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ガーディアンゴーレムと遭遇する
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駅とキョーコは言った。
ダンの知っている駅は駅馬車の駅。
「凄まじい数の馬車が乗り入れしたんですね、この大きさという事は軍並みですか」
しかしキョーコは首を横に振る。
「馬車じゃないんですよ。まあ人が乗り込む部分は馬車が想像しやすいかな? それが何両も繋がってる感じの『でんしゃ』って乗り物です」
ダンは首をひねってしまった。何両も繋がった馬車は何となく想像ついたが、それを引く馬が想像出来なかったのだ。そしてキョーコの言葉を頭で反芻して考え出した。
「なるほど、『でん』という生き物はスゴイんですね?」
「あ~、まあ、その認識で。生き物じゃなくて力の名前ですが」
ふむ、自分の知らないことはまだまだあるものだと感心しつつ、ダンはキョーコに案内されながらダンジョンを進んで行く。
たまに最初に出現した人型ゴーレムと遭遇するが、ダンは一刀のもとに全てを切り伏せた。
「たまにはこっちに回してください、ダンさん!」
「おおっと? すみません。僕だけが相手をしてはいけませんね」
声を掛けられてダンは気づいたように答えた。
ダンは考え事をしながら、ゴーレムを切り倒していたのだ。
これには他のメンバーも呆れた。
『無意識でも、これか』
そんなやり取りをしつつ、いくつかの壁を通り抜けて、ダン達は目的の場所へとたどり着いた。
のだろう。ダンはキョーコへ確認をする。
「ここですかキョーコさん?」
「そうだと思います。ただ、ここも名前が――」
名前が変わっている。キョーコはそう言った。ダンは目の前の文字を読めない。
「なんて書いてあるんですか?」
「『サイキョー守護者の間』……なんか頭が痛くなってきた」
その『サイキョー守護者の間』と書かれた壁は透明な壁だった。
「これガラスですか?」
軽く指先で叩いてみる。コツコツと硬質な音がした。
「あくりるかも? というか奥が暗くてよく見えないなぁ。コレ、さーびすかうんたーとかも無さそうだし」
キョーコがその透明な壁に顔を当てて中を覗き見た。その時ダンの視界の端に光が見えた。とっさに剣をキョーコの眼前へと突き出す。当然、透明な壁に突き刺さった。
「ひえ⁉ ちょ、なに?」
とキョーコの困惑する声と同時に、ガガガガガ! と剣へ連続した衝撃が響いた。
ズゥン、ズゥン、ズゥン……
振動と響く音。ダンの耳にはそれが大型の魔物の足音に聞こえた。
「来ますよ」
ダンの声と同時に奥の闇から、その巨体が姿を見せる。
その巨体が透明な壁を割って飛び出してきた。
人よりもなお背の高いゴーレム。先程の4本脚ゴーレムよりも頭一つ以上大きな体。その手足は太く頑丈そうに作られていて、右手に巨大な戦斧を持ち、左手には筒を束ねた様なおそらく武器を持っていた。そしてその胴体は特に大きく作られていた。そして人の頭に当たるものはない。
ゴーレムは人に似せて作られるものだが、すべてがその常識に当てはまるわけではない。
「こういった場合のセオリーは2つ。中心を狙うか、外から崩していくか。皆さん、臨機応変にいきましょう」
全員素早くゴーレムから散開して包囲陣を作る。
ファーニは火の加速で、そのゴーレムの足を狙った。マロンも自分の得物として戦槌取り出すと、ファーニに遅れながらも続く。
ファーニの剣が当たるとガキッ! と硬い音がした。ファーニはそのまま駆け抜けて距離を取る。マロンはファーニの攻撃した箇所を戦槌で打ち据えた。ゴーン! と鐘を叩いたような音が辺りに広がる。
「うひゃあ」マロンはゴーレムが構えた戦斧の攻撃範囲から逃げるように距離を取った。しかしその手には戦槌が握られていなかった。叩いた衝撃が手に跳ね返って手が痺れたのだ。
「これならどうでしょう?」
戦斧が振り下ろされて無防備になった背中に、棒が何度も回されて凄まじい速さとなったウェンディの攻撃が打ち下ろされた。たわむ棒。その先端の金属がゴーレムの背中をわずかに凹ませた。
打ち据えた余韻を確認せず、ウェンディも距離を開いた。ウェンディが飛び退った場所に横薙ぎの戦斧の刃が通り抜ける。
