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第三話
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「おーい、嬢ちゃん。起きろ」
私の足元で横たわるアナに向かってカーティスはそう声をかけ
アナの体を揺すっている
「(元にもどれ)」
その後ろではオーランドが崩れた岩山に魔法をかけているようだ
スースー
アナは安らかな寝息を立て眠っている
オーランドの方へ目をやると
崩れた岩がまるで生物のように蠢き出し元の形に戻っていくのが見える
「おーい、嬢ちゃん?」
いくら体を揺すってもアナは目を醒ましません
私も心配でカーティスとアナの様子を見守っていますすると
「エリー!ちょっと来てくれ」
後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえます
「はーい、ただいま」
何用でしょうか?とにかく行ってみる事にします
オーランドの元に付いてみると岩山が先程とほぼ同じ形に戻っているのが分かります
ほぼと言ったのは一つだけ違う部分があるからです
それは剣が抜きさられているところ以外が全て元通りだからです
「(もう一つ)」
オーランドは右手を開いたまま腕を頭上に掲げるとまた魔法を唱えます
すると、右腕に光の粒子が集まります
それは大きな棒の様な形に集まりオーランドはそれを握ります
と同時に大きなそれがあの大剣になります
そして、オーランドはできたそれを地面にぐさりと突き刺します
「(封印魔法)」
オーランドがまた魔法を唱えます
私はただそれを不思議そうに見ているだけでした
「これでよし…」
オーランドは剣を刺すと満足そうにうなずきます
「エリー、こいつを抜けるか試してみてくれ」
オーランドは振り向くと剣を指しそう言います
私は柄を握り引き抜こうとします
しかしと言えばいいのかやはりと言えばいいのか分かりませんが剣は抜けません
「抜けないですよ」
私は少し残念そうにそう言います
「もう一度やってみてくれ…今度は思い切り」
オーランドはそう言います
言われたとおり私は柄を握り思い切り引き抜こうとします
やはり抜けません
「だめですとても固くて」
私はオーランドにそう言います
「なら、大丈夫だな」
オーランドはまたうなずきそう言います
「大丈夫ってどういう…」
私はついそう口を滑らせます
「これで元通りだろう?」
そう言うと目の前の岩山と剣を指し示します
確かに元通りです
「なるほど」
私はうなずきます
「オーランド、起きねえぞ」
その後ろで人間になった黒竜、カーティスがぶっきらぼうにそう言います
振り返り見てみるとアナを横抱き…いわゆる、お姫様抱きし頭にはアナの帽子を被っています
ツバが広く、山の高い帽子をです
その微妙に似合っていないその姿に私は吹き出してしまいます
「なんだよ…仕方がないだろこれは」
さらにぶっきらぼうにカーティスはそう言います
「アナスタシア…大丈夫か?」
オーランドはそう言うとアナの頬をプニプニと押します
起こしたいのかいたずらしたいのかよくわからないことを
と私は思いますが
それとは裏腹にアナは目を開けます
アナの目は焦点が合わず輝きも薄くどこか虚ろな目をしています
「よかった…オーランドさんに…カーティス…」
目を開けたアナはうわ言の様にそう言うとまた目を閉じ深い寝息を立てて眠りに落ちます
「思った以上に大丈夫ではなさそうだな」
その様子のアナを見てオーランドは呟きます
「死なないですよね?」
私は心配のあまりオーランドにそう返します
「命に別状はない…ただ、魔力が回復するまでしばらくこうだろうな」
オーランドは諭すようにそう優しく言ってくれます
「よかった…とにかく、彼女を休ましょう」
私はそう提案します
「オーランド、あんたの魔力を分けるってのはダメなのか?」
ああ、そうだなと言いかけたオーランドに被せるようにカーティスがそう言います
私も同じことを思いましたが何か事情がありそうなので控えた質もですが
カーティスは単刀直入にそう訊きます
「私の魔力は規格外でな…もし分けたらこの子の精神が壊れるか死ぬぞ」
オーランドは仕方なさそうな顔をしてそう言います
「そうか…妙案だと思ったんだがな…」
カーティスは残念そうに言います
「ところでカーティス、重くないか?」
それよりも心配なことがあるかのようにオーランドはそう言います
「俺は平気だ」
カーティスは冷静にそう言います
よく見ると美男子が少女を横抱きで抱えている構図でとても絵になる状況です
私はつい見惚れてしまいます
「エリー、お前さんもして欲しいのか?」
オーランドは見惚れている私に向かってそう言ってきます
「いえ、そういう…」
私は否定しようとしますがそれよりも先にオーランドが私を同じように抱きかかえてきます
そのまま、左腕が背中を右手が両足を抱えられ私はふわりと宙に浮いてしまいます
私もどうせだからとオーランドの肩に手を回します
「どうだ?」
オーランドの得意げな顔が目の前に見えます
「思った以上に恥ずかしいですね…」
私は抱えられ嬉しさ半分恥ずかしさ半分を感じついそう言ってしまいます
「いちゃいちゃしてる場合か?」
その横でカーティスが半ば呆れたようにそう言います
「ああ、そうだな…じゃあ行こうか」
そう言われオーランドは私を抱えたまま歩き出します
「ちょっと、下ろしてよ」
