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しおりを挟む「......ああ、香月はそれで涙を流したのね。でもあいつは自業自得よ。今までも酷い態度だったもの。片目だけなんて甘いとすら思うわ。......執行をシュリクロンにさせたのはけじめを付けさせるためよ、だから仕方ないの。この子も見切りをつけ、決別したの。それを表明し、実行なければ教皇として立てないもの」
リローズは香月に言い聞かせるようにゆっくり、しかし、当然だというように述べた。リローズはシュリクロンが実行し、完了することは必然だと考えているようだった。
リローズは香月の目尻に残る涙を拭い、手を差し出す。
「シュリクロンはもう後悔などしていないわ。だから、香月。貴女も気にし過ぎないで。優しい貴女は気にしてしまうでしょう、気の済むまで、気にすればいい。わたくしやヴィレム、フロウティアやシュリクロンが貴女を支えるわ」
「リローズ......」
リローズの香月を思いやる気持ちはとても深く、大きい。どうしてリローズがそこまで香月に入れ込むのか、理由は詳しくは知らない。そんな時間も余裕も、あの時の自分にはなかった。
だが、今なら。少し、謎が解けた気がする。ドゥームが狙い、リローズが勧誘しようとしていた。どちらも度合いは違えど、香月を求め、神へと仕立てあげようとしている。
リローズもドゥームも手段は違うが、願いは同じだ。
詳しく聞きたい気持ちはあったが、香月の願いは叶いそうになかった。
少し離れた場所に追いやられていたドゥームの身体が透け始めていた。
『どうやら、時間だ。これ以上この身体に留まれば滅することになってしまう』
ドゥームは時間切れに名残惜しそうに香月たちを眺め、リローズに近寄る。そして、リローズに静かに告げる。
『リローズ、気を付けろ。この身体の持ち主は下の奴らと絡んでいる』
近寄るドゥームを警戒していたリローズがドゥームの科白に表情を強ばらせる。一瞬にして警戒から恐怖へと転ずる。
ドゥームの忠告にリローズは距離を詰め、問いただす。
「ドゥーム!もっと詳しく話しなさいっ、言い逃げは許さないわよ!!」
『言い逃げ?まだ気付けない間抜けな誰かさんに警告してあげただけ親切だと思うけど?』
ドゥームはリローズを見下ろし、挑戦的に言い放つ。
リローズはドゥームに腹を立てながらも、気付けなかったことは事実なので悔しげに口を噤む。
『落ち込んでる暇なんかないからな、早く見つけて殲滅しないと、這い出てくる。それに奪われるくらいなら神格なんぞ関係ないからな?わかっているよな、リローズ?』
ドゥームは今までの穏やかな様子が嘘のように、禍々しい気配を纏う。そして凄みながら念を押す。
痛いくらい張り詰めた空気にリローズはさして気にした様子は無く、しかし憂鬱そうではある。話の内容は詳しくわからないが、リローズの悩みの種が増えたのは香月にも前後流れで理解できた。
「わかっているわよ、言われなくても」
リローズは疲れたようにこめかみを揉み、唸る。
「わかったから、早く帰ってくれる?奴らだけでも頭が痛いから当分来ないでよね」
げんなりした様子のリローズは先程の追い縋るような態度とは一変し、すぐに消えろと言わんばかりにドゥームを睨みつける。そして手を動かし追い払う動作をする。
追い払い、当分来るなと釘を刺す。香月としてはもう来ないで欲しいが、リローズの言葉からもそれは無理なんだと察する。
ドゥームは不屈の精神で、繰り返すんだろう。きっと、ずっと。どちらかが諦めない限り。
『そうだな、諦めるつもりは無いが相応しい器を見つけてからにしよう。でないと、満足に香月と遊べないことがよくわかったから』
香月が考えていた内容を把握するような物言いに冷や汗をかく。
いくら神といえど考えを読む、なんて出来ないはずだがあまりにも内容が一致したのでドキリとした。
ドゥームは香月に視線を移し、微笑を浮かべ流し目を送ってくる。
美しい容貌なのだ、見つめれれば照れる。
『香月、なぜ目を逸らす?』
「別に、逸らしてませんから」
「どうしたの、香月、まさかドゥームを好きになっちゃった?」
「はっ?好き!?違う、顔は綺麗だけど、出会い頭に首を締めてくる人を好きなるわけないっ」
「そうよね?」
リローズに返事を帰しながら、香月は出会いが普通だったら好きなっていたかもしれないのは否定できない。
ドゥームは香月を見つめる瞳が甘い。殺そうという意思がない時はそれが如実に現れている。
求めているのが香月ではない。香月の魂だと理解しているが、香月自身も求められているような、好かれているような感覚に陥る。
先程の言葉を早速実行しているようだ。
「まぁ、香月がしたいようにして」
見つめ合う香月とドゥームを眺め、リローズは言う。
「じゃあね、ドゥーム。また。今度はもっと穏便に遊びに来なさいよ」
『さぁ、それは状況しだいだろう?俺に神格を落とさせない為にもリローズ、君がどれだけ頑張るかにかかっている』
ドゥームの返答にリローズは心底嫌そうな顔をしながらも、頷いていた。
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