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第一話
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"人生万事塞翁が馬"誰の言葉かは知らないがふとその言葉が頭をよぎった
その日、ただなんとなくゲームセンターに行きたいと電車に乗った
「きゃあああ!」
「危ない!」
とっさの判断で体は動いていた
ずぶりと腹部に何かが沈み込んでくる。
熱い…痛い…足先から力が抜ける
「なんで、邪魔するのよ」
怨嗟の声が聞こえる
「やめろよ、このクソアマ!」
俺は刺された…それも誰かを庇って
俺は右手で女を抱えると左手で刺されている刃物。包丁を抑えた
そして、崩れ落ちる
一緒に崩れ落ちた女は馬乗りになり包丁を抜こうと必死だ
俺も抜かれまいと必死で包丁を押さえるこれ以上犠牲を出さないように
「くっ、離しなさいよ!」
女は悲鳴同然に吠える
「…ざまあ…みやがれ」
悪寒がする、痛い苦しい死にたくない色々な思考が頭を巡る
それでも、俺は包丁を押さえる
視界が暗くなる寒い
どこか、冷静に何処か困惑し何処か恐怖しつつ思う俺は死ぬのか
俺は手が切れるのも構わず包丁を押さえながら何処か深く寒い闇の中へ落ちていった
はっ
目が覚める。
「ここは?」
視界に入ったのは丸太で組まれた天井だ
俺は自分の身に何が起こったのかまったく理解できない
刺されて死んだと思ったら見知らぬ天井を見て目が醒めた
ここは死後の世界なのだろうか
体を起こし動こうとする
ぐっ
腹部に痛みを感じる。先程とよく似た痛みだ
痛みを感じる…死んでいないのか
はたまた、ここは地獄か俺は思考を巡らせ結論が出ないでいると
「起きたか、旅の人」
声が聞こえそちらに目をやる
そこにはフードローブに身を包んだ何処か屈強そうな髭面の男が座っている
髭も髪も白く何処か老いを感じさせる男性
それが声の主のようだ
「ここは…?」
俺は訪ねようと声を上げる。だが妙だ、声が可愛らしい女の声だ
さらに妙なことが続く身体が軽いそれも蝉の羽のようにとても身軽だ
「ここは山小屋さ」
男はそう言います
「山小屋?」
俺はついそう言い返す。山小屋というには作りもしっかりしており、山の一軒家とも言えるからだ
「そう、山小屋。まあ、もっといえば宿か。ここに住んで旅の人を泊めたりしてるのさ」
男はさも当然のようにそう言った
「どうしてここに?」
俺はさらにそう訪ねる
「散歩がてら、食い物でも採りに行ったら嬢ちゃんが倒れたんだよ。腹に木が刺さって死にかけてな」
男はさらにそう言うと歩み寄ってくる
俺が驚いて固まっていると男は腹部に手を当て、そして…
何か奇妙な呪文のようなモノを唱えます
男の手が光り腹部に熱いいや温かい熱を感じる
そして、あの痛みがどんどん和らぎ引いていくのを感じる
「驚きなさるな、今、君の傷を癒やしているところだ」
時間にしてどれほどでだろうかとても短い時間で俺の腹の傷が無くなる
「あの、これは?」
俺はまた質問します
「魔法さ、回復魔法。これは意識のある人間にしか活かせない魔法でな」
男は手を引きながらそう言うと
「腹が減っただろう旅の人。食い物を持ってくるよ」
俺にそう言い残し部屋から出て行った
男が部屋から去った後、自分の身に何が起こったのか必死に考える
まずは、両の手を見る
とても、細く繊細な指に小さな手の平が目に入る
俺は恐る恐る指を動かす。指は自分の意思で当たり前のように動かせる
そのまま、身体を起こす
地面に立つ、両足が地面を踏みしめるのが分かる。だが、不思議と身体が軽くとてもしなやかだ
筋力はないだろうがバネがあるだろうと感じる
そして、音。奇妙なことに聴力が鋭い。両の耳が空気の細かな振動まで捉えるほど鋭く感じられる
服装はワンピース型の薄い生地の服…ネグリジェというやつだろうか
「女の子になってしまったのか…?」
俺はつい独り言を漏らしてしまう
そして、男が戻ってくる
「元気そうで何より」
男はすくりと立ち上がり体の様子を確認している俺を見て苦笑いしつつそう言った
「ほれ、食事だ」
それから、男はお盆に載せた陶器製の鍋に入った粥を差し出してきた
「これは?」
俺は差し出されたものについて訊く
「押し麦の粥だ。押し麦に色々な野菜を煮込んで作った。病み上がりにはちょうどいいかもな」
俺はお盆を受け取るとテーブルに下ろし粥をよそい食べる
口いっぱいに優しい野菜の旨味が広がりとても美味に感じる
普段、化学調味料やら何やらにまみれたジャンクフードばかりの食生活だった自分にとってすれば
それはとても自然な味わいで味わい深くつい無口になりそれを黙々と食べ進めてしまう
ああ、美味しい…なんて美味しいんだ…
「おいおい、泣くほど美味いのかそれは?」
男は黙々と食べる俺を見て苦笑いを浮かべそう言った
そう言われはっとした俺は目元に手をやる
うっすらと涙が浮かんでいる
男に言われるまで気が付かなかった俺はこの料理の味に感激し涙を浮かべていたことを
俺は夢中になり粥を食べ続けた
「ごちそうさまでした。」
俺は手を合わせてそう言う
「……よく出来た娘さんだ」
男は少し嬉しそうにそう呟くと
「お前さん、名はなんと言う?」
はっと何かを思い出した様に続けてそう言う
俺は眉を潜める。名前…この世界での自分の名がなんと言うのか分からないのだ
「そうか…まずは自分から名乗らないとな」
男は眉を潜める俺を見るとそう言った
「私はオーランド…この山小屋の管理人さ。よろしくな」
男はそう名乗ります
「よろしくお願いします。私はエリーです」
俺はとっさに思いついた名前を言う
「エリーっていうのかよろしくな」
