神使キツネの魂結び~死んじゃって生き返った私、お狐お兄さんに完璧お世話されちゃってていいんですか!?~

山口じゅり(感想募集中)

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第十八話 川の中州の異形

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町は少し肌寒い。
この間まで夏だったんだけどなぁなんて思う。

「はいこれ」

銀乃が手渡したのは、青山行きの切符だった。

「SUICAあるのに」
「僕切符のほうが好きなんだもん。これはさあやにあげるから使って」

お金は、という言葉を銀乃は遮って、さぁ、早く、電車もう来てると私を改札に押し込んだ。
切符が改札を抜けて、それを取る。電車がぴったりに止まり、私たちは電車に乗り込む。
昼過ぎの電車はガラガラで、私たち二人と中年のおじさんがいるばかりだった。

「さあや」

と私を座らせると、銀乃はその隣の座席に腰かけた。
銀乃と隣あって座るのは、なんだか気恥ずかしい。ちらりと隣の横顔を見ると、さらっさらの黒髪に、柔らかいグレーの目、それを縁取る長いまつげが揺れていた。

神さまの使いって、みんなこんなにきれいなんだろうか。

私はため息をついて電車の窓の外に視線を移す。大学そばの街から、2駅で町並みは田園風景に変わり、5駅で海に流れ込む川になった。町へ出るときのいつもの光景だった。

「さあや、見て、すごい大きな川だ」

「知ってる」

「面白いくらい凪いでる」

「凪ぐって何?」

「水面に波がまったくたたないってこと、ほら。あんまりないことだから珍しいと思うよ」

銀乃が、まるで小さい子に教える先生のような表情で私を見て、窓の外を指さした。電車は川にかけた橋の上を音を立てながら走っていた。私は真下の川を見る。
電車の窓から広大な川が見えた。この町は、大きな川の街だといつか小学生の時に習ったなぁなんてことを思い出した。

すうっと水面が鏡面のように平らになっている。初めて見たかもしれない。こんなこともあるんだ。

……視線がすべる、点のように、凪いだ川の中州、真ん中そこに、誰かがいた。

人、だ。川の真ん中に人が立っている。

そんなわけないと私は思った。赤い口に牙がはえている、髪の毛を振り乱した人のような影。

「あ」

「どしたのさあや」

銀乃が私に呼びかける。私は瞬きしてもう一度川を見る。いない。

川の中州に人がいるような気がしたなんて、と私は思った。ぼんやりしている私にしたって、ずいぶんばかばかしい話だ。早起きで疲れてるのかも。

「ううん、何でもないよ」

私はそれだけ言って、視線を戻した。
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