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デジャヴュを感じる
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「うわ~! 熱い~! 燃える~!!」
目の前で火だるまにされているイリアを見つつ、ダンはソレを成した敵を見据えていた。
「やっぱりアレ、見たことあるゴーレムですね?」
「そうね。外観はあそこに居たのと同じよね。なんでか炎出してるけど?」
「冷静に言ってないで、イリアさんを助けましょうよ! アクアヒール!」
慌てた様子で再生の力が込められた水塊を生み出す魔法を使うウェンディに対して、ダンとキョーコはこの事態になる少し前の出来事を思い出していた。
2階の探索を終えて、3階へと昇る階段を見つけたダン一行は3階へと向かった。
あのアンデッドナイト達との戦闘後は、特に問題もなかった。
上階への階段を見つけて気を抜いている相手に対して、アンデッド化したメイドサーバントが暗殺者よろしく、背後から奇襲を仕掛けてくる仕掛けがあったくらいだったので、最後尾に居たダンにあっさりと対処されていたくらいだ。
「いや、さっきの奇襲は被害が出てもおかしくない気がするんですが?」
なぜかジト目でイリアに見られながらも、ダンは「そうですか?」と肩をすくめるくらいだ。
「敵地だと思って油断しなければ、誰でも防げると思うんですけどね」
「誰でもって……。あんな足音も立てない相手に、どうやって気づけと?」
背後から迫るメイド姿の暗殺者。生前からそういった技術を習得していたとしか思えない動きをする上、半霊体だったのか手にしたナイフは実体があったものの、足元の靴辺りは向こうが透けて見えるような相手だったのだ。
たまたま何気なく後ろを振り返ったイリアの視界には、身体を上下させずにダンへと音もなく迫るナイフを構えたメイドの姿に、自身のデータベース上に記録された娯楽映画の幽霊の姿が類似情報として検出されていた。
注意を促すために言葉を発しようとしたが、その相手であるダンが振り返りざま手刀をメイドの胸に突き立てて敵を倒したことにより、イリアは口から出ようとしていた言葉を飲み込んだ。消滅していくメイドを確認すると、またダンが振り返る。ここまで一連の動きでわずか数秒。おそらく誰も気づいていない早業だった。
その後、2階から3階への階段は特に問題なく上がれることが出来たので、ダン達は3階の探索を始める。
3階は階段を上がると真っすぐな通路があり、それはすぐに大きな広場のようなところに繋がっているようだった。ところどころに柱が立っているのは強度的な問題なのだろう。見える範囲ではあるが、塔の外壁よりも内側だがそれなりの広さがあるその広場は仕切りの壁のようなものもない構造だった。
人の――いやアンデッドの気配はない階ではあったが、代わりにガチャガチャと鉄靴で歩いた音のようなものが規則正しく聞こえてきた。
「あれは――ゴーレム?」
「ん~? ねえダンさん、1つ質問が」
塔の中はダンジョン化の影響か、室内の照明が灯っておらずとも薄ぼんやりとした明かりが満たしている。その薄っすら見える暗がりの中で相手を見ようと凝視していたキョーコがダンへと質問した。
「はい。僕が答えられる事なら」
「ゴーレムってさ、みんな同じ形になるの?」
「いえ? 作った魔法使いによって変わりますね」
全てを魔法で作り出す方法や、ゴーレムの体を作ってから核となるパーツを組み込むなど、作り手の方法次第で製作過程も変わるので、同じ術者が同じ方法で作った場合でも、周囲の状況や材料の関係で同じ形となることはめったにない。
「もう1つ、王国軍でゴーレムって採用してるの?」
「採用? あ~、術者をってことですか? まあもしかしたら奥の手ってことで使える方は居るかもしれませんが、大々的に喧伝している人はいませんね」
キョーコの問いかけだと、ゴーレムを作る魔法を使う術者を雇っているのかどうかと聞こえたので、ダンは否定しておく。
そもそも魔法で作り出した場合は注いだ魔力が、ゴーレムの体を作った場合だと核となるパーツに使われた魔力が尽きてしまえばゴーレムは動かなくなってしまうからだ。後者の場合は核のパーツを新しくすれば再度使えるだろうが、それだってダンが聞くところによれば魔物の魔石を使う場合がほとんどで、弱い魔物では碌に動くことのできないモノしか作れないとのことだ。おそらくは中に貯め込まれた魔力が、弱い魔物だと弱い魔力しかないからだろう。
