておく必要があり、思いの外大変だった。

あくまで職場"体験"であるので、レジ打ちはせずに注文取りと配膳を仕事とするのだが、芽愚は割と体力があるため配膳を頼まれることが多かった。

僅か半日で大皿の三つ持ちをマスターし、社員に称賛されたときはまんざらでもなく、作業も楽しかったので体験を満喫していたが、本来の目的はそこではない。
確実に標的を仕留めるため、事前からシミュレーションをしておかなければならないのである。

学校のカリキュラムとして働いているので夕方には帰されるが、日中のほとんどを店内で過ごしているため自ずと店の構成を詳しく知ることができた。

そこで分かってきたことが二つ。

まず、いくら監視カメラの死角があるとはいえ客に直接目撃される可能性があるため、運んでいる最中に毒を盛るのは難しいだろうということだ。

そして、基本的に監視カメラは客を映すモノであるので、キッチンのカウンター付近にいれば証拠映像が残るリスクが低いということである。

お冷に毒を盛ることも考えたが、水を飲まないタイプの人間もいるので注文された料理に入れる方が確実である。

ターゲットが店を訪ねてくるランチタイムはそれなりに混む時間帯であり、キッチンもバタバタしてるのでできた料理を見届ける余裕はまずないだろう。
そのタイミングが好都合であるように思えた。

しかし、そこでふと気がつく。
今回使用する毒は、食べた後は証拠が消えても、皿に残ったものを特殊な液体で調べられると異物混入がバレてしまう。

確実に、かつ毒が残らないように口に含ませるにはどうすべきか。芽愚は大皿のサラダを運びつつ考えた。

(…食器だ)

口に含み、ほぼ確実に舐めとられ、証拠が最も残りづらい。スプーンかフォークの先に塗っておくのが最善策ではないかと思いついた。

試しに一本破棄になったスプーンを持ち帰り先端に塗り、ほとんど見た目の変化がないのを見てほくそ笑む。

(いける…!これなら大丈夫だわ…!!)

決行日は着々と近づいている。
未だ一度も人間に使ったことのない毒薬をやっと使ってみることができる。それはどこまで害を与えられるのか、未知の可能性に胸を躍らせた。
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