オークみたいな俺が転生したらエルフだった件

チェ・キルロイ

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第四話

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ここはどこだろうか
私を取り巻く環境その全てが早回しか巻き戻しのように流れている
よく見るとそれが私の元いた世界に組み変わっていくのが見える
そしてシーン、眼鏡をかけた黒髪の太った男が誰かを庇って刺されている
男は刺さった包丁を握りしめて仰向けに倒れていく
これが私があちらで死んだシーンだろうか

次に組み変わると森の中に佇む少女が見える
少女は別の少女の近くに立っている
髪を纏めているリボンを外したせいか綺麗な赤銅色の髪をなびかせ
尻もちをついて足が妙な方向に曲がった少女が居る
その子を介抱をしているのだろう
次の瞬間、赤銅色の髪の少女が吹き飛ぶのが見える
山賊とおぼしき男に棍棒によって頭を殴られて吹き飛んだのだ
よく見ると少女の頭から脳が溢れ出ている
そう、この少女は今の私だ
私はあの時死んだのだ
それなのに今こうして生きている
誰かが私を助けてくれた…黄泉帰らせてくれた…そういうことなのだろう
不意に声がする
「おーい、エリー朝だよ」
身体を揺すられるのも感じる

「はっ」
私は目を醒まします
目の前にはお胸の大きな愛らしい少女が見えます
夢で足に怪我をしていたあの子によく似ています
この子は私のよく知っている子です
その子が私の両肩に手を置き私の身体を揺すっているのです
「アナ…」
私は少女の目をじっと見つめます
その瞬間、私の脳裏にはあの剣に触れてからずっと寝ていた…昏睡していたアナを思い出します
その少女が今こうして元気に私を起こしてくれた…
名前を呼びじっと見つめられたせいかアナは少し不思議そうです
「よかった…」
私は思いきってアナを抱きしめます
アナの温かく少しふくよかな身体と私の華奢な身体がピッタリとくっつきます

「エリーってば大げさなんだから」
私が離れると見つめ合ったまま
アナは恥ずかしそうに言います
このまま、キスでもしてみようかと私は動こうとします
しかし、動こうとした私の唇の前にアナは人差し指を当て
「アタシもお返ししてあげようかしら」
そう言いながら残った左腕を伸ばし……
私の右耳を優しく触ってくるのです

「昨晩はありがとうございます」
店主はそう言うと料理を振る舞ってくる
キノコづくしのメニューだ
前菜でキノコの串焼きを私とカーティスは食べた
その他にも卵とキノコを絡めたソテーが出たりしており私はその味を楽しんでいるところだ
「ところで、城壁のところに吊るしたライカンの死体には何の意味が?」
店主がそう訪ねてくる
これは昨晩の戦いのあと、とある事を確かめたいということでそうしたのだ
昨晩の戦い…ライカンとキマイラの群れを掃討し
死体は埋め、死んだ行商と護衛を蘇生させついでに怪我人の処置もした
その折に狼がライカンになるという話を聞いたのでその反対もありえるのではということでそうしたのだ
それがとある事だ
吊るしたのは死体を取りに戻るライカンや他の生物に食い荒らされないようにという理由でだ
私はとりあえず店主に
「確かめたいことがあるのでな」
そう告げた
「さいですか…」
店主はこれ以上は聞くまいと固くそういうと続きとして
「ところで、娘さん達はどうしたんで?」
そう聞いてくる
そう言われてみるとアナとエリーがまだ来ていない
一晩寝て元気になったアナは静かに部屋を出ると私とカーティスの許にやって来た
あの状態でもある程度は周りの事は確認できたいた様でカーティスの事も知っていた
それから、アナはエリーを起こしに行くと部屋に戻っていくのを私とカーティスと店主の3人が見ている
「確認してくる」
私はそう言い残し席を立った

階段を登り部屋に近付く
扉の向こうからは甘い声…喘ぎ声が聞こえる
何をやっているんだか…
私は少し呆れつつ扉を開ける
その光景を見て私は目を細め
言葉を失ってしてしまう
そこにはエリーの耳を弄くり回しているアナが見える
本当に何をやっているのやら…
「何をやっているんだお前さんたち」
私はひと呼吸置いてそう声をかける
「オーランドさん?」
「あ、オーランドさん!」
二人の少女がそう同時に声を上げこちらを見てくる
アナの方は意地の悪い笑みを浮かべ
エリーの方は目に涙を湛え、口からはよだれが溢れるいわば蕩けきった表情をしている
「そういうことをするのは自由だが早く来ないと飯が冷めちまうぞ」
私は少し恥ずかしく思いそう早口でまくし立てる様に言うと部屋から立ち去る

