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王都に向かう・道中
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ボッカの街から王都までは早馬を飛ばして約2日の距離だ。
それを遠いと言うか近いと言うかは人それぞれだろう。
普通の馬と同じ速度は出せるダン達も、今王都で何が起こっているのか分かっていない現状なので、安全を鑑みて王都まで3日ペースで移動をしていた。
ボッカの街から1日半。
つまり2日目の昼。おおよそ王都まで半分の距離まで来たところで、ダン達はその集団と出くわした。
ある程度揃えられた革鎧を着て、腰に剣を佩いた集団が道を塞ぐように陣取っていた。
「おーっと! 悪いが今はこの道は封鎖してるんだ。悪いことは言わねぇからボッカの街に帰んな」
その中から一人進み出てくると、ニヤニヤとした笑みを浮かべつつダン達にそう告げてくる。
「――はあ。何の権限があって道を塞ぐんでしょうかね?」
呆れ顔をしたダンがそう問いかける。王都周辺を任された(ダンの認識では自主的な引きこもりである)第2軍の管轄地域であるのだが、どう見たって第2軍の団員ではない。
しかしダンの問いかけに男が答えた言葉に、ダンの表情は更に死んだものとなった。
「王命だよ、おーめい! ちょいと王都で厄介ごとが起きててな? すこーしばかり立ち入りを制限してるんだよ。分かったら帰れ帰れ」
男が犬でも追い払う様にシッシッと手を振って、ダン達を追い返そうとする。
ダンは表情が死んだまま仲間達を見回した。
ほぼ全員がビクッ! とした後、フルフルと首を横に振る。
「……あんだぁ? 聞き分けの悪い奴らには痛い目を見て貰おうか。よく見りゃ綺麗な顔の女どもも居るパーティーじゃぐあああああああああああ!!」
何かのたまった男がヘラヘラと笑いながらこちらに手を伸ばしてきて、カウンターとして突き出されたダンの拳を顔面に食らい、男とダン達とのやり取りをニヤニヤとした顔で見ていた男達の一角にぶっ飛ばされた。
ドオォンといい音を立てて着弾した男を気にも留めずに、他の男達がいきり立つのを気にも留めず、ダンは冷めた目をしながら集団を見ていた。
「――で? 何なんでしょうね、彼らは?」
「分かってて殴ったんじゃないの!?」
「? いや王命だと言う嘘は気付きましたけど、彼らが何者か? というのは分かっていませんよ?」
そんなやりとりをしている間に、仲間がやられた男達が手に手に武器を持って飛びかかってくる。
「「「ぶっ殺せぇぇぇ!!」」」
「はぁ……、とりあえず出来る限り殺さないように。まあ、手足の5、6本は切っても構いませんよ」
「人間、そんなに手足は生えてないと思うんだけど?……あ、あはは、行ってきま~す」
ツッコミを入れたキョーコはダンの顔を見るなり、さっさかと向かってくる男達へと薙刀を担いで前へと進み出た。
どうやらダンは男達の態度や言動に怒りを覚えているようだ。
笑顔ではあるが、その口元が引きつっていたからだ。
たちまち始まる道を封鎖している集団との戦闘。
ウェンディのもはや鉄の凶器と言っても過言ではない高速回転する黒鉄鋼の杖が男達の剣や腕をあらぬ方向へと曲げ、ファーニの双剣が閃くたびに膝や腿などを切られた男達が転げまわる。
マロンの振り回す戦斧が武器や不用意に突き出した腕を叩き切り、リルとイリアとロウキが素早いフットワークで急所攻撃によって男達の戦意を次々と奪っていく。
正直、男達の強さはこの間戦ったオークよりも弱いと言わざるを得ない。
すでにここまでで過剰戦力と言ってもいいが、離れた位置から弓を使って攻撃しようとしている相手にクローディアの弓から放たれた矢が手に突き刺さる。
さらにルフが魔法で作った石つぶてが広範囲に飛ぶと、前に出ていたウェンディとキョーコからも水弾と炎弾がまき散らされた。
