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獲物を取られて怒る?
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パクリと魔物ごと上半身を食べられたダン。
その光景は会場からでも見えていた。
突如現れた巨大な魔物が人を食べた光景に会場でパニックが起きる。
「いやぁ! ダンさ~ん!」
「嘘だろ、ダンさんが……」
「ッ! 宿に弓を取りに行ってくる!」
「待った! ウチの武器袋から出した方が早い!」
「ついでにゴリアテ出してくれる? ちょっとぶっ殺してくるわ」
「お待ちください皆さん」
メンバーもその光景にそれぞれの反応を示す中、イリアがやや大きな声で注目を集めた。
「どうしたの? あなたもゴリアテに――」
キョーコの発言を遮るように腕を伸ばす。伸ばした腕の先には大型の魔物の姿。
「ダンが笑っている声が聞こえます」
「くっくっく」
嚥下しようと動いているのは魔物の舌か。
周りは暗闇に閉ざされた中で、ダンは両手に力を籠め両足をしっかりと踏ん張って獲物と自分の身を守っていた。
『突然なんじゃ!? この暗さはいったい?』
タマモはどうやら閉まっていく口を認識出来なかったようだ。
しかし、どうにも沸々と湧き上がってくる感情が押さえられない。
『ぬお? お、おいダン? お主、もしかして怒っておるのか?』
「え? いいえ? 怒ってるなんてそんな。はっはっは……」
左手だけ獲物から手を放すと、しっかりと握りしめて全身に力を込めた。
「そんな簡単な言葉で表現できませんよ?」
そして思いっきり拳を前面に目掛けて撃ち放った。
『ぎゃあああああ!?』
ドンッ! と鈍い音と共に魔物の口が開け放たれた。そして中からダンとタマモが出てくる。先ほどダンが釣り上げた獲物もダンが持っていた。
「は~はっはっ! 人の獲物を横取りしようとは、とんでもない不届き者だぁ!」
「「「ダンさん!」」」
そして桟橋の方へと歩き始める。
『うぬ~、痛いんだなぁ』
そんな言葉が大型の魔物から放たれた。
「……これを持っていてください」
ダンは手にしていた魚型魔物を振りかぶって桟橋へと投げた。
一瞬迷ったメンバーは頷き一つ、全員で落ちてくる位置から回避して、桟橋の上に投げられた魚型魔物の体が撥ねてから止まった。
「なぜ誰も受け取ってくれないんですか!?」
「いや、コレ相当大きいですよダンさん」
人の背丈以上の全長。大人2人分くらいだろうか? 全体的に鉄色に似た光る胴体。その腹回りもかなり太い。見た目から想像した通り、桟橋に落ちた時の音は凄まじく重そうな音であった。
下手に受け取れば潰されそうなくらい。
「んん!」と咳払いをして自分を飲み込んでいた魔物を改めて見る。
「さて、いきなり現れて人の獲物を横から掻っ攫おうとは……。死ぬ覚悟は出来てるんですか?」
『待て待てダン! 結論が早すぎるじゃろ。それにこやつ魔物では無さそうだぞ?』
「はい。それは殴った時の感触で分かりました。こいつはタマモと同じ感触でしたからね」
にぎにぎと左手の感触を思い出しながらダン。
『いや、物騒な例えは止めてくれんかのぉ……。こやつは――』
「『精霊族ですね(じゃ)」』
水面から出ているのは首の長いドラゴンを思わせる外観をした、水色の体を持った精霊族だった。
『う~、痛かったんだぞぉ? 僕は食べてただけなのに』
大きな目でダンを恨めしそうに見て言った。
「……自分で取った獲物ならば許しましたが、人の獲物を横から食べようと言うのは許せるものではありませんね?」
『ちょ、お前も今のダンを煽るような事を言うではない! ダンもまずは落ち着け! 気が垂れ流しになって、周りが引いておるぞ!』
ピキリと額に力が入ったダン。いまだに闘気の放出を絞っていないダンの『戦乙女の加護』は解放状態。ダンから垂れ流し状態の闘気に、頭上のタマモはそれに気づいてペシペシとダンの頭を叩いてきた。
