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同窓会に行こう!
11月12日 14:40②
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「いや、おまえのとこと変わらないんじゃない? 子どもがいなくて、お互い働いてて、うちは大概連れ合いのほうが帰るのが早いから、彼がご飯を作ることが多いけど……」
暁斗の話に、ふうん、と泉は頷く。
「ジェネレーションギャップは感じないのか?」
「感じないといえば嘘になるかな、だからさっき、彼の先輩……片山さんっていうんだけど、あの人に気持ちが移ったんじゃないかって言われたらどきっとしたな」
泉はすまん、と苦笑しながら謝った。暁斗は続ける。
「片山さんはバリトン歌手なんだ、連れ合いはピアノも弾くし芸術家の一面もあるから、気が合わない訳がなくて」
暁斗も苦笑を返す。待って、と泉が手を挙げた。
「桂山の連れ合い、河島とも顔見知りなんだよな?」
「そうだよ、神田の古本屋街でたまたま遭遇して……彼の専攻が河島のやってることとリンクするから、たまに神学チックな話をやり取りしてるみたい」
へえぇ、と泉は背中を椅子の背に預けてのけぞった。その時、ホットコーヒーが運ばれてきた。
「桂山も心穏やかじゃないな、性別は男女関係無く、若い連れ合いが相手だと大変だ」
「俺の連れ合いは後妻業じゃないぞ、それに河島は別に俺の心をざわめかせてない」
暁斗の言葉に泉は笑った。後ろのテーブルでは、花木が如何にして2度目の離婚に至ったのかを女子たちに聞かせていたが、どうも原因が元妻の浮気のようなので、暁斗は泉と顔を見合わせた。
「花木を手玉に取る女がいるとは……」
「1回目は確かあいつの浮気だったよな?」
そのため花木は、1回目の結婚で授かった男の子の親権を得ることができなかった。浮気相手だった2回目の結婚相手とは、子どもを作らなかったようである。だから将来は野垂れ死にだ、などと彼はうそぶいていた。
「まあ30人も集まれば、岡田ゼミからそんな奴も出てくるだろ」
学生時代から女性との交際は堅実だった泉だが、鷹揚にあっさりと言った。まあ暁斗の会社にも、花木以上の強者がごろごろしているので、後輩を特別視する訳でもない。
「いやそれで桂山、おまえ男が好きだって自覚、学生時代とかは全然無かったんだよな?」
こういう質問を受けること自体が久しぶりで、暁斗はうん、まあ、と背筋を伸ばして答えた。
「あ、でも実は、テニス部で合コンして知り合ったよその大学の女の子から、先に進んでくれないって振られたことはある」
マジか、と泉は面白そうに応じる。
「一番男が盛ってる時なのに?」
「うん、既にその頃、女の子とそういうことするのはどっちでも良かった」
蓉子に聞かれたくないので、暁斗はこそっと続ける。
「でも連れ合いと出会うまでは、ほんとに男には興味無かったんだ……元奥さんのことも、夜は盛り上がらなかったけど好きだったんだぞ」
泉は感心しているのか面白がっているのか、ふんふんとやけに熱心に聞き入っている。
「連れ合いと出会ったのって、ゲイバーか何かか?」
まあそんなとこ、と暁斗は友人の質問を軽くいなしておく。河島や片山にも(特に片山に対しては奏人の意向もあり)、今のところは出会いは池袋のゲイバーだと説明している。
「離婚してから、もしかしたらって思うところもあって、思いきって覗いてみたんだ」
奏人とそんな出会い方をしていたら、一緒に生きて行こうと思うまでの関係になっていただろうか。答えの出ないもしもを、暁斗は少し楽しむ。泉は何故か羨ましそうだった。
「ああ、若くて綺麗な子は、男でも女でも魅力的だよなぁ」
「何そのおやじ発言……」
「俺は奥さんに対して不満なんか基本無いし、惚気る訳じゃないけど綺麗だと思ってるぞ、でも桂山の連れ合い見てちょっとびびった」