積極的に前には出ないが、ライを始めとした片手剣と盾を使うリンやポーラ、アレックス達が抜け出てこようとする相手を器用に盾も使って打ち倒していく。
ダンの仲間達によって、次々と戦闘不能状態となっていく兵士っぽい男達を見てダンが呟く。
「本当に何なんでしょうね、彼ら?」
*
遡ること少し前。
私は自分の主であるとある貴族から、この部隊を預けられて王都へと向かっていた。
元々は領地の防衛や、時々別の仕事も行うために作られた言わば私設軍だ。そして私は貴族の筆頭騎士として今回の任務を任されたのである。
「隊長~? 俺達は何時王都に向かえばいいんですかい?」
そんな男に話しかけてくるのはこの私設軍の2番手として雇用している男だった。
普段の素行は悪いが、剣の腕に関してはそれなりの実力を持っているので、領内に発生した魔物の討伐時などは切り込み隊長として働かせている男だ。
現在はボッカから王都へ通じる道を封鎖する為、ここに部隊を止めて陣地を敷き、王都へ向かおうとする冒険者や商人などには、丁重にお帰りいただいている現状だ。
「王都へ向かうタイミングは、その為の連絡要員が来る手はずとなっている。我らはそれまでの間、王都へ向かう者の足止めをしなければならない」
ある程度は周知をしていたが、この作戦の詳細は、普段自領を守るための戦力たる兵士達には伝えておらず、その戦力を纏めている筆頭騎士たる自分しか知らされていない極秘任務なのである。
方法を問わずに、その任務を遂行するのが現在の我が部隊の役割だ。
そこに伝令役が近寄ってきて男へと耳打ちをする。
「おっと? また冒険者が王都に向かおうとしているみたいですぜ。それなりに人数が居ますから、2つ3つのパーティーかもしれませんね。どうしやすか?」
「盗賊みたいな口調で喋るな!……話して元の街に帰ればそれでよし。だが帰らない場合は――」
私の無言のままの意図に頷く男。ちらりといくつか張ってある天幕の一つを横目で見たのが分かったが、男所帯の部隊でのストレス発散方法として、男が何を考えたのか分かった私はやや呆れつつも頷き一つ返してやる。
天幕の中には話を聞かなかった商人や護衛の冒険者の内、女だけを生かして中に入れている。それ以外は装備や商品を戦利品として貰い受け、本人たちは陣地の端、土の下で静かにしてもらっている。
対処としては領内に発生した賊への対応と同じものだ。冒険者や行商人などが、たまたま不慮の事故で亡くなっただけ。そして寡婦となった女達に仕事を与えているだけだ。
そう自身を納得させて十数年。
もはや疑うこともない考えを持った私も、そろそろ息抜きをするべきか考える。息抜きと言っても『暇を貰う』訳ではない。
大掛かりな作戦前の待機というのは存外ストレスが溜まるものだ。作戦開始前にストレス解消のために女を抱く。という息抜きだ。
とはいえ天幕内の女達は既に多くの男を相手にしていて、少しばかり反応が悪いかもしれない。
男が交渉に向かった相手に、新たな女達が居ることに期待するかと私が考えていると、男が向かった方向から大きな音が発せられ、辺りに響き渡ったのが分かった。
「!? なにが起こったというのだ?」
私は腰に付けた剣を握りしめると現場へと走り始めた。
*
しばらく男達をぶちのめしていると、集団の中から一人の男が現れた。
部分鎧ではあるが金属製の鎧を身に着け、意匠を施した兜を被っている男はこの集団でも浮いている存在だ。つまりは指揮官もしくは上官だろう。
男は辺りで「い、いてぇぇ」「腕、俺の腕は?」「ぐあああぁぁ」「足が動かねぇ、誰か助けてくれぇ」と悲鳴や戸惑い、助けを求める男達を見渡してからこちらに声を掛けてくる。
「これは一体どういうことだ! 国への反逆行為とみなすぞ! 即刻戦闘を止めるのだ!!」
叫ぶように言う男をダンとダンの仲間達は一瞥すると――