カウンターテーブルに戻ると次の品が出ていた
キノコをホワイトソースと言われる小麦と牛乳で作るソースと絡めパスタと言われる麺と合わせた一品だ
「娘さん達は?」
私が料理を見ていると店主がそう声をかけてくる
「今来ると思う…」
私はそう言い切ると共に左手で顔を抑えうなだれる
「何かありましたか?」
「そうだぜ、オーランド。何があった」
二人が心配そうに言ってくれる
「アナがエリーの耳を触ってた」
私は意を決してそう言う
「耳を?」
「耳を!?」
カーティスは事の大きさを知らず疑問系で首を傾げながら
店主は事の重大さを知っているのか目を丸めてそう言う
「耳なら俺も昨日触ったぜそれの何がいけないんだ?」
耳を?と疑問系のカーティスは続けてそう言う
「エルフの耳ってのはな…敏感で、他人に触れられるのを避けるべきところなんだよ」
私はカーティスに苦々しくそう説明する
「なるほど、だからあの子は…」
カーティスは妙に納得気だ
「いわば、前戯のようなものなんだぞ…ましてや、同性同士…私はあまり気にしないが社会一般で見たらどう思うことやら…」
と頭を抱えたところであった
「おはようございます」
アナに手を引かれエリーが下りてくる
「おう、おはよう二人とも席はそっちだ」
店主が挨拶すると二人を席の方へ案内する
「ここの親父も俺も悪いことじゃないと思ってるけどな」
カーティスが私を抱えたにそう言ってくる
少なくとも今いる面子が気にしていないのがせめてもの救いかと私は思うのであった

オーランドに早く来るように言われた後です
「変なことしてごめんね」
アナが私に謝ってきます
私は耳いじりのせいで頭が惚けています
そのぼーっとした頭で私は
「気にしなくていいよ」
そう言います
頭の中は幸せで幸せで仕方ありません
不思議とアナのことが好きで好きで仕方がない気もしてきます
これが恋心なのか耳を触られたことで出た副作用なのか私には理解しかねる現象です
「そろそろ行こっか」
アナはベッドから立ち上がるとそう言います
私は右手を差し出し
「連れて行ってくれます?」
ととぼけてみます
「いいですわよ、お嬢様」
アナも乗ってくれて私の手を引いて一緒に歩いていくのでした

店主に案内され私とアナは席に付きます
向こうのカウンターでは頭を抱えるオーランドとそれを慰めるかのようなカーティスが見えます
「まずは前菜だ」
店主がそう言いますと目の前に串焼きのキノコを置いてくれます
「あたし、キノコ苦手なんだ…」
私がキノコを食べている横でアナが苦々しくそう言います
「まあまあ、お嬢さん。食わず嫌いせず一口を」
店主はアナを煽るようにそう言います
「仕方がないか…」
アナは嫌そうにキノコを口に含み咀嚼します
みるみるうちにアナの嫌そうな表情は解けていき飲み込む時には柔和な笑みを浮かべています
「キノコってこんなに美味しいんだね」
アナは笑顔でそう言います
とてもいい笑顔で私は頭を撫でてやりたいと思います
「お嬢さん、どうしてキノコが苦手なんで?」
店主は得意げな顔をしてそう訊きます
「昔食べたキノコが苦くてとても不味いものでしてその印象がずっと残ってたんですよ」
アナは素直にそう告げます
「そうか、最初にとんでもないモノを食べてしまったのか…」
店主は納得した様子で次の料理を持ってきてくれます

そうして、食事が進んでいくうちに
私はアナの住んでいるところや家族のことを聞いてみたくなります
「ところで、アナはどこに住んでるの?」
私は思い切ってそう訊いてみます
「アタシ?アタシはこの山の麓の町だけど」
アナは存外すんなりと答えてくれます
「でもどうして?」
それを聞かれて疑問に思ったのかそう返してきます
「いえ、ただなんとなく…」
私は思わぬ質問に少し口ごもります
「ふーん…アタシは麓の町で一人暮らし…去年まではママと暮らしてたんだけどね」
そこから、堰を切ったようにアナは話し始めます
母親と父親は特派員の様な仕事をしており、様々な町や村に行って問題を解決したり技術を供与する仕事をしていること
その仕事で現在遠くに行っており今一人暮らしであること
父親は代々続く血筋で母親とは大恋愛の末結婚したこと
母親はアナが5歳の頃までずっとしつけが厳しい人であったこと
アナが5歳の頃に母親が実験の失敗だかなんだかで雷に打たれそこからとても優しくなったこと
そういったことを教えてくれます
そして、話を終えると
「エリーの方はどうなの?」
そう訊いてきます
私は眉をひそめ考え込みます
家族…家族…
あちらの世界の事は覚えていますが
今の私の事は何も思い出せません
「うーん?ママと一緒だね」
考え込んでいる私を見てアナはそう言います
「とういうと?」
私はそう言われそう聞き返します
「雷に打たれた日からしばらくママはね、私の事とか全部忘れちゃってたの…それに似てるから」
アナはそう言うと少し寂しそうにします
「ごめん…」
私は謝ります
「大丈夫…いつか思い出すから」
アナは私に優しく微笑みかけてくれます
美味しい食事に可愛らしい友人…
今の私はあちらの世界の私が得られなかったモノを得ている気がして私はとても幸せものだなと思うのでした

