元兵士その後

ラッキーヒル・オン・イノシシ

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王都に潜入する

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 思わぬところで時間を食ってしまったので、ダン達が王都近くにまで着いた時には、もう日も暮れ始める頃であった。
 クロフォード王国の中心に位置する王都ではあるが、いつの間にか発生している魔物の襲撃などが考えられるため、王都の四方に設けられた門には夜でもかがり火が焚かれ周囲を照らし、兵士が周囲を警戒していた。

「……一応、第2軍がに警戒しているようですねぇ」
「それが何か変なの?」
 その様子を見てダンが言った言葉に含みがあるように聞こえて、キョーコがダンへと問いかける。
「あー、そのー……。いつも通りなんですけどね? そのやっているのは輜重部隊――つまりは『現』第3軍が人員を出しているんですよ。あいつら『軟弱』だから、『夜通し警備をやっているとまともに戦えない!』とか何とか言って、隊舎から出てこないんですよねぇ。おかげでコッチが割りを食って……」
 ブチブチと、今にも唾を吐きだしそうな顔をしながらダンが愚痴る。
「あ~、ダンさんが大変なのは分かったよ。でもそれじゃあ何で今はその第2軍が警備に出てるんだ?」
「さぁ?」

 現在ダン達が居る場所は王都東門がギリギリ見える丘の影。
 そこに全員が伏せて隠れている状態だ。

 隠れると言っても道からそう外れていない場所であり、丘といっても膝丈くらいの起伏である。
 正しく、誇張しなければただの地面の起伏だ。
 目ざとい人間ならば人の頭がポコポコと地面から出ていることに気づけるはずである。

 しかし今は門からの距離と、日も落ちてきたゆえ周囲の明るさが無いおかげで隠れられる状況であり、ダンの記憶にもここ以上の隠れるのに適した場所が思い当たらないので、全員揃って伏せて見つからないようにしているのだ。

「というか、ダンさん第なん軍? とかいう部隊のえらい肩書を持ってるんだから、堂々と門から入れるんじゃないの?」
 マロンの指摘にダンは唸りつつ首を傾げる。
「う~ん……。正直通れるかどうかと言われると、十中八九、確実に諍いが起きる気がするんですよねぇ。主に2つの理由が挙げられるんですが」
「1つ目は?」

「僕と第2軍の相性がとてつもなく悪い」
 第1の理由にと言ったダンの口調は真面目そのものだ。正直ダンの過去の話や、ダンと長い付き合いをしていてダン自身の性格などを知っていなければ鼻で笑ってもいい理由だが、そこはグッと堪えてもう一つの理由を聞く。

「……もう一つの方」
「ぶっちゃけ『第3軍』の肩書は勝手に決められた意趣返しみたいに使ってるんですけど、そもそも設立理由自体を僕が知らないので行動方針が実は合ってない可能性があって、どう強気に出て良いか分かってないんですよねぇ」
「いや、ここまで来てソレを言うの?」
 結構ホイホイと『肩書』を使っていた記憶があるのだが? とマロンがダンの顔を見つめると、ダンは照れたように頭を掻いていた。

「まあ確実に1つ目の理由の方が引っかかると思いますよ? ちょっと遠目ですけど、あそこに立っている彼らは第2軍軍団長派ですから。ま、第2軍のほとんどがそうなんですけどね?」

 ダンの知らぬところでの話ではあるが、ダンを慕う(強烈な訓練による洗脳とも言うが)第2軍の少数派は全員漏れなく第3軍に再編されているため、現在の第2軍には軍団長派しか存在していなかったりする。

「それって――」
 ダンを訓練の途中で虐めていた? とマロンが視線で問いかけるとダンが頷く。
「ええ。――各種属性の耐性を鍛えるのにご協力いただいた皆さんです」
「やっぱり訓練感覚だった!」
 ダンの返しにマロンは小声で叫んだ。

「とはいえ、訓練場と同じノリで魔法を使われても騒ぎになりますからね。とりあえず偵察に行ってきますから、皆さんはここで待っててもらえますか?」
 そう言うとダンはボケ~としていたタマモを掴むと自分の頭の上に乗せ、「な、なんじゃぁ!?」と訳が分からずに狼狽しているタマモと一緒に、両手両足を使って伏せたまま東門へと接近していく。

「あの姿勢であの速度か……。エミリーは行けるか?」
「正直あの姿勢で移動するとなれば遅れますね。というか人がしていい動きなのでしょうか?」
 ダンが遠のいていく姿を見てルフは隣にいたエミリーに問いかけるが、エミリーも無理だと首を横に振った。というかサラッとダンを人外だと評していた。

 そうこうしているうちに、ダンが門に居た警備の人員に気づかれずに東門近くまで接近することに成功すると、やおらその場で仰向けに体を回転させ、右手にタマモを掴むと一瞬動きを止めた。
 その時点でおおよそを察した仲間達が「あ~」と合掌をタマモに送った。

 次の瞬間、ダンが再度うつ伏せの状態に体を回転させる勢いを利用して、右手を思いっきり振り回してタマモを空高くへと打ち上げた。
「ぎにゃ――」
 悲鳴を上げたタマモであったが、その姿が猛烈な勢いで遠のいた為、空耳かと警備の人員の興味をそれほど引くことなく空高くへと飛んでいった。

 しばらくして落ちてきたタマモをつかみ取ったダンが仲間達の下に戻ってくる。
「ふぅ、タマモがやらかしたおかげでバレたかと思いましたよ」
「碌な説明もせずに人を投げ飛ばしておいて、よく言うわ!……とりあえず上から見ても、門の内側にもそれなりの人数がおったぞ。街中までは分からんかったが」
 最低限の偵察を行ったタマモが言う。

 ちなみに確認作業が出来たのは頂点の位置に居た時間だけで、上昇時は風圧とスピード、下降時は落下の恐怖から確認作業どころでは無かったと後日仲間に語っていたタマモであった。

「やはり強行突破すると大事になりそうですね」
「「「強行突破を考えてたんかい!!」」」
「まあ案のひとつとして? では次の案を選択しますか」
 ツッコミをスルーすると、ダンはニカリと笑って言った。
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