緑の風、金の笛

穂祥 舞

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7 えんそうかい

3-⑥

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 繰り返されるメロディに奏大が変化をつけたことに、伯母がすぐに反応したように見えた。奏人は淡々としながらも、1番と少しだけリズムが違う部分は意識して弾く。
 リディアよ、私に命を返して欲しい、いつ死んでも構わないと思っている私の命を。奏大の奏でる3連符に呼吸でタイミングを合わせながら、次の上昇音型でリテヌートした。フルートがきらりと前打音とプラルトリルを入れる。その残響を引き継ぐように、奏人は息を吸い、左手の指を動かした。右手の入りは、フルートとぴったり重なった。気持ちいい瞬間だった。
 メロディが終わり、後奏をたっぷりと弾いた。最後の1音まで楽しんで……むしろ、もう終わってしまうことが寂しいくらいだった。
 最後の和音が部屋の中に小さく、でも十分に響いたことを確かめて、ペダルを足から離した。
 2人の観客から拍手が出る。音は大きくなかったが、確かにそこには称賛の意志が聞き取れた。奏人は鍵盤から顔を上げ、右を見た。伯父と伯母、そしてフルートを持った奏大がこちらに笑顔を向けていた。
 ブラヴォ、と奏大が言うと、何処か高いところに飛び回っていた意識が、すとんと身体の中に落ちてきたような気がした。それと同時に、やはり自分が異様に緊張していたことに奏人は気づく。
 身体の力が抜けて、じわっと視界が滲んだ。あれ、どうして涙が出るんだろう……奏人はわからなくて、恥ずかしくなった。頬に熱いものが勝手に伝ってくる。

「ああ、よくやったね奏人くん、とても良かった」

 奏大が言いながら、頭を撫でてくれた。ひとつもミスしなかったし、フルートとタイミングもずれなかった。奏人はようやく嬉しくなってきて涙が止まらなくなり、掌で何回も頬を拭った。
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