戦闘行為を続行した。
「な!? おい! 聞いているのか貴様ら!!」
何やら喚き続ける男に向かってダンが近づいていく。
男の方も近づいてくるダンに気づいたのか、腰元に下げた剣の柄に手を添えながら誰何の声を上げた。
「貴様、名を名乗れ!」
「僕ですか? 僕はダンと言います」
「貴様、冒険者だろう? 我ら『国軍』に逆らうというのか?」
男は『国軍』という言葉を強調するようにダンへと言った。ニヤリとした顔つきを見ると、その言葉で自分達がどういった存在なのかをダンへと知らしめたいと言っているようなものだ。
正に『ドラゴンの皮を被ったゴブリン』と言えるような男の態度に、ダンは呆れたように溜め息をつきながら、もう名乗ることのないと思っていた名前を告げる。
「正確にと言えば、ダン・レオンと言います」
ダンが名乗った名前に男が怯んだ様子を見せた。家名持ちとなればそれは貴族か領地持ちしかいないので、ダンがそのどちらかであろうとも無下には出来ない相手だと思ったはずだ。
「それで? 人に名乗らせて、あなたは自分の名前を言わないのですか?」
ダンの問いかけに、男はハッと気づいたように意識を取り戻したのか、改まった態度で話しかけてきた。
「わ、私はローラン家の筆頭騎士バランです! 貴族の方とは知らず、こちらの早とちりで――」
「早とちり?――それにしては不思議ですよねぇ? 上手く隠したつもりなのでしょうが、そこかしこに戦闘の痕跡が残っているんですけど?」
ダンの言葉に、バランと名乗った男の動きが止まった。
ダンもいきなり相手方を殴ったわけではなかった。
王都に続く街道には似つかわしくない戦闘跡と、それを消そうとした痕跡。最初に近づいてきた相手の男の鞘辺りから漂ってきた血の匂いから、相手が野盗の類と同類だと類推していて、その相手が攻撃の素振りを見せつつ近づいてきたから殴り飛ばしただけである。
そして遅れてきたとはいえ、この集団のリーダーをしているであろう男が名乗ったのは貴族の筆頭騎士の肩書だ。
あまりにも胡散臭すぎる相手である。
ダンの指摘に動きを止めていた男が慌てて取り繕う様に話してきた。
「こ、これは我々の話を聞かずに無理に押し通ろうとした冒険者達との争いの跡であって、決してやましいことは何一つない! そしてそれは貴殿が貴族であろうと変わる話でもない。『これより先へは何人たりとも通すな』との王命によるものなのだ!」
何やら懐から巻物を取り出して広げてくる(もはやダンの認識では自称)筆頭騎士。
さらにダンは目に力を込めて、威圧感を含めて言う。
「『王命』、ねぇ?……それは僕が第3軍軍団長だと知っての事かな?」
「だ、第3軍、だと?」
*
「だ、第3軍、だと?」
最近できた国軍の新軍団。
私は第3軍軍団長という肩書を持った人物の噂を聞いていた。
曰く、貴族の威光は何の役にも立たない相手、と。
潔癖にして苛烈。
不正を見過ごさず、相手がどんな大貴族であろうとも引かず、決して容赦しない王国の番人のような男だという噂が私の居る貴族領にも伝わってきていた。
まさか。そんなことが出来る男が居るはずがない。
おそらくは王国内でそういった噂を流布することで、国内の貴族への牽制したい国王辺りの策略だろう。
私が仕えるローラン家の当主もそう言っていた。
その現実には存在するはずのない人物が、今私の目の前に居る。
私は自分の立っている場所が急に無くなったように、自分の視界が下がったのを感じた。
*
「な、なぜ第3軍が動いている? 第2以外の軍団は封じ込める作戦のはずでは……」
腰を抜かしたのか、地面に座り込んだ男は小声で何かを呟いているようだが、ダンはそれをあっさりと無視する。
「さて? 『国軍』だの『王命』だのと色々とおっしゃいましたけど、ちょっとお話を伺えますかね?」
見過ごせない『騙り』についてダンが男に対して尋ねる。
