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第十一話 もっていないさあや
しおりを挟む「君、正直なところお金ないでしょ?」
「うっ」
痛いところを突かれた。お金がないというより、10月から始まる新学期のためにお金を温存しているといったほうが正しいが。
「僕、この3日、君んちの冷蔵庫のあまりでご飯作ってたけど、食材も安いのとか割引を冷凍したのとかばっかりだったし……」
「ほ、ほっといて……」
「化粧品も全然もってないし」
「それは私お化粧あんまり好きじゃないから……」
「クローゼットに全然お洋服ないし」
「ぐっ」
やめて!私、大ダメージ!
「……受け取れない」
私は声を絞り出した。ほしいかほしくないか、と言ったら、ほしい。いらないって言ったらうそになる。
でも、それでも受け取るのは気が引けた。それは、正しくないような気がした。
「どうして?これは賠償金だよ」
「それでも、受け取れない。私、銀乃からこんなにお金をもらうことをしていない」
「僕が君に迷惑をかけてしまったお詫びのお金。困っているのに受け取らないの?」
私はうん、といった。
銀乃はしばらく困ったようにしっぽをふさふさ振ると、
「……君はよくわからないな。でもわかった。受け取らないんだね」
といった。
私は頷く。ぴ、と目覚ましのアラームが今更なった。バイトの時間を知らせるためのものだった。
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