私は焦りそう言いますがオーランドは知らん顔で進んでいくのでした
流石に洞窟を出る直前で下ろしてくれたのが救いでしたが
もし、このまま運ばれてたらどうなっていた事やらと私は思いました
洞窟を出るとオーランドは"町長のところに戻るぞ"と言いました
私とカーティスは"町長?"と疑問でいっぱいでしたが直ぐに説明してくれました
実は先程会った酒場の店主がこの町の長であることを
そして、そこから酒場につくまでの間色々な事を教えてくれました
この町はオーランドとその町長が協力して発展させたこと
当時、身投げをして死のうとしている町長を保護しそこから場所の開拓やらをオーランドが
人員の配置や誘致やらを町長がコネクションを活かしてやってくれた事を
それから、あの酒場が行商人達のギルドで多くの行商人や冒険者が訪れる場所であることを
それらの説明をしつつ来た道を戻りあの酒場へ付いたのです
「おう、おかえり」
ドアを開けると店主…町長がそう言ってきます
日は傾いてきていますがまだ明るい時間帯
町長は店主として夜営業の準備をしている様子です
「剣は抜けたか?」
店主はそう言います
オーランドは辺りを見渡すと私達以外に誰も居ないことを確認すると亜空間から先程抜いた大剣を取り出しカウンターに置いて見せます
「あの地震はそういうことだったんだな…お見事」
店主はそう言います
オーランドは剣を手に持つとどこかへ消してしまいます
「驚かないんですね?」
私はそう言ってしまいます
「まあ、付き合いも長いからな…」
店主はそう言い私達のことを見渡します
白髪で年をくった感じの大男にエルフの少女、銀髪でルビーの様に赤い瞳と男とその腕の中で眠る少女が見えたのでしょうか
「ところで、そちらのお連れさん達はどうした?」
銀髪の男とその腕の中で眠る少女を見すえて店主はそう言います
「剣を抜こうとしたら、気を失ってな…それからそちらは…」
オーランドがそう説明しカーティスについても説明しようとしたところで
「男の方はなんとなく察しはつく…オーランド、泊まってけよ」
店主は右手を上げそう言い
「帰ろうと思ってたんだがな…いいのか?」
オーランドは店主に泊まっていけと言われ驚いた様子でそう言います
「最近、森の中で怪物…キマイラとかライカンを見たって話がよく出ていてよ」
店主は質問に答えるより先に事情を説明します
「なるほど…こちらは歩けない仲間がいるからという訳か…」
オーランドはそう言われ納得したようにそう言い金貨を1枚カウンターに置き
「これでいいか?」
と言います
「宿代は取らないつもりだったが…まあいいさ」
店主は金貨を受け取ると振り返り鍵を2つ持ちカウンターに置きます
「ツインの部屋が2つ。部屋は階段登った先にある」
階段…この酒場はテーブルやカウンターがある吹き抜けのフロアと壁に沿って付けられた階段とバルコニー状の通路
あちらの世界で見た西部劇に出てくるような作りの酒場なのです
私達一行は私とアナ。オーランドとカーティスの二人づつに別れ休み事になりました
カーティスはアナを優しくベッドに寝せ
「エリー、お前さんも休みな」
オーランドは私にそう言うのでした
この世界に来てから私はめざましい活躍はできていません
弓の技術も木々を飛び移る能力も
私自身の能力ではなくこの身体の持ち主の元から備わっている能力であり私の物ではない
それにオーランドとカーティス
いつか、あの二人が裏切るのではないか
そんな気がして私は寝付けないでいます
それだけではありません
「エリー、エリーどこなの?」
「オーランドさん…カーティスさん…よかった」
私の隣のベッドでアナがうわ言を繰り返しているのです
その姿がどこか不気味でどこか憐れで心配になり眠れないのです
私はとりあえず部屋の外に出ることにします
「お姉さん、いくらだ?」
部屋から出るとそう声をかけられます
振り向いて見ると鎧の胴体を着た若い男が立っています
「すみません…私。そういうことはしていないものでして」
私は恭しくそう言います
「えっ…そうかごめんな。」
男は驚きそして謝ってきます
「ところでお兄さんは何を」
私はとりあえず男が何者か訪ねます
「これは失敬。僕はキャラバンの護衛を勤めている者だよ…お姉さんは?」
男はそう訊いてきます
「私は冒険者といったところです…」
そう言いなが階下に目をやり
そのまま、バルコニー状の通路の手すりに寄りかかります
荷物を背負った人々が席に付き思い思いの食事をしています
お酒を飲む者、食べ物を食べる者
椅子に腰掛け楽器を演奏するもの
その演奏に耳を傾けお酒の味わう者も居ます
その中から二人を探します
丁度、カウンターに付き酒か何かを飲み店主と談笑しているオーランドとカーティスが見えます
「あの二人に連れられて来ました」
私は見つけた二人を指差しそう言います
「あの、二人が君のお連れさんか…」
男もそう言いながら私と同じように前向きに手すりに寄りかかります
黒髪の若い好青年という印象の男
私はその男にナンパされているのかなと思います
その時でした
「おい、そろそろ行くぞ」
不意にそう誰かが声をかけてきます
どうやら、私ではなく男の方に用があったのでしょう
男は振り向くと
「はい、ただいま」
そう言い
「お姉さんまたね」
男は私に手を振り階段を降りていきます
私は男に手を振り見送ります
男の背に大きな細身の剣が見えます
クレイモア…あちらの世界で遊んだゲームに出てきた剣の名前を思い出します
