元兵士その後

ラッキーヒル・オン・イノシシ

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森の中を探索する

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 ガシャコン、ガシャコン、ガシャコン――

 森の中を大きな足音が進んで行く。
 木々の隙間から差し込む光を反射する金属の巨体を持つゴーレム。
 ゴリアテだ。

「そう、このまま真っすぐ進んでくれ」
『アイアイ。前進します』
 ゴリアテの上部に作られた人が搭乗することが出来る籠の中から、獣人女性――ミカが森の景色を見ながらゴリアテを操縦するイリアへと声を掛ける。
「うん。だいぶ良い感じですね」
「ダンさんはかなりの無茶振りだったけどね!?」
 ミカと同じ籠に同情していたキョーコが、森を進むゴリアテと並走しているダンへと文句を言った。

 あの後、周りの仲間が準備をしている中、ダンはでゴリアテの改修作業を頼んできたのだ。
 確かに体力がない相手を連れまわすとなれば、この方法がベストだと言えるのだろうが、さすがに碌な作業場も無い中で『ゴリアテに人を乗せるところを作ってほしい』と言うダン。『あ、あと作業は1時間でお願いしますね』とついでの様に言われてイリアとキョーコは激怒したのだ。

 もちろんダンとて投げっぱなしにした訳ではなかった。
 このゴリアテに追加された籠はダンがギルド修練場の片隅を借りて、鍛冶魔法で作り出したものだ。イリアとキョーコ、それにロマリアの監修の元ゴリアテの動きに干渉しない形状を描き、それを元にしてダンが鍛冶魔法で作成したソレは人が3人は立てることが出来るほどの大きさの籠であった。

「しかしゴーレムを操る冒険者ってホントに居たんだな? まあ、おかげで姉ちゃん達を助けられる可能性が見えてきたから、あたしとしてはツイてたって感じだけど」
 籠にもたれかかるように、しかししっかりと進行方向を向いているミカ。外傷や骨折などは処置を施したが、それでも基本的な体力までが回復したわけではない。
 それでも自分の姉たちの命を信じて、ダン達をオーガの居るという集落まで案内する役目を果たそうとしていた。

 そこに先行して偵察に出ていたサニーに乗ったポーラが戻ってくる。
「しばらくは魔物にも会わずに進めそうです」
「そうか。進む方向はまだ真っすぐ先だから」
「分かりました。それではまた先行しますね、サニー」
 そう言うとまたサニーと共に森の奥へと入っていくポーラ。
 街道から森へと侵入してからは先程の様に、定期的に偵察の報告と進む方向の確認を行ってダン達と情報共有を行う形を取っていた。

『ダン。こちらもや敵は居なかったぞ』
「何を言ってるんですロウキ? ダンさん。正面側には障害となりそうな魔物などは確認できず。樹上に小動物が居るくらいでした」
 そう言って近づいてきたのは黒い大型の狼に戻ったロウキと、それにまたがる格好でロウキの上に載っているクローディアの姿であった。
 先行偵察にはサニーとポーラ。ロウキとクローディアの2組で当たってもらっていた。
 ゴリアテの進む方向から若干左右に逸れた形で、それぞれに索敵と警戒を行う。もしもう1組が気づかなかったとしても、もう1組が気づけば待ち伏せや襲撃に気づける隊形だ。

『ふふん。ポーラや所詮、馬のサニーには我らよりも上手く獲物の気配を捕らえることは出来まい』
「……どうかなぁ」
 狼の顔を器用に歪めるロウキ。おそらくドヤ顔をしているのだろう。
 その言葉にロウキに乗ったクローディアは何とも言えない顔をしていた。
「とりあえずポーラさん達も先程来て、『異常なし』と報告をしていただきましたね」
『なに!? こうしてはおれん! クローディアよ、我らも偵察に戻るぞ』
 ダンの言葉を聞いて、グルリと体を反転させて前へと進むロウキ。
「ちょ!? ダンさん、進む方向は!」
 そのロウキの挙動に慌てたクローディアだったが、上体を捻ってダンへと最低限聞かなければいけないことを聞く。それにダンは大きく腕を動かして、「このまま真っすぐです!」とクローディアに伝えた。

 流れる様に森へと消えていくロウキの姿に、
「何だかあんた達のパーティーは変わったメンバーが多いなぁ。だっけ? いやはや完全獣化形態を取れるなんてウチの長老でも出来るもんかなぁ」と、そうミカが呟く。
 もちろんコレはダンが教えた情報だ。
『本当は魔物で――』なんて説明をして、ミカに納得させるのに時間が掛かるくらいなら。とソレっぽいことを言ってごまかしただけである。
 確かダンの知っている情報では獣人が獣化をする際に使うのは、以前にルフが使ったような変身魔法の一種で獣化魔法というものだったはず。もしくはサニーの逆で、『獣化』なんてスキルを先天的または後天的に身に着けた者達が居てもおかしくは無さそうであるが。

