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しおりを挟む休憩を終えて、香月は教会の裏にある庭に来ていた。もちろん魔法を練習する為で、ヴィレムとフロウティアも来ている。
この庭は広く、更に奥は森になっているようだ。
「カツキ様、ここで練習致しましょう」
庭の中央辺りに差し掛かり、フロウティアが立ち止まり香月に促す。
教会からだいぶ離れたとはいえ、目に映る範囲には建物がある状態だ。
「フロウティア、何の魔法を練習するの?」
「そうですね、色々ありますがまずは攻撃の魔法を練習しますか?」
早速、実践的な魔法をフロウティアは提案する。
「魔法は色々なものがあります。ただ、わたしたちは普通の魔法使いとは違い、詠唱が省ける分、自由度が高いのです。発動が難しいですが、自分が思い描く魔法を使うことが出来るのです」
フロウティアはこの様に、と呟き手を差し出す。
フロウティアの掌から水が出る。次いで炎が勢いよくうねり 、また次の瞬間には小さな稲妻が踊る。様々な魔法を一瞬のうちに繰り出す。
「それぞれ単体のものでも威力や方法によっては、十分な攻撃力を誇ります。しかし、魔法を極める者になればこれらの魔法を組み合わせることによって、より強力な魔法を生み出し、攻撃魔法として使用しています」
フロウティアは魔法を森に向かって放つ。
フロウティアが今使った魔法は炎と雷。渦巻く炎に、沿うように雷が回転する。それが直撃した木々は一瞬にして燃え尽き灰と化す。
その威力の強さに香月は言葉を失う。
フロウティアは軽く魔法を使っただけだろう。これはほんの一部。全力になったらどうなるのか、考えるだけで恐ろしい。
「まぁ、教会にいる者は攻撃に特化しておりませんので。どちらかといえば結界や回復魔法に特化しております。攻撃系に特化しているのは宮廷魔法使いが多かと思います」
そう言いながら、フロウティアは燃え切らず残った周りの木々に再度魔法を放つ。
(えっ、フロウティア!?また攻撃魔法使うの?)
攻撃魔法を使われて、真っ黒になって残っている木々を、更に追い込むのかと香月は目を剥く。
しかし、魔法が木々に辿り着いた刹那。魔法は淡い光となり、降り注ぐ。攻撃にしては優しく、温かな光だった。
観察を続ける香月は魔法が行使され、発動されてゆく様を眺め更に目を見張る。
「フロウティア、あの魔法は......!」
「あの魔法は再生です。回復魔法に分類されます」
フロウティアが言った通り、木々は瞬く間に再生されてゆく。灰はゆっくりと形をとり始め、黒く焦げ折り曲がっていた幹は真っ直ぐに戻り、落ちた葉は生命力を取り戻し、青々と生い茂る。
見る見るうちに元通りになる。あたかも何もなかったかの如く、時が流れる。
魔法が完全に完成した時、そこには周りと変わらない緑があった。
「魔法とは様々な事ができ、行使するものによって範囲は異なりますが、工夫次第で不可能を可能にする力です」
だから、魔法を使うなら、使えるならば練習が必要。そう言われている。
魔法凄い。凄いとしか言いようがなかった。
「しかし、魔法でも出来ないこと......というか、触れてはいけない領域というものもございます」
「触れてはいけない領域?」
「はい、主に死に関するものでございます。死とは、人が決して触れてはならぬ領域なのです。人を生き返らせること、不老不死などです」
フロウティアは瞳を眇め、香月に言い聞かせるようにゆったりと告げる。香月もフロウティアの言葉を聞き逃さないように耳を傾ける。
やはり、死に関することはどんな世界であれ人の領域に非ず、という事みたいだ。
「過去に人はそれらに手を出しましたが、成功はせず、大惨事が起こりました。元々の寿命自体が違う種族たちや、死に強い種族もいます。しかし、人という種は、死に抗えぬ生き物なのです。それを覆す術は今のところ無いので、カツキ様も絶対に魔法を使おうとしないでくださいね」
フロウティアは香月に念を押す。
「うん、そうだね......」
香月も勢いに押されつつフロウティアの忠告に素直に頷く。もしフロウティアに教えられていなければ、目の前で起こった時、無意識にでも使っていたかもしれない。いや、今も絶対とは言えないが。
やってはいけない事だという事は理解している。それに手を出せば、取り返しのつかない、恐ろしいことが起こる予感がする。だから、絶対に魔法として、使用してはいけないと実感する。
死は人にとって逃れられないもの。それは、香月自身、一番よく分かっている。
香月がそうだから。香月自身が逃れられず、ここにいるのだから。
だけど、魔法で解決しようとしてはいけない。する術もないようだが。
安易にそのような考えに及ばないよう、自らを鍛え、学ばなければならないだろう。
「それなら、死なないように努力が必要だね?攻撃魔法と回復魔法を練習しようかな?」
「そうですね、まずは基本的な魔法を練習致しましょう」
基本的な魔法が使えれば、組み合わせて多様な魔法を使える。そうすればある程度、危険は回避できるだろう。
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