神々の愛し子

アイリス

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フロウティア、ヴィレム、香月は教会の香月の部屋に戻り一息ついていた。フロウティアがすぐに三つ紅茶を準備する。



準備した紅茶にそれぞれ口をつける。香月は温まり、ほっと息をつく。部屋に戻り、過敏になっていた身体が解れてゆくのがわかった。



フロウティアが宣言した通り、フォーディス伯爵も教会へ連れてきた。そして、フロウティアは皇城に使いを出し、フォーディス伯爵の行いを知らせた。



使いの返事は直ぐにきた。フォーディス伯爵を皇城へ移し、罪状を確認次第それに伴う判断を下すとのこと。既にフォーディス伯爵は皇城へ連行された。




「驚かせてしまいましたか?しかし、愛し子とは、大切な存在なのです。教会、帝国という括りではなく、世界にとって大切な者なのです。それ程、リローズ様の愛は大きいのですよ。それを、フォーディス伯爵は理解していない、というか理解できていなかったと申しますか......」



フロウティアはお茶を飲みながら香月に説明する。



「そうなんだね......」



「フォーディス伯爵は、シュリクロンの父親です。その立場ゆえに、どうも愛し子に気安い......いいえ、見下している節が度々見受けられていました」



確かに、彼の言葉の端々からそんな感じはあった。己の子供が愛し子なら多少は納得できる。納得できるが、許容したくはない。



「我々も己の娘に対してならば、大目に見る......というのも、シュリクロンが庇っていたからなんですが......しかし、他の愛し子、しかもカツキ様に同じ対応をするなど、最早、許せる許容範囲を大きく超えています」



「越えすぎてるよ」



今まで黙っていたヴィレムがフロウティアの言葉に口を挟む。



「ヴィレム、よく我慢出来たわね?」



フロウティアはからかうような響のある声音でヴィレムにたずねる。



「......するつもりは無かったけど、流石に手を出すのは不味いでしょう?」



憮然とした態度を隠さないヴィレムは、苛立ちを表すように眉はつり上がったままである。



「そうね、ヴィレムが怒りのままに手を出してしまうと、罪を問う前に死んでしまうかもしれないもの」



「そうだよ。あれだけカツキに暴言を吐くなんて。生ぬるい罰ならば、手を下さなきゃね」



「ふふ、そうね」



フロウティアとヴィレムは双方微笑み、言葉を交わす。ヴィレムはある程度重い罰が与えられないならば自らが与えると宣言する。



ヴィレムはきっと言葉の通り実行するんだろう。それが容易に想像できた。そしてそれをフロウティアは止めるどころか、けしかけそうな勢いだ。



「それに、カツキが見てる前で流血沙汰は流石に気が引けるしね」



香月のほうをちらっと見て、ヴィレムは言う。



つまり、香月が目の前にいなければヴィレムが手を出していたかもしれないということ。そして、香月が目にしていないならどんなに残酷で惨たらしい罰であろうと、躊躇うことはないんだろう。




「それともカツキは見たかった?」



ヴィレムが香月にたずねる。香月は口に含んだ紅茶を直ぐに飲み干し、答える。



「ううん、見たくなかった。だから、ヴィレムの気遣いはとても有り難い......」




これは紛れもなく香月の本音だ。香月にとってフォーディス伯爵は少し悪口を言われ気分を害する相手、といったところであり、ヴィレムたちが言うような重い罰が必要かと問われれば否定してしまいそうになる。




目を背けるようなものであるなら、見たくないと感じても仕方ない。




だが、香月の感じ方と世界の在り方は異なる。それが異世界だ。理解できるからこそ、香月は口を挟まない。この世界で定まっている法に則り裁かれればいい。そう思っている。



フォーディス伯爵に与えられるものがどのようなものであれ、香月は納得する。



納得し、口を挟まず、成り行きを見守るだろう。しかし、そうなれば心配なのは今までも庇い続けていたらしいシュリクロンがどう出るか、である。



今回も同じように庇うのか、それとも見切りを付けるのか。




香月が巻き込まれなければ、いつもの光景と片付いていたかもしれない案件。



だが、それではシュリクロンのためにもならないだろう。いつまでもああやって頭ごなしに詰られ、押し付けられていては前に進めないはず。何かきっかけがなければ。



これが良い方向に進むきっかけとなればいいが、もし、悪い方へ進むなら香月は後悔するかもしれない。



自分が関わったことにより、シュリクロンの人生に変化を齎すことに。



考えても仕方ないことだが、考えてしまうのが香月だ。



「カツキ?」


ヴィレムが不思議そうに香月を見つめ、名前を呼ぶ。



「......シュリクロンは、どう考えてるの?」




香月は恐る恐る、口を開きフロウティアに問う。



シュリクロンがどう思っているか、どうするのか、決めていればフロウティアが知っているはず。もし、シュリクロンが決めかねていたとしても、教会の長としてフロウティアは決定しなければならないだろう。




だから、フロウティアに問う。



「シュリクロンがどう考えていようとも、処遇は変わらないと思います。でなければ、秩序が乱れますから......」





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