目の前の精霊族を見据えていたダンは、少ししてから溜め息と共に闘気を抑え込む。体外に放出されていた闘気が収まると『戦乙女の加護』が復活したのか、ダンの闘気が体から放出されるのが一切無くなった。
『あ~、美味しそうなの無くしちゃうのズルイ~!』
「は?」
『うぬ?』
ガブリとその大きな口で食われるダンとタマモ。
「……タマモさん?」
『うむ。どうしたダン?』
「コイツさっきの魚じゃなくて、僕達を食べようとしてませんかね?」
『どちらかと言えばダンが目当て――そうじゃな! ワシらを食おうとしておるな』
暗いから目には見えなかったが、一瞬ダンから怒気を感じ取ったタマモが慌てて訂正する。
「ふふふ……。食うか食われるかの勝負だったら容赦しませんよ!! 『戦乙女の加護』解放!」
またしてもドンッ! と。いや今回は更に大きく響いたドコンッ! という音と共に、ドラゴンのような精霊族の口と頭が跳ね上がった。
「おらぁ! 人を食い物と見やがる相手に情けなんか掛けませんよぉ!?」
「「「おおぉ~!?」」」
跳ね上がった頭はそのまま胴体を支点にして川に落ちていった。
その際に胴体も若干視認出来た。いや、胴体というか――
「蛇竜型、ですかね」
足などが確認できずに、段々と先細りになっていく胴体を見てダンが言う。
『とすると水蛇というヤツかの? 奴の元となった生物は』
ダンとタマモが観察していると、ぶん殴られた精霊族は尻尾の先まできれいに水中に沈んでしばらくして、
『ぶっはー! 一瞬意識が飛んでた~』
先程と同じようにダンへと向き直ってきた。
いや、若干ダンから距離を離してはいたが。
『なんで食べちゃダメなの!? そんなにあるのに?』
「やっぱりコイツ」
『ああ、どうやらそのようじゃな』
自然に溢れる生命力よりもダンの生命力たる闘気を目当てにしているようだった。
「というか精霊族って生き物の生命力を食えるんですね?」
ダンは頭上のタマモに視線を送りながら聞いてみた。頭に居るので視線には気づいていないはずだが、タマモはやや慌てながらも抗議する。
『いやいや、それは非常手段みたいなもんじゃぞ!? ワシかて、あの森の中に居った際には何一つ口にしたことはないわい! 最近は食事を少し貰ったこともあるが、それでさえ食い物の中の生命力を食べるだけで、ソレそのものは直接食ったことはないわ!』
「ふ~ん? つまりアレは微妙に精霊族では無いってことですか?」
『いや~? ワシも2度目に食われた際には、アヤツの体を間近で見たから精霊族で間違いない――はずなんじゃがのぉ?……まだ子供なのかもしれん』
「アレで、ですか!?」
水面に出ている部分でさえダンの身長をはるかに超える大きさの相手に、「子供なのかも?」と言われてダンは思わず相手を凝視してしまった。
確かに顔つきなどは(ドラゴンのような顔なのでソレで合っているかは別にして)どこか子供というか子犬というような目をしてはいるが、
『ね~、なんで~?』
「……確かに子供っぽいですね」
『じゃろう?……ちょ、なぜワシを掴んで撫でまわす!?』
おそらく頭上でドヤ顔をしているから。とは言わずにタマモを撫で繰り回しながら、ダンは目の前の精霊族に話しかけた。
「いいですか精霊族の――そういえば名前はありますか? 僕はダンです」
話しかけて、そういえばまともなコンタクトはコレが初めてだったので名乗っていないことに気づいた。さすがにこれが魔物だったりした場合は問答すら存在はしないが、相手が会話できるうちは一応試さなくてはいけない。
ダンの兵士人生での経験がそう判断した。
というか、どうにも相手の態度が確かに子供っぽすぎて、怒りが継続しない。
『名前? 名前ってな~に?』
「……タマモ、ちなみに君は自分の名前をどうやって確認しましたか?」