ポーラがゴーレムの右腕の関節目掛けて槍を突きだした。バスッ! と軽い音をたてて槍が突き刺さった。
「やった!」
「ポーラ! 槍を手放して後方退避!」
喜んでいたポーラにダンの鋭い声が飛ぶ。訓練の賜物か、ポーラはすぐさま後ろに飛んで逃げた。ゴウッと風が鳴る。ゴーレムは戦斧の勢いを利用して、筒を束ねた物でポーラを打ち据えようとしていた。その筒の束が通り抜けるかと思いきや急激に止まった。その先には『オーラショット』を放とうと構えるクローディア。
ダンは一気にゴーレムに詰め寄ると、手に持った剣で筒の束をしたから跳ね上げる。
ガガガと天井に何かが当たって天井が破壊された。
「ダンさん!」
「そのまま撃て!」
クローディアにそう指示したダンは、体を地面に這いつくばらせるほど低く構えて、その頭上を『オーラショット』の矢が通り抜けた。『オーラショット』の爆発と同時にダンが素早く後退する。
「追撃! 『ファイアーボール』!」
キョーコも距離を取ってゴーレムへと魔法を放つ。続く爆発。
「少しは効いたでしょ?」
「いや、どうでしょね」
爆発が収まれば多少凹んだかなという感じのゴーレム。
「ああ、ふらぐ踏んだ!」
「単純に火力不足でしたね」
全員が距離を取ったと判断したゴーレムは、先程の筒を束ねたモノをこちらに向けてきた。狙う先は――キョーコ。「こっち狙うな~!」とキョーコが逃げるのを追うゴーレム。
その懐に飛び込む白い影。リルが手のガントレットを構えた。
「『ハードストライク』!」
打ち込まれた拳から衝撃がゴーレムを駆け巡る。装甲に凹みは出来なかったが、ゴーレムは動きを止めた。打撃系アーツの大半は防御無視の貫通攻撃だ。
「とはいえ、まだ倒し切れてはいないでしょうね」
見ればゴーレムの腕がゆっくりと動いている。リルは密着した距離から大きく間合いを開いて構えた。
「あの、ダンさん?」
「なんでしょう?」
「なんで本気じゃないんですか?」
リルの問いかけに、ダン以外のメンバーは「やっぱり」という顔をする。
「いや~、皆さんに経験積んでもらう、いい機会かと思って」
シレっと言うダン。
先ほどからダンはゴーレムと全員が見える位置で控えて立っていた。クローディアを守りはしたが、その剣で打ち上げた筒を束ねた型の武器には、目に見えて傷もついていなかった。
そうやり取りをしていると、ゴーレムの肩から何か飛び出した。短い棒。飛び出したこと以外、特に変わった様子は――
「ダンさん、周りに!」
気づくと周りの壁や通路から雑魚ゴーレムが湧き出すように近づいてくる。
「クローディア! 私と一緒にあの短い棒を撃って!」
キョーコがゴーレムを指さして言った。
『ファイアーボール!』
『オーラショット!』
火の玉と輝く矢がゴーレムの肩へと飛ぶ。着弾すると2つが合わさって大きな爆発となった。
「たぶんあんてなを壊したから、これ以上の増援は来ないはず!」
キョーコの言葉にダンは頷きを一つ返す。そして言った。
「分かりました。少しだけ僕が抜けても大丈夫ですか?」
ぞろぞろと近づくゴーレム。それに背を向けて、ダンはメンバーに確認をした。皆その言葉にはっきりと頷き返す。
「それじゃあ、ちょっと本気で相手をしましょうか」
ダンは剣を構えると、大型ゴーレムへと駆け出した。
「さて、それじゃあ皆さん、1人1体以上ですが頑張りましょう」
棒を握りしめてウェンディが言う。
「はっ、元後衛が言うセリフか? 心配しなくても、あたしが切り捨てるよ」
「ウチの戦槌、拾っておいてくれるかなぁダンさん」
ファーニが剣、マロンはメイスを構えてゴーレム達へと一歩足を踏み出す。
「私たちまで通さないでね?」
「抜けてきたら貰う」
「私が守るから安心してよ」
キョーコが炎を浮かべて、クローディアが隣で弓を構える。ポーラはその二人の前で剣と盾を構えた。
「お先に!」
リルがどのメンバーよりも早くゴーレム達へと駆け込んだ。ウェンディ、ファーニ、マロンも遅れじと走り出す。
ゴーレム達も手にした銃剣を構えて迎え撃つ体制をとった。
「さて? あまり時間を掛けることもしたくないので、最初から全力で掛かってきてください。僕も全力を出しますから」
駆け込んだ勢いを乗せて、ダンが剣を大型ゴーレムの胴体へと振り下ろす。
ゴーレムは手に持つ戦斧の柄を使って、ダンの剣を受け止めた。