すると男は急に顔を上げると周りに聞こえる様に大声で一つの命令を下した。
「――この者達が『第3軍』であることを示すものは何一つない! 『王』の威光を笠に着る、逆賊を討つべし! 全員、攻撃開始!!」
男の言葉を聞いた周りにいた全員が一気に武器を構え始めた。
「――既にこちらの武力は見せた気がするんですけど……。この人達、正気ですかね?」
「どうにもここでダンさんを見逃すことは出来ない事情でもありそうですね?」
まあ既に戦闘は起きているので、とりあえずダンは目の前の男を殴って気絶させると、腰の武器ポーチから木刀を抜いて一気に駆け出した。
*
「王都に続く街道の封鎖、ですか。さすがにこの辺りは第2軍の管轄なんですけどねぇ? 彼らは王都に引きこもったままなんでしょうか?」
あの後、人数が人数だったので時間が若干掛かってしまったが、全員無力化することに無事成功し(若干名、打ち所が悪かったのか死者が出た事を成功と言うのかはともかく)、現在は筆頭騎士と言った男を含めて数名の尋問をしているダンが聞きだしたことを再度確認する。
「しょ、詳細は知らないが、第2軍から連絡が来るまで待機を命じられていました」
青い顔をした筆頭騎士のバランが、ダンの質問にそう答える。
ここまで従順にダンの質問に答えるのは理由がある。
全員を叩き伏せて陣営の中を調査した結果、男達の体液で汚された被害者を天幕で発見した事に、ダンがそれは怒り心頭といったようになってしまったのだ。
そして「事情を話せ。大したことを知らなければこうなる」と、男達の目の前でダンへ最初に話しかけてきた男の首を手刀で切り落としたのだ。
それから我先に知っていることは話すとワーワーギャーギャーと一斉に話し始めた男達の目の前で、ダンが首を落とした男の腰辺りをさらに叩き切って、「一人ずつ、聞き取れる様に話せ」と言えば、男達は余計な事を言ってダンの機嫌を損ねないように顔色を伺いながら自分達が知っていることを話し始めたのだ。
そうしてある程度の事情を聞き出したダン達が頭を突き合わせる。
「貴族の私兵部隊ってダンさん彼らを見て、そう言いましたよね? それに前に聞いた話だと、第2軍って貴族達が集まってる軍団なんですよね? だとすると――」
傍らにいるルフの顔を見ながらも、ウェンディが自分の中で考えていた想像をダンへと伝える。
謀反。あるいはクーデター。
「――あー、まあ確かにその可能性はありますけど……。それをしてどうなると言うんでしょうね?」
第2軍に貴族たちが集められているのは、ある意味では貴族家にとっての人質のようなものであり、またある意味では他家の突出を牽制させるための相互監視の名目もある集まりだ。
まあ人質としての意味合いは貴族家の嫡男でない者達がほとんどであり、今となっては相互監視の意味合いだけが生きているのが実情だ。
これは昔、貴族家の長男達が多く勤めていた時期に大事件があって、ほとんどの家の長男が死亡したことに多くの貴族家から体制を変える嘆願が集まった為だと言われている。
その裏事情を話している時に、ルフだけが遠い目をしていたのだが。
仮にクーデターを起こしたとして、どこの貴族家が代表となるのか、という問題がすんなり解決できるとも思えない。
確実に血で血を洗うような抗争が起きることは必至である。
さすがにそういった点を気づかない当主ばかりではないはずなのだが……。
「行ってみるしかないですね王都に。この目で見なければ、真実を間違えるかもしれませんし」
そういってダン達は王都へと歩みを進める。
ちなみに生存を許された男達は、ルフの魔法により首だけを出して全員、道の脇の地面に埋められた。
残されたのは被害者たち。
ついでに人数分の剣と服を置いて、ダン達は王都へと向かった。
「助けてくれ~!」という男達の言葉は聞かなかったことにした。
