神々の愛し子

アイリス

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魔法とは火、水、風、地、光、闇とから成る。そして、基本的な要素の魔法を組み合わせることにより、様々な魔法になる。



「私が先程使った攻撃魔法ですが、火属性の炎と闇属性の雷を組み合わせたものでございます。複雑に考える必要はありませんが、一つずつやっていきましょう」



フロウティアは丁寧に説明してゆく。炎は火属性で、雷は闇属性である事を噛み砕き香月に教える。



先程の魔法はある程度見たまんまだったので、香月が理解するのに複雑な解説はあまり必要なかった。しかし、魔法について初心者──この世界で魔法は大なり小なりとても身近なことを考えれば幼子よりも魔法に対して、無知であることは否定できない為、フロウティアの話に聞き入る。




フロウティアに促され、香月は視線で意志を伝え、魔法を発動させてゆく。



「まずは、顕現させるだけで十分です。手の平に魔力を集中させ、それぞれの属性を思い浮かべてください。難しければ、詠唱として言葉で固定してください」



香月はフロウティアに言われた通り、手の平を上にし、そのまま魔力を集める。



まずは比較的簡単そうな水属性を試す。



(焦らず、ゆっくり......)




魔力を込め、水を想像する。いつも身近にあり、やりやすそうだったから選んだ。



思った通り、わりと簡単に魔法は成功した。手の平に水の塊が現れ、溢れることなく空中で球体を象り、留まっている。



「カツキ様、お上手です!」



フロウティアが手放しで褒める。



香月も満更でない様子で応える。褒められるのは素直に嬉しいものだ。



「転移魔法が成功したので、基本的な魔法は差し支えなく使えるかと思っておりましたが、初めてやっての成功です!とても素晴らしいです、やはり、カツキ様は魔法の素質がおありです」



興奮冷めやらぬ様子でフロウティアは言い募る。




「この調子で他の魔法もやっていきましょう」



「わかった、やれるだけやってみる」



フロウティアに言われるまでもなく、香月はやる気に満ちていた。
















香月は残りの火属性、風属性、地属性、光属性、闇属性それぞれの魔法を試した。



結果としていえば、全て成功した。火属性は炎を。風属性はそよ風を。地属性は土を。光属性は光を。闇属性は闇を。属性ごとの基本的な部分の発動となったが、全てが成功したので、練習を重ねれば使いこなせるようになる、とフロウティアからお墨付きだ。




フロウティア曰く、魔法についても座学をしていったほうがより知識を深め、使える魔法の幅が増えるだろうとのこと。そう言われれば勉強しないわけにはいかない。



香月は座学もしてもらうことに決めた。




「また座学でも詳しく説明致しますが、カツキ様が望まれた回復魔法は光属性に分類されます。......カツキ様。全ての属性を極めることができれば最強ですが、それを可能にするのは一握りの人間だけであり、全てを会得することは極めて難しいことである、ということを覚えておいてくださいね」




フロウティアの忠言に香月は目を瞬かせる。フロウティアは無理をするなといいたいんだろう。全てを手に入れようと手を伸ばしても、できないと。




「大丈夫だよ、フロウティア。私は別に魔法を最高水準まで極めたいわけじゃないから。今は、身を守る手段を増やしたいだけ。だから、無理したり、出来ないことで挫折を味あうことはないよ」



香月はフロウティアを安心させるように務めて明るく告げる。そこには必要以上の気負いもなく、香月自身が述べたように無理するような気配は無かった。




香月も全ての魔法を極めようとは考えていなかった。極めるというのは、分野を問わず非常に難しいことだ。そう簡単にできるものではない。




極めようと考えれば、時間がかかる。知識面や技術面。人よりも優れるために時間をかけ、それに徹しなければならないだろう。余程、魔法に適性がなければ。




適性があっても、それをかたちにする才能がなければならないだろう。つまり、天才でなければ時間も知識も、短時間で極めるのは困難──否、不可能である。




それを知るが故に、香月は拘らない。完璧にこなそう、そう考えるだけで士気は下がる。反対に気楽にやろうとしていれば、失敗しても次、また頑張ろうと思える。




「そうですね、カツキ様のできる範囲で構いません。無理なことを可能にするのは、周りに任せればいいのです」



フロウティア、ヴィレムは頷き合う。フロウティアのいう周り、とはフロウティアとヴィレムの事だろう。フロウティアやヴィレムは博識で、魔法を極めている者に違いないから。




「そうだよ、カツキ!どんな魔法だって、どういう風にしたいのか教えてくれれば僕が実現させるから!」



ヴィレムが香月の肩に飛び乗り、強い熱意を灯した瞳を向ける。



香月はすぐにお礼を言う。



「ありがとう、ヴィレム!」




ヴィレムの言葉はとても説得力がある。なんせ、先程も力の加減をしようと試行錯誤し、魔法を実現している。出来ないことを短時間で可能にしたヴィレムならば、香月が諦める魔法だってできそうな気がした。



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