110 / 116
王都に潜入する
しおりを挟む
思わぬところで時間を食ってしまったので、ダン達が王都近くにまで着いた時には、もう日も暮れ始める頃であった。
クロフォード王国の中心に位置する王都ではあるが、いつの間にか発生している魔物の襲撃などが考えられるため、王都の四方に設けられた門には夜でもかがり火が焚かれ周囲を照らし、兵士が周囲を警戒していた。
「……一応、第2軍がいつも通りに警戒しているようですねぇ」
「それが何か変なの?」
その様子を見てダンが言った言葉に含みがあるように聞こえて、キョーコがダンへと問いかける。
「あー、そのー……。警戒自体はいつも通りなんですけどね? そのいつもやっているのは輜重部隊――つまりは『現』第3軍が人員を出しているんですよ。あいつら『軟弱』だから、『夜通し警備をやっているとまともに戦えない!』とか何とか言って、隊舎から出てこないんですよねぇ。おかげでコッチが割りを食って……」
ブチブチと、今にも唾を吐きだしそうな顔をしながらダンが愚痴る。
「あ~、ダンさんが大変なのは分かったよ。でもそれじゃあ何で今はその第2軍が警備に出てるんだ?」
「さぁ?」
現在ダン達が居る場所は王都東門がギリギリ見える丘の影。
そこに全員が伏せて隠れている状態だ。
隠れると言っても道からそう外れていない場所であり、丘といっても膝丈くらいの起伏である。
正しく、誇張しなければただの地面の起伏だ。
目ざとい人間ならば人の頭がポコポコと地面から出ていることに気づけるはずである。
しかし今は門からの距離と、日も落ちてきたゆえ周囲の明るさが無いおかげで隠れられる状況であり、ダンの記憶にもここ以上の隠れるのに適した場所が思い当たらないので、全員揃って伏せて見つからないようにしているのだ。
「というか、ダンさん第なん軍? とかいう部隊のえらい肩書を持ってるんだから、堂々と門から入れるんじゃないの?」
マロンの指摘にダンは唸りつつ首を傾げる。
「う~ん……。正直通れるかどうかと言われると、十中八九、確実に諍いが起きる気がするんですよねぇ。主に2つの理由が挙げられるんですが」
「1つ目は?」
「僕と第2軍の相性がとてつもなく悪い」
第1の理由に相性と言ったダンの口調は真面目そのものだ。正直ダンの過去の話や、ダンと長い付き合いをしていてダン自身の性格などを知っていなければ鼻で笑ってもいい理由だが、そこはグッと堪えてもう一つの理由を聞く。
「……もう一つの方」
「ぶっちゃけ『第3軍』の肩書は勝手に決められた意趣返しみたいに使ってるんですけど、そもそも設立理由自体を僕が知らないので行動方針が実は合ってない可能性があって、どう強気に出て良いか分かってないんですよねぇ」
「いや、ここまで来てソレを言うの?」
結構ホイホイと『肩書』を使っていた記憶があるのだが? とマロンがダンの顔を見