オーランドは手を差し伸べる
「よろしくお願いします。オーランドさん」
俺はオーランドの手を握る
ゴツゴツと硬く力強さを感じる温かい手だ
「お前さんの持ち物だ」
挨拶を終えオーランドは何かを持ってくる
そうして差し出されたのは弓矢でした
太い木の枝を2つを粗布で巻き何かの蔓で補強した様な無骨な弓。無骨さとは裏腹に弦に取り付けられたビーズは青く気品のあるものだ
「おそらく、木材はシダーとオーク。そいつを止めている蔓は藤だろうな」
オーランドは頭が痛いかの様な表情と共に片手で頭を抑えながらそう言う
「どうして分かるのです?」
俺はそう訝しみます
「魔法さ」
オーランドは片手で頭を抑えながら苦しげにそう言った
「魔法?」
俺は目を丸くしてそう言う
「昔、覚えた魔術でな鑑定魔法とでも言ったところか」
オーランドはまた苦しそうに続ける
俺は矢筒に手を伸ばすと矢を一本取り出す
「鏃は黒曜石。羽は水鳥だな」
オーランドは未だ苦しそうにそう言う
「ところで頭でも痛いのですか?」
俺は心配になりそう声をかける
「心配ありがとう。この魔法は気を集中するものでな」
オーランドは頭にやっていた手を離しと得意げな笑みを浮かべながらそう告げる
俺は矢筒に矢を戻すと
その無骨な弓の弦を引く
その無骨で粗雑な見た目に反し
弦は驚くほど軽く靭やかで僅かな力で引けてしまう
私は手を放ち弦を跳ねさせます
とても扱いやすそうな弓だ
続いて先ほどと同じように矢を手に取りよく見る
黒曜石の黒く鋭い鏃に水鳥の羽を切って付けた羽根
そして、取り付け用のU字の金具
思った以上にしっかりした作りの矢である
これをビーズの位置に取り付けつがえて射る…どれ程の威力が出るのか想像できないがおそらくは
俺は矢を見るつめ確かな笑みを浮かべる
「使えそうか?」
「ええ大丈夫です」
それから俺とオーランドは山小屋の外へ出る
緑の木々と青い空、頬を撫でる風はまだ少し冷たく新緑の木々は風に揺られざわめき立っている
とても、自然豊かな山
その中腹に木々を払い建てられた山小屋がここであると感じさせられる
俺はそこで思い切り伸び深呼吸をするとても清々しい気持ちだ
「どうだ、何か感じるか?」
オーランドは優しい笑みを浮かべそう問う
「ええとても…とても生きているという感じがします」
俺は満足げにそう言う
「そうか…」
オーランドも風に吹かれどこか嬉しそうに微笑む
俺は風のそよめきの中に何かの気配を感じ矢をつがえます
「どうした?」
オーランドは少し驚き不思議そうにそう言う
しゅ
俺は何も言わず気配に向け弓矢を放つ
放たれた矢は空気を引き裂き何かの元へ飛んでいった
「いえ、何か気配を感じたものでして」
俺は弓を下ろし残心しながらそう言った
「一応、確認したほうがいいな」
オーランドはそう言い矢が射られた方向へ歩いてゆく
俺はそれについていく
少しして、草むらに矢が刺さり突き出ているのが見える
よく見てみると矢はウサギの首から入り頭を貫通しているのが分かる
おそらく、即死だろう
「ウサギか…」
オーランドは少し語気を嬉しそうに傾けそう言うと
木にウサギを吊り下げひとを思いに矢を引き抜いた
ウサギの首元からは血が吹き出し地面を赤く染めていきます
「血抜きさ、こうしないと悪くなるからな」
オーランドは不思議そうに見つめる俺に向かってそう言い
次にナイフを抜きウサギの毛皮を剥いでいく
「しかし、エルフというものは凄いな」
そう言いながら
とても馴れた手付きでウサギが肉へと変わっていく
あっという間にウサギはウサギの肉と毛皮へと変わってしまった
「これで今日の夕と昼は困らないだろうな」
オーランドは鞘にナイフを納め
「ありがとう、エリー」
血に塗れた手で頭を撫でてきます
「オーランドさん…血が」
俺は頭を撫でられながら少し引きながらそう言った
「おお、すまんすまん」
俺は言ったオーランドが少し可笑しくて笑ってしまいます
「なんだよおい」
二人の笑いが辺りにこだまします
それから俺はオーランドに案内され
木々に囲まれた泉に付く
俺は水面を覗き込む
そこには尖った耳を持つ少女が写っている
世間一般で見てもかなり可愛らしい少女それが今の自分であることを自覚します
あんなにオークみたいに肥えていた俺が可愛らしいエルフになれるなんて
なんとも言えない感情が頭の中で巡り複雑な気持ちになります
それと同時に自分が何者なのか少しづつ受け入れます
私はエルフの女の子…エリーであると
「その…なんだ…どうせ泉まで来たんだ沐浴でもしたらどうだい?」
オーランドは恥ずかしそうにそう言います
「ええ、そうします」
私はそう言うと服を脱ごうとします
「待て待て、女の子なんだもう少し恥じらいを持て」
オーランドは恥ずかしそうに顔をそらしそう言います
それを言われ私も恥ずかしさを感じ顔を俯かせ顔を赤く染めてしまいます
「とりあえず…だ。体を拭く布を置いてくから終わったら声をかけてくれ」
オーランドはそう言うと大きめの布を置くと泉のある林の外へ向かって歩いていきます
私は布を拾いオーランドが去るのを確認し服を脱ぎます
一糸纏わぬ姿になった私
自分の体をすみずみまで見渡します
細くしなやかな四肢
小ぶりな胸にくびれた腰
綺麗な赤銅色の髪
それを紐で纏め頭の上の方でポニーテール状にしています
私は紐を掴みほどきます
ほどかれた髪が背中にかかります
それはとても長く肩や腰に触れ少しこそばゆい
先ほど弓の弦を引いた指はか細く
その手の右の手の人差し指には金色の指輪がはめられています
その指輪は作りこそ簡素ですが
弓を引くのを手伝う様に特殊なフック状の切掛けがあります
私は一歩踏み出し泉の中に足を入れます
…!
