神々の愛し子

アイリス

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なんとかヴィレムを落ち着かせて、香月は一息つく。



一連の遣り取りを見ていたリローズとフロウティアは微笑ましそうにしていた。ちゃっかり二人は椅子に座り、お茶を飲みながら鑑賞していたようだ。



香月は自分に用意された椅子に座り直し、淹れたての紅茶を口に含み、飲む。



「リローズ、フロウティア、説明をお願いできる?」



飲み終え、心を落ち着かせたところで切り出す。



二人も香月が切り出すのを待っていたようで、頷く。




「もちろんよ、香月。その為にこの部屋に四人を集めているんだもの。シュリクロンにも聞こえているから、情報共有は可能よ」




「じゃあ、詳しく教えて」




「そうね、まぁ、簡単に説明すると香月は色んな神に執着されてるってことなの」



リローズが大雑把に説明する。



「......え?ちょっと、リローズ、説明が大まかすぎない?よくわからないんだけど!詳しくって言ったでしょう!?」




「簡単に、って言ったでしょう?だって説明するってなると長くなるし、複雑なのよねぇ」



リローズは苦笑を浮かべ、言い淀む。




はぐらかすような雰囲気を醸出すので、香月は焦る。ここで説明されなければ、誰に教えてもらえというのか。



リローズはそう簡単に会って話せる存在じゃない。それは本人も初めに言っていたことだ。



結局色んなことが起こり、重なり、リローズと頻繁に会っている......身体は違うとはいえ、中身はリローズなので間違っていないだろう。




本来なら、一ヶ月先まで会えないはずだった。しかし、シュリクロンが教皇となりリローズを宿すようになった為、今回、会えている。




しかし、今を逃せば、また先になるだろう。流石にその間待つ気にはなれない。




「複雑でも話してくれなきゃ、次はまた一ヶ月後でしょ!?」



「え?シュリクロンなら一ヶ月先じゃなくてもわたくしを宿しても大丈夫よ。月に三回程なら問題ないと思うわ」




「え?」



フロウティアは一回でも負担が大きそうだった。




「器には個人差があるわ。一回でも数分しか保たない人間、数時間なら大丈夫な人間、そして長時間宿せる人間。色々いるわ。教皇になるにはわたくしを宿せることも条件に入るから、長時間保つ人間のほうが有利だけど。必ずしも、長く宿せるから選ぶというわけでもなくて」



色々な条件とリローズの好みで決まる、ということ。



「あ、もちろん、香月が教皇になる、という道もあったわよ?」



リローズが少し期待に満ちた瞳を香月に向ける。香月はすぐに断る。



「嫌だ!」



「連れないわね、香月!そんな秒殺しなくてもいいのにー」



リローズが瞳に涙を浮かべ、甘えるような声で香月に言う。



ヴィレムとフロウティアは付き合いが長いからか、特に何も言わないようだが、香月にとっては違和感しかない。しかもシュリクロンの体だから特に。



シュリクロンの表情を押し殺してきた姿しか見てこなかったから故に、表情が豊かすぎるリローズの対応に、感情の処理が追い付かない。




「そんな未来もあったわよ、って話しただけなのに。香月が教皇になってくれたら、毎日降りてきたわよ?」




「私が保たないでしょ」



リローズの無茶振りに、香月はすぐさま突っ込みを入れる。身体に負担が掛かるのを毎日は辛い。




「香月なら大丈夫よ。でも教皇になったら自由度が制限されてしまうし、この国に留まっていてほしいわけじゃないから、勧めなかったの」




しかし、さらっと重大なことをリローズは言う。



(私なら大丈夫って何!?いや、聞きたくないし、聞いちゃ駄目なやつだ!墓穴を掘る)



そう香月は判断する。香月はわかっている。話しについて詳しく聞けば、墓穴を掘ると。聞いたって、負担が増すだけで良いことはないだろうと。



それでも自分も関わるのなら、聞かねばならないと決意し、リローズに話をしてもらおうと思った。




でも結果は、これ。リローズ曰く簡単にいえば神々の執着。複雑と言っていたが、これ以上、更に複雑にとはどういうことなんだろうか。聞きたいような、聞きたくないような。



(いや、聞かなくてもいいなら聞きたくはないけど)



更に面倒くさそうなので、聞きたくないけれど。聞かなければ対処することもできない。




「それに、ドゥームに見つかっちゃったからもう我慢する必要もないしね?」



「えっ?どういうこと?」



「魔法と同じく、ドゥームに見つかる可能性を少しでも下げようと思って頻繁に会うのは控えよう、って思って。だから香月には頻繁に会えないって言ってたの。でも、無意味だから、もういいわよね?」



リローズが嬉しそうに笑い、香月に確認する。




「待って、待って!一人で話を進めないで!」




「香月に毎日会いたいから、香月の身体に入っていい?という確認よ!!」



「勢いよく言っても駄目だからね!毎日はしんどい!」



きっぱり断る香月に、リローズはあざとい。瞳に零れそうな程涙を溜め、上目遣いで香月を説得しようと試みる。



「そんな顔しても駄目!リローズだって忙しいでしょ。それに身体に入ったら、話せないよね!?」




「まぁ、意思疎通は出来るけど。確かに香月に宿ると香月を観察できないわねぇ......」




リローズが残念そうに呟くが、香月はその言動が残念だ。女神らしさが欠けらも無い。




「じゃあ、やっぱり前と同じくフロウティアに宿り、香月と話すしかないわね?」




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