異世界転生したら養子に出されていたので好きに生きたいと思います

佐和夕

文字の大きさ
40 / 116
第二章

76話 お出かけ

 青と白の二色の花弁をもつ珍しい花を見て、今日のフィンみたいだな、とラインハルトが言った。
 俺は自分の体を見下ろして納得する。
 上は少し刺繍の入った真っ白な半袖のシャツで、下は青いゆったりとした七分のズボンを穿いていたからだ。
 日射しが強いので、頭には麦わら帽子を被っている。その帽子には、ズボンと同じ色の青いリボンが巻いてあった。

「こんな不思議な花、僕、初めて見る」

 青と白の花弁が交互についていて、自然に咲いたとは思えない不思議さだった。
 その他にも、色んな花や草木が生えている。
 ここは王都から少し離れた場所にある自然公園だ。

「いい場所だろう?」
「うん!連れて来てくれてありがとう、ライン」
「どういたしまして。じゃあ、次はあっち見に行こうか」

 そう言って、さり気なくラインハルトは俺の手を握って歩き出した。
 振り払うわけにもいかず、俺は少し緊張しながら、ラインハルトについて行く。

 デ、デートだもんな。
 これくらい、普通か。

 そう。これはデートなのである。
 初のデート相手がラインハルトとは、人生分からないな、と俺は昨日のことを思い出していた。


「フィン。ゴットと勝負したんだって?俺も見たかったし、俺もフィンと勝負がしたかった」

 ラインハルトに拗ねたように言われ、俺は困ったように眉を下げた。
 レオンとラルフから自慢された父上、母上、シャルロッテからも『私も見たかった』と言われ、従者たち二人からも『フィン様の勇姿を見たかった』と視線で訴えられて、もうお腹いっぱいなのである。
 シャルロッテには『いっつもレオン兄さまとラルフ兄さまばかり贔屓にしてずるい!』とギャン泣きまでされて、宥めるのが大変だった。
 その為、俺の戦う姿を見せられなかったお詫びとして、ここ最近は家族への奉仕活動に勤しんでいた。
 母上とシャルロッテの買い物やお茶に何度も付き合い、父上の仕事の視察に同行し、その合間に、従者たちに色々お願い事をして世話を焼いてもらった。
 従者二人は、俺が何かお願い事をすると嬉しそうに動いてくれるので、世話を焼かせてあげるのがお詫びになると勝手に思っている。
 レオンとラルフまで拗ねると困るので、勉強を見てやったり、シャルロッテも交えて室内でゲームをして遊んだりもした。
 そんなことをせっせとしていたら、ゴットフリートと勝負をしてから、あっという間に二週間も経ってしまっていた。
 勝負のすぐ後に、ラインハルトから会いたいと言われていたのだが、家族を宥めるのに手一杯で後回しになっており、やっと会えたと思ったら開口一番に先程のセリフだ。
 そんなことを言われても、である。
 俺だってやりたくて勝負したわけじゃない。
 いや、やってみたら案外楽しかったけどさ。
 やったことに後悔はないが、ゴットフリートと二人だけで楽しんだ申し訳なさはある。
 だから、素直に謝罪した。

「ごめんね、ライン。また今度、機会があったら勝負しよう」
「いや、それはもういい」

 ええんかい!
 思わず関西弁で突っ込む。

「だからさ、代わりに明日一日俺に付き合ってよ」
「明日?」
「うん。俺とデートしようか。フィン」



 昨日、一緒に行きたい場所があるからと言われ、今日連れて来られたのが、この自然公園だった。
 ゴットフリートと勝負をした日に、ラインハルトは友達に誘われて、この場所を訪れていたそうだ。
 
「綺麗な場所だったから、フィンにも見せたいと思って」

 ラインハルトの言葉通り、緑豊かで、たくさんの花が咲いていて、とても綺麗な景色だった。
 疲れた時や、のんびりしたい時などに、ふらっと訪れたくなるような感じだ。
 奥の方には池もあって、ボートにも乗れるらしい。

「友達って、何人くらいで来たの?」
「初めは五人だったけど、偶然ここで学校の他の奴らと会って、最終的には八人くらいになったかな」
「ふうん」

 学校の人と偶然会うなんて、ここは結構有名な場所なんだな。
 周りを見回すと、二人連れも多く、デートスポットでもあるようだった。
 ラインハルトとポツポツ話をしながら一通り見たところで、お昼にすることになった。
 空いているベンチを見つけ、二人で座る。
 大きな木が近くにあって、ちょうど木陰になっていた。
 俺は、マジックバックから水筒やランチボックス、お手拭きなどを出していく。
 お昼ご飯は簡単なサンドイッチにした。

「はい。ライン、どうぞ」
「ありがと。うまそうだな」

 ラインハルトはそう言うと、サンドイッチを一つ手に取り、がぶりと食いついた。
 俺はちょっとドキドキしながら、それを見守る。

「ん!うまいな。このソース?みたいなやつ酸味があっていいな。何だろ?」
「それはね、マヨネーズっていうんだよ」

 俺もパクリとかぶりつく。
 うん。美味しい。
 懐かしい味だ。
 この国でも隣国でも、マヨネーズってなかったんだよね。
 料理長に無理言って、厨房に立たせてもらえて良かった。
 ラインハルトは『へぇ、マヨネーズか!』と言って、すぐに二つ、三つと手に取り、嬉しそうに食べている。
 気に入ってもらえたようで良かった。
 昼食を食べて少し休憩した後は、池でボートに乗ることになった。
 さすがにスワンボートはなく、オールで漕ぐ普通の小舟タイプだった。
 ラインハルトが漕いでくれて、俺はのんびりと景色を楽しむ。
 少し離れた場所で、水鳥が後ろに小さな子を引き連れて、ゆっくり泳いでいるのが見えた。

「ライン。ねぇ、見てみて。あそこ、親子で泳いでるよ。可愛いね」
「あぁ、本当だ。フィンみたいだな」
「…?そうかな?」

 今日は俺がよく登場するな。
 小さいからとか、そういう意味じゃないだろうな。
 どこら辺がと聞いてみたら、いつも弟妹を後ろに引き連れてるからと言われた。
 なるほど。

「今日も一緒に来たいって言われなかった?」
「言われたけど、さすがに断ったよ」

 弟妹だけでお留守番、とかなら連れてくるしかないけど、あの屋敷でそれはない。
 デートと言って誘われたんだ。
 俺だって空気くらいは読む。

「そっか」

 俺の言葉に、ラインハルトは嬉しそうに微笑んだ。



 


 
感想 131

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)

【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……! 表紙は、Pexelsさまより、Julia Kuzenkovさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~

TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】 公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。 しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!? 王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。 これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。 ※別で投稿している作品、 『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。 設定と後半の展開が少し変わっています。 ※後日譚を追加しました。 後日譚① レイチェル視点→メルド視点 後日譚② 王弟→王→ケイ視点 後日譚③ メルド視点