heat reflection

神奈川雪枝

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どうせ、バレる

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朝は清々しくて好きだ。

夏になると日の出も早い。

4時に起きても、
外は明るくなってくる。

朝、
1人で散歩した。

早く起きて散歩した。

学校には行けないけれど。

通学時間の前には家に戻った。

そんな私にも
お母さんは朝食を用意してくれた。

お父さんも
私に今日はどこ歩いたんだ?と微笑かけてくれた。


(ごめんなさい。)


学校に行きなさいというプレッシャーがかからないのも申し訳なくて。

というのも、
私は来月高校を退学するのだけれど。

中卒が私の最終学歴になるわけだけど、
雇ってくれる会社なんてあるのだろうか?

不安にかられるのは、
両親が仕事にいって、
家に1人になるこの時間。

モヤモヤしたまま、
お腹はすくので、
お母さんがおいていってくれたおにぎりを食べる。

図書館に向かった。

なにするでもなく、
暑い中歩いてきた道の中で汗をかいたから、冷ましに来た。

平日の午後の図書館は
とても空いている。


昨日の続きを読もうと、
本を探す。

本を取って、
いつもの指定席に。



クーラーの効いた部屋で、
私はウトウトして寝てしまった。


はっと起きて顔をあげると、
目の前に同級生の高橋がいた。

「え?」

「ん?」

なんで?という顔をした私に
首を傾げる高橋。

「その本、面白いよね!
俺も読んだよんだ!」

私の読みかけの本を指さす。

いやいやと、
口だけがパクパクと動く。


「学校、やめるんだってね?」


「あっ、うん 。」


高橋とは、
部活が同じで、
弱小卓球部で、
学校に行ってた時はダラダラとラリーをした。


「学校は?」と私が問うと、
高橋は笑って、
「どうでもいいじゃん、サボった。笑」と笑った。

退学になるまで、
私は学校へは行けなくて、
図書館にいっては、
高橋と少しだけ話すようになっていた。


「夏休みにやっとなるなぁ。」と、
高橋を伸びをした。

夏休み初日に合わせて、
退学することになっていた。

「私、明日からしばらくここにこないから。」
言おうか迷ったけど。

「やっぱり?笑
そんな気ぃした!」



「なら、明日一緒にどっかいかねぇ?」


え?という前に
真顔の高橋に見つめられて、

うんと小さく頷いた。



次の日、
私と高橋は電車に乗って、
海を見に向かった。


何着ようか迷って、
全然着なかったセーラー服を着た。

高橋はTシャツに短パンで、
「なんで、制服?!笑」と爆笑した。

(ワンピース、なんか恥ずかしくて。)


2時間揺られて、
沿岸の町についた。

家族以外と来るのは初めてだ。


電車からバスに乗り継いで、
海に向かった。


潮風が心地よい。

海は広かった。

砂浜に降りる。
砂は柔らかくて歩きにくい。

高橋は直ぐに靴と靴下を脱いだ。

「あちぃっ!?」と大声で言いながら、
波打ち際まで走っていった。

波と戯れる高橋は振り向いて、
「野田も早く来い!」と手招きした。

私もワクワクしていて、
靴と靴下を脱いで駆け出していた。


ぱしゃぱしゃと波と戯れた。

きゃっきゃっと
水を掛け合った。


あんなに天気が良かったのに、
ごろごろと不穏な音が鳴り響くと、
いきなり土砂降りがふってきた。


うわーと2人して、
雨宿りできる場所を探したが、
中々なくて、

古い海の家の軒下に突っ立った。


タオルすらももってきてなかった。


「すげー、降るな。」

高橋の濡れたTシャツが、
肌に張り付いていた。

ぱっと、自分の胸元を見ると、
雨で濡れて下着が透けていた。

(ど、どうしよう。)


高橋が私の方に体を向ける。
思わず、しゃがみ込んでしまった。

「え、なに?!
どうした?野田??」

高橋はびっくりして、
私の顔を覗き込む。

「み、見ないでぇ。」

意味がわからないという顔の高橋。

雨はまだ止みそうもない。


「腹減ったのか?痛いのか?」
真顔でそんな事を聞いてくる。

「ち、ちがうから!」

「じゃあ、なんだよ?!」


何も答えない私に痺れをきらしたのか、
高橋は俯く私の横で、
Tシャツを脱いで、絞った。

水の音がして、
顔をあげると、
上半身裸の高橋と目が合った。

「み、みんなよ?!」と、
高橋は少し声を荒らげた。

「ご、ごめん。」といいながら
さっきみた高橋の姿が脳内に溢れる。


雨は1時間ほどで止んだ。

「帰るか!」と歩き出す高橋。

待ってというよりも、
体が先に動いていて、
高橋の微妙に濡れたTシャツの裾を引っ張っていた。

「な、なに?!」と驚く高橋に、

何も言えなくて、

ただただ顔が赤いだけの私を
高橋が不思議そうに見つめた。
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