 ちなみにダンのパーティーに居るの方は、ゴリアテよりも後方から追いかけるグループの道案内として別行動を取っている。

『そ、そろそろ交代を頼みますキョーコさん』
 そんな快調に進んできたゴリアテの内部からイリアとは違った声が聞こえてくる。
「え~!? 早くない?――了解、交代するわ」
 ガシャコン。ガシャコン。と歩き続けるゴリアテの胴体がわずかに開かれると、キョーコは籠から身を乗り出してゴリアテの内部から突き出された腕を掴んで、一気に籠までその腕の人物を引き上げる。そこに居たのはロマリアだった。
「んじゃ、乗り込むわよイリア!」と声を掛けてゴリアテの中に代わって入り込むキョーコ。ブシュ! と音を立ててゴリアテの胴体が閉じられる。
 この間にゴリアテの速度が大幅に下がった。
『いくわよ~。魔力供給、開始!』
『確認……。動力の稼働率が上昇しました。ゴリアテの速度を上げます』
 そうイリアの声が聞こえてくると、ゴリアテの速度は落ちる前よりも更に早くなった。
 ガシャン。ガシャン。とゴリアテの足の回転が早まったのを確認出来る。
 実はゴリアテの改修作業の時に、人を乗せる籠を付けることだけではなく、もうひとつ追加で作業をしていたのだ。



「「はぁ? 『にこいち』にするぅ!?」」
 ギルドの修練場。そこで簡易鍛冶場を作っていたダンの後ろで、イリアとキョーコが素っ頓狂な声を上げていた。その相手はロマリアであった。
「はい。イ号――失礼、イリアのゴリアテは最初期の機体です。動力部についてもまだ改良の余地を残していると思われます」
「まあそうだとは思うけど……。でも弄るにしたってないのよ? そこまでバラしてる時間なんてないでしょうよ。それにロマリアのゴリアテを使おうとしたって、状態だからね? 気持ちはありがたいんだけども、今回はその案は無し。って事で――」
「それは分かっております。提案するのは恐らく動力部にそのまま転用できるパーツの事です」
 そう言ってロマリアがマジックバッグから出された手足の無いゴリアテの内部に体を突っ込んで、何やらゴソゴソカチャカチャと作業をしている。
 そしてしばらくするとロマリアはその手に何やら板のようなものを持ってゴリアテから出てきた。
「なんなのコレ?」
「私は見たことがないパーツですね? 『きばん』?」
 ロマリアが差し出したソレにキョーコとイリアが揃って首を傾げる。どうやら初見の物らしい。そんな2人にロマリアが説明をした。
「コレは動力部へ『マギ』を供給するためのパーツです」
「『マギ』って魔力の事よね?」
 キョーコの問いかけにロマリアが頷く。
「はい。その魔力を動力部へ追加するための『マギこんばーたー』です」
「え~? 魔力を『にとろ』みたいにぶっ込むの? それって大丈夫な訳?」
 何やらロマリアの説明にキョーコが難色を示しているようだ。
「はい。その認識で概ねあっているかと。安全性は保障しますが、このパーツ自身に安全対策が施されていますので、最悪はコレが壊れるだけで済みますから。それよりも重量増加が見込まれるゴリアテに、動力の出力UPは必須と考えます」
「う~、ん? そういや魔力を供給するってどうやるの? 大気から魔力を吸ってくれるわけ、そのパーツ?」
「いえ、それは供給者が必要です」
「あ、やっぱり?」
「……すみませんが、まずゴリアテの籠を付ける作業から始めませんか?」
 ひとまず必要な人を乗せる籠がなければ話にならないので、ダンはキョーコ達の話に一旦割り込んだ。
 そしてゴリアテの上に籠を乗せる作業と並行して、そのパーツとやらもイリアのゴリアテに取り付けることにしたのである。
 ロマリア曰く「付けただけでは悪さをするモノではありませんから」とのことだった。



『おお~! なかなかに機敏に動くようになるじゃない?』
 ゴリアテの中からキョーコの浮かれた声が聞こえてくる。
『それで? コレってどれだけ魔力入れればいいの?』
「……魔力は消費されますよ?」

 一陣の風が通り抜けた。

『――ってことは、アレ? もしかしてロマリア、街を出てからってこと?』
「その通りですが」

『――! 私は『細く長く』は苦手なのよ~! 『太く短く』のが得意なのに~! 軽い拷問じゃない!!』
『わ! ゴリアテの中で暴れないでくださいキョーコ! ぐえ!?』
 何やらキョーコがお怒りの様で、イリアの潰されたような声を聞くに中で蹴られたのかもしれない。

 とりあえず順調だということで、ダン一行は森の中を進んで行く。



***


とりあえず明日、てか今日は『目の保養』に出かけるので、
確実に更新はしないと思います。
間に合えば31日は更新するかも?

このご時世ですから出かける予定も入れていないので、
恐らく年始も筆が乗ったら書くかもしれません。

駆け込み出来るか分かりませんので、

皆さん良いお年を迎えられますように。
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感想 10

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