それと瓜二つの剣を背負い男は去っていくのでした
「おう、エリーか。どうした?」
男が去ると私は店主の居るカウンターヘ行きます
そこでオーランドは私を見てそう言います
「ごめんなさい…眠れなくて」
私はそう打ち明けます
「眠れないのかお嬢さん…飲むかい」
そう冗談めかして琥珀色の液体を差し出すのはカーティスです
「待て待て、国際法で子供の飲酒はだめだろう」
そうツッコミを入れるのは店主です
「法律?俺に法律は関係ないね」
そう宣うカーティスの頬は紅く染まりだいぶ酔っていることが分かります
「とりあえず、カーティス。駄目なものは駄目だ…というか飲みすぎだ」
オーランドは冷静そう言います
この三人がどれだけ飲んだのかは分かりませんがその言からカーティスがだいぶ飲んでいることを察します
「このぐらい飲んだうちに入らんわ」
カーティスはさらに管を巻きます
「寝れないんなら、俺が寝かしつけてやろうか?」
カーティスはスツールから立ち上がると私にそう言いながら歩いてきます
だいぶ飲んだと言った割に足付きはとても安定しています
そのまま、私の近くまで来ると
「ほらほら行くぞお嬢様」
カーティスは私を横抱き…お姫様だっこで抱えてきます
身体がふわりと浮く感覚がたまりません
「みなさんが見てますよ」
顔が熱くなる感覚を覚え私はそう叫ぶように言います
「見られたって構うもんかい!」
カーティスはそう叫び返します
「オーランドさん助けて」
そうも叫びますがオーランドは私の方を見ると手を高々と上げて振るだけでどうやら助ける気がないようです
私はそのまま先程出てきた部屋に連れて行かれるのでした
部屋に着くとカーティスは私を優しくベッドに下ろします
私は何をされるのか分からなく怖く思いベッドから下りようとします
「驚かせてごめん」
私をベッドに寝せたカーティスは
ベッドの端側、私の足元に腰かけそう呟きます
よく見ると頬の赤みも消えており本当は酔っていないのではと思わせます
「こうでもしないと、二人きりになれないと思ってな」
カーティスは先程の紅頬とは別の紅頬をしながらそう言います
「え?どうして、私と二人きりに…」
もしかして、カーティスが私のことを好きなのかと思い思考が止まります
「じつはその…お前さんの……耳を触ってみたくてな」
カーティスはさらに顔を赤くしてそう言います
「耳を…」
私は好き嫌いの感情ではなくただの興味本位のその言に少しがっかりします
「いいですよ」
ですが、この機会に仲良くなれたらと思いそう返事を返します
「いいのかい?じゃあ、さっそく」
そう言いきるとゆっくりと右手を伸ばし私の左耳に触れようとします
そして…
ふにり
「ひあっ」
私は思わず声を上げてしまいます
カーティスの右手が…
人差し指と親指でしょうかそれが私の左耳を摘むように触っているのです
「ごめん、痛かったか」
思わず声を上げた私にカーティスは心配そうに声をかけます
「だ、大丈夫です…」
私は強がりそう言います。
痛くはないがとてもこそばゆい
耳からこそばゆさが頭に伝わってくるようでとても奇妙で心地よいのです
「意外と触り心地いいな」
そう言いカーティスは私の耳を揉みだします
指を増やしてふにりふにりと
耳を揉まれるたびにこそばゆくジクジクビリビリとした感覚が増し
それが快感であると気が付かないまま私は耳を揉まれます
こんな感覚生きていて一度も味わったことがありません
私はその感覚に耐えかね思わず息を荒く激しくしてしまいます
「どうした?息が上がってるぞ」
カーティスは手を止めまた心配そうにそう声をかけてくれます
「だ、大丈夫です…できれば続けて欲しいのですが」
手を止められるとあの感覚が途絶えてしまいます
それが名残惜しくてたまらない私はそう言ってしまいます
「そうか…じゃあ、こっちも触るぞ」
カーティスはそのまま、左腕を伸ばし右耳も触ってきます
そのまま、両方の手で耳を揉まれ…いいえ揉みしだかれます
耳の端から端まで優しく
ときに耳全体をしごくように
そのたびに私の身体がビクリビクリと跳ねてしまいます
「ん…ん…ん…ん…」
私は目を閉じその感覚をたくさん味わいます
自分でも気が付かないまま甘い声を上げてしまいます
「おいおい、ビクビクしてどうした?」
カーティスはとぼけているのかな本当に心配しているのか分かりませんが手を止めてそう言います
「お…お願いです…やめないで」
私は目から涙を零しながらそう言います
頭の中がフワフワして幸せでたまらない
この感覚に包まれて飛んで行ってしまいたいそう思い溢れ溢れた言葉でした
「分かった」
カーティスはそう固く言うと手を激しく動かし始めます
「あああああああああああああ」
私はそれと同時に甘い悲鳴を上げてしまいます
そのまま、真っ白に飛び深い眠りに落ちていくのでした
薄れゆく意識の中で声が聞こえます
「カーティス来てくれ」
「助けなくていいのか?」
カーティスがエリーを抱きかかえて連れて行くのを見て店主がそう言う
「まあ、この機会に仲良くでも熟れればいいさ」
私はそう言うとコップの中の琥珀色の液体を一口飲んだ
ブランデーという酒でワインを蒸留し樽に詰めて作るらしい
これはそれの50年もの…正確には5年ものの樽に私が魔法をかけて熟成年数を10倍にしたものだ
水と酔う成分が溶け合ったその味はとても良いものだ
「左様ですか…しかし、50年ものはいいですね。とても、高級な味だ」
店主は酒の味を褒める
