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死の森に入る パート2
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とりあえず主語が抜けていた説明を再度すると受付の女性はリルを連れて部屋から出て行った。
ダンは軽くなった水筒に水を補充しに井戸に向かう。そろそろ夕方が近づいてきたが、まだ中庭は手元が見える明るさだったので井戸水を汲んでは水筒に入れる作業を繰り返した。ちなみにこれを使って体を洗うこともできるが、基本的にダンは飲料としてしか使うことがないため、街についた時のような格好になることも少なくない。1にまず自分の命なのだ。
水筒に補充が終わったダンは部屋へと戻った。
そこには普通の町娘のような恰好をしたリル? が居た。
「本当にリルで良かったんですか?」
「問題ないです」
コクコクと頷くリルにダンは軽くため息をつくと、リルの後ろにいた受付の女性へポケットから出すふりをして小手の金貨を1枚渡した。女性はびっくりした顔つきになって言う。
「これは多すぎです」
「すみません。迷惑料も込みだと思ってください」
「……わかりました。私の新品の下着もつけましょう!」
「リルさんの部屋に持って行ってくださいね!?」
『というかあんな大声で言わなくてもいいと思うんですが』とダンは改めてリルにベッドを勧めて、自分は椅子に座った。そしてリルと名乗った女性を見る。
白い髪に白い肌。頭には狼の耳にスカートで見えないが、森の中で尻尾が揺れたのは見えた。なるほど確かに見た目は狼系獣人に見える。街の人もさして違和感を感じないだろう。だが、
「あの大きな白狼は元気ですか?」
「お母さまは大変元気です。この間も挑みかかってきた人間をペイしてました」
……おそらく尻尾で払いのけたのだろう。
ちょっと前にうっかり漏らしたフェンリルの名前。おそらくフェンリルの娘~とか何とか口走ったに違いない。それはともかく、
「本当に名前がリルなんですか?」
「はい、お母さまの娘のリルです」
「……そもそも個体の名前ってあったんですか?」
「いえ、こちらに来るときに付けてもらいました♪」
嬉しそうにいう娘さんには言えないが、基本戦闘狂のフェンリルさんは名付けに労力を割かなかったに違いない。本気で殺し合いをしたことのあるダンはそう推理した。とはいえあくまで推理だから、これを口にすることはない。
「それで? たまたまこちらに居たわけじゃないですよね?」
なにせフェンリルの住処は王都から見て北西の方角の山の中だったはず。フラッとくる場所ではない。
ダンが言うとリルは目を輝かせて告げた。
「はい。ダンさんと番になりに来ました!」
空間を静寂が支配した。
ダンは胸中で叫んだ。
『十中八九外さないよねコイツらって!』
これまでダンは魔物、いや正確には知識と知恵を身に着けコミュニケーションを取れるようになった魔族という存在と何度か関わったことがある。そしてある結論に至った。
『こいつら強いオスの子種欲しがりすぎ!』と
元が魔物からの進化だからなのか分からないが、基本交渉は肉体言語が多く、その後交渉が無事に終わったとしても歓迎だの宴会だのでその手の交渉が始まるのだ。
ダンも人の子。おまけに軍に配属されたその年にその手の種族との調停(という名のこれまた肉体言語)任務に駆り出され、若かったダンはその欲望に何度か負けた。
だが人間慣れるもの。ダンも調停はこなして、その後の交渉は突っぱねる精神を得たのだ。同僚の兵士に「うわ隊長リア充っすね」との言葉に「お前のその態度と言動を、故郷に居る幼馴染に伝えようか」と返せるくらいには落ち着いた精神を会得したのだ。(その後同僚に「頼むから勘弁してください」との声に、その幼馴染に手紙で詳細を伝えることで勘弁してやるくらいには)
ダンは精神を今の自分に戻した。
「とりあえず落ち着こう。ね? 服を着なさい?」
半裸で飛びかかろうとしたリルにアイアンクローをかましながら、ダンは落ち着いた口調でリルを諭す。「ほぎゃああ」と掴んだ腕に意識を集中させたのを見て、ダンはポイとリルをベットへ放り投げる。顔面を手で押さえて痛がるリルにダンは告げた。