「ごちそうさまでした」
二人が食事を終えるのが聞こえる
私は慰めかあるいはヤケかは分からないが酒を飲んでいた
二人が食事を終えて私の許にやってくる
「オーランドさん。カーティスさん。おはようございます」
エリーが私にそう挨拶する
「おう、おはよう」
私はそう返事をするとコップの中の酒を一息に飲み干す
「朝から飲まれているんですね…」
エリーが少し引き気味にそう言う
「まあな…」
私はバツが悪くなりそう答える
「早速で申し訳ないのですがアナの住んでいる町に行ってみたいのですが…」
バツが悪い私にエリーはそう言ってくる
アナの住んでいる町に…私は少し驚く
まあ、山小屋に戻り無駄な時間を過ごすよりはマシだろうとも思う
だが、その前にここで買ったものやらの荷物整理もしたい
私はそう思考する
それから
「ああいいよ、その前に山小屋に戻って荷物整理な」
私は眉を上げエリーにそう返す
「いいんですか?!……よかった」
エリーは目を丸くしながら驚き次には笑みを浮かべそう言う
なかなか、表情豊かで可愛いやつだ…
「世話になったな」
私は振り向くと金貨を2枚取り出すとカウンターに置く
「食事代領収しました…またのご利用を」
店主は恭しくそう言う
私達は店を去るのであった

店を出て城門を抜けて外に出る
手続きは入るときよりずっと楽であった
というのも酒場の店主…長が話しをつけておいてくれたのか
顔を見ただけで通してくれたのだから
門のずっと上の方には死骸が吊るされている
昨晩吊るしたライカンの死骸だ
私達一行は門から少し離れた位置で立ち止まると
「エリー、あれを射落とせるか」
メンバーの一人、エリーにそうお願いする
「お安い御用ですよ」
エリーはそう言うと弓に矢をつがえる
シュッ
弓から矢が放たれる
矢は死骸を吊るしている縄を正確に切り死骸を地面に落とす
「エリー、ありがとう…いい腕だな」
私がそう言うとエリーは少し頬を染め恥ずかしそうにお辞儀をする
そして、私とカーティスは死骸を見に行く

「やはりな」
死骸はライカンのものでは無く狼そのものに戻っている
店主の言っていた事は事実であった
山に住まう獣が別の獣に変異していること
そして、その変異が10日ほど前、丁度エリーを保護したあたりから起こり始めていることを思い出す
「オーランドさん、この死体は?」
声をがして振り向くとエリーとアナが死体を見つめ不思議そうにしている
「気にするな…大人の事情だ」
私は二人にそう言い聞かせる
その横でカーティスが両腕を竜のものに変えると穴を掘っている
少しして、穴掘りが終わる
「ありがとう、カーティス」
私は魔術の念力で死体を持ち上げ死体を穴に落とす
「(燃えろ)」
それから、呪文を唱え死体を焼き穴掘りとは逆に念力で土を戻し死体を埋めた
「お見事」
その一部始終を眺めていたエリーとアナ
そのうちのアナは私とカーティスの作業手順を褒めてくれた

