元兵士その後

ラッキーヒル・オン・イノシシ

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死の森に入る パート3

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 結論から言おうリルを連れて死の森に入るのは現状無理だ。
 正確に言えば外延部の魔物が頻繁に襲ってこない場所なら多少は行けた。
 でも深い場所は無理だった。どうも力以外の感覚系も弱体化しているようなのだ。ちまっこい頃のコイツらは捕まえようとしても捕まえられなかったからなぁ。


「というわけで冒険者ギルドにやってきました」
「きました?」
 いや自分の足で目の前まで来て何を言ってるのって顔しなくてもいいんですよリル。同僚のヨウシキビとやらに毒されたのは自覚がありますから。
 とはいえ無計画でやってきたわけではなく、冒険者が活動できる場所を確認できれば良さそうな穴場が分かるかもしれないという打算があってきたわけです。
 あと素材換金の進捗確認も。

 ギルドの建物に一歩足を踏み込む。
「おじゃましま~す」
「お、おじゃま、します?」
 と踏み込むと前回の時と同様に空気が動く。
 一体何なんだろうと思うが、まさか毎回入る人がいる度にやってるのか?
 気にしてもしょうがなさそうなので、買取りカウンターに足を向ける。
 朝の早い時間だからか2組前に居たがあっさりと番が回ってきたのでダンとリルはカウンターの前に立った。
「素材の買取りかい?」
「いえ、この間の素材の査定を聞きたくて」
 というと職員がしっかりと顔を上げてダンとリルを見る。何やら怪訝な顔だ。
「見た覚えがない顔だな? 代理人か?」
「彼女はこの間は居ませんでしたが、僕は本人ですよ?」
「僕?」とダンのことを凝視する。そして「まさかな」と言って肩をすくめた。
「冷やかしなら帰りな。業務妨害なら専門の職員を呼ぶぜ?」

 しばし見つめあうダンと職員。そしてダンがポンと思いつく。
「あのトカゲまだあるんですよね~」とカバンの手を伸ばしたところで「それはココで出しちゃだめぇ!」と職員が慌てて押しとどめた。


「いや~、引換証受け取るの忘れてましたからね」
「はは、は、こちらの不手際申し訳ありませんでした」
 ヒラヒラと引換証を振るダン。前回職員が精神的ショックを受けていたため、うっかり受け取るのを忘れていたのだった。職員も不手際だったことを詫びる。
「あとどれくらいかかりそうですか?」
「そうですね。マーダーベアくらいまでなら早く査定できるのですがアースドラゴンが……」
「アースドラゴン? アースドレイクじゃなくて? てかアレ、トカゲでしょう? ドラゴンなんて名付けたら本当の竜に怒られないですか?」
 恐縮する職員に、逆にダンが驚いた。どうもダンの認識と職員の認識がズレている気がしたからだ。
「いえいえ、間違いなくアースドラゴンですな。王都のギルドの職員にも過去の事例と照らし合わせましたから間違いはありません」と自信たっぷりに言う職員。逆にダンは首をさらに傾げた。王都でアースドラゴンという単語に引っかかったのだ。
「ちなみにその時の討伐者は? あ、非公開なら無理には聞きません」
「大丈夫ですぞ。それに冒険者ではなく国軍が討伐しましたからな。約8年前ほどだそうです」
「えっと、第一軍?」
「いえ第二軍だったはず。第二軍とはいえドラゴンを落とすとは、さすが我が国の軍ですな」
「はっはっは」と笑う職員に対して、ダンはうげぇと顔をゆがませた。それは絶対に当時「これはドラゴンだ」と第二軍がゴリ押しをしたに違いない。その光景がありありと脳裏に浮かぶ。
「とはいえここまで完璧に姿が残っているとは。罠か奇襲ですかな?」
「ま、まあそんなとこです」とダンは誤魔化しにもならない返事をした。どうも自分の戦果がおかしい気がしてきたからだ。
 実際のところダンの言うアースドレイクは、昼食を取っていた草原でダンに向けて突進してきたので首を一撃で討ち取ったものなのだ。昔のドレイクはどんなズタボロ状態にされたのか見当もつかない。
「3日後にはウルフとベアの素材は売れるでしょう。その頃にまた来てください」
「わかりました。それでお願いが一つありまして」
「何用でしょう? 価格交渉以外なら承りましょう」
「冒険者登録ってどこで出来ます?」