それを遠いと言うか近いと言うかは人それぞれだろう。
普通の馬と同じ速度は出せるダン達も、今王都で何が起こっているのか分かっていない現状なので、安全を鑑みて王都まで3日ペースで移動をしていた。
ボッカの街から1日半。
つまり2日目の昼。おおよそ王都まで半分の距離まで来たところで、ダン達はその集団と出くわした。
ある程度揃えられた革鎧を着て、腰に剣を佩いた集団が道を塞ぐように陣取っていた。
「おーっと! 悪いが今はこの道は封鎖してるんだ。悪いことは言わねぇからボッカの街に帰んな」
その中から一人進み出てくると、ニヤニヤとした笑みを浮かべつつダン達にそう告げてくる。
「――はあ。何の権限があって道を塞ぐんでしょうかね?」
呆れ顔をしたダンがそう問いかける。王都周辺を任された(ダンの認識では自主的な引きこもりである)第2軍の管轄地域であるのだが、どう見たって第2軍の団員ではない。
しかしダンの問いかけに男が答えた言葉に、ダンの表情は更に死んだものとなった。
「王命だよ、おーめい! ちょいと王都で厄介ごとが起きててな? すこーしばかり立ち入りを制限してるんだよ。分かったら帰れ帰れ」
男が犬でも追い払う様にシッシッと手を振って、ダン達を追い返そうとする。
ダンは表情が死んだまま仲間達を見回した。
ほぼ全員がビクッ! とした後、フルフルと首を横に振る。
「……あんだぁ? 聞き分けの悪い奴らには痛い目を見て貰おうか。よく見りゃ綺麗な顔の女どもも居るパーティーじゃぐあああああああああああ!!」
何かのたまった男がヘラヘラと笑いながらこちらに手を伸ばしてきて、カウンターとして突き出されたダンの拳を顔面に食らい、男とダン達とのやり取りをニヤニヤとした顔で見ていた男達の一角にぶっ飛ばされた。
ドオォンといい音を立てて着弾した男を気にも留めずに、他の男達がいきり立つのを気にも留めず、ダンは冷めた目をしながら集団を見ていた。
「――で? 何なんでしょうね、彼らは?」
「分かってて殴ったんじゃないの!?」
「? いや王命だと言う嘘は気付きましたけど、彼らが何者か? というのは分かっていませんよ?」
そんなやりとりをしている間に、仲間がやられた男達が手に手に武器を持って飛びかかってくる。
「「「ぶっ殺せぇぇぇ!!」」」
「はぁ……、とりあえず出来る限り殺さないように。まあ、手足の5、6本は切っても構いませんよ」
「人間、そんなに手足は生えてないと思うんだけど?……あ、あはは、行ってきま~す」
ツッコミを入れたキョーコはダンの顔を見るなり、さっさかと向かってくる男達へと薙刀を担いで前へと進み出た。
どうやらダンは男達の態度や言動に怒りを覚えているようだ。
笑顔ではあるが、その口元が引きつっていたからだ。
たちまち始まる道を封鎖している集団との戦闘。
ウェンディのもはや鉄の凶器と言っても過言ではない高速回転する黒鉄鋼の杖が男達の剣や腕をあらぬ方向へと曲げ、ファーニの双剣が閃くたびに膝や腿などを切られた男達が転げまわる。
マロンの振り回す戦斧が武器や不用意に突き出した腕を叩き切り、リルとイリアとロウキが素早いフットワークで急所攻撃によって男達の戦意を次々と奪っていく。
正直、男達の強さはこの間戦ったオークよりも弱いと言わざるを得ない。
すでにここまでで過剰戦力と言ってもいいが、離れた位置から弓を使って攻撃しようとしている相手にクローディアの弓から放たれた矢が手に突き刺さる。
さらにルフが魔法で作った石つぶてが広範囲に飛ぶと、前に出ていたウェンディとキョーコからも水弾と炎弾がまき散らされた。
積極的に前には出ないが、ライを始めとした片手剣と盾を使うリンやポーラ、アレックス達が抜け出てこようとする相手を器用に盾も使って打ち倒していく。
ダンの仲間達によって、次々と戦闘不能状態となっていく兵士っぽい男達を見てダンが呟く。
「本当に何なんでしょうね、彼ら?」