泉の水は凛と冷たく実が引き締まる様です
私は冷たさに耐えまた一歩あと一歩と進み泉に腰まで浸かります
そして、水を掬い体を清めていくのでした
この異世界に来て一週間ほど経ちます
私はこの山小屋に住ませていただいています
調理や洗い物などはオーランドが
狩猟、採取などは私が務めています
この世界に来てからオーランドは幾度魔法を使って見せてくれました
暖炉や夜に使うランプやロウソクの火起こしにしばしば発火系の火の魔法
食べられる野草を教えてくれる際に記憶転移魔法を使ってくれました
そして、7日目の今日
新しい出会いがあるのです
いつもの様に弓矢と山刀を持ち野山を駆け巡ります
この世界に来てから色々なことを覚えました
今の身のこなしだってそうです
木登りのすべに枝から枝へたわみを利用して飛び移る方法
目覚めてすぐに使えた弓術
それら全てが頭ではなく体が覚えているのです
私は木々を飛び交い風の音に耳を澄ませます
そして、揺れる木の葉に混じり聞こえるウサギやリスなどの小動物
イノシシなどの大物の足音を聞き分け獲物との距離を正確に感じ
一射一殺必着必死の距離を見分け矢を射ます
「これで10匹目」
私はこの7日間でウサギを4匹、リスを3匹、カモを2匹、イノシシを1匹仕留めています
そして、今仕留めたイノシシでちょうど10匹目
?!
イノシシの両足を括り運ぼうとしたその時です
風の音に混じり僅かに悲鳴が聞こえます
鳥の鳴き声ではない確かな悲鳴
私は両足を括ったイノシシを手近な木の枝の吊るすと悲鳴のした方へと走っていくのでした
少し走り木の上から様子を見ます
私の立っている木の下に誰かが居ます
「痛たたたた…足を滑らすなんて」
女の子の声がします
「大丈夫?」
私は木の上から声をかけます
「誰?」
少女の声がしますが少し怯えている様です
私は怯えている少女を尻目に木から下り立ちます
そこには私に似た年と思われる少女が居ました
幅広で山の先が尖った帽子を被り
黒色のローブに身を包み
右足を投げ出した体勢で辛そうな面持ちの少女
「ごめんなさい、驚かせて。私はエリー。近くの山小屋に住んでる者よ」
私はそんな少女に向かってそう挨拶します
「エリーさんというのね。私はアナ…あ、待って痛い痛い痛い」
アナと名乗りますが急に痛みにうめき出す少女
おそらく、投げ出せれている右足
そこが折れているのです
「とりあえず、固定しないと」
私は近くにあった枝を少女の足に当てます
「な、何を?」
少女が不思議そうにそう言います
私は自分の髪留めの紐をほどくとそれで枝を固定します
「たぶん、骨が折れてるから応急処置よ」
私は髪留めの紐や植物の蔓で少女足に当て木の枝を縛り付けます
「ありがとうございます。それとエリーさん後ろ」
少女は礼を言った後また怯えてそう言います
「え?」
振り返るとそこには男棍棒で振りかかる男が
ぐあっ
視界が真っ暗になり寒気がします
頭からは何かが溢れるように零れ
薄れゆく意識の中誰かの悲鳴が木霊します。それが現実のものなのか幻想のものなのかも知れずに
悲鳴がしたので山小屋から飛び出して来てみたがそこに居たのは先日保護したエルフのエリーと同じくらいの年の少女
幅広の帽子にローブを着たひと目で魔法使いと分かる少女だ
「大丈夫?」
「誰?」
どうやら、エリーもこちらに来ているのか少女に声をかけている
だが、姿がないと思ったが次の時には木から下りて現れた
木登りが得意なのはエルフの特性だろうなと思う
そして、少女の足に木を当て何やら処置をしている
相手は魔法使いなのだから足に回復魔法を当てれば早いのにとは思うが
苦痛の中で正しくルーンを唱えられるか甚だ疑問だ
ここはエリーに任せて立ち去るか
そう思い身を翻し去ろうとする
が、実際はそうはならなかった
「イヤアアアア」
悲鳴がまた木霊する
振り返るとエリーが男に殴られ地面に転がる瞬間が見えた
どうやら、山賊に襲われた様だ
「あの野郎」
それと同時に怒りが噴出する
娘のように可愛がっているエリーをあまつさえ傷つけもしかしたら死んだかもしれない
「」
私は怒りに任せ魔法を使う
「なんだあいったい」
山賊の足元から檻が生え包み込む
「」
そして、火がつき燃え上がる
「うわああああ」
山賊の悲鳴が檻の中から響き出す
「嗚呼…エリー」
そこには見るも無残なエルフの少女が倒れている
頭は割れ綺麗な赤銅色の髪には脂肪質な何かと血が絡みついている
「」
俺はまた魔法を唱える
蘇生魔法、死んでからそう時間が経っていないからなせる業だ
みるみるうちにエリーの傷は塞がりただそこに気を失い横たわっているだけだ
「禁忌魔法…それに蘇生魔法を」
魔法使いの格好の少女が喉から声をひねり出す様に
嗚咽の様にそう言う
「逃げなきゃ…逃げなきゃ…」
少女はそう言いながら呪文を唱えようとする
「待て」
私は人差し指を少女の口元に当てそう言った
「それは破壊魔法だろ。回復はこうだ」
私はそう言うと少女の足に回復魔法を当て折れた足を治してやる
「ど、どうして…それに古代魔法」
少女は怯え狼狽しながらそう言う
「どうして…って誰かを助けるのに理由が必要か?」
私はそう続けた
「で、でも」
狼狽えながら少女はそう言う
「落ち着け、私はオーランド。この娘、エリーと一緒に山小屋に住んでる者だ」
私はそう自己紹介すると倒れているエリーを担ぎあげると山小屋の方へ戻ろうと歩き出す
「あ、あの…」
少女は声をかける
「付いていっても大丈夫ですか?」
それから、そう続ける
「もちろんだ、エリーが目覚めた時に君が居なければ心配するからな」
私はそう言うとゆっくりと歩き出していくのだ
「ここは…」
目が醒めます、木の天井が目に入り私は上体を起こします
「おはよう、エリー。大丈夫か?」
横から聞き慣れた声がします
そちらに目をやると椅子に腰掛けたオーランドが居ます
「何があったのです?それにアナは?」
私はそうオーランドに問います
「あたしはここよ」
もう一つ声が聞こえそちらに目をやると大きく尖った山に幅の広い帽子を被った少女が古めかしい本を持ちそれを眺めながらそう言います
「よかった…それでいったい何が?」
私は再びそう問います
「山賊に襲われてお前さんは一度死んだ。それだけのことだ」
オーランドはさらりとそう言います
「死んだ?私が?」
思わず声が上擦ります
「ああ。山賊に頭をかち割られて即死だった」
オーランドはまた冷静にそう告げます
「でも、こうして生きていま…」
そう言いかけたところでアナが口を挟みます
「そこのおっさん…オーランドさんが蘇生魔法で蘇らせてくれたのよ…正直蘇生魔法なんて伝説上の存在だと思ってたわ」
蘇生魔法…この世界に来てから自分の身体能力もそうですが魔法という存在そのものにも驚かせ続けられます
「ありがとうございます。オーランドさんに私は助けてもらってばかりですね」
それを聞いてオーランドは少し恥ずかしそうにしながら
「別に大した事じゃない…それに今まで私がしてきた事に比べれば…」
そう言い少し表情を曇らせます
私は表情を曇らせたオーランドの向こう側
外が見える窓に恐ろしいものが見えます
何者かが矢をつがえこちらを狙っているのです
「オーランドさん!誰かが狙って…」
それを言い終えるより先に矢が放たれます
矢は凄まじい勢いで飛んできますがある一定の距離でピタリと止まります
そして、失速し地面に落ちて行くのが見えました
「ん?どうかしたのか?」
オーランドは呑気にそう言うと椅子から立ち上がります
私は立ち上がったオーランドよりもその奥で矢を射ってくる何者かに釘付けでした
「嘘でしょありえない」
アナも窓の外を見て驚いています
そう、その一射を皮切りに次々と矢が飛んできますが
それら全てが山小屋一定の距離を離しピタリと止まっているのです
その様子はまるで山小屋そのものが透明の球体包まれているかのように
オーランドは右手を得意げに握るとその場に留まった矢が地面に落ちていきます
「ありえない…そんな規模の防護魔法…そんなはずは…」
アナはさらに驚嘆し声を上げます
「どうした?外に何かあるのか?」
オーランドは余裕の笑みを浮かべ窓の外を見ます
私は見ました弓を引いている人物が異常に怯えている姿を
そして、その人物が地面に崩れる姿を
それから、何度か矢が飛んできますが結果は一緒で全てが無効化され地面に落ちるだけでした
2度目の際には私とアナを山小屋の食堂へ連れていき「ここで面白いモノを見せよう」と言い
3度目の一斉射撃のおりでしょうか
オーランドはこの状況を楽しむように外に出て矢が飛んでくるのを眺めていました
ぞれどころか外で舞を踊りだしたのです
私とアナはその様子を山小屋のダイニング…食堂から外へ続く扉越しに見ていました
5度目の一斉射撃では火矢が飛んで来て
オーランドは固定された様に留まったそれの火だけを集めはじめました
左手を横に出し右手で遠くの矢をなぞる様な動きをします
そうするとオーランドの横に火の玉ができそれがみるみる膨らんでいきます
遂にはオーランドの身長とほぼ同じ大きさになりました
オーランドはそれを空へと放りました
火球はおそらく空中で細かくなり山小屋の方以外の四方八方に飛び散っていったのでしょう
それから男たちの悲鳴が辺り一面から響きました
オーランドは重いモノを持ち上げるように開いた手のひらを上に持ち上げました
手が持ち上がると同時に悲鳴はより一層悲壮感がまし断末魔の叫びだと感じさせられる声質になっていくのでした
全てが終わり山小屋は静かでした
暖炉に焚べられた薪が爆ぜる音以外は何もしないくらいに
私もアナもオーランドが何か恐ろしい何者かであるという事を先ほど知ってしまったからです
「別に怖がることはないぞ」
山小屋に入るとオーランドはそう言いますが末恐ろしい
「もしかして、オーランドさんってあの魔王軍の副官の…」
ついに重い沈黙を破りアナがそう言います
「その通り、私が魔王軍副官のオーランドだ」
魔王軍…私には全く分からない存在です。それの副官であったそれがどういう意味か私の理解が追いつきません
「魔王軍それって…?」
私はつい疑問を口にします
「魔王軍を知らないの?200年前に封印されたあの魔王軍を…」
アナは驚いた口ぶりでそう言いますそれから続けて
「魔王軍は……」
「アナ、もういい」
魔王軍の説明に入ろうとしますがオーランドがそれを遮ります
「200年も前のことだそれに世界も私も平和を享受しているんだからな」
オーランドはそう言い切るのでした
続く
その日、ただなんとなくゲームセンターに行きたいと電車に乗った
「きゃあああ!」
「危ない!」
とっさの判断で体は動いていた
ずぶりと腹部に何かが沈み込んでくる。
熱い…痛い…足先から力が抜ける
「なんで、邪魔するのよ」
怨嗟の声が聞こえる
「やめろよ、このクソアマ!」
俺は刺された…それも誰かを庇って
俺は右手で女を抱えると左手で刺されている刃物。包丁を抑えた
そして、崩れ落ちる
一緒に崩れ落ちた女は馬乗りになり包丁を抜こうと必死だ
俺も抜かれまいと必死で包丁を押さえるこれ以上犠牲を出さないように
「くっ、離しなさいよ!」
女は悲鳴同然に吠える
「…ざまあ…みやがれ」
悪寒がする、痛い苦しい死にたくない色々な思考が頭を巡る
それでも、俺は包丁を押さえる
視界が暗くなる寒い
どこか、冷静に何処か困惑し何処か恐怖しつつ思う俺は死ぬのか
俺は手が切れるのも構わず包丁を押さえながら何処か深く寒い闇の中へ落ちていった
はっ
目が覚める。
「ここは?」
視界に入ったのは丸太で組まれた天井だ
俺は自分の身に何が起こったのかまったく理解できない
刺されて死んだと思ったら見知らぬ天井を見て目が醒めた
ここは死後の世界なのだろうか
体を起こし動こうとする
ぐっ
腹部に痛みを感じる。先程とよく似た痛みだ
痛みを感じる…死んでいないのか
はたまた、ここは地獄か俺は思考を巡らせ結論が出ないでいると
「起きたか、旅の人」
声が聞こえそちらに目をやる
そこにはフードローブに身を包んだ何処か屈強そうな髭面の男が座っている
髭も髪も白く何処か老いを感じさせる男性
それが声の主のようだ
「ここは…?」
俺は訪ねようと声を上げる。だが妙だ、声が可愛らしい女の声だ
さらに妙なことが続く身体が軽いそれも蝉の羽のようにとても身軽だ
「ここは山小屋さ」
男はそう言います
「山小屋?」
俺はついそう言い返す。山小屋というには作りもしっかりしており、山の一軒家とも言えるからだ
「そう、山小屋。まあ、もっといえば宿か。ここに住んで旅の人を泊めたりしてるのさ」
男はさも当然のようにそう言った
「どうしてここに?」
俺はさらにそう訪ねる
「散歩がてら、食い物でも採りに行ったら嬢ちゃんが倒れたんだよ。腹に木が刺さって死にかけてな」
男はさらにそう言うと歩み寄ってくる
俺が驚いて固まっていると男は腹部に手を当て、そして…
何か奇妙な呪文のようなモノを唱えます
男の手が光り腹部に熱いいや温かい熱を感じる
そして、あの痛みがどんどん和らぎ引いていくのを感じる
「驚きなさるな、今、君の傷を癒やしているところだ」
時間にしてどれほどでだろうかとても短い時間で俺の腹の傷が無くなる
「あの、これは?」
俺はまた質問します
「魔法さ、回復魔法。これは意識のある人間にしか活かせない魔法でな」
男は手を引きながらそう言うと
「腹が減っただろう旅の人。食い物を持ってくるよ」
俺にそう言い残し部屋から出て行った
男が部屋から去った後、自分の身に何が起こったのか必死に考える
まずは、両の手を見る
とても、細く繊細な指に小さな手の平が目に入る
俺は恐る恐る指を動かす。指は自分の意思で当たり前のように動かせる
そのまま、身体を起こす
地面に立つ、両足が地面を踏みしめるのが分かる。だが、不思議と身体が軽くとてもしなやかだ
筋力はないだろうがバネがあるだろうと感じる
そして、音。奇妙なことに聴力が鋭い。両の耳が空気の細かな振動まで捉えるほど鋭く感じられる
服装はワンピース型の薄い生地の服…ネグリジェというやつだろうか
「女の子になってしまったのか…?」
俺はつい独り言を漏らしてしまう
そして、男が戻ってくる
「元気そうで何より」
男はすくりと立ち上がり体の様子を確認している俺を見て苦笑いしつつそう言った
「ほれ、食事だ」
それから、男はお盆に載せた陶器製の鍋に入った粥を差し出してきた
「これは?」
俺は差し出されたものについて訊く
「押し麦の粥だ。押し麦に色々な野菜を煮込んで作った。病み上がりにはちょうどいいかもな」
俺はお盆を受け取るとテーブルに下ろし粥をよそい食べる
口いっぱいに優しい野菜の旨味が広がりとても美味に感じる
普段、化学調味料やら何やらにまみれたジャンクフードばかりの食生活だった自分にとってすれば
それはとても自然な味わいで味わい深くつい無口になりそれを黙々と食べ進めてしまう
ああ、美味しい…なんて美味しいんだ…
「おいおい、泣くほど美味いのかそれは?」
男は黙々と食べる俺を見て苦笑いを浮かべそう言った
そう言われはっとした俺は目元に手をやる
うっすらと涙が浮かんでいる
男に言われるまで気が付かなかった俺はこの料理の味に感激し涙を浮かべていたことを
俺は夢中になり粥を食べ続けた
「ごちそうさまでした。」
俺は手を合わせてそう言う
「……よく出来た娘さんだ」
男は少し嬉しそうにそう呟くと
「お前さん、名はなんと言う?」
はっと何かを思い出した様に続けてそう言う
俺は眉を潜める。名前…この世界での自分の名がなんと言うのか分からないのだ
「そうか…まずは自分から名乗らないとな」
男は眉を潜める俺を見るとそう言った
「私はオーランド…この山小屋の管理人さ。よろしくな」
男はそう名乗ります
「よろしくお願いします。私はエリーです」
俺はとっさに思いついた名前を言う
「エリーっていうのかよろしくな」
オーランドは手を差し伸べる
「よろしくお願いします。オーランドさん」
俺はオーランドの手を握る
ゴツゴツと硬く力強さを感じる温かい手だ
「お前さんの持ち物だ」
挨拶を終えオーランドは何かを持ってくる
そうして差し出されたのは弓矢でした
太い木の枝を2つを粗布で巻き何かの蔓で補強した様な無骨な弓。無骨さとは裏腹に弦に取り付けられたビーズは青く気品のあるものだ
「おそらく、木材はシダーとオーク。そいつを止めている蔓は藤だろうな」
オーランドは頭が痛いかの様な表情と共に片手で頭を抑えながらそう言う
「どうして分かるのです?」
俺はそう訝しみます
「魔法さ」
オーランドは片手で頭を抑えながら苦しげにそう言った
「魔法?」
俺は目を丸くしてそう言う
「昔、覚えた魔術でな鑑定魔法とでも言ったところか」
オーランドはまた苦しそうに続ける
俺は矢筒に手を伸ばすと矢を一本取り出す
「鏃は黒曜石。羽は水鳥だな」
オーランドは未だ苦しそうにそう言う
「ところで頭でも痛いのですか?」
俺は心配になりそう声をかける
「心配ありがとう。この魔法は気を集中するものでな」
オーランドは頭にやっていた手を離しと得意げな笑みを浮かべながらそう告げる
俺は矢筒に矢を戻すと
その無骨な弓の弦を引く
その無骨で粗雑な見た目に反し
弦は驚くほど軽く靭やかで僅かな力で引けてしまう
私は手を放ち弦を跳ねさせます
とても扱いやすそうな弓だ
続いて先ほどと同じように矢を手に取りよく見る
黒曜石の黒く鋭い鏃に水鳥の羽を切って付けた羽根
そして、取り付け用のU字の金具
思った以上にしっかりした作りの矢である
これをビーズの位置に取り付けつがえて射る…どれ程の威力が出るのか想像できないがおそらくは
俺は矢を見るつめ確かな笑みを浮かべる
「使えそうか?」
「ええ大丈夫です」
それから俺とオーランドは山小屋の外へ出る
緑の木々と青い空、頬を撫でる風はまだ少し冷たく新緑の木々は風に揺られざわめき立っている
とても、自然豊かな山
その中腹に木々を払い建てられた山小屋がここであると感じさせられる
俺はそこで思い切り伸び深呼吸をするとても清々しい気持ちだ
「どうだ、何か感じるか?」
オーランドは優しい笑みを浮かべそう問う
「ええとても…とても生きているという感じがします」
俺は満足げにそう言う
「そうか…」
オーランドも風に吹かれどこか嬉しそうに微笑む
俺は風のそよめきの中に何かの気配を感じ矢をつがえます
「どうした?」
オーランドは少し驚き不思議そうにそう言う
しゅ
俺は何も言わず気配に向け弓矢を放つ
放たれた矢は空気を引き裂き何かの元へ飛んでいった
「いえ、何か気配を感じたものでして」
俺は弓を下ろし残心しながらそう言った
「一応、確認したほうがいいな」
オーランドはそう言い矢が射られた方向へ歩いてゆく
俺はそれについていく
少しして、草むらに矢が刺さり突き出ているのが見える
よく見てみると矢はウサギの首から入り頭を貫通しているのが分かる
おそらく、即死だろう
「ウサギか…」
オーランドは少し語気を嬉しそうに傾けそう言うと
木にウサギを吊り下げひとを思いに矢を引き抜いた
ウサギの首元からは血が吹き出し地面を赤く染めていきます
「血抜きさ、こうしないと悪くなるからな」
オーランドは不思議そうに見つめる俺に向かってそう言い
次にナイフを抜きウサギの毛皮を剥いでいく
「しかし、エルフというものは凄いな」
そう言いながら
とても馴れた手付きでウサギが肉へと変わっていく
あっという間にウサギはウサギの肉と毛皮へと変わってしまった
「これで今日の夕と昼は困らないだろうな」
オーランドは鞘にナイフを納め
「ありがとう、エリー」
血に塗れた手で頭を撫でてきます
「オーランドさん…血が」
俺は頭を撫でられながら少し引きながらそう言った
「おお、すまんすまん」
俺は言ったオーランドが少し可笑しくて笑ってしまいます
「なんだよおい」
二人の笑いが辺りにこだまします
それから俺はオーランドに案内され
木々に囲まれた泉に付く
俺は水面を覗き込む
そこには尖った耳を持つ少女が写っている
世間一般で見てもかなり可愛らしい少女それが今の自分であることを自覚します
あんなにオークみたいに肥えていた俺が可愛らしいエルフになれるなんて
なんとも言えない感情が頭の中で巡り複雑な気持ちになります
それと同時に自分が何者なのか少しづつ受け入れます
私はエルフの女の子…エリーであると
「その…なんだ…どうせ泉まで来たんだ沐浴でもしたらどうだい?」
オーランドは恥ずかしそうにそう言います
「ええ、そうします」
私はそう言うと服を脱ごうとします
「待て待て、女の子なんだもう少し恥じらいを持て」
オーランドは恥ずかしそうに顔をそらしそう言います
それを言われ私も恥ずかしさを感じ顔を俯かせ顔を赤く染めてしまいます
「とりあえず…だ。体を拭く布を置いてくから終わったら声をかけてくれ」
オーランドはそう言うと大きめの布を置くと泉のある林の外へ向かって歩いていきます
私は布を拾いオーランドが去るのを確認し服を脱ぎます
一糸纏わぬ姿になった私
自分の体をすみずみまで見渡します
細くしなやかな四肢
小ぶりな胸にくびれた腰
綺麗な赤銅色の髪
それを紐で纏め頭の上の方でポニーテール状にしています
私は紐を掴みほどきます
ほどかれた髪が背中にかかります
それはとても長く肩や腰に触れ少しこそばゆい
先ほど弓の弦を引いた指はか細く
その手の右の手の人差し指には金色の指輪がはめられています
その指輪は作りこそ簡素ですが
弓を引くのを手伝う様に特殊なフック状の切掛けがあります
私は一歩踏み出し泉の中に足を入れます
…!
泉の水は凛と冷たく実が引き締まる様です
私は冷たさに耐えまた一歩あと一歩と進み泉に腰まで浸かります
そして、水を掬い体を清めていくのでした
この異世界に来て一週間ほど経ちます
私はこの山小屋に住ませていただいています
調理や洗い物などはオーランドが
狩猟、採取などは私が務めています
この世界に来てからオーランドは幾度魔法を使って見せてくれました
暖炉や夜に使うランプやロウソクの火起こしにしばしば発火系の火の魔法
食べられる野草を教えてくれる際に記憶転移魔法を使ってくれました
そして、7日目の今日
新しい出会いがあるのです
いつもの様に弓矢と山刀を持ち野山を駆け巡ります
この世界に来てから色々なことを覚えました
今の身のこなしだってそうです
木登りのすべに枝から枝へたわみを利用して飛び移る方法
目覚めてすぐに使えた弓術
それら全てが頭ではなく体が覚えているのです
私は木々を飛び交い風の音に耳を澄ませます
そして、揺れる木の葉に混じり聞こえるウサギやリスなどの小動物
イノシシなどの大物の足音を聞き分け獲物との距離を正確に感じ
一射一殺必着必死の距離を見分け矢を射ます
「これで10匹目」
私はこの7日間でウサギを4匹、リスを3匹、カモを2匹、イノシシを1匹仕留めています
そして、今仕留めたイノシシでちょうど10匹目
?!
イノシシの両足を括り運ぼうとしたその時です
風の音に混じり僅かに悲鳴が聞こえます
鳥の鳴き声ではない確かな悲鳴
私は両足を括ったイノシシを手近な木の枝の吊るすと悲鳴のした方へと走っていくのでした
少し走り木の上から様子を見ます
私の立っている木の下に誰かが居ます
「痛たたたた…足を滑らすなんて」
女の子の声がします
「大丈夫?」
私は木の上から声をかけます
「誰?」
少女の声がしますが少し怯えている様です
私は怯えている少女を尻目に木から下り立ちます
そこには私に似た年と思われる少女が居ました
幅広で山の先が尖った帽子を被り
黒色のローブに身を包み
右足を投げ出した体勢で辛そうな面持ちの少女
「ごめんなさい、驚かせて。私はエリー。近くの山小屋に住んでる者よ」
私はそんな少女に向かってそう挨拶します
「エリーさんというのね。私はアナ…あ、待って痛い痛い痛い」
アナと名乗りますが急に痛みにうめき出す少女
おそらく、投げ出せれている右足
そこが折れているのです
「とりあえず、固定しないと」
私は近くにあった枝を少女の足に当てます
「な、何を?」
少女が不思議そうにそう言います
私は自分の髪留めの紐をほどくとそれで枝を固定します
「たぶん、骨が折れてるから応急処置よ」
私は髪留めの紐や植物の蔓で少女足に当て木の枝を縛り付けます
「ありがとうございます。それとエリーさん後ろ」
少女は礼を言った後また怯えてそう言います
「え?」
振り返るとそこには男棍棒で振りかかる男が
ぐあっ
視界が真っ暗になり寒気がします
頭からは何かが溢れるように零れ
薄れゆく意識の中誰かの悲鳴が木霊します。それが現実のものなのか幻想のものなのかも知れずに
悲鳴がしたので山小屋から飛び出して来てみたがそこに居たのは先日保護したエルフのエリーと同じくらいの年の少女
幅広の帽子にローブを着たひと目で魔法使いと分かる少女だ
「大丈夫?」
「誰?」
どうやら、エリーもこちらに来ているのか少女に声をかけている
だが、姿がないと思ったが次の時には木から下りて現れた
木登りが得意なのはエルフの特性だろうなと思う
そして、少女の足に木を当て何やら処置をしている
相手は魔法使いなのだから足に回復魔法を当てれば早いのにとは思うが
苦痛の中で正しくルーンを唱えられるか甚だ疑問だ
ここはエリーに任せて立ち去るか
そう思い身を翻し去ろうとする
が、実際はそうはならなかった
「イヤアアアア」
悲鳴がまた木霊する
振り返るとエリーが男に殴られ地面に転がる瞬間が見えた
どうやら、山賊に襲われた様だ
「あの野郎」
それと同時に怒りが噴出する
娘のように可愛がっているエリーをあまつさえ傷つけもしかしたら死んだかもしれない
「」
私は怒りに任せ魔法を使う
「なんだあいったい」
山賊の足元から檻が生え包み込む
「」
そして、火がつき燃え上がる
「うわああああ」
山賊の悲鳴が檻の中から響き出す
「嗚呼…エリー」
そこには見るも無残なエルフの少女が倒れている
頭は割れ綺麗な赤銅色の髪には脂肪質な何かと血が絡みついている
「」
俺はまた魔法を唱える
蘇生魔法、死んでからそう時間が経っていないからなせる業だ
みるみるうちにエリーの傷は塞がりただそこに気を失い横たわっているだけだ
「禁忌魔法…それに蘇生魔法を」
魔法使いの格好の少女が喉から声をひねり出す様に
嗚咽の様にそう言う
「逃げなきゃ…逃げなきゃ…」
少女はそう言いながら呪文を唱えようとする
「待て」
私は人差し指を少女の口元に当てそう言った
「それは破壊魔法だろ。回復はこうだ」
私はそう言うと少女の足に回復魔法を当て折れた足を治してやる
「ど、どうして…それに古代魔法」
少女は怯え狼狽しながらそう言う
「どうして…って誰かを助けるのに理由が必要か?」
私はそう続けた
「で、でも」
狼狽えながら少女はそう言う
「落ち着け、私はオーランド。この娘、エリーと一緒に山小屋に住んでる者だ」
私はそう自己紹介すると倒れているエリーを担ぎあげると山小屋の方へ戻ろうと歩き出す
「あ、あの…」
少女は声をかける
「付いていっても大丈夫ですか?」
それから、そう続ける
「もちろんだ、エリーが目覚めた時に君が居なければ心配するからな」
私はそう言うとゆっくりと歩き出していくのだ
「ここは…」
目が醒めます、木の天井が目に入り私は上体を起こします
「おはよう、エリー。大丈夫か?」
横から聞き慣れた声がします
そちらに目をやると椅子に腰掛けたオーランドが居ます
「何があったのです?それにアナは?」
私はそうオーランドに問います
「あたしはここよ」
もう一つ声が聞こえそちらに目をやると大きく尖った山に幅の広い帽子を被った少女が古めかしい本を持ちそれを眺めながらそう言います
「よかった…それでいったい何が?」
私は再びそう問います
「山賊に襲われてお前さんは一度死んだ。それだけのことだ」
オーランドはさらりとそう言います
「死んだ?私が?」
思わず声が上擦ります
「ああ。山賊に頭をかち割られて即死だった」
オーランドはまた冷静にそう告げます
「でも、こうして生きていま…」
そう言いかけたところでアナが口を挟みます
「そこのおっさん…オーランドさんが蘇生魔法で蘇らせてくれたのよ…正直蘇生魔法なんて伝説上の存在だと思ってたわ」
蘇生魔法…この世界に来てから自分の身体能力もそうですが魔法という存在そのものにも驚かせ続けられます
「ありがとうございます。オーランドさんに私は助けてもらってばかりですね」
それを聞いてオーランドは少し恥ずかしそうにしながら
「別に大した事じゃない…それに今まで私がしてきた事に比べれば…」
そう言い少し表情を曇らせます
私は表情を曇らせたオーランドの向こう側
外が見える窓に恐ろしいものが見えます
何者かが矢をつがえこちらを狙っているのです
「オーランドさん!誰かが狙って…」
それを言い終えるより先に矢が放たれます
矢は凄まじい勢いで飛んできますがある一定の距離でピタリと止まります
そして、失速し地面に落ちて行くのが見えました
「ん?どうかしたのか?」
オーランドは呑気にそう言うと椅子から立ち上がります
私は立ち上がったオーランドよりもその奥で矢を射ってくる何者かに釘付けでした
「嘘でしょありえない」
アナも窓の外を見て驚いています
そう、その一射を皮切りに次々と矢が飛んできますが
それら全てが山小屋一定の距離を離しピタリと止まっているのです
その様子はまるで山小屋そのものが透明の球体包まれているかのように
オーランドは右手を得意げに握るとその場に留まった矢が地面に落ちていきます
「ありえない…そんな規模の防護魔法…そんなはずは…」
アナはさらに驚嘆し声を上げます
「どうした?外に何かあるのか?」
オーランドは余裕の笑みを浮かべ窓の外を見ます
私は見ました弓を引いている人物が異常に怯えている姿を
そして、その人物が地面に崩れる姿を
それから、何度か矢が飛んできますが結果は一緒で全てが無効化され地面に落ちるだけでした
2度目の際には私とアナを山小屋の食堂へ連れていき「ここで面白いモノを見せよう」と言い
3度目の一斉射撃のおりでしょうか
オーランドはこの状況を楽しむように外に出て矢が飛んでくるのを眺めていました
ぞれどころか外で舞を踊りだしたのです
私とアナはその様子を山小屋のダイニング…食堂から外へ続く扉越しに見ていました
5度目の一斉射撃では火矢が飛んで来て
オーランドは固定された様に留まったそれの火だけを集めはじめました
左手を横に出し右手で遠くの矢をなぞる様な動きをします
そうするとオーランドの横に火の玉ができそれがみるみる膨らんでいきます
遂にはオーランドの身長とほぼ同じ大きさになりました
オーランドはそれを空へと放りました
火球はおそらく空中で細かくなり山小屋の方以外の四方八方に飛び散っていったのでしょう
それから男たちの悲鳴が辺り一面から響きました
オーランドは重いモノを持ち上げるように開いた手のひらを上に持ち上げました
手が持ち上がると同時に悲鳴はより一層悲壮感がまし断末魔の叫びだと感じさせられる声質になっていくのでした
全てが終わり山小屋は静かでした
暖炉に焚べられた薪が爆ぜる音以外は何もしないくらいに
私もアナもオーランドが何か恐ろしい何者かであるという事を先ほど知ってしまったからです
「別に怖がることはないぞ」
山小屋に入るとオーランドはそう言いますが末恐ろしい
「もしかして、オーランドさんってあの魔王軍の副官の…」
ついに重い沈黙を破りアナがそう言います
「その通り、私が魔王軍副官のオーランドだ」
魔王軍…私には全く分からない存在です。それの副官であったそれがどういう意味か私の理解が追いつきません
「魔王軍それって…?」
私はつい疑問を口にします
「魔王軍を知らないの?200年前に封印されたあの魔王軍を…」
アナは驚いた口ぶりでそう言いますそれから続けて
「魔王軍は……」
「アナ、もういい」
魔王軍の説明に入ろうとしますがオーランドがそれを遮ります
「200年も前のことだそれに世界も私も平和を享受しているんだからな」
オーランドはそう言い切るのでした
続く
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