「いいかい? 番じゃなくて子種が欲しいんだろうけど、知識と知恵を身に着けた知性ある魔族として恥じない生き方をしなさい? 君たちの生は長いのだからゆっくりと」
「サキュバスに不快な顔をされました」
「なに?」とダンの言葉が止まる。思いっきり覚えのある種族名を出されて顔面の筋肉が痙攣を起こす。
「え、へええ、サキュバス、ね」
「サキュバスクィーンに娘見せられて勝ち誇られました」
『何やってんのアイツぅ!?』
サキュバスはダンが軍に入って初めて相手をした種族で、その後の魔族と交渉するその基本になった種族だった。というかダン個人で判断して魔族相手には調停をするとしただけで、本当の任務内容は討伐だったりする。その最初の相手で今後人に目を付けられないようにする方法や、亜人に忌避感のない街などに進出する手伝いをしたりなど結構手伝った。で何日も一緒に行動して、その、流されたのだ。
その後サキュバスを指揮する者としてサキュバスクィーンを名乗ってると聞いた。てか本人から聞いたから間違いない。子供もいることを確認している。というか会わされた。
「それをお母さまの前で話していて」
『フェンリルに直接!』
「それで私たち娘に『誰か嫁になりたいやつがいないか?』と言われ」
『さすが肉体言語派!』
「私が勝ち残りました」ふふんとリルが胸を張る。
「娘も肉体言語派!」
「にくたいげんご? どういう言葉ですか?」
「え? いやいや大したことないよ」うっかり声に出してしまったダン。そこまで衝撃がデカすぎたのだ。
「とりあえず一回フェンリルさんとこに帰るかい?」
「残念ですけど人化したときにレベルが下がってフェンリル形態になれなくなってしまいました。ですので巣にはとても帰れません」とリルが言う。
まさかねとダンは言葉に出しかけて気づいた。かつて会ったフェンリルの周りにいたどれかがリルだとして、どの個体もあの狼型魔物に負けるような力ではなかったはず。だとすると、
「え~っと、普通獣人並み?」
「普通の獣人が良く分かりません。お母さまにペイされた人間よりも弱い気がします」
なんてこった。放り出すのはダンの性格上良しとしない。自身で良く分かってる。そうなるとダンが面倒を見る必要があるということだ。
ダンは軽くなった水筒に水を補充しに井戸に向かう。そろそろ夕方が近づいてきたが、まだ中庭は手元が見える明るさだったので井戸水を汲んでは水筒に入れる作業を繰り返した。ちなみにこれを使って体を洗うこともできるが、基本的にダンは飲料としてしか使うことがないため、街についた時のような格好になることも少なくない。1にまず自分の命なのだ。
水筒に補充が終わったダンは部屋へと戻った。
そこには普通の町娘のような恰好をしたリル? が居た。
「本当にリルで良かったんですか?」
「問題ないです」
コクコクと頷くリルにダンは軽くため息をつくと、リルの後ろにいた受付の女性へポケットから出すふりをして小手の金貨を1枚渡した。女性はびっくりした顔つきになって言う。
「これは多すぎです」
「すみません。迷惑料も込みだと思ってください」
「……わかりました。私の新品の下着もつけましょう!」
「リルさんの部屋に持って行ってくださいね!?」
『というかあんな大声で言わなくてもいいと思うんですが』とダンは改めてリルにベッドを勧めて、自分は椅子に座った。そしてリルと名乗った女性を見る。
白い髪に白い肌。頭には狼の耳にスカートで見えないが、森の中で尻尾が揺れたのは見えた。なるほど確かに見た目は狼系獣人に見える。街の人もさして違和感を感じないだろう。だが、
「あの大きな白狼は元気ですか?」
「お母さまは大変元気です。この間も挑みかかってきた人間をペイしてました」
……おそらく尻尾で払いのけたのだろう。
ちょっと前にうっかり漏らしたフェンリルの名前。おそらくフェンリルの娘~とか何とか口走ったに違いない。それはともかく、
「本当に名前がリルなんですか?」
「はい、お母さまの娘のリルです」
「……そもそも個体の名前ってあったんですか?」
「いえ、こちらに来るときに付けてもらいました♪」
嬉しそうにいう娘さんには言えないが、基本戦闘狂のフェンリルさんは名付けに労力を割かなかったに違いない。本気で殺し合いをしたことのあるダンはそう推理した。とはいえあくまで推理だから、これを口にすることはない。