それに関しては私も同意見だ
エリーとアナを休ませてからここまで色々な世間話をした
獣の噂もその一つだ
与太話かどうかは分からないが猪が獅子に変わり狼が狼男に変わるところを見たという話も聞いた
キャラバン隊にも被害が出ており今では護衛をつけるキャラバン隊も多いとのことだ
さて、これからどうしたものかと酒をちびりちびりと頂いていると店に血相を変えた男が飛び込んでくる
「長!大変だ!行商の一行が襲われた!」
男は店に入るとそう叫ぶ
「襲撃か!?どこで?!」
店主も目を丸くしそう叫ぶ
「門を出てすぐのところでだ!獣がキャラバン隊を…」
男はそう返す
「すまん、オーランド。獣を追い払ってくれるか?」
それを聞き終えると店主は私を見据えてそう言った
「カーティス来てくれ」
私は店主への返答の代わりにそう叫んだ
私はカーティスを伴い門の前来た
門は固く閉ざされ衛兵が立っている
「すみません、襲撃により出入り禁止です」
衛兵は私ともう一人を見るとそう言う
「獣を追い払いに来た町長から指示だ」
私は衛兵二人にそう言った
「了解です。どうか、ご武運を」
そう言うと門を人がひとり通れるくらいに開ける
それと同時に獣…狼男、ライカンが潜り混んでこようとしてくる
間髪入れずカーティスがライカンの素っ首を掴む
「行くぞ」
そう冷静に言い放つ
「ああ」
私はカーティスに続き外へ出た
外へ出るとカーティスの方から"ごきり"と嫌な音が聞こえる
どうやら、先程掴んだ狼男の首をへし折った音のようだ
カーティスの右手の中で狼男は力なく吊り下がっている
カーティスは何も思わないかのように狼男の亡骸を地面に放り捨てる
外は悲惨な状態だ
荷物を背負った行商人が地面に突っ伏している
荷物が散らばりよく見ると首から上がない
護衛とおぼしきもう一人も無残な姿で四肢を貪り食われ腹からはハラワタが溢れ出ていてかろうじて原型を残している様な状態だ
下手人は獣たちだ獅子の体に翼と蛇が生えた様な獣…キマイラに
二足歩行する狼…狼男…ライカンが居る
ライカンは仕留めた分を含めて5匹
キマイラはもう2匹足りない3匹
私とカーティスは二手に別れ獣と相対する
キマイラが私をライカンがカーティスを取り囲む
私の右前と左前そして後ろにキマイラがいてお互いにスキをつこうと睨みを聞かせている
私は護衛のものであろう剣の方に手を向けると基礎魔法であるキネシスで引き寄せ剣を手に持つ
普通の人間の身の丈程ある大剣クレイモア
私は剣を持つと気を送る
それと同時に剣に炎が宿りほとばしる
それを皮切りに獣が襲ってくる
まず、後ろから飛びかかり私を押し倒し貪り食おうとしてくる
しかし、獣の飛びかかりは空を切る
空間移動を利用し私は今立っている位置の頭上に飛ぶ
そのまま、剣を下に突き刺す
剣はキマイラの頭を貫き地面に突き刺さる
そのまま、剣の柄に気を送る
パァン!
何か破裂音がする
それと同時にキマイラが力なく地面に突っぷす
キマイラの体内で炎が上がりそれがキマイラの頭蓋を加熱し内圧が高まり頭が破裂したのだ
私は剣を抜き地面に転がり下ります
隙きだらけの格好だったのかそのまま押し倒そうともう一匹が襲ってくる
私は剣を寄りかかってきたキマイラの下顎から頭へ突き刺す
ふしゅう…ふしゅう
キマイラは頭を串刺しにされ恐ろしい獣の息をあげる
私は柄を握り続け呪文を唱える
「(稲妻よ!)」
それにより剣に向かって雷が落ちてくる
獣は激しく痙攣している
私は剣を抜く
ざあああぁぁ
抜き取られた傷から血が溢れ雨のように私へとかかる
それと同時に獣は私を押しつぶすかの様に力なく落ちてくる
「(止まれ)」
私は獣の時を止めると押しつぶされる前に這い出る
「(動け)」
そして、獣の時を動かす
獣は地面に崩れ落ちる
最後の一匹だ
「(風よ)」
私は呪文を唱え剣に風を纏わせる
その横ではカーティスが戦っている
もうすでに2匹仕留めており残り2匹だ
だが、それも残り一匹になるのは時間の問題だろう
何故なら左腕を噛ませ噛み千切れず硬直しているライカンの胴体に腕を突き入れるところが見えたからだ
ぶちぶちぶち
また、嫌な音が響く。
今度は臓物を抜いた様でその音がそれの様だ
私の方はというとキマイラがこちらへ助走をつけて襲ってきている
私は剣を横に払う
それと同時に切った軌跡が衝撃波となり飛んでいく
キマイラは身を屈めそれを避ける
もう一度剣を横に払い衝撃波を飛ばす
今度は躱す
そして、キマイラは宙へ飛び上がり私を襲おうとする
私は剣を縦に振り下ろす
軌跡からまた衝撃波が飛びキマイラの目と目の間をすり抜けていく
そのまま、滑空の体勢のままキマイラは2つに割れ勢いよく地面に叩きつけられる
カーティスの方へ目をやるとライカンと抱き合う様な体勢をしている
よく見ると右腕がライカンの胸を貫き右手には未だに脈動する心臓が握られている
どうやら、助走をつけて襲ってきたライカンにカウンターを当てそのまま心臓を抜き取り殺した様だ
「終わったか?」
私はカーティスにそう声をかける
「ええ…久しぶりの戦いで楽しいものでしたよ」
カーティスは腕を引き抜くと握っている心臓をそのまま握りつぶす
さらによく見ればカーティスの腕は人の形を保ったまま真っ黒になり前腕には翼膜がつき爪は刃物よりも鋭くなっている
「変身能力か?」
私は訪ねる
「ええ、人間になってから使えるようになってたんだ」
そう言うと手を元に戻すカーティス
「とりあえず、後片付けだな」
