神々の愛し子

アイリス

文字の大きさ
15 / 50

15

しおりを挟む





割とあっさり許可が下りた。確かに、リローズが反対しても使えばいいと考えていたが、こうも簡単にいいと言われれば、拍子抜けする。



だが、魔法を使う制限を設けられていたのにはちゃんとした理由が存在していた。




運命。人間の意思に関わらず、身に巡ってくる吉凶禍福。断ち切れない巡り合わせ。魔法という力はそれが、更なる力を以て香月に降り注ぐとリローズは言っていた。幸せも不幸も、選ばず、選べず、共にやってくる。




リローズは、香月が選べという。使う、使わない、自由に選択すればいいと。




リローズは香月が自由に選び、考え、手を伸ばすものを奪わないと言った。




リローズが許すならば、誰にも邪魔されない。邪魔できない。




「さぁ、どうするの香月?」



香月が出す答えを待つリローズは楽しそうだった。




「リローズ......」




「なぁに、香月」




リローズは嬉しそうに香月の言葉に耳を傾け、返事をする。




「私は、魔法を使ってみたい。その気持ちに嘘はつけないの」




「えぇ、一度生まれた好奇心を人は無視できない生き物だもの。だから、香月がそうしたいと願うことは、何も間違っていないわ」




わかっている、というような、リローズの声音。




「いいのよ、香月。さぁ、魔法を使いましょう!何をしたいの?魔力を込めて思い浮かべれば、それはカタチを変えて世界に循環し、魔法という事象に変えてくれるわ」
















そもそも、魔力を込めるという事が香月にはわからない。使ったことがないから当たり前のことだが、この世界では魔法を使うことが当たり前のことであり、魔力を込めるということは基本中の基本。できなければ、魔法を使うことすらできない。




魔法の大小かわらず、魔力を込めるということは必要不可欠のもの。大抵は親から教わり、魔法を習得してゆく。やがて自分の魔力に相応しい魔法を使いこなすようになっていくもの。




よって、香月は魔法を使うにあたり、魔力込める、という工程で躓いた。




「魔力込める、ってどういう感じなの?」




「そうねぇ、子供が親から教わる時にはこうやって手を取って、親の魔力を子供に流して感覚を教えるのが一般的ね」




リローズは香月の両手をとり、魔力を流す。リローズの手から温かい何かが流れ込んでくる。



異質であるが嫌なものではなく、香月は流れてくるものを受け入れ、身を任せる。




(何だか不思議な感覚......暖かくて、安心する)




身に流れる血液をなぞるように、全身へ巡ってゆく。手の先から腹部、腹部から頭へ。反対に足の先にも巡り、いき渡る。




「これが、魔力よ。魔力を込める、というのはこの巡る魔力を力へ変えること。つまり、魔力を身体の外へ出す作業の事よ。身体の外に出た魔力へ何をするのか指示するために、詠唱するの」




リローズは魔力を香月に送り続けながら説明をする。




「無詠唱は、魔力を込めている時点で、頭の中で魔力に指示が既に終わっているの。それ故に、顕現速度が詠唱するのと比べて格段に早くなるの」



更に無詠唱についての説明を始める。



「でも、普通の人間の脳では処理できない。特別な、頭の回転が恐ろしく速い人間、もしくは、それを可能にする才能が必要になるわ」



「私が無詠唱で使えるのは?」



「香月はそういうものなのよ?あと、フロウティアはわたくしを身に宿す資格を持つ故に、無詠唱で使えるようになったのよ」



答えのようで、違うような回答をリローズはする。



そして、今まで香月が疑問に思っていたフロウティアが無詠唱で魔法を使う件についても解決した。




「感覚が掴めたかしら?」




「うーん、たぶん?」




「感覚が掴めたら後は簡単よ。後は思い描くの。何をしたいか、何をするのか。今回は速度を気にしなくていいから、ゆっくり考えればいいわ」




リローズは香月と繋げていた手をそっと放して、一歩離れた。



香月はリローズに言われた通り、魔力を込める。そして、なにをしたいのかを思い浮かべる。



「香月は何がしたいの?」




「色んな魔法を使いこなせるようになりたい!でも、今は転移をしてみたい。ヴィレムもフロウティアも簡単にやってたけど、できるかな?」




「やってみればいいわ。最初は近くに転移して、慣れたら長距離を試すの。まずは、ヴィレムの傍に転移してみたら?」



同じ空間にいるヴィレムの傍へ転移する。初めて試すのだから、ちょうどいい距離かもしれない。失敗しても差し障りのない範囲。




香月は魔法を込めたまま、ヴィレムの傍にいる自分を想像する。




身体の内から力がゆっくりと溢れ、循環し、そして、次の瞬間目の前の景色が揺らぐ。思わず目を瞑り、再び開ければ、ちゃんとヴィレムの傍にいた。成功していた。




「できた!」



「カツキ、よかったね!」



「うん、成功して良かった!」



やりたかったことが出来て、尚且つ、成功した為、香月の喜びも大きい。



「じゃあ、次は長距離を試す?」



リローズにそうたずねられ、香月は頷く。



「もちろん」



「わかったわ、じゃあやってみましょう。ただ、場所を移動する魔法は予め知っている場所、自分の認識のある所にしか行けないの。だから、ここから試すなら、教会にある香月の部屋くらいが無難かしら」



リローズに提案された通り、香月は教会にある部屋への転移を試みる。



先程と同じように魔力を込めて、場所を思い浮かべる。先程はヴィレムの傍に行く事は無事、成功した。今回も同じようにすれば、難なくこなせる、そう思っていた。




だが、いざ、試してみれば──。




香月は教会の部屋ではなく、真っ暗な闇の中に転移していた。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

愛する義兄に憎まれています

ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。 義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。 許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。 2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。 ふわっと設定でサクっと終わります。 他サイトにも投稿。

ローザリンデの第二の人生

梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。 彼には今はもういない想い人がいた。 私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。 けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。 あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。 吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 1/10 HOTランキング1位、小説、恋愛3位ありがとうございます。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

お妃候補に興味はないのですが…なぜか辞退する事が出来ません

Karamimi
恋愛
13歳の侯爵令嬢、ヴィクトリアは体が弱く、空気の綺麗な領地で静かに暮らしていた…というのは表向きの顔。実は彼女、領地の自由な生活がすっかり気に入り、両親を騙してずっと体の弱いふりをしていたのだ。 乗馬や剣の腕は一流、体も鍛えている為今では風邪一つひかない。その上非常に頭の回転が速くずる賢いヴィクトリア。 そんな彼女の元に、両親がお妃候補内定の話を持ってきたのだ。聞けば今年13歳になられたディーノ王太子殿下のお妃候補者として、ヴィクトリアが選ばれたとの事。どのお妃候補者が最も殿下の妃にふさわしいかを見極めるため、半年間王宮で生活をしなければいけないことが告げられた。 最初は抵抗していたヴィクトリアだったが、来年入学予定の面倒な貴族学院に通わなくてもいいという条件で、お妃候補者の話を受け入れたのだった。 “既にお妃には公爵令嬢のマーリン様が決まっているし、王宮では好き勝手しよう” そう決め、軽い気持ちで王宮へと向かったのだが、なぜかディーノ殿下に気に入られてしまい… 何でもありのご都合主義の、ラブコメディです。 よろしくお願いいたします。

処理中です...