しばらく進み野営地
「少し休むか」
私は振り返り3人にそう声をかける
カーティスとエリーは余裕そうだがアナがだいぶ疲れている様子だ
私は昨日と同じように水筒の飲み物に魔法をかけてやる
「冷たい飲み物って美味しいんだな」
そう呟いたカーティスが妙に印象的だ
「そういえば昨日抜いたあの剣は?」
アナがそう訪ねてくる
「ここにあるよ」
私は異空間から剣を出す
「すごい剣だよねこれ」
アナは目を輝かせ私の持つ剣を眺める
「ところで魔力を吸われたって言ったけどどうして?」
目を輝かせているアナとは違いエリーは至極冷静で
剣を見てエリーは何かを思い出したのかそう訊いてくる
「その件についてか…みんな離れてくれるか」
私は剣で技を見せようと思いそう皆に知らせる
「あ、はい」
質問するわけでもなく皆が素直に離れてくれる
私は右手に握った剣を思い切り振る
剣は袈裟を切るように動き軌跡から炎が上がる
次に剣を横一文字に振る
剣は雷を纏い電撃の軌跡を残す
そして、締めに突きを放つ
突きを放つと同時に剣から真空波が飛んでいく
「す、凄い」
アナとエリーは驚き息を呑みそう言う
カーティスはどこか嬉しそうにそれを眺めている
私は剣を背中に納める
「こんな具合にこの剣は魔法剣でな」
そして、驚いている二人にそう声をかける
「本当に凄いですね、オーランドさん…それにこの技、昔おじいちゃんが見せてくれた技にそっくり」
アナは私にそう言う
「お前さんの爺さんも魔法剣の使い手だったのか?」
それを言われ私はそう問う
「ええ、おじいちゃんも使い手でした」
そう言うと魔法剣の使い方を説明してくれる
今の魔法剣は剣に魔法をかけて使うのが主流だが
先程の技は違うこと
昔の魔法剣は魔力を剣と自身に循環させて使う技であることを説明してくれた
それは私が言おうとしていた事と寸分違わない内容で驚いた
「よく知っているな…」
私は自分が言いたいことの全てを言われてそう言うことしかできない
それと同時にこの子が何者か少し知りたくなる
「明日、お前さんの住んでる町に行くことはエリーから聞いてると思うが…良ければ家系図を見せてくれないか」
私はアナにそう言う
「家系図を?ええ、いいですよ」
アナは素直にそう答えてくれる
アナスタシア…この子はいったい何者なのか私の中に少しの疑問が生まれるのであった

「ふいー疲れた疲れた」
山小屋の鍵を開けると早速ソファーに腰かけアナがそう言う
「ここがアンタの住んでるとこなんだな」
カーティスは建物の中を眺めてそう言う
「ちょっと待ってろよ…今から昼を作るからな」
丁度、帰ってきて昼を過ぎる辺りで腹を減らしているだろうと思い私はそう皆に声をかける
「はーい」
アナとエリーが嬉しそうに声を上げる
「何か、手伝おうか?」
カーティスはそう気遣ってくれる
「ああ、頼む」
私はカーティス…200年以上前に死別したと思っていた親友と料理が出来ると思うとかなり嬉しく思いそうお願いした

昼が過ぎて日が暮れ夜を迎え夕食も終える
カーティスと調理場に立ち色々と教えながら料理をした
カーティスの包丁さばきも初めての割にかなりのもので教え甲斐があるものであった
そして、調理が楽しすぎて作りすぎてしまったのも事実だ
昼ご飯の後、エリーは沐浴に行き
アナは私の書斎で本を読み漁りながら眠っていた
娘たち二人が動けない間に私とカーティスは密会をした
この山の獣たちがライカンやキマイラなどの恐ろしい獣に変異していること
それがある種の呪術によるものであること
今日の夜中私とカーティスでその呪いを解きに行くことを決めていた
その夜が今だ
娘たち二人はベッドに入り眠っている
一応のことを考えて二人に睡眠魔法をかけて深い眠りを与えておいた
「行こうか、カーティス」
「ああ」
私は山小屋の出口に鍵をかけカーティスを伴い外に出る
山小屋の周りには一応の結界が張ってあり獣たちが入ると元の姿に戻るようになっている
だが、この解呪魔法には魔力の多く集中し消費するため結界が解けてしまう危険がある
その為の防護策で鍵をかけておくのだ
カーティスは夜で誰も見ていないということを考えてか元の竜の姿に変身している
「背中借りるぞ」
私はカーティスの背中の甲殻にまたがる
「久方ブリダナ親友」
そう嬉しそうな声が頭に響いてくる
「ああ、お前さんの背中にこうして乗れる日がまた来るなんてな…よかった」
感極まった私はつい涙ぐんでしまう
「俺モダヨ」
私とカーティスは声を殺して泣いた
嬉しさの涙が溢れて仕方ないのだ
「さて行こうか相棒」
ひとしきり泣くと私はカーティスにそう言う
「モチロンダ相棒」
カーティスは翼を広げ空を飛ぶ
魔王軍の最終兵器であり私の最高の相棒
カーティスの羽ばたきはとても速くとても優雅だ
そして、あっという間に山頂に到着する
「ありがとう、相棒」
私はカーティスの背から降りそう声をかける
「サア、始メルンダ」
カーティスはとても真面目そうにそうテレパシーを送ってくれる
「もちろんだとも」
私は大きな杖を地面に刺すと印を結び呪文を唱える
「(四大神に掲げる祈りの魔法)」
山頂では私の気配を感じて恐ろしい獣が顔を見せる
だが、襲ってはこない
私の横に立つカーティスの気配も感じ手を出せないで居るのだろう
「(地母神ゴウキ魔法神ライムよ力をお貸しください)」
しびれを切らし一匹のキマイラが襲ってこようとする
だが、カーティスが前脚でそれを一蹴する
私はカーティスが守ってくれていることを自覚しさらに印を結び呪文を唱え続ける