「なかなか力強い。なら、『戦乙女の加護』解放! ここから力比べといきましょうか!」
闘気を全身に巡らせると、ダンはそのままゴーレムと鍔迫り合いを始めた。ダンに押し込まれたゴーレムは胴体から甲高い音をたてると、その腕に込められた力が増した。両者、均衡が取れた。
「ほほう、やりますね」
『脅威を確認。全武装使用』
初めてゴーレムから声が聞こえてきた。『そういえば前に戦った4つ足も話したな』と思い出しつつ、ダンはゴーレムの身体を見た。
胴体や肩、腕に突起が現れる。それは短い筒。そのすべてがダンへと向いた。
『全力射撃開始』
光を放つ筒。ダンは剣の背のグリップから右手で剣の柄を持つと、闘気を制御して言い放った。
『ダン流刀術・変位抜刀・八重垣』
鍔迫り合いをしている剣。その剣の柄が滑るように動き、ダンの右手の動きに合わせて、ダン周囲に黒い囲いが生まれた。
鍔迫り合いをする剣の周りで飛び交う黒い囲い。その囲いの外で連続した金属音が鳴り響く。光を放ち続ける筒と続く金属音。数秒の間の出来事が長く感じられる。
筒の光が消え金属音が止まった後、ダンは視認するのが困難なほどの速度で動かしていた右手を、元の剣の柄の位置に戻した。
ダンの周囲には金属の粒が大量に撒かれたように散らばっていた。
『脅威! 脅威! 脅威!』
「喚いてもしょうがないと思いますが? とりあえず攻撃手段は取らせてもらいますよ!」
両手でグリップを持ち直したダンはゴーレムの戦斧を力いっぱい弾き飛ばした。
そして剣を逆手に持って、右手を剣の柄に添える。
『ダン流刀術・微塵切り』
ダンの右手から黒い線が伸びて、ゴーレムから飛び出た突起を一つ残らず切り飛ばした。
ゴーレムの胴体に備え付けられた視界は、その黒い線が黒い刀身だと分析した。しかしその速度はあまりにも早すぎる。ゴーレムは自身の最終命令に従う決断をした。
ダンが大型ゴーレムの手足も切断してから、残りのメンバーの戦いを確認していた。
雑魚とはいえ、集団戦で自分達よりも数の多い相手に、リル達はしっかりと戦っていた。
どうもあのゴーレムは集団行動の方が基本であるようだ。多対1の戦術が本来の形なのだろう。それでもリル達は危なげなく戦っている。
ダンは自分が入る必要はないかとボケっとただ見ていた。
その時、ダンが背を向けた大型ゴーレムの胴体から、ブシュ! とナニカが飛び出した。
ダンの背中目掛けて、そのナニカは腕を振るい――
「いや、あんな音がしたら気づきますから」
ダンの裏拳を食らって横飛びに吹っ飛んでいった。
「って、え? 人間?」
ダンがぶっ飛ばしたのは、白目を向いた、少女と呼んでも差し支えないナニカだった。
ダンの知っている駅は駅馬車の駅。
「凄まじい数の馬車が乗り入れしたんですね、この大きさという事は軍並みですか」
しかしキョーコは首を横に振る。
「馬車じゃないんですよ。まあ人が乗り込む部分は馬車が想像しやすいかな? それが何両も繋がってる感じの『でんしゃ』って乗り物です」
ダンは首をひねってしまった。何両も繋がった馬車は何となく想像ついたが、それを引く馬が想像出来なかったのだ。そしてキョーコの言葉を頭で反芻して考え出した。
「なるほど、『でん』という生き物はスゴイんですね?」
「あ~、まあ、その認識で。生き物じゃなくて力の名前ですが」
ふむ、自分の知らないことはまだまだあるものだと感心しつつ、ダンはキョーコに案内されながらダンジョンを進んで行く。
たまに最初に出現した人型ゴーレムと遭遇するが、ダンは一刀のもとに全てを切り伏せた。
「たまにはこっちに回してください、ダンさん!」
「おおっと? すみません。僕だけが相手をしてはいけませんね」
声を掛けられてダンは気づいたように答えた。
ダンは考え事をしながら、ゴーレムを切り倒していたのだ。
これには他のメンバーも呆れた。
『無意識でも、これか』
そんなやり取りをしつつ、いくつかの壁を通り抜けて、ダン達は目的の場所へとたどり着いた。
のだろう。ダンはキョーコへ確認をする。
「ここですかキョーコさん?」
「そうだと思います。ただ、ここも名前が――」
名前が変わっている。キョーコはそう言った。ダンは目の前の文字を読めない。
「なんて書いてあるんですか?」
「『サイキョー守護者の間』……なんか頭が痛くなってきた」