『こねくり回すのをやめれ……。ふぅ、お主! 自分のステータスを確認してみぃ。精霊族ならばそこに割り当てられた名前があるはずじゃ!』
『すてーたす?』と水色の精霊族が悩み始める。
「あの、会話途中にすみません。割り当てって誰にですか?」
目の前で体も捻り始めた精霊族を無視して、ダンは頭上のタマモに話を聞いた。
『ん? そういえば誰なんじゃろうな? 本能で知っておった気もするし……あれ?』
ふとダンはタマモとの契約の巻物を取り出して中身を見てみた。
そこには契約条件などの項目がいくつか書かれており、その一番下に『タマモ』と記載されている。
「もしかして、タマモの方が特殊だったりして?」
『? それはどういう――』
『あ! 僕、ミズチって名前だ!』
ダンが推論を言おうとしたときに、ずっと唸っていた精霊族がぱあっと気づいたような顔をして自分の名前を言った。
「ミズチですか。それではミズチ、改めて」
『まてダン! ワシの質問に先に答えよぼぼ』
ダンの肩まで降りてダンの耳元で声を上げるタマモの両頬を片手でつまんで、ダンはミズチへの説明を始めた。
精霊族の生態。精霊族のそもそもの食事スタイル。他人の獲物への手出しをするとどうなるか。
『さすがに即殺はダンくらいしかおらんじゃろ?』
そして他人の生命力を勝手に吸う事の危険性。
『そうだったんだ……。いつも食べてた相手は何も言わなかったから』
シュンとしたように首を水面スレスレまで下げて、ミズチは落ち込んでいた。
『あ~、さすがに魚は、というか魔物は会話できんからのぉ』
「しかし精霊族が発生するような場所なのに、ミズチは他から生命力を得ようとしてたんですね。いったいどういうことなんでしょう?」
「あの~?」
3人(1人と2体?)が顔を突き合わせているところに声が掛かる。
揃って振り返ると桟橋に多くの人が集まっていて、ダン達に声を掛けたのは大会職員だった。
大会職員……?
「あ」
「そろそろ釣り大会を閉めますので、川から上がってきていただいていいですか?」
その光景は会場からでも見えていた。
突如現れた巨大な魔物が人を食べた光景に会場でパニックが起きる。
「いやぁ! ダンさ~ん!」
「嘘だろ、ダンさんが……」
「ッ! 宿に弓を取りに行ってくる!」
「待った! ウチの武器袋から出した方が早い!」
「ついでにゴリアテ出してくれる? ちょっとぶっ殺してくるわ」
「お待ちください皆さん」
メンバーもその光景にそれぞれの反応を示す中、イリアがやや大きな声で注目を集めた。
「どうしたの? あなたもゴリアテに――」
キョーコの発言を遮るように腕を伸ばす。伸ばした腕の先には大型の魔物の姿。
「ダンが笑っている声が聞こえます」
「くっくっく」
嚥下しようと動いているのは魔物の舌か。
周りは暗闇に閉ざされた中で、ダンは両手に力を籠め両足をしっかりと踏ん張って獲物と自分の身を守っていた。
『突然なんじゃ!? この暗さはいったい?』
タマモはどうやら閉まっていく口を認識出来なかったようだ。
しかし、どうにも沸々と湧き上がってくる感情が押さえられない。
『ぬお? お、おいダン? お主、もしかして怒っておるのか?』
「え? いいえ? 怒ってるなんてそんな。はっはっは……」
左手だけ獲物から手を放すと、しっかりと握りしめて全身に力を込めた。
「そんな簡単な言葉で表現できませんよ?」
そして思いっきり拳を前面に目掛けて撃ち放った。
『ぎゃあああああ!?』
ドンッ! と鈍い音と共に魔物の口が開け放たれた。そして中からダンとタマモが出てくる。先ほどダンが釣り上げた獲物もダンが持っていた。
「は~はっはっ! 人の獲物を横取りしようとは、とんでもない不届き者だぁ!」
「「「ダンさん!」」」
そして桟橋の方へと歩き始める。
『うぬ~、痛いんだなぁ』
そんな言葉が大型の魔物から放たれた。
「……これを持っていてください」