再利用出来るとは言っても、そのコストを考えると限定された場所でしか運用は難しいだろう。
唯一、ゴーレムが常に稼働できる場所がある。それがダンジョンだ。
しかしダンジョンで生まれたゴーレムは魔物であり、それを人が使うなどはとてもではないが無理だ。そもそもダンジョンのゴーレムは侵入者を見かけた場合、即攻撃をしてくる。
過去に、ダンジョンで見つかったゴーレムを解体し、ダンジョン外で再度組み立てたらどうなるか試したこともあるそうだが、結果はゴーレムの体を作った場合の時と同じゴーレムとなったということだった。やはりダンジョンの魔素がダンジョン産ゴーレムの稼働の鍵となっているのだろう。という結論に達したらしい。
「まあ、今も動いているってことはダンジョン産のゴーレムってことじゃないですか? 魔素が特に濃いダンジョン何かは無機物系の魔物が誕生することもあるらしいですからね。しかし、どっかで見たようなゴーレムですね。でもあんな鎧は王国でも見た覚えがないんですけど?」
無機物系といっても素材が無ければ魔物としては発生することは無い。ダンはひょっとすると怨念などが宿ったアンデッド系の動く鎧の可能性も考えていた。
そんな時、イリアが声をあげる。
「あれは『サキモリ』!」
「『サキモリ』?――あ~、イリアを見つけたダンジョンで出てきたゴーレムか!」
『サキモリ』という名前は聞いたことがなかったが、イリアが声を上げたことで何か関係が? と考えるとシンジュクダンジョンのゴーレムを思い出した。そう思い出してから改めてゴーレムを見れば、シンジュクダンジョンに出てきた人型ゴーレムとそっくりだ。
「よし、『サキモリ』相手ならイリアの『つうしんぷろとこる』が使える!」
「え?」
「説得をしてくるという意味です。皆さんはここで待っててください」
イリアは立ち上がり、止める間もなく『サキモリ』と呼んだゴーレムへと向かっていく。
「えっと? 大丈夫なんですかねイリアは?」
ダンは一番事情を分かっていそうなキョーコへと質問をした。
「た、たぶん?」
聞かれたキョーコも確信は持てなかったのか、疑問形で返されてしまった。
「防衛軍・新宿線戦所属・生体型端末イ号だ。諸君らの所属を聞かせてくれ!」
堂々たる姿勢でゴーレムへと問いかけるイリア。後に聞いたがあまりにオドオドした態度だと、それだけで警戒度が上昇される判断が下されるらしい。
『――!』
一方ゴーレムの方も何かの音を出すと、それにイリアが答えた。
「ほうほう。品川防衛ライン所属か――なに? データ上では新宿は既に消滅してる。だと? 更に私の通信プロトコルの規格が古いだって!? これでも生産時の最新版なんだぞ!」
「っていうか『むせん』でやり取りをしてるのかしら?」
「『むせん』が何か分かりませんが、ゴーレムは何か音を出してましたよ?」
『――!』
「所属コードは20508364759だ。――なに? 既に登録抹消番号の対象だと? というかこのリストは新宿線戦の部隊全てじゃないか! 私はココに居るんだぞ!――おい、待て。『敵性存在に鹵獲された可能性有り』って武器を向けるな!」
「なんだか説得に失敗しているような?」
「そうですね。さっさと諦めて倒す判断をしないのかしら?」
『――!』
「下手な抵抗をするなだって!? よーし、お前らの武器じゃ今の私に傷一つ付けられないという証明をしてやろう!――『鹵獲し改修された可能性』って待て待て! そういう意味で言ったんじゃない! くぅ、見栄を張ったのは失敗だったか」
わーわーと一人騒いでいるようにしか見えないイリア。そうこうしていると、このフロアに散らばっていたゴーレム達が集まってくる。こうなったらとイリアが腰のジャーキー袋に手を伸ばすと、ゴーレム達が一斉に剣を構えた。例の鉄の礫が飛び出る筒の部分をイリアに向ける。
「あれはイリアの説明が悪いわ」
「ふむ? しかし傷一つ付けられないとは大きく出ましたね」
「そうかしら? 眼球とか当たれば防げないかもしれないけど、今のイリアなら闘気で防げる武器よアレ?」
「ん~、そうなのかなぁ?」
イリアが素早くジャーキーを取り出して口に含むと、その動きのまま腕を顔の前に構えた。顔を守るアームブロックだ。
「オーバーロード! 防御全開!」
闘気を循環させて体全体を覆ったイリア。
その動作を攻撃と判断したのか、ゴーレム達がその手に持つ剣の筒から光が放たれる。
ボウッ!