私はそれを眺め終えるとそう言った
「だな」
カーティスはそううなずいた
続く
私の足元で横たわるアナに向かってカーティスはそう声をかけ
アナの体を揺すっている
「(元にもどれ)」
その後ろではオーランドが崩れた岩山に魔法をかけているようだ
スースー
アナは安らかな寝息を立て眠っている
オーランドの方へ目をやると
崩れた岩がまるで生物のように蠢き出し元の形に戻っていくのが見える
「おーい、嬢ちゃん?」
いくら体を揺すってもアナは目を醒ましません
私も心配でカーティスとアナの様子を見守っていますすると
「エリー!ちょっと来てくれ」
後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえます
「はーい、ただいま」
何用でしょうか?とにかく行ってみる事にします
オーランドの元に付いてみると岩山が先程とほぼ同じ形に戻っているのが分かります
ほぼと言ったのは一つだけ違う部分があるからです
それは剣が抜きさられているところ以外が全て元通りだからです
「(もう一つ)」
オーランドは右手を開いたまま腕を頭上に掲げるとまた魔法を唱えます
すると、右腕に光の粒子が集まります
それは大きな棒の様な形に集まりオーランドはそれを握ります
と同時に大きなそれがあの大剣になります
そして、オーランドはできたそれを地面にぐさりと突き刺します
「(封印魔法)」
オーランドがまた魔法を唱えます
私はただそれを不思議そうに見ているだけでした
「これでよし…」
オーランドは剣を刺すと満足そうにうなずきます
「エリー、こいつを抜けるか試してみてくれ」
オーランドは振り向くと剣を指しそう言います
私は柄を握り引き抜こうとします
しかしと言えばいいのかやはりと言えばいいのか分かりませんが剣は抜けません
「抜けないですよ」
私は少し残念そうにそう言います
「もう一度やってみてくれ…今度は思い切り」
オーランドはそう言います
言われたとおり私は柄を握り思い切り引き抜こうとします
やはり抜けません
「だめですとても固くて」
私はオーランドにそう言います
「なら、大丈夫だな」
オーランドはまたうなずきそう言います
「大丈夫ってどういう…」
私はついそう口を滑らせます
「これで元通りだろう?」
そう言うと目の前の岩山と剣を指し示します
確かに元通りです
「なるほど」
私はうなずきます
「オーランド、起きねえぞ」
その後ろで人間になった黒竜、カーティスがぶっきらぼうにそう言います
振り返り見てみるとアナを横抱き…いわゆる、お姫様抱きし頭にはアナの帽子を被っています
ツバが広く、山の高い帽子をです
その微妙に似合っていないその姿に私は吹き出してしまいます
「なんだよ…仕方がないだろこれは」
さらにぶっきらぼうにカーティスはそう言います
「アナスタシア…大丈夫か?」
オーランドはそう言うとアナの頬をプニプニと押します
起こしたいのかいたずらしたいのかよくわからないことを
と私は思いますが
それとは裏腹にアナは目を開けます
アナの目は焦点が合わず輝きも薄くどこか虚ろな目をしています
「よかった…オーランドさんに…カーティス…」
目を開けたアナはうわ言の様にそう言うとまた目を閉じ深い寝息を立てて眠りに落ちます
「思った以上に大丈夫ではなさそうだな」
その様子のアナを見てオーランドは呟きます
「死なないですよね?」
私は心配のあまりオーランドにそう返します
「命に別状はない…ただ、魔力が回復するまでしばらくこうだろうな」
オーランドは諭すようにそう優しく言ってくれます
「よかった…とにかく、彼女を休ましょう」
私はそう提案します
「オーランド、あんたの魔力を分けるってのはダメなのか?」
ああ、そうだなと言いかけたオーランドに被せるようにカーティスがそう言います
私も同じことを思いましたが何か事情がありそうなので控えた質もですが
カーティスは単刀直入にそう訊きます
「私の魔力は規格外でな…もし分けたらこの子の精神が壊れるか死ぬぞ」
オーランドは仕方なさそうな顔をしてそう言います
「そうか…妙案だと思ったんだがな…」
カーティスは残念そうに言います
「ところでカーティス、重くないか?」
それよりも心配なことがあるかのようにオーランドはそう言います
「俺は平気だ」
カーティスは冷静にそう言います
よく見ると美男子が少女を横抱きで抱えている構図でとても絵になる状況です
私はつい見惚れてしまいます
「エリー、お前さんもして欲しいのか?」
オーランドは見惚れている私に向かってそう言ってきます
「いえ、そういう…」
私は否定しようとしますがそれよりも先にオーランドが私を同じように抱きかかえてきます
そのまま、左腕が背中を右手が両足を抱えられ私はふわりと宙に浮いてしまいます
私もどうせだからとオーランドの肩に手を回します
「どうだ?」
オーランドの得意げな顔が目の前に見えます
「思った以上に恥ずかしいですね…」
私は抱えられ嬉しさ半分恥ずかしさ半分を感じついそう言ってしまいます
「いちゃいちゃしてる場合か?」
その横でカーティスが半ば呆れたようにそう言います
「ああ、そうだな…じゃあ行こうか」
そう言われオーランドは私を抱えたまま歩き出します
「ちょっと、下ろしてよ」
私は焦りそう言いますがオーランドは知らん顔で進んでいくのでした
流石に洞窟を出る直前で下ろしてくれたのが救いでしたが
もし、このまま運ばれてたらどうなっていた事やらと私は思いました