その『サイキョー守護者の間』と書かれた壁は透明な壁だった。
「これガラスですか?」
軽く指先で叩いてみる。コツコツと硬質な音がした。
「あくりるかも? というか奥が暗くてよく見えないなぁ。コレ、さーびすかうんたーとかも無さそうだし」
キョーコがその透明な壁に顔を当てて中を覗き見た。その時ダンの視界の端に光が見えた。とっさに剣をキョーコの眼前へと突き出す。当然、透明な壁に突き刺さった。
「ひえ⁉ ちょ、なに?」
とキョーコの困惑する声と同時に、ガガガガガ! と剣へ連続した衝撃が響いた。
ズゥン、ズゥン、ズゥン……
振動と響く音。ダンの耳にはそれが大型の魔物の足音に聞こえた。
「来ますよ」
ダンの声と同時に奥の闇から、その巨体が姿を見せる。
その巨体が透明な壁を割って飛び出してきた。
人よりもなお背の高いゴーレム。先程の4本脚ゴーレムよりも頭一つ以上大きな体。その手足は太く頑丈そうに作られていて、右手に巨大な戦斧を持ち、左手には筒を束ねた様なおそらく武器を持っていた。そしてその胴体は特に大きく作られていた。そして人の頭に当たるものはない。
ゴーレムは人に似せて作られるものだが、すべてがその常識に当てはまるわけではない。
「こういった場合のセオリーは2つ。中心を狙うか、外から崩していくか。皆さん、臨機応変にいきましょう」
全員素早くゴーレムから散開して包囲陣を作る。
ファーニは火の加速で、そのゴーレムの足を狙った。マロンも自分の得物として戦槌取り出すと、ファーニに遅れながらも続く。
ファーニの剣が当たるとガキッ! と硬い音がした。ファーニはそのまま駆け抜けて距離を取る。マロンはファーニの攻撃した箇所を戦槌で打ち据えた。ゴーン! と鐘を叩いたような音が辺りに広がる。
「うひゃあ」マロンはゴーレムが構えた戦斧の攻撃範囲から逃げるように距離を取った。しかしその手には戦槌が握られていなかった。叩いた衝撃が手に跳ね返って手が痺れたのだ。
「これならどうでしょう?」
戦斧が振り下ろされて無防備になった背中に、棒が何度も回されて凄まじい速さとなったウェンディの攻撃が打ち下ろされた。たわむ棒。その先端の金属がゴーレムの背中をわずかに凹ませた。
打ち据えた余韻を確認せず、ウェンディも距離を開いた。ウェンディが飛び退った場所に横薙ぎの戦斧の刃が通り抜ける。
ポーラがゴーレムの右腕の関節目掛けて槍を突きだした。バスッ! と軽い音をたてて槍が突き刺さった。
「やった!」
「ポーラ! 槍を手放して後方退避!」
喜んでいたポーラにダンの鋭い声が飛ぶ。訓練の賜物か、ポーラはすぐさま後ろに飛んで逃げた。ゴウッと風が鳴る。ゴーレムは戦斧の勢いを利用して、筒を束ねた物でポーラを打ち据えようとしていた。その筒の束が通り抜けるかと思いきや急激に止まった。その先には『オーラショット』を放とうと構えるクローディア。
ダンは一気にゴーレムに詰め寄ると、手に持った剣で筒の束をしたから跳ね上げる。
ガガガと天井に何かが当たって天井が破壊された。
「ダンさん!」
「そのまま撃て!」
クローディアにそう指示したダンは、体を地面に這いつくばらせるほど低く構えて、その頭上を『オーラショット』の矢が通り抜けた。『オーラショット』の爆発と同時にダンが素早く後退する。
「追撃! 『ファイアーボール』!」
キョーコも距離を取ってゴーレムへと魔法を放つ。続く爆発。
「少しは効いたでしょ?」
「いや、どうでしょね」
爆発が収まれば多少凹んだかなという感じのゴーレム。
「ああ、ふらぐ踏んだ!」
「単純に火力不足でしたね」
全員が距離を取ったと判断したゴーレムは、先程の筒を束ねたモノをこちらに向けてきた。狙う先は――キョーコ。「こっち狙うな~!」とキョーコが逃げるのを追うゴーレム。
その懐に飛び込む白い影。リルが手のガントレットを構えた。
「『ハードストライク』!」
打ち込まれた拳から衝撃がゴーレムを駆け巡る。装甲に凹みは出来なかったが、ゴーレムは動きを止めた。打撃系アーツの大半は防御無視の貫通攻撃だ。
「とはいえ、まだ倒し切れてはいないでしょうね」
見ればゴーレムの腕がゆっくりと動いている。リルは密着した距離から大きく間合いを開いて構えた。
「あの、ダンさん?」
「なんでしょう?」
「なんで本気じゃないんですか?」
リルの問いかけに、ダン以外のメンバーは「やっぱり」という顔をする。