 冒険者ギルドの一角、そこにある人気のないカウンター。
 ここは初心者用のカウンターだ。正直この開拓地最前線のギルドで初心者が来るとは思えない。そんなこんなで職員家族というコネで入った新米職員がこのカウンターで最初の業務だ。むろん忙しいときはほかのカウンターのヘルプに入るがそんな時以外は基本ここに居ることになる。
 今日も頬杖をついて終わるかなぁと、退屈をしていると買取りカウンターの主のダニエルさんがやってきた。
「どうしましたかダニエルさん。ヘルプですか?」
「ミニー君。この2人が冒険者登録をしたいそうなので、手続きをしてあげてくれ」
 ミニーという名前が私の名前。子供の頃は他と比べて小さかったらしい。それはともかくダニエルさんはこのギルドでも古株の方の職員だ。でも何か気持ち焦っている?
 とりあえず私の少ない仕事が来たということらしい。頑張って対応させていただく。
 ダニエルさんに連れられてきた男女の2人組。
 男の人はこれと言って特徴はないけど清潔そう。女の人は全体的に白っぽい獣人の人たぶん犬系かな? うちの家計は混血で私は獣人系の特徴が強く出てるから、ちょっと羨ましいくらいの美人さんだ。
 ハッと気づいて手元の棚から書類を2枚取り出す。
「こちらの書類に名前と年齢、戦闘方法を書いてください」
 サラサラと男の人が名前と年齢を書く。あ、女の人の分も代筆してあげてる。気配りできる人なんだなぁ。うちの男連中はガサツで気が利かないのばっかりで、
「戦闘方法、ですか?」
「あ、そこはこの後の実技試験で口頭でも構わないですよ~」と2人の書類を見る。男の人はダン、20歳。女の人はリル、18歳ね。
「それじゃあちょっとお待ちくださいね~」
 私は席を立つと後ろの予定表を見る。お、ちょうどギルマスの空いてる時間だ。そう確認するとギルドマスターの部屋へと向かう。ギルド建物内のギルドマスター室に到着したら息を整えノックする。
「ミニーです。よろしいでしょうか」
「いいぞ」
「失礼します」と部屋の扉を開けて入る。
 そこでは書類仕事をしているしっかりとした体のおじさんが居ました。てかギスマスです。
「なにかあったか?」
「冒険者登録の方が2名来てます。実技試験の担当をお願いします」
 そういうとギルマスはムフフと若干やらしい笑い方をして立ち上がりました。この笑い方、女性職員に不評なの伝えた方がいいかな?
「書類仕事だけだと鈍るからな。よし、修練場に連れてきてくれ。先に言ってる」
「わはは」と笑うおじさん。いやギルマス。本当にイキイキしてますね。
 そして私は戻って2人を連れてギルドの修練場へと向かった。


「俺が実技担当のバルザールだ! 一定以上の実力ありと判断したらいいぞ。さ、どっちからやる?」
 若干肉が腹についてる気がする人物が目の前に立っている。その足元に刺さっている形の木剣。なるほど大剣の使い手なのか。
「じゃあまず私から」とリルが前に進み出た。
「武器はそこから適当なのを選んでくれ」と指示された壁には色々な形の武器がある。てかリルって武器使えるのか? そこでリルがダンの方へと振り返った。
「どれを使えば良いでしょう?」聞かれて少し悩む。
「短剣と手斧でいいんじゃないかな」
 ダンに言われて、リルは短剣と手斧を選んで抜いた。ちなみにすべて木製だ。
 試験管のバルザールとリルが向かい合う。
「ではリルさんの試験を始めます。始め!」
 女性職員の掛け声と共にリルが一気に距離を詰める。バルザールは若干驚いた顔をしたものの手にした大剣でリルの短剣を剣身で受けて流していた。盾みたいに使うんだなぁ。
 リルは短剣では重さがないと判断するや、手斧に持ち替えると思いっきり上から振り下ろした。バルザールはそれを大剣を斜めにして滑らして躱した。さらに振り切った形で体が強張ったリル目掛けて剣を横薙ぎに振った。刃筋は立てずに剣の腹で打つ格好だ。リルは身体能力を生かして飛び退る。まあ、これは経験の差だろうね。おまけに自分の身体にまだ慣れてないだろうし。
 その後もリルが攻めるもバルザールがいなし、たまに攻撃に移るということが繰り返された。
「よし、スタミナもあるし力もある。合格だ」とバルザールが言ったところで試験終了となった。