洞窟を出るとオーランドは"町長のところに戻るぞ"と言いました
私とカーティスは"町長?"と疑問でいっぱいでしたが直ぐに説明してくれました
実は先程会った酒場の店主がこの町の長であることを
そして、そこから酒場につくまでの間色々な事を教えてくれました
この町はオーランドとその町長が協力して発展させたこと
当時、身投げをして死のうとしている町長を保護しそこから場所の開拓やらをオーランドが
人員の配置や誘致やらを町長がコネクションを活かしてやってくれた事を
それから、あの酒場が行商人達のギルドで多くの行商人や冒険者が訪れる場所であることを
それらの説明をしつつ来た道を戻りあの酒場へ付いたのです
「おう、おかえり」
ドアを開けると店主…町長がそう言ってきます
日は傾いてきていますがまだ明るい時間帯
町長は店主として夜営業の準備をしている様子です
「剣は抜けたか?」
店主はそう言います
オーランドは辺りを見渡すと私達以外に誰も居ないことを確認すると亜空間から先程抜いた大剣を取り出しカウンターに置いて見せます
「あの地震はそういうことだったんだな…お見事」
店主はそう言います
オーランドは剣を手に持つとどこかへ消してしまいます
「驚かないんですね?」
私はそう言ってしまいます
「まあ、付き合いも長いからな…」
店主はそう言い私達のことを見渡します
白髪で年をくった感じの大男にエルフの少女、銀髪でルビーの様に赤い瞳と男とその腕の中で眠る少女が見えたのでしょうか
「ところで、そちらのお連れさん達はどうした?」
銀髪の男とその腕の中で眠る少女を見すえて店主はそう言います
「剣を抜こうとしたら、気を失ってな…それからそちらは…」
オーランドがそう説明しカーティスについても説明しようとしたところで
「男の方はなんとなく察しはつく…オーランド、泊まってけよ」
店主は右手を上げそう言い
「帰ろうと思ってたんだがな…いいのか?」
オーランドは店主に泊まっていけと言われ驚いた様子でそう言います
「最近、森の中で怪物…キマイラとかライカンを見たって話がよく出ていてよ」
店主は質問に答えるより先に事情を説明します
「なるほど…こちらは歩けない仲間がいるからという訳か…」
オーランドはそう言われ納得したようにそう言い金貨を1枚カウンターに置き
「これでいいか?」
と言います
「宿代は取らないつもりだったが…まあいいさ」
店主は金貨を受け取ると振り返り鍵を2つ持ちカウンターに置きます
「ツインの部屋が2つ。部屋は階段登った先にある」
階段…この酒場はテーブルやカウンターがある吹き抜けのフロアと壁に沿って付けられた階段とバルコニー状の通路
あちらの世界で見た西部劇に出てくるような作りの酒場なのです
私達一行は私とアナ。オーランドとカーティスの二人づつに別れ休み事になりました
カーティスはアナを優しくベッドに寝せ
「エリー、お前さんも休みな」
オーランドは私にそう言うのでした
この世界に来てから私はめざましい活躍はできていません
弓の技術も木々を飛び移る能力も
私自身の能力ではなくこの身体の持ち主の元から備わっている能力であり私の物ではない
それにオーランドとカーティス
いつか、あの二人が裏切るのではないか
そんな気がして私は寝付けないでいます
それだけではありません
「エリー、エリーどこなの?」
「オーランドさん…カーティスさん…よかった」
私の隣のベッドでアナがうわ言を繰り返しているのです
その姿がどこか不気味でどこか憐れで心配になり眠れないのです
私はとりあえず部屋の外に出ることにします
「お姉さん、いくらだ?」
部屋から出るとそう声をかけられます
振り向いて見ると鎧の胴体を着た若い男が立っています
「すみません…私。そういうことはしていないものでして」
私は恭しくそう言います
「えっ…そうかごめんな。」
男は驚きそして謝ってきます
「ところでお兄さんは何を」
私はとりあえず男が何者か訪ねます
「これは失敬。僕はキャラバンの護衛を勤めている者だよ…お姉さんは?」
男はそう訊いてきます
「私は冒険者といったところです…」
そう言いなが階下に目をやり
そのまま、バルコニー状の通路の手すりに寄りかかります
荷物を背負った人々が席に付き思い思いの食事をしています
お酒を飲む者、食べ物を食べる者
椅子に腰掛け楽器を演奏するもの
その演奏に耳を傾けお酒の味わう者も居ます
その中から二人を探します
丁度、カウンターに付き酒か何かを飲み店主と談笑しているオーランドとカーティスが見えます
「あの二人に連れられて来ました」
私は見つけた二人を指差しそう言います
「あの、二人が君のお連れさんか…」
男もそう言いながら私と同じように前向きに手すりに寄りかかります
黒髪の若い好青年という印象の男
私はその男にナンパされているのかなと思います
その時でした
「おい、そろそろ行くぞ」
不意にそう誰かが声をかけてきます
どうやら、私ではなく男の方に用があったのでしょう
男は振り向くと
「はい、ただいま」
そう言い
「お姉さんまたね」
男は私に手を振り階段を降りていきます
私は男に手を振り見送ります
男の背に大きな細身の剣が見えます
クレイモア…あちらの世界で遊んだゲームに出てきた剣の名前を思い出します
それと瓜二つの剣を背負い男は去っていくのでした
「おう、エリーか。どうした?」
男が去ると私は店主の居るカウンターヘ行きます
そこでオーランドは私を見てそう言います