「うわ~! 熱い~! 燃える~!」
闘気で守りを固めていたイリアの全身が、ゴーレム達の持つ武器から放たれた炎に包まれる。
「やっぱりアレ、見たことあるゴーレムですね?」
「そうね。外観はあそこに居たのと同じよね。なんでか炎出してるけど?」
「冷静に言ってないで、イリアさんを助けましょうよ! アクアヒール!」
ウェンディの放った水塊で全身の炎が消火されて、次いでイリアの焦げた皮膚がみるみると元の白い肌へと戻っていく。
闘気の防御は上手く効いていたようで、皮膚の表面がちょっぴり焦げたくらいで済んだようだ。
「説得は失敗ですか?」
「これ以上どうすれば失敗に見えないと!? 交渉決裂ですよ!」
燃やされたことに驚いたのか、地面に手を付けて息も絶え絶えなイリアに念のため聞いてみたダンだが、案の定イリアに怒られた。
「ですよね。――さあ、皆さん戦闘ですよ!」
剣の筒から放たれるのが鉄の礫から、炎の魔法に代わったくらいで、シンジュクダンジョンに居たゴーレムとさほど変わらない戦闘力だったため、ゴーレム達は瞬く間にダン達によって倒されていた。
念のため倒した後に爆発しないか確認した後に、魔物用とした4番マジックバッグにゴーレム達を収納していくダン一行。
回収作業を一通り終えた時点でイリアが立ち上がってきた。
「――ちょっと納得がいかないんですけど?」
「なにがですか?」
「なんでイリアよりも『ろっとナンバー』が若い機体が、昔のダンジョンに現れるんですか!」
「えっと? どういう意味か教えて貰えますかキョーコさん」
「あ~、つまりイリアよりも後に生まれたってことかな?」
イリアの言葉をキョーコに翻訳してもらって、ダンはイリアが言いたいことが理解できた。そして憤るイリアに優し気に答える。
「それはダンジョンですから」
「そんな投げやりな説明は求めてません!!」
目の前で火だるまにされているイリアを見つつ、ダンはソレを成した敵を見据えていた。
「やっぱりアレ、見たことあるゴーレムですね?」
「そうね。外観はあそこに居たのと同じよね。なんでか炎出してるけど?」
「冷静に言ってないで、イリアさんを助けましょうよ! アクアヒール!」
慌てた様子で再生の力が込められた水塊を生み出す魔法を使うウェンディに対して、ダンとキョーコはこの事態になる少し前の出来事を思い出していた。
2階の探索を終えて、3階へと昇る階段を見つけたダン一行は3階へと向かった。
あのアンデッドナイト達との戦闘後は、特に問題もなかった。
上階への階段を見つけて気を抜いている相手に対して、アンデッド化したメイドサーバントが暗殺者よろしく、背後から奇襲を仕掛けてくる仕掛けがあったくらいだったので、最後尾に居たダンにあっさりと対処されていたくらいだ。
「いや、さっきの奇襲は被害が出てもおかしくない気がするんですが?」
なぜかジト目でイリアに見られながらも、ダンは「そうですか?」と肩をすくめるくらいだ。
「敵地だと思って油断しなければ、誰でも防げると思うんですけどね」
「誰でもって……。あんな足音も立てない相手に、どうやって気づけと?」
背後から迫るメイド姿の暗殺者。生前からそういった技術を習得していたとしか思えない動きをする上、半霊体だったのか手にしたナイフは実体があったものの、足元の靴辺りは向こうが透けて見えるような相手だったのだ。
たまたま何気なく後ろを振り返ったイリアの視界には、身体を上下させずにダンへと音もなく迫るナイフを構えたメイドの姿に、自身のデータベース上に記録された娯楽映画の幽霊の姿が類似情報として検出されていた。
注意を促すために言葉を発しようとしたが、その相手であるダンが振り返りざま手刀をメイドの胸に突き立てて敵を倒したことにより、イリアは口から出ようとしていた言葉を飲み込んだ。消滅していくメイドを確認すると、またダンが振り返る。ここまで一連の動きでわずか数秒。おそらく誰も気づいていない早業だった。
その後、2階から3階への階段は特に問題なく上がれることが出来たので、ダン達は3階の探索を始める。
