神使キツネの魂結び~死んじゃって生き返った私、お狐お兄さんに完璧お世話されちゃってていいんですか!?~

山口じゅり(感想募集中)

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第十二話 再度のイケメン来店、もしかして?

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「あ、そろそろ、準備しなきゃ」

「あれ、今日もバイト?」

「そう、今日は朝からなんだ。10時からだから、もう準備しなきゃ」

「今日も21時まで?」

うん、と私が言うと、そっか、と銀乃は言った。

「今日は迎えに行くね。さあやのこと、心配だし」

銀乃の言葉に、私は笑った。黒い狐がカフェに来たら、それはかわいいだろうな、とは思った。

「いいよ、ちゃんと帰ってくるから、そんなに心配しないで。私一人で何とかするから、迎えに来なくても大丈夫」

◇◇◇

その日のカフェアマデウスは、特に忙しくもなく、19時をすぎたころからお客さんは一人二人になり、20時には誰もいなくなっていた。
こういうことはよくある。21時までやっている意味はあるのかな、と思うときもあるのだが、たまに21時ぎりぎりに教授の団体などがくることもあるし、まぁいいのだろう。

もう20時半になる。そろそろ閉店準備、ラストオーダーの時間だ。

「ねーさあやちゃん、ひま~」

「そうですね」

リコさんがキッチンでコーヒーを淹れながら、私にニコニコぼやいた。これは誰のためでもない、リコさんによるリコさんのためのコーヒーである。

私もいろいろなところでバイトをしたけれど、ここまで緩いバイト先は初めてだ。いや、いいと思うけれども。
当たり前のように自分のためにコーヒーを入れるリコさんは、当たり前のように目の前にカップを二つ置いてコーヒーを淹れると、両方ともにたっぷりの生クリームを乗せた。

「はい、どうぞ。こっちはさあやちゃんの」

リコさんは、
「メイナには秘密ね」と笑いながらウインクするので私も少し笑ってしまった。

「ありがとうございます」

二人で秘密の甘いコーヒーをすする。

カラン、と入り口のベルが鳴った。

「あ、さあやちゃん、私行ってくるから」

コーヒー飲んでていいよ、とリコさんはキッチンを出ていく。席に案内するリコさんとお客さんの後ろ姿が見える。男の人だ。リコさんが小柄なのもあるけれど、入ってきたお客さん、ずいぶん背の高い人だなぁと私は思った。
リコさんが私にちらりと振り返る。思いっきり目を見開き、その口が口パクでこう言っていた。

『い、け、め、ん !! 』

キッチンに戻るなり、リコさんは深刻なため息をついた。

「大変、先日からこのカフェは閉店間際ぎりぎりにイケメンが多数来店するイケメンカフェになってしまったみたい……」

「それは由々しき問題ですね……あのお客さん、そんなにですか……?この間の人を超えるのは来ないような気がしますが」

まぁコリシ君は狐だったらしいけども。

「それはもう……とにかくさあやちゃん、行けばわかる。とにかく行ってらっしゃい」

はあい、と私は急いでコーヒーを飲み終え、お客さんのところへ出す水を盆にのせた。

◇◇◇

お客さんはパラパラとメニューをめくっていた。
後ろ姿から、染めていない黒髪と、メニューをめくる手がちらりと見える。細くしなやかで、骨ばった男の人の指だった。ピアノとか、なんかそういう楽器とか弾いたら映えそうな、きれいな指、と思った。

「いらっしゃいませ、メニューはお決まりですか?」

お水を出しながら聞くと、彼は顔を上げ、私を見た。

私は、息を呑んだ。

それはそれは、とても美しい人だった。一瞬言葉に詰まるくらい。
私より年上だ、20代の前半くらいだろうか。

リコさんが言うのもわかる。整った相貌、額にかかるつやつやの黒髪。外国の人みたいな淡いグレーの透明な瞳は、引き込まれそうな色をしていた。
ユニクロみたいな服を着てるのに、様になってるところがもうすでにイケメンだ。
そして、まるで女の子みたいな柔らかな印象なのに、目元は涼やかに強い。絵でいったら水彩画みたいな……そんな感じ。

「ねぇ、注文していいかな?」

彼は楽しそうに、笑いを含んだ声で私に言う。優しい低音の、麗しい声だった。

あれ、でもなんかこれ……なんかきいたことある声だな?
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