「ごめんなさい…眠れなくて」
私はそう打ち明けます
「眠れないのかお嬢さん…飲むかい」
そう冗談めかして琥珀色の液体を差し出すのはカーティスです
「待て待て、国際法で子供の飲酒はだめだろう」
そうツッコミを入れるのは店主です
「法律?俺に法律は関係ないね」
そう宣うカーティスの頬は紅く染まりだいぶ酔っていることが分かります
「とりあえず、カーティス。駄目なものは駄目だ…というか飲みすぎだ」
オーランドは冷静そう言います
この三人がどれだけ飲んだのかは分かりませんがその言からカーティスがだいぶ飲んでいることを察します
「このぐらい飲んだうちに入らんわ」
カーティスはさらに管を巻きます
「寝れないんなら、俺が寝かしつけてやろうか?」
カーティスはスツールから立ち上がると私にそう言いながら歩いてきます
だいぶ飲んだと言った割に足付きはとても安定しています
そのまま、私の近くまで来ると
「ほらほら行くぞお嬢様」
カーティスは私を横抱き…お姫様だっこで抱えてきます
身体がふわりと浮く感覚がたまりません
「みなさんが見てますよ」
顔が熱くなる感覚を覚え私はそう叫ぶように言います
「見られたって構うもんかい!」
カーティスはそう叫び返します
「オーランドさん助けて」
そうも叫びますがオーランドは私の方を見ると手を高々と上げて振るだけでどうやら助ける気がないようです
私はそのまま先程出てきた部屋に連れて行かれるのでした
部屋に着くとカーティスは私を優しくベッドに下ろします
私は何をされるのか分からなく怖く思いベッドから下りようとします
「驚かせてごめん」
私をベッドに寝せたカーティスは
ベッドの端側、私の足元に腰かけそう呟きます
よく見ると頬の赤みも消えており本当は酔っていないのではと思わせます
「こうでもしないと、二人きりになれないと思ってな」
カーティスは先程の紅頬とは別の紅頬をしながらそう言います
「え?どうして、私と二人きりに…」
もしかして、カーティスが私のことを好きなのかと思い思考が止まります
「じつはその…お前さんの……耳を触ってみたくてな」
カーティスはさらに顔を赤くしてそう言います
「耳を…」
私は好き嫌いの感情ではなくただの興味本位のその言に少しがっかりします
「いいですよ」
ですが、この機会に仲良くなれたらと思いそう返事を返します
「いいのかい?じゃあ、さっそく」
そう言いきるとゆっくりと右手を伸ばし私の左耳に触れようとします
そして…
ふにり
「ひあっ」
私は思わず声を上げてしまいます
カーティスの右手が…
人差し指と親指でしょうかそれが私の左耳を摘むように触っているのです
「ごめん、痛かったか」
思わず声を上げた私にカーティスは心配そうに声をかけます
「だ、大丈夫です…」
私は強がりそう言います。
痛くはないがとてもこそばゆい
耳からこそばゆさが頭に伝わってくるようでとても奇妙で心地よいのです
「意外と触り心地いいな」
そう言いカーティスは私の耳を揉みだします
指を増やしてふにりふにりと
耳を揉まれるたびにこそばゆくジクジクビリビリとした感覚が増し
それが快感であると気が付かないまま私は耳を揉まれます
こんな感覚生きていて一度も味わったことがありません
私はその感覚に耐えかね思わず息を荒く激しくしてしまいます
「どうした?息が上がってるぞ」
カーティスは手を止めまた心配そうにそう声をかけてくれます
「だ、大丈夫です…できれば続けて欲しいのですが」
手を止められるとあの感覚が途絶えてしまいます
それが名残惜しくてたまらない私はそう言ってしまいます
「そうか…じゃあ、こっちも触るぞ」
カーティスはそのまま、左腕を伸ばし右耳も触ってきます
そのまま、両方の手で耳を揉まれ…いいえ揉みしだかれます
耳の端から端まで優しく
ときに耳全体をしごくように
そのたびに私の身体がビクリビクリと跳ねてしまいます
「ん…ん…ん…ん…」
私は目を閉じその感覚をたくさん味わいます
自分でも気が付かないまま甘い声を上げてしまいます
「おいおい、ビクビクしてどうした?」
カーティスはとぼけているのかな本当に心配しているのか分かりませんが手を止めてそう言います
「お…お願いです…やめないで」
私は目から涙を零しながらそう言います
頭の中がフワフワして幸せでたまらない
この感覚に包まれて飛んで行ってしまいたいそう思い溢れ溢れた言葉でした
「分かった」
カーティスはそう固く言うと手を激しく動かし始めます
「あああああああああああああ」
私はそれと同時に甘い悲鳴を上げてしまいます
そのまま、真っ白に飛び深い眠りに落ちていくのでした
薄れゆく意識の中で声が聞こえます
「カーティス来てくれ」
「助けなくていいのか?」
カーティスがエリーを抱きかかえて連れて行くのを見て店主がそう言う
「まあ、この機会に仲良くでも熟れればいいさ」
私はそう言うとコップの中の琥珀色の液体を一口飲んだ
ブランデーという酒でワインを蒸留し樽に詰めて作るらしい
これはそれの50年もの…正確には5年ものの樽に私が魔法をかけて熟成年数を10倍にしたものだ
水と酔う成分が溶け合ったその味はとても良いものだ
「左様ですか…しかし、50年ものはいいですね。とても、高級な味だ」
店主は酒の味を褒める
それに関しては私も同意見だ
エリーとアナを休ませてからここまで色々な世間話をした
獣の噂もその一つだ
与太話かどうかは分からないが猪が獅子に変わり狼が狼男に変わるところを見たという話も聞いた