3階は階段を上がると真っすぐな通路があり、それはすぐに大きな広場のようなところに繋がっているようだった。ところどころに柱が立っているのは強度的な問題なのだろう。見える範囲ではあるが、塔の外壁よりも内側だがそれなりの広さがあるその広場は仕切りの壁のようなものもない構造だった。
人の――いやアンデッドの気配はない階ではあったが、代わりにガチャガチャと鉄靴で歩いた音のようなものが規則正しく聞こえてきた。
「あれは――ゴーレム?」
「ん~? ねえダンさん、1つ質問が」
塔の中はダンジョン化の影響か、室内の照明が灯っておらずとも薄ぼんやりとした明かりが満たしている。その薄っすら見える暗がりの中で相手を見ようと凝視していたキョーコがダンへと質問した。
「はい。僕が答えられる事なら」
「ゴーレムってさ、みんな同じ形になるの?」
「いえ? 作った魔法使いによって変わりますね」
全てを魔法で作り出す方法や、ゴーレムの体を作ってから核となるパーツを組み込むなど、作り手の方法次第で製作過程も変わるので、同じ術者が同じ方法で作った場合でも、周囲の状況や材料の関係で同じ形となることはめったにない。
「もう1つ、王国軍でゴーレムって採用してるの?」
「採用? あ~、術者をってことですか? まあもしかしたら奥の手ってことで使える方は居るかもしれませんが、大々的に喧伝している人はいませんね」
キョーコの問いかけだと、ゴーレムを作る魔法を使う術者を雇っているのかどうかと聞こえたので、ダンは否定しておく。
そもそも魔法で作り出した場合は注いだ魔力が、ゴーレムの体を作った場合だと核となるパーツに使われた魔力が尽きてしまえばゴーレムは動かなくなってしまうからだ。後者の場合は核のパーツを新しくすれば再度使えるだろうが、それだってダンが聞くところによれば魔物の魔石を使う場合がほとんどで、弱い魔物では碌に動くことのできないモノしか作れないとのことだ。おそらくは中に貯め込まれた魔力が、弱い魔物だと弱い魔力しかないからだろう。
再利用出来るとは言っても、そのコストを考えると限定された場所でしか運用は難しいだろう。
唯一、ゴーレムが常に稼働できる場所がある。それがダンジョンだ。
しかしダンジョンで生まれたゴーレムは魔物であり、それを人が使うなどはとてもではないが無理だ。そもそもダンジョンのゴーレムは侵入者を見かけた場合、即攻撃をしてくる。
過去に、ダンジョンで見つかったゴーレムを解体し、ダンジョン外で再度組み立てたらどうなるか試したこともあるそうだが、結果はゴーレムの体を作った場合の時と同じゴーレムとなったということだった。やはりダンジョンの魔素がダンジョン産ゴーレムの稼働の鍵となっているのだろう。という結論に達したらしい。
「まあ、今も動いているってことはダンジョン産のゴーレムってことじゃないですか? 魔素が特に濃いダンジョン何かは無機物系の魔物が誕生することもあるらしいですからね。しかし、どっかで見たようなゴーレムですね。でもあんな鎧は王国でも見た覚えがないんですけど?」
無機物系といっても素材が無ければ魔物としては発生することは無い。ダンはひょっとすると怨念などが宿ったアンデッド系の動く鎧の可能性も考えていた。
そんな時、イリアが声をあげる。
「あれは『サキモリ』!」
「『サキモリ』?――あ~、イリアを見つけたダンジョンで出てきたゴーレムか!」
『サキモリ』という名前は聞いたことがなかったが、イリアが声を上げたことで何か関係が? と考えるとシンジュクダンジョンのゴーレムを思い出した。そう思い出してから改めてゴーレムを見れば、シンジュクダンジョンに出てきた人型ゴーレムとそっくりだ。
「よし、『サキモリ』相手ならイリアの『つうしんぷろとこる』が使える!」
「え?」
「説得をしてくるという意味です。皆さんはここで待っててください」
イリアは立ち上がり、止める間もなく『サキモリ』と呼んだゴーレムへと向かっていく。
「えっと? 大丈夫なんですかねイリアは?」
ダンは一番事情を分かっていそうなキョーコへと質問をした。
「た、たぶん?」
聞かれたキョーコも確信は持てなかったのか、疑問形で返されてしまった。
「防衛軍・新宿線戦所属・生体型端末イ号だ。諸君らの所属を聞かせてくれ!」
