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第二十五話 おめかしレストラン
しおりを挟む「ここだよ」
銀乃が行きたいといっていたレストランは、中央街を少し外れた、静かな住宅街の中にあった。
外壁はターコイズブルーに塗られ、とてもこじんまりとした、白雪姫と小人さんがすんでいそうな、可愛い建物だった。
正直、ものすごく高そうな高級店へ連れて行かれたらどうしよう、と心配していたから、私は幾分ホッとした。
銀乃が扉を開けると、カラン、とベルがなる。
誰も出てこないままお店に入る。
そこにあったのは、2席。白いテーブルクロスのかけられた大きなテーブルと、中くらいのテーブル。
それだって、どちらのテーブルも家族連れはとても無理だろう、大きいテーブルは頑張って4人、中くらいのほうは2人くらいが座れそうな席だった。
テーブルには赤とオレンジのお花が行けてあり、水色キャンドルに小さく火がともっている。
窓は月と太陽、そして鳩が羽を広げたのステンドグラス、そこにユリの柄のどっしりとした薄桃色のカーテンが上品にかかっていて、ゴシック調の布張りの椅子は猫足、アンティークの古時計がお店の中央で振り子を揺らし、それを、天井にあるダイヤ型のガラスのシャンデリアが光を跳ね返しながらきらびやかに照らしている。
「ああいらっしゃい」とでてきたのは、初老のシェフだった。
コート掛けにコートとマフラーを置く。
「予約の銀乃さんですね」
私たちは中くらいのテーブルに案内される。
小さいとは思ったけれど、二人には十分な広さだった。銀乃スプーンとフォークが決まり正しく右端に並べておかれ、紙に書かれたメニューが手渡される。
見たことないくらい一杯何かが書いてあるけど、これはワインリスト、かな?
「さあや、お酒飲むの?っていうか人間って子供はおさけ飲めないんじゃないっけ」
「ううん、お酒は飲まない、ていうか、20歳じゃないからのめないや」
「そっか、じゃあ僕もお酒は飲まないでおこうかな」
「銀乃はお酒好きなの?」
「好きだよ」
即答する当たり、相当すきとみた。
「のめばいいのに」
「子どもの教育に悪いので」と銀乃は深く遠慮した。
「ここはぶどうジュースがおいしいんだって、ふたりでぶどうジュースにしよっか。あとメインは肉とお魚、どっちがいいかな?」
「銀乃はどっちにするの?」
「えーと僕はね、お肉かな?」
「じゃあ……私も」
一人しかいないシェフは、メインと飲み物を聞くと、厨房に引っ込む。
小さく流れるクラシックが、幻想的な雰囲気を増していた。
銀乃と二人で、店内をぐるっと見渡した。
「銀乃、どうしてここにこようと思ったの?」
「ん~。だってかわいいじゃない?外装。おとぎ話みたいで。
あとはね、ここのお料理、すごーくおいしいって友達が教えてくれたの」
「友達?」
「うん。あ……ふふふ、狐のね、友達。
特にデザートがすごくおいしいって、プラムのオレンジ煮っていうのがあるんだってさ。それを食べてみたくて」
狐、もレストランに行く……んだあとどうでもいいところで私は感心した。
「銀乃、いろんなお店に行ったりしてるの?」
「いくいく、僕、結構なお店に行ってると思うよ。あ、でも、ここは初めて。
ね、ここ、デザートが5種類選べるんだって。一つをたくさんとってもいいし、好きなのをたくさん頼んでもいいんだってさ。さあやはどれにしたい、とかあるかな、
ガナッシュとプラムと、ミルフィーユと、チーズケーキと…いっぱいあるね~」
「食べる前からデザートのこと考えてるんだ」
「だってここ、デザートがぴかいちおいしいって聞いてるんだもん。さあやは考えないの」
「考える」
「僕は5種全部」
「む、私も5種全部」
なんて言っているうちに、前菜とぶどうジュースが運ばれてくる。シェフは気取った感じもなく、でもピシッと白衣で、私はコックさんの帽子をかぶったコックさんを生まれて初めてみたなぁ、と、我ながらどうでもいいことを思っていた。
メインの肉料理に手を付けることには、私はだいぶ落ち着いてきた。
「誰も来ないね」
「きっと、今日は僕らだけなんじゃないかな。貸し切りみたいでいいね」
「うん、ふふ、だれもいないし、緊張しなくなってきた」
「それは良かった。緊張してるとせっかくのご飯の味がわからなくなっちゃうじゃない?」
「そうなの?」
「少なくとも僕はそう」
「銀乃も緊張するんだ」
「たまにね。お酒飲みすぎて狐に戻りそうなときとか」
と真顔で言うので、私は笑ってしまった。
向かいの銀乃は、慣れた様子でナイフとフォークを使っている。きれいな手だなぁ、と私は思った。うちの喫茶店に来た時も思ったけども。
私は運ばれてきた子羊の肉を切り分け、口に運んだ。
「わ……おいしい」
「それは良かった、ていうか本当、おいしいね」
本当においしかった。ジェノベーゼとアボカドのパスタ、トリュフとチーズのクリームパスタ、ローストした子羊のお肉、全部全部。
「デザートをお持ちしましょうか?」
温和な顔のシェフが、嬉しそうに話しかけてくる。
私は銀乃の顔を見る、そうだねというように銀乃は頷いた。
ワゴンで運ばれてきたのは、生クリームのムース、パイ生地のミルフィーユには銀色のお砂糖がかかっていた。大皿のプディング、ホールの白いイチゴケーキ、ホールチーズケーキ、まーるく切られた赤いオレンジはザクロで煮ている。チョコレートの何かのケーキ、たっぷりのクリームが乗ったミルクレープケーキがこれまた大きなホールで、ちょこんとじゃなくて、たっぷりどんと乗せられてきて、イチゴが乗っていた。
「……どうしよう」
「どうしたのさあや?」
「5種類だけなんて選べない、全部素敵すぎて」
銀乃とシェフが、一緒に笑った。
「僕もおんなじ気持ち」
さんざん悩んで、私たちは選んだ。私はミルフィーユにプディング、チーズケーキと赤いオレンジ、ミルクレープ
銀乃はムースにプディング、ホールのイチゴケーキ、オレンジのザクロ煮、チョコレートケーキだった。
シェフがデザート用のお皿にケーキをたっぷり盛り付って、私と銀乃の前にお皿を置いた。
「好きなだけお代わりできますからね」
『本当!?』
私と銀乃は同時に言って、私たちは顔を見合わせて笑った。
「ええ、遠慮なくどうぞ」
とシェフも笑った。
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