キャラバン隊にも被害が出ており今では護衛をつけるキャラバン隊も多いとのことだ
さて、これからどうしたものかと酒をちびりちびりと頂いていると店に血相を変えた男が飛び込んでくる
「長!大変だ!行商の一行が襲われた!」
男は店に入るとそう叫ぶ
「襲撃か!?どこで?!」
店主も目を丸くしそう叫ぶ
「門を出てすぐのところでだ!獣がキャラバン隊を…」
男はそう返す
「すまん、オーランド。獣を追い払ってくれるか?」
それを聞き終えると店主は私を見据えてそう言った
「カーティス来てくれ」
私は店主への返答の代わりにそう叫んだ
私はカーティスを伴い門の前来た
門は固く閉ざされ衛兵が立っている
「すみません、襲撃により出入り禁止です」
衛兵は私ともう一人を見るとそう言う
「獣を追い払いに来た町長から指示だ」
私は衛兵二人にそう言った
「了解です。どうか、ご武運を」
そう言うと門を人がひとり通れるくらいに開ける
それと同時に獣…狼男、ライカンが潜り混んでこようとしてくる
間髪入れずカーティスがライカンの素っ首を掴む
「行くぞ」
そう冷静に言い放つ
「ああ」
私はカーティスに続き外へ出た
外へ出るとカーティスの方から"ごきり"と嫌な音が聞こえる
どうやら、先程掴んだ狼男の首をへし折った音のようだ
カーティスの右手の中で狼男は力なく吊り下がっている
カーティスは何も思わないかのように狼男の亡骸を地面に放り捨てる
外は悲惨な状態だ
荷物を背負った行商人が地面に突っ伏している
荷物が散らばりよく見ると首から上がない
護衛とおぼしきもう一人も無残な姿で四肢を貪り食われ腹からはハラワタが溢れ出ていてかろうじて原型を残している様な状態だ
下手人は獣たちだ獅子の体に翼と蛇が生えた様な獣…キマイラに
二足歩行する狼…狼男…ライカンが居る
ライカンは仕留めた分を含めて5匹
キマイラはもう2匹足りない3匹
私とカーティスは二手に別れ獣と相対する
キマイラが私をライカンがカーティスを取り囲む
私の右前と左前そして後ろにキマイラがいてお互いにスキをつこうと睨みを聞かせている
私は護衛のものであろう剣の方に手を向けると基礎魔法であるキネシスで引き寄せ剣を手に持つ
普通の人間の身の丈程ある大剣クレイモア
私は剣を持つと気を送る
それと同時に剣に炎が宿りほとばしる
それを皮切りに獣が襲ってくる
まず、後ろから飛びかかり私を押し倒し貪り食おうとしてくる
しかし、獣の飛びかかりは空を切る
空間移動を利用し私は今立っている位置の頭上に飛ぶ
そのまま、剣を下に突き刺す
剣はキマイラの頭を貫き地面に突き刺さる
そのまま、剣の柄に気を送る
パァン!
何か破裂音がする
それと同時にキマイラが力なく地面に突っぷす
キマイラの体内で炎が上がりそれがキマイラの頭蓋を加熱し内圧が高まり頭が破裂したのだ
私は剣を抜き地面に転がり下ります
隙きだらけの格好だったのかそのまま押し倒そうともう一匹が襲ってくる
私は剣を寄りかかってきたキマイラの下顎から頭へ突き刺す
ふしゅう…ふしゅう
キマイラは頭を串刺しにされ恐ろしい獣の息をあげる
私は柄を握り続け呪文を唱える
「(稲妻よ!)」
それにより剣に向かって雷が落ちてくる
獣は激しく痙攣している
私は剣を抜く
ざあああぁぁ
抜き取られた傷から血が溢れ雨のように私へとかかる
それと同時に獣は私を押しつぶすかの様に力なく落ちてくる
「(止まれ)」
私は獣の時を止めると押しつぶされる前に這い出る
「(動け)」
そして、獣の時を動かす
獣は地面に崩れ落ちる
最後の一匹だ
「(風よ)」
私は呪文を唱え剣に風を纏わせる
その横ではカーティスが戦っている
もうすでに2匹仕留めており残り2匹だ
だが、それも残り一匹になるのは時間の問題だろう
何故なら左腕を噛ませ噛み千切れず硬直しているライカンの胴体に腕を突き入れるところが見えたからだ
ぶちぶちぶち
また、嫌な音が響く。
今度は臓物を抜いた様でその音がそれの様だ
私の方はというとキマイラがこちらへ助走をつけて襲ってきている
私は剣を横に払う
それと同時に切った軌跡が衝撃波となり飛んでいく
キマイラは身を屈めそれを避ける
もう一度剣を横に払い衝撃波を飛ばす
今度は躱す
そして、キマイラは宙へ飛び上がり私を襲おうとする
私は剣を縦に振り下ろす
軌跡からまた衝撃波が飛びキマイラの目と目の間をすり抜けていく
そのまま、滑空の体勢のままキマイラは2つに割れ勢いよく地面に叩きつけられる
カーティスの方へ目をやるとライカンと抱き合う様な体勢をしている
よく見ると右腕がライカンの胸を貫き右手には未だに脈動する心臓が握られている
どうやら、助走をつけて襲ってきたライカンにカウンターを当てそのまま心臓を抜き取り殺した様だ
「終わったか?」
私はカーティスにそう声をかける
「ええ…久しぶりの戦いで楽しいものでしたよ」
カーティスは腕を引き抜くと握っている心臓をそのまま握りつぶす
さらによく見ればカーティスの腕は人の形を保ったまま真っ黒になり前腕には翼膜がつき爪は刃物よりも鋭くなっている
「変身能力か?」
私は訪ねる
「ええ、人間になってから使えるようになってたんだ」
そう言うと手を元に戻すカーティス
「とりあえず、後片付けだな」
私はそれを眺め終えるとそう言った
「だな」
カーティスはそううなずいた
続く
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