堂々たる姿勢でゴーレムへと問いかけるイリア。後に聞いたがあまりにオドオドした態度だと、それだけで警戒度が上昇される判断が下されるらしい。
『――!』
一方ゴーレムの方も何かの音を出すと、それにイリアが答えた。
「ほうほう。品川防衛ライン所属か――なに? データ上では新宿は既に消滅してる。だと? 更に私の通信プロトコルの規格が古いだって!? これでも生産時の最新版なんだぞ!」
「っていうか『むせん』でやり取りをしてるのかしら?」
「『むせん』が何か分かりませんが、ゴーレムは何か音を出してましたよ?」
『――!』
「所属コードは20508364759だ。――なに? 既に登録抹消番号の対象だと? というかこのリストは新宿線戦の部隊全てじゃないか! 私はココに居るんだぞ!――おい、待て。『敵性存在に鹵獲された可能性有り』って武器を向けるな!」
「なんだか説得に失敗しているような?」
「そうですね。さっさと諦めて倒す判断をしないのかしら?」
『――!』
「下手な抵抗をするなだって!? よーし、お前らの武器じゃ今の私に傷一つ付けられないという証明をしてやろう!――『鹵獲し改修された可能性』って待て待て! そういう意味で言ったんじゃない! くぅ、見栄を張ったのは失敗だったか」
わーわーと一人騒いでいるようにしか見えないイリア。そうこうしていると、このフロアに散らばっていたゴーレム達が集まってくる。こうなったらとイリアが腰のジャーキー袋に手を伸ばすと、ゴーレム達が一斉に剣を構えた。例の鉄の礫が飛び出る筒の部分をイリアに向ける。
「あれはイリアの説明が悪いわ」
「ふむ? しかし傷一つ付けられないとは大きく出ましたね」
「そうかしら? 眼球とか当たれば防げないかもしれないけど、今のイリアなら闘気で防げる武器よアレ?」
「ん~、そうなのかなぁ?」
イリアが素早くジャーキーを取り出して口に含むと、その動きのまま腕を顔の前に構えた。顔を守るアームブロックだ。
「オーバーロード! 防御全開!」
闘気を循環させて体全体を覆ったイリア。
その動作を攻撃と判断したのか、ゴーレム達がその手に持つ剣の筒から光が放たれる。
ボウッ!
「うわ~! 熱い~! 燃える~!」
闘気で守りを固めていたイリアの全身が、ゴーレム達の持つ武器から放たれた炎に包まれる。
「やっぱりアレ、見たことあるゴーレムですね?」
「そうね。外観はあそこに居たのと同じよね。なんでか炎出してるけど?」
「冷静に言ってないで、イリアさんを助けましょうよ! アクアヒール!」
ウェンディの放った水塊で全身の炎が消火されて、次いでイリアの焦げた皮膚がみるみると元の白い肌へと戻っていく。
闘気の防御は上手く効いていたようで、皮膚の表面がちょっぴり焦げたくらいで済んだようだ。
「説得は失敗ですか?」
「これ以上どうすれば失敗に見えないと!? 交渉決裂ですよ!」
燃やされたことに驚いたのか、地面に手を付けて息も絶え絶えなイリアに念のため聞いてみたダンだが、案の定イリアに怒られた。
「ですよね。――さあ、皆さん戦闘ですよ!」
剣の筒から放たれるのが鉄の礫から、炎の魔法に代わったくらいで、シンジュクダンジョンに居たゴーレムとさほど変わらない戦闘力だったため、ゴーレム達は瞬く間にダン達によって倒されていた。
念のため倒した後に爆発しないか確認した後に、魔物用とした4番マジックバッグにゴーレム達を収納していくダン一行。
回収作業を一通り終えた時点でイリアが立ち上がってきた。
「――ちょっと納得がいかないんですけど?」
「なにがですか?」
「なんでイリアよりも『ろっとナンバー』が若い機体が、昔のダンジョンに現れるんですか!」
「えっと? どういう意味か教えて貰えますかキョーコさん」
「あ~、つまりイリアよりも後に生まれたってことかな?」
イリアの言葉をキョーコに翻訳してもらって、ダンはイリアが言いたいことが理解できた。そして憤るイリアに優し気に答える。
「それはダンジョンですから」
「そんな投げやりな説明は求めてません!!」
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