*
遡ること少し前。
私は自分の主であるとある貴族から、この部隊を預けられて王都へと向かっていた。
元々は領地の防衛や、時々別の仕事も行うために作られた言わば私設軍だ。そして私は貴族の筆頭騎士として今回の任務を任されたのである。
「隊長~? 俺達は何時王都に向かえばいいんですかい?」
そんな男に話しかけてくるのはこの私設軍の2番手として雇用している男だった。
普段の素行は悪いが、剣の腕に関してはそれなりの実力を持っているので、領内に発生した魔物の討伐時などは切り込み隊長として働かせている男だ。
現在はボッカから王都へ通じる道を封鎖する為、ここに部隊を止めて陣地を敷き、王都へ向かおうとする冒険者や商人などには、丁重にお帰りいただいている現状だ。
「王都へ向かうタイミングは、その為の連絡要員が来る手はずとなっている。我らはそれまでの間、王都へ向かう者の足止めをしなければならない」
ある程度は周知をしていたが、この作戦の詳細は、普段自領を守るための戦力たる兵士達には伝えておらず、その戦力を纏めている筆頭騎士たる自分しか知らされていない極秘任務なのである。
方法を問わずに、その任務を遂行するのが現在の我が部隊の役割だ。
そこに伝令役が近寄ってきて男へと耳打ちをする。
「おっと? また冒険者が王都に向かおうとしているみたいですぜ。それなりに人数が居ますから、2つ3つのパーティーかもしれませんね。どうしやすか?」
「盗賊みたいな口調で喋るな!……話して元の街に帰ればそれでよし。だが帰らない場合は――」
私の無言のままの意図に頷く男。ちらりといくつか張ってある天幕の一つを横目で見たのが分かったが、男所帯の部隊でのストレス発散方法として、男が何を考えたのか分かった私はやや呆れつつも頷き一つ返してやる。
天幕の中には話を聞かなかった商人や護衛の冒険者の内、女だけを生かして中に入れている。それ以外は装備や商品を戦利品として貰い受け、本人たちは陣地の端、土の下で静かにしてもらっている。
対処としては領内に発生した賊への対応と同じものだ。冒険者や行商人などが、たまたま不慮の事故で亡くなっただけ。そして寡婦となった女達に仕事を与えているだけだ。
そう自身を納得させて十数年。
もはや疑うこともない考えを持った私も、そろそろ息抜きをするべきか考える。息抜きと言っても『暇を貰う』訳ではない。
大掛かりな作戦前の待機というのは存外ストレスが溜まるものだ。作戦開始前にストレス解消のために女を抱く。という息抜きだ。
とはいえ天幕内の女達は既に多くの男を相手にしていて、少しばかり反応が悪いかもしれない。
男が交渉に向かった相手に、新たな女達が居ることに期待するかと私が考えていると、男が向かった方向から大きな音が発せられ、辺りに響き渡ったのが分かった。
「!? なにが起こったというのだ?」
私は腰に付けた剣を握りしめると現場へと走り始めた。
*
しばらく男達をぶちのめしていると、集団の中から一人の男が現れた。
部分鎧ではあるが金属製の鎧を身に着け、意匠を施した兜を被っている男はこの集団でも浮いている存在だ。つまりは指揮官もしくは上官だろう。
男は辺りで「い、いてぇぇ」「腕、俺の腕は?」「ぐあああぁぁ」「足が動かねぇ、誰か助けてくれぇ」と悲鳴や戸惑い、助けを求める男達を見渡してからこちらに声を掛けてくる。
「これは一体どういうことだ! 国への反逆行為とみなすぞ! 即刻戦闘を止めるのだ!!」
叫ぶように言う男をダンとダンの仲間達は一瞥すると――
戦闘行為を続行した。
「な!? おい! 聞いているのか貴様ら!!」
何やら喚き続ける男に向かってダンが近づいていく。
男の方も近づいてくるダンに気づいたのか、腰元に下げた剣の柄に手を添えながら誰何の声を上げた。
「貴様、名を名乗れ!」
「僕ですか? 僕はダンと言います」