ダンは手にしていた魚型魔物を振りかぶって桟橋へと投げた。
一瞬迷ったメンバーは頷き一つ、全員で落ちてくる位置から回避して、桟橋の上に投げられた魚型魔物の体が撥ねてから止まった。
「なぜ誰も受け取ってくれないんですか!?」
「いや、コレ相当大きいですよダンさん」
人の背丈以上の全長。大人2人分くらいだろうか? 全体的に鉄色に似た光る胴体。その腹回りもかなり太い。見た目から想像した通り、桟橋に落ちた時の音は凄まじく重そうな音であった。
下手に受け取れば潰されそうなくらい。
「んん!」と咳払いをして自分を飲み込んでいた魔物を改めて見る。
「さて、いきなり現れて人の獲物を横から掻っ攫おうとは……。死ぬ覚悟は出来てるんですか?」
『待て待てダン! 結論が早すぎるじゃろ。それにこやつ魔物では無さそうだぞ?』
「はい。それは殴った時の感触で分かりました。こいつはタマモと同じ感触でしたからね」
にぎにぎと左手の感触を思い出しながらダン。
『いや、物騒な例えは止めてくれんかのぉ……。こやつは――』
「『精霊族ですね(じゃ)」』
水面から出ているのは首の長いドラゴンを思わせる外観をした、水色の体を持った精霊族だった。
『う~、痛かったんだぞぉ? 僕は食べてただけなのに』
大きな目でダンを恨めしそうに見て言った。
「……自分で取った獲物ならば許しましたが、人の獲物を横から食べようと言うのは許せるものではありませんね?」
『ちょ、お前も今のダンを煽るような事を言うではない! ダンもまずは落ち着け! 気が垂れ流しになって、周りが引いておるぞ!』
ピキリと額に力が入ったダン。いまだに闘気の放出を絞っていないダンの『戦乙女の加護』は解放状態。ダンから垂れ流し状態の闘気に、頭上のタマモはそれに気づいてペシペシとダンの頭を叩いてきた。
目の前の精霊族を見据えていたダンは、少ししてから溜め息と共に闘気を抑え込む。体外に放出されていた闘気が収まると『戦乙女の加護』が復活したのか、ダンの闘気が体から放出されるのが一切無くなった。
『あ~、美味しそうなの無くしちゃうのズルイ~!』
「は?」
『うぬ?』
ガブリとその大きな口で食われるダンとタマモ。
「……タマモさん?」
『うむ。どうしたダン?』
「コイツさっきの魚じゃなくて、僕達を食べようとしてませんかね?」
『どちらかと言えばダンが目当て――そうじゃな! ワシらを食おうとしておるな』
暗いから目には見えなかったが、一瞬ダンから怒気を感じ取ったタマモが慌てて訂正する。
「ふふふ……。食うか食われるかの勝負だったら容赦しませんよ!! 『戦乙女の加護』解放!」
またしてもドンッ! と。いや今回は更に大きく響いたドコンッ! という音と共に、ドラゴンのような精霊族の口と頭が跳ね上がった。
「おらぁ! 人を食い物と見やがる相手に情けなんか掛けませんよぉ!?」
「「「おおぉ~!?」」」
跳ね上がった頭はそのまま胴体を支点にして川に落ちていった。
その際に胴体も若干視認出来た。いや、胴体というか――
「蛇竜型、ですかね」
足などが確認できずに、段々と先細りになっていく胴体を見てダンが言う。
『とすると水蛇というヤツかの? 奴の元となった生物は』
ダンとタマモが観察していると、ぶん殴られた精霊族は尻尾の先まできれいに水中に沈んでしばらくして、
『ぶっはー! 一瞬意識が飛んでた~』
先程と同じようにダンへと向き直ってきた。
いや、若干ダンから距離を離してはいたが。
『なんで食べちゃダメなの!? そんなにあるのに?』
「やっぱりコイツ」
『ああ、どうやらそのようじゃな』
自然に溢れる生命力よりもダンの生命力たる闘気を目当てにしているようだった。
「というか精霊族って生き物の生命力を食えるんですね?」
ダンは頭上のタマモに視線を送りながら聞いてみた。頭に居るので視線には気づいていないはずだが、タマモはやや慌てながらも抗議する。