こういう反応は、暁斗にとってはもはや珍しいことではなくなっている。奏人の写真を見たり、直接会ったりすると、皆彼の美貌や独特の雰囲気に驚くからだ。さすがに暁斗は奏人の存在に慣れてきたけれど、たまにリビングや寝室で、彼の横顔に見惚れていることもある。
暁斗の話に、ふうん、と泉は頷く。
「ジェネレーションギャップは感じないのか?」
「感じないといえば嘘になるかな、だからさっき、彼の先輩……片山さんっていうんだけど、あの人に気持ちが移ったんじゃないかって言われたらどきっとしたな」
泉はすまん、と苦笑しながら謝った。暁斗は続ける。
「片山さんはバリトン歌手なんだ、連れ合いはピアノも弾くし芸術家の一面もあるから、気が合わない訳がなくて」
暁斗も苦笑を返す。待って、と泉が手を挙げた。
「桂山の連れ合い、河島とも顔見知りなんだよな?」
「そうだよ、神田の古本屋街でたまたま遭遇して……彼の専攻が河島のやってることとリンクするから、たまに神学チックな話をやり取りしてるみたい」
へえぇ、と泉は背中を椅子の背に預けてのけぞった。その時、ホットコーヒーが運ばれてきた。
「桂山も心穏やかじゃないな、性別は男女関係無く、若い連れ合いが相手だと大変だ」
「俺の連れ合いは後妻業じゃないぞ、それに河島は別に俺の心をざわめかせてない」
暁斗の言葉に泉は笑った。後ろのテーブルでは、花木が如何にして2度目の離婚に至ったのかを女子たちに聞かせていたが、どうも原因が元妻の浮気のようなので、暁斗は泉と顔を見合わせた。
「花木を手玉に取る女がいるとは……」
「1回目は確かあいつの浮気だったよな?」
そのため花木は、1回目の結婚で授かった男の子の親権を得ることができなかった。浮気相手だった2回目の結婚相手とは、子どもを作らなかったようである。だから将来は野垂れ死にだ、などと彼はうそぶいていた。
「まあ30人も集まれば、岡田ゼミからそんな奴も出てくるだろ」
学生時代から女性との交際は堅実だった泉だが、鷹揚にあっさりと言った。まあ暁斗の会社にも、花木以上の強者がごろごろしているので、後輩を特別視する訳でもない。
「いやそれで桂山、おまえ男が好きだって自覚、学生時代とかは全然無かったんだよな?」
こういう質問を受けること自体が久しぶりで、暁斗はうん、まあ、と背筋を伸ばして答えた。
「あ、でも実は、テニス部で合コンして知り合ったよその大学の女の子から、先に進んでくれないって振られたことはある」
マジか、と泉は面白そうに応じる。
「一番男が盛ってる時なのに?」
「うん、既にその頃、女の子とそういうことするのはどっちでも良かった」
蓉子に聞かれたくないので、暁斗はこそっと続ける。
「でも連れ合いと出会うまでは、ほんとに男には興味無かったんだ……元奥さんのことも、夜は盛り上がらなかったけど好きだったんだぞ」
泉は感心しているのか面白がっているのか、ふんふんとやけに熱心に聞き入っている。
「連れ合いと出会ったのって、ゲイバーか何かか?」
まあそんなとこ、と暁斗は友人の質問を軽くいなしておく。河島や片山にも(特に片山に対しては奏人の意向もあり)、今のところは出会いは池袋のゲイバーだと説明している。
「離婚してから、もしかしたらって思うところもあって、思いきって覗いてみたんだ」
奏人とそんな出会い方をしていたら、一緒に生きて行こうと思うまでの関係になっていただろうか。答えの出ないもしもを、暁斗は少し楽しむ。泉は何故か羨ましそうだった。
「ああ、若くて綺麗な子は、男でも女でも魅力的だよなぁ」
「何そのおやじ発言……」
「俺は奥さんに対して不満なんか基本無いし、惚気る訳じゃないけど綺麗だと思ってるぞ、でも桂山の連れ合い見てちょっとびびった」
こういう反応は、暁斗にとってはもはや珍しいことではなくなっている。奏人の写真を見たり、直接会ったりすると、皆彼の美貌や独特の雰囲気に驚くからだ。さすがに暁斗は奏人の存在に慣れてきたけれど、たまにリビングや寝室で、彼の横顔に見惚れていることもある。
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