「貴様、冒険者だろう? 我ら『国軍』に逆らうというのか?」
男は『国軍』という言葉を強調するようにダンへと言った。ニヤリとした顔つきを見ると、その言葉で自分達がどういった存在なのかをダンへと知らしめたいと言っているようなものだ。
正に『ドラゴンの皮を被ったゴブリン』と言えるような男の態度に、ダンは呆れたように溜め息をつきながら、もう名乗ることのないと思っていた名前を告げる。
「正確にと言えば、ダン・レオンと言います」
ダンが名乗った名前に男が怯んだ様子を見せた。家名持ちとなればそれは貴族か領地持ちしかいないので、ダンがそのどちらかであろうとも無下には出来ない相手だと思ったはずだ。
「それで? 人に名乗らせて、あなたは自分の名前を言わないのですか?」
ダンの問いかけに、男はハッと気づいたように意識を取り戻したのか、改まった態度で話しかけてきた。
「わ、私はローラン家の筆頭騎士バランです! 貴族の方とは知らず、こちらの早とちりで――」
「早とちり?――それにしては不思議ですよねぇ? 上手く隠したつもりなのでしょうが、そこかしこに戦闘の痕跡が残っているんですけど?」
ダンの言葉に、バランと名乗った男の動きが止まった。
ダンもいきなり相手方を殴ったわけではなかった。
王都に続く街道には似つかわしくない戦闘跡と、それを消そうとした痕跡。最初に近づいてきた相手の男の鞘辺りから漂ってきた血の匂いから、相手が野盗の類と同類だと類推していて、その相手が攻撃の素振りを見せつつ近づいてきたから殴り飛ばしただけである。
そして遅れてきたとはいえ、この集団のリーダーをしているであろう男が名乗ったのは貴族の筆頭騎士の肩書だ。
あまりにも胡散臭すぎる相手である。
ダンの指摘に動きを止めていた男が慌てて取り繕う様に話してきた。
「こ、これは我々の話を聞かずに無理に押し通ろうとした冒険者達との争いの跡であって、決してやましいことは何一つない! そしてそれは貴殿が貴族であろうと変わる話でもない。『これより先へは何人たりとも通すな』との王命によるものなのだ!」
何やら懐から巻物を取り出して広げてくる(もはやダンの認識では自称)筆頭騎士。
さらにダンは目に力を込めて、威圧感を含めて言う。
「『王命』、ねぇ?……それは僕が第3軍軍団長だと知っての事かな?」
「だ、第3軍、だと?」
*
「だ、第3軍、だと?」
最近できた国軍の新軍団。
私は第3軍軍団長という肩書を持った人物の噂を聞いていた。
曰く、貴族の威光は何の役にも立たない相手、と。
潔癖にして苛烈。
不正を見過ごさず、相手がどんな大貴族であろうとも引かず、決して容赦しない王国の番人のような男だという噂が私の居る貴族領にも伝わってきていた。
まさか。そんなことが出来る男が居るはずがない。
おそらくは王国内でそういった噂を流布することで、国内の貴族への牽制したい国王辺りの策略だろう。
私が仕えるローラン家の当主もそう言っていた。
その現実には存在するはずのない人物が、今私の目の前に居る。
私は自分の立っている場所が急に無くなったように、自分の視界が下がったのを感じた。
*
「な、なぜ第3軍が動いている? 第2以外の軍団は封じ込める作戦のはずでは……」
腰を抜かしたのか、地面に座り込んだ男は小声で何かを呟いているようだが、ダンはそれをあっさりと無視する。
「さて? 『国軍』だの『王命』だのと色々とおっしゃいましたけど、ちょっとお話を伺えますかね?」
見過ごせない『騙り』についてダンが男に対して尋ねる。
すると男は急に顔を上げると周りに聞こえる様に大声で一つの命令を下した。
「――この者達が『第3軍』であることを示すものは何一つない! 『王』の威光を笠に着る、逆賊を討つべし! 全員、攻撃開始!!」
男の言葉を聞いた周りにいた全員が一気に武器を構え始めた。