「それで? たまたまこちらに居たわけじゃないですよね?」
なにせフェンリルの住処は王都から見て北西の方角の山の中だったはず。フラッとくる場所ではない。
ダンが言うとリルは目を輝かせて告げた。
「はい。ダンさんと番になりに来ました!」
空間を静寂が支配した。
ダンは胸中で叫んだ。
『十中八九外さないよねコイツらって!』
これまでダンは魔物、いや正確には知識と知恵を身に着けコミュニケーションを取れるようになった魔族という存在と何度か関わったことがある。そしてある結論に至った。
『こいつら強いオスの子種欲しがりすぎ!』と
元が魔物からの進化だからなのか分からないが、基本交渉は肉体言語が多く、その後交渉が無事に終わったとしても歓迎だの宴会だのでその手の交渉が始まるのだ。
ダンも人の子。おまけに軍に配属されたその年にその手の種族との調停(という名のこれまた肉体言語)任務に駆り出され、若かったダンはその欲望に何度か負けた。
だが人間慣れるもの。ダンも調停はこなして、その後の交渉は突っぱねる精神を得たのだ。同僚の兵士に「うわ隊長リア充っすね」との言葉に「お前のその態度と言動を、故郷に居る幼馴染に伝えようか」と返せるくらいには落ち着いた精神を会得したのだ。(その後同僚に「頼むから勘弁してください」との声に、その幼馴染に手紙で詳細を伝えることで勘弁してやるくらいには)
ダンは精神を今の自分に戻した。
「とりあえず落ち着こう。ね? 服を着なさい?」
半裸で飛びかかろうとしたリルにアイアンクローをかましながら、ダンは落ち着いた口調でリルを諭す。「ほぎゃああ」と掴んだ腕に意識を集中させたのを見て、ダンはポイとリルをベットへ放り投げる。顔面を手で押さえて痛がるリルにダンは告げた。
「いいかい? 番じゃなくて子種が欲しいんだろうけど、知識と知恵を身に着けた知性ある魔族として恥じない生き方をしなさい? 君たちの生は長いのだからゆっくりと」
「サキュバスに不快な顔をされました」
「なに?」とダンの言葉が止まる。思いっきり覚えのある種族名を出されて顔面の筋肉が痙攣を起こす。
「え、へええ、サキュバス、ね」
「サキュバスクィーンに娘見せられて勝ち誇られました」
『何やってんのアイツぅ!?』
サキュバスはダンが軍に入って初めて相手をした種族で、その後の魔族と交渉するその基本になった種族だった。というかダン個人で判断して魔族相手には調停をするとしただけで、本当の任務内容は討伐だったりする。その最初の相手で今後人に目を付けられないようにする方法や、亜人に忌避感のない街などに進出する手伝いをしたりなど結構手伝った。で何日も一緒に行動して、その、流されたのだ。
その後サキュバスを指揮する者としてサキュバスクィーンを名乗ってると聞いた。てか本人から聞いたから間違いない。子供もいることを確認している。というか会わされた。
「それをお母さまの前で話していて」
『フェンリルに直接!』
「それで私たち娘に『誰か嫁になりたいやつがいないか?』と言われ」
『さすが肉体言語派!』
「私が勝ち残りました」ふふんとリルが胸を張る。
「娘も肉体言語派!」
「にくたいげんご? どういう言葉ですか?」
「え? いやいや大したことないよ」うっかり声に出してしまったダン。そこまで衝撃がデカすぎたのだ。
「とりあえず一回フェンリルさんとこに帰るかい?」
「残念ですけど人化したときにレベルが下がってフェンリル形態になれなくなってしまいました。ですので巣にはとても帰れません」とリルが言う。
まさかねとダンは言葉に出しかけて気づいた。かつて会ったフェンリルの周りにいたどれかがリルだとして、どの個体もあの狼型魔物に負けるような力ではなかったはず。だとすると、
「え~っと、普通獣人並み?」
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なんてこった。放り出すのはダンの性格上良しとしない。自身で良く分かってる。そうなるとダンが面倒を見る必要があるということだ。
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