「いや~、皆さんに経験積んでもらう、いい機会かと思って」
シレっと言うダン。
先ほどからダンはゴーレムと全員が見える位置で控えて立っていた。クローディアを守りはしたが、その剣で打ち上げた筒を束ねた型の武器には、目に見えて傷もついていなかった。
そうやり取りをしていると、ゴーレムの肩から何か飛び出した。短い棒。飛び出したこと以外、特に変わった様子は――
「ダンさん、周りに!」
気づくと周りの壁や通路から雑魚ゴーレムが湧き出すように近づいてくる。
「クローディア! 私と一緒にあの短い棒を撃って!」
キョーコがゴーレムを指さして言った。
『ファイアーボール!』
『オーラショット!』
火の玉と輝く矢がゴーレムの肩へと飛ぶ。着弾すると2つが合わさって大きな爆発となった。
「たぶんあんてなを壊したから、これ以上の増援は来ないはず!」
キョーコの言葉にダンは頷きを一つ返す。そして言った。
「分かりました。少しだけ僕が抜けても大丈夫ですか?」
ぞろぞろと近づくゴーレム。それに背を向けて、ダンはメンバーに確認をした。皆その言葉にはっきりと頷き返す。
「それじゃあ、ちょっと本気で相手をしましょうか」
ダンは剣を構えると、大型ゴーレムへと駆け出した。
「さて、それじゃあ皆さん、1人1体以上ですが頑張りましょう」
棒を握りしめてウェンディが言う。
「はっ、元後衛が言うセリフか? 心配しなくても、あたしが切り捨てるよ」
「ウチの戦槌、拾っておいてくれるかなぁダンさん」
ファーニが剣、マロンはメイスを構えてゴーレム達へと一歩足を踏み出す。
「私たちまで通さないでね?」
「抜けてきたら貰う」
「私が守るから安心してよ」
キョーコが炎を浮かべて、クローディアが隣で弓を構える。ポーラはその二人の前で剣と盾を構えた。
「お先に!」
リルがどのメンバーよりも早くゴーレム達へと駆け込んだ。ウェンディ、ファーニ、マロンも遅れじと走り出す。
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駆け込んだ勢いを乗せて、ダンが剣を大型ゴーレムの胴体へと振り下ろす。
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光を放つ筒。ダンは剣の背のグリップから右手で剣の柄を持つと、闘気を制御して言い放った。
『ダン流刀術・変位抜刀・八重垣』
鍔迫り合いをしている剣。その剣の柄が滑るように動き、ダンの右手の動きに合わせて、ダン周囲に黒い囲いが生まれた。
鍔迫り合いをする剣の周りで飛び交う黒い囲い。その囲いの外で連続した金属音が鳴り響く。光を放ち続ける筒と続く金属音。数秒の間の出来事が長く感じられる。
筒の光が消え金属音が止まった後、ダンは視認するのが困難なほどの速度で動かしていた右手を、元の剣の柄の位置に戻した。
ダンの周囲には金属の粒が大量に撒かれたように散らばっていた。
『脅威! 脅威! 脅威!』
「喚いてもしょうがないと思いますが? とりあえず攻撃手段は取らせてもらいますよ!」
両手でグリップを持ち直したダンはゴーレムの戦斧を力いっぱい弾き飛ばした。
そして剣を逆手に持って、右手を剣の柄に添える。
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ゴーレムの胴体に備え付けられた視界は、その黒い線が黒い刀身だと分析した。しかしその速度はあまりにも早すぎる。ゴーレムは自身の最終命令に従う決断をした。
ダンが大型ゴーレムの手足も切断してから、残りのメンバーの戦いを確認していた。
雑魚とはいえ、集団戦で自分達よりも数の多い相手に、リル達はしっかりと戦っていた。
どうもあのゴーレムは集団行動の方が基本であるようだ。多対1の戦術が本来の形なのだろう。それでもリル達は危なげなく戦っている。
ダンは自分が入る必要はないかとボケっとただ見ていた。
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ダンの背中目掛けて、そのナニカは腕を振るい――
「いや、あんな音がしたら気づきますから」
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