「――既にこちらの武力は見せた気がするんですけど……。この人達、正気ですかね?」
「どうにもここでダンさんを見逃すことは出来ない事情でもありそうですね?」
まあ既に戦闘は起きているので、とりあえずダンは目の前の男を殴って気絶させると、腰の武器ポーチから木刀を抜いて一気に駆け出した。
*
「王都に続く街道の封鎖、ですか。さすがにこの辺りは第2軍の管轄なんですけどねぇ? 彼らは王都に引きこもったままなんでしょうか?」
あの後、人数が人数だったので時間が若干掛かってしまったが、全員無力化することに無事成功し(若干名、打ち所が悪かったのか死者が出た事を成功と言うのかはともかく)、現在は筆頭騎士と言った男を含めて数名の尋問をしているダンが聞きだしたことを再度確認する。
「しょ、詳細は知らないが、第2軍から連絡が来るまで待機を命じられていました」
青い顔をした筆頭騎士のバランが、ダンの質問にそう答える。
ここまで従順にダンの質問に答えるのは理由がある。
全員を叩き伏せて陣営の中を調査した結果、男達の体液で汚された被害者を天幕で発見した事に、ダンがそれは怒り心頭といったようになってしまったのだ。
そして「事情を話せ。大したことを知らなければこうなる」と、男達の目の前でダンへ最初に話しかけてきた男の首を手刀で切り落としたのだ。
それから我先に知っていることは話すとワーワーギャーギャーと一斉に話し始めた男達の目の前で、ダンが首を落とした男の腰辺りをさらに叩き切って、「一人ずつ、聞き取れる様に話せ」と言えば、男達は余計な事を言ってダンの機嫌を損ねないように顔色を伺いながら自分達が知っていることを話し始めたのだ。
そうしてある程度の事情を聞き出したダン達が頭を突き合わせる。
「貴族の私兵部隊ってダンさん彼らを見て、そう言いましたよね? それに前に聞いた話だと、第2軍って貴族達が集まってる軍団なんですよね? だとすると――」
傍らにいるルフの顔を見ながらも、ウェンディが自分の中で考えていた想像をダンへと伝える。
謀反。あるいはクーデター。
「――あー、まあ確かにその可能性はありますけど……。それをしてどうなると言うんでしょうね?」
第2軍に貴族たちが集められているのは、ある意味では貴族家にとっての人質のようなものであり、またある意味では他家の突出を牽制させるための相互監視の名目もある集まりだ。
まあ人質としての意味合いは貴族家の嫡男でない者達がほとんどであり、今となっては相互監視の意味合いだけが生きているのが実情だ。
これは昔、貴族家の長男達が多く勤めていた時期に大事件があって、ほとんどの家の長男が死亡したことに多くの貴族家から体制を変える嘆願が集まった為だと言われている。
その裏事情を話している時に、ルフだけが遠い目をしていたのだが。
仮にクーデターを起こしたとして、どこの貴族家が代表となるのか、という問題がすんなり解決できるとも思えない。
確実に血で血を洗うような抗争が起きることは必至である。
さすがにそういった点を気づかない当主ばかりではないはずなのだが……。
「行ってみるしかないですね王都に。この目で見なければ、真実を間違えるかもしれませんし」
そういってダン達は王都へと歩みを進める。
ちなみに生存を許された男達は、ルフの魔法により首だけを出して全員、道の脇の地面に埋められた。
残されたのは被害者たち。
ついでに人数分の剣と服を置いて、ダン達は王都へと向かった。
「助けてくれ~!」という男達の言葉は聞かなかったことにした。
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学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
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