『いやいや、それは非常手段みたいなもんじゃぞ!? ワシかて、あの森の中に居った際には何一つ口にしたことはないわい! 最近は食事を少し貰ったこともあるが、それでさえ食い物の中の生命力を食べるだけで、ソレそのものは直接食ったことはないわ!』
「ふ~ん? つまりアレは微妙に精霊族では無いってことですか?」
『いや~? ワシも2度目に食われた際には、アヤツの体を間近で見たから精霊族で間違いない――はずなんじゃがのぉ?……まだ子供なのかもしれん』
「アレで、ですか!?」
水面に出ている部分でさえダンの身長をはるかに超える大きさの相手に、「子供なのかも?」と言われてダンは思わず相手を凝視してしまった。
確かに顔つきなどは(ドラゴンのような顔なのでソレで合っているかは別にして)どこか子供というか子犬というような目をしてはいるが、
『ね~、なんで~?』
「……確かに子供っぽいですね」
『じゃろう?……ちょ、なぜワシを掴んで撫でまわす!?』
おそらく頭上でドヤ顔をしているから。とは言わずにタマモを撫で繰り回しながら、ダンは目の前の精霊族に話しかけた。
「いいですか精霊族の――そういえば名前はありますか? 僕はダンです」
話しかけて、そういえばまともなコンタクトはコレが初めてだったので名乗っていないことに気づいた。さすがにこれが魔物だったりした場合は問答すら存在はしないが、相手が会話できるうちは一応試さなくてはいけない。
ダンの兵士人生での経験がそう判断した。
というか、どうにも相手の態度が確かに子供っぽすぎて、怒りが継続しない。
『名前? 名前ってな~に?』
「……タマモ、ちなみに君は自分の名前をどうやって確認しましたか?」
『こねくり回すのをやめれ……。ふぅ、お主! 自分のステータスを確認してみぃ。精霊族ならばそこに割り当てられた名前があるはずじゃ!』
『すてーたす?』と水色の精霊族が悩み始める。
「あの、会話途中にすみません。割り当てって誰にですか?」
目の前で体も捻り始めた精霊族を無視して、ダンは頭上のタマモに話を聞いた。
『ん? そういえば誰なんじゃろうな? 本能で知っておった気もするし……あれ?』
ふとダンはタマモとの契約の巻物を取り出して中身を見てみた。
そこには契約条件などの項目がいくつか書かれており、その一番下に『タマモ』と記載されている。
「もしかして、タマモの方が特殊だったりして?」
『? それはどういう――』
『あ! 僕、ミズチって名前だ!』
ダンが推論を言おうとしたときに、ずっと唸っていた精霊族がぱあっと気づいたような顔をして自分の名前を言った。
「ミズチですか。それではミズチ、改めて」
『まてダン! ワシの質問に先に答えよぼぼ』
ダンの肩まで降りてダンの耳元で声を上げるタマモの両頬を片手でつまんで、ダンはミズチへの説明を始めた。
精霊族の生態。精霊族のそもそもの食事スタイル。他人の獲物への手出しをするとどうなるか。
『さすがに即殺はダンくらいしかおらんじゃろ?』
そして他人の生命力を勝手に吸う事の危険性。
『そうだったんだ……。いつも食べてた相手は何も言わなかったから』
シュンとしたように首を水面スレスレまで下げて、ミズチは落ち込んでいた。
『あ~、さすがに魚は、というか魔物は会話できんからのぉ』
「しかし精霊族が発生するような場所なのに、ミズチは他から生命力を得ようとしてたんですね。いったいどういうことなんでしょう?」
「あの~?」
3人(1人と2体?)が顔を突き合わせているところに声が掛かる。
揃って振り返ると桟橋に多くの人が集まっていて、ダン達に声を掛けたのは大会職員だった。
大会職員……?
「あ」
「そろそろ釣り大会を閉めますので、川から上がってきていただいていいですか?」
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