「おつかれさまリル」
「う~、不甲斐ないです」
 リルに声をかけてから交代でダンが進み出る。
「休憩はいいんですか?」
「ちょうど体が暖まったところだ。それより、あ~、ダンか。お前武器は?」
「武器、ですか……」
 ダンは空手で出てきた。さてと見まわして丁度良いものを見つける。ダンはそれを手に取ると左右の手に構えた。
「……知ってると思うが、それはぞ」
 バルザールの言葉に、ダンは大きく頷くとグリップを強く握りしめた。
「ええ、小盾バックラーですからね」


「えっと、いいのかな」
 私が狼狽えているとギルマスが頷き、相手のダンさんも頷いた。あ、ギルマスの顔が引きつってる。
 もうどうなっても知らないよ~。
「ダンさんの試験、初めてください!」
 その試験というか戦いは私の中の何かを打ち砕いた。


 頭に上っていた血が一気に落ちた。
 なんだこれは、激しい違和感と怒涛の攻撃に、俺は自分から間合いを外すことにした。
 さっきまでのほほんとした男だと思っていた。いや今も顔はそれほどの怒気も殺気もはらんでいない。だがなんだこの猛烈なラッシュは。
 そもそもバックラーなんてものは弾き、受け流す盾だ。決して用の盾ではない。さてはこの男格闘家グラップラータイプか!
 相手の突き出したバックラーの勢いを受けつつ、大剣で弾くようにして距離を置いた。このまま接近戦は不味いな。超至近距離は相手の間合いだ。くそ、この男出だしが読めねぇッ!
 一気に詰まる距離に俺は大剣を唐竹割に打ち下ろす。相手が大怪我をするかもなんてとっくに頭から消えていた。
 ガツンと剣から痺れが伝わってくる。横だと! 相手の頭から背中に向けて打ち下ろした剣が、なんで横からの打撃を食らってるんだ!? てかヤツの姿が視界にない! いや剣の飛ばされる方向とわずかに視界に入った影から位置を割り出して、そこに相打ち覚悟でショルダータックルを食らわせる。ガンッ! と肩に鈍い痛みが走ると同時に相手が距離を離したのか姿が見えた。
 衝撃の勢いを体を回して殺したのか、男がクルリと回ってその姿を見せる。若干腕を上げて両手のバックラーで胸のあたりを隠しているが、それは防御のためではないだろう。男はじっとこちらの出方を伺っているようだ。
 そこまでやって俺は男に抱いた違和感を認識した。男はここまでの技術を持っていながら闘気オーラを纏っていなかったのだ。なるほど技術だけは恐ろしいが、ここから先はまだあると先達として教える必要があるな。
 俺は大剣を下ろしていったん構えを解いた。
 男は疑問符を浮かべた表情で同じく構えを解いた。
「試験は合格ラインだ。お前なら今後いっぱしになるだろう。だがここから先のランクはそれだけじゃだめだ」
 試験は合格だが話の続きがあることに男は黙って聞いていた。こいつ結構素直なんだな。
「お前の今後のために事前に見せておこう闘気オーラってヤツをな」
 そういって俺は自分の闘気オーラを出しやすい剣を真正面に向ける構えを取った。
 静かに集中して闘気オーラを体の外にまで噴出するように絞り出す。
 どうだ、見えて感じてるか?
 そんな俺に男はあっけらかんと言った。
「あ、闘気オーラを出すところまでが試験なんですね」
 握っただけのバックラーを床に置き、手を正面で合掌させると一言つぶやく。
「『戦乙女の加護』解放リリース!」
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