「うん?」
夜中だというのに私は目が覚めてしまいます
それもそのはずです、誰かが何者かが山小屋の扉を揺らし叩いているからです
「誰か居るの?」
私は眠い目をこすりベッドから出ます
こんな夜中に誰だろうか
私は一応の警戒を鑑みて弓矢を担ぎ出口の方へ向かいます
部屋の外は闇に沈み真っ暗な筈なのによく見えます
不思議と右目が闇に目が慣れているかの様な感覚です
私はおそるおそる山小屋の出入口に向かいます
ガタガタガタ
ドンドンドン
山小屋の扉が激しく揺さぶられ叩かれています
「何か用ですか?!」
私は怖くてたまりませんが気丈にそう声をかけます
ガタガタガタ
ドンドンドン
返事はなく扉は叩かれ揺すられるままです
私は気配を感じて調理場の窓の方へ目をやります
ヒッ
私は思わず声を上げます
そこには狼男がこちらを覗いているのです
こちらが見えているのか分かりませんが飢えた双眸がギラギラと辺りを見渡しているのが見えます
私は恐ろしくなり弓に矢をつがえます
もし、窓が破られたら射るしかない
私は恐怖で動転する息を整えながら弓を構え続けます
何が起こっているのだろうか
オーランドとカーティスに伝えるべきだろうか色々な考えが頭を巡ります
ですが、まずは中を覗いているコイツをどうにかしないとという思いが一番でした

「(そして、男神ライムと女神ウィアに捧ぐ祝詞)」
私はさらに印を結び呪文を唱える
呪文を祈りを捧げれば捧げるほど
頭上に太陽の様な明るい光が浮かび上がりそれが大きくなっていく
先程から獣たちが何度も襲ってきては一蹴されている
ついには10匹ほどのキマイラの群れがこちらに飛びかかってきたが
それを黒竜の炎が焼き払う
復活したカーティスはとても強く頼りになる
最高の友だと思える余裕はなかった
「(そして、祈りにより獣たちの呪いを解き給え)」
私は全ての呪文と印を結び終える
それと同時に頭上の光は大きく弾け本物の太陽の様で
山の頂上に数瞬の朝が訪れた様だ
そして、獣たちが元の姿に戻っていく
キマイラはイノシシにライカンは狼に
ふぅ…
私は一息つく
杖は魔法の効力の副作用か燃え上がりその役目を終えていっている
「お疲れ様、オーランド」
カーティスは燕尾服に身を包んだ人間の姿でそう労ってくれる
「ありがとう、カーティスお前さんのおかげで助かった」
私は右手を上げながらそう言う
「おうよ」
カーティスは私とハイタッチをする
「どこで覚えたんだそれ」
私はつい疑問を口にする
「昔からやってみたかったんだ…」
そのまま竜の姿に変身し
「帰ルカ」
そうテレパシーを送ってくる
「そうだな…乗せてくれ」
私はそう声をかけるとまたカーティスに跨がる

何があったのだろう
空が一瞬明るくなるのを感じ次の瞬間には先程ギラついた双眸が狼男のものから狼のものになるのが見えます
それと同時に扉を揺らしている音も止みます
どうやら、危機は去ったのだと思ったその瞬間でした
パリンッ
窓が割れる音がします
そして、痛み私の左腕に小さなナイフが刺さっているのが見えます
何事か
私はナイフを抜こうと手を伸ばします
ですが、身体が動きません
麻痺…麻痺毒か?!
私は息を荒くし両膝から地面に崩れ落ちます
息が…息ができない
このままでは死んでしまう
苦しい誰か…誰か…
息が詰まり私の意識はどんどん遠くなっていくのを感じます
また、死ぬのだろうか…もう、死にたくない…誰か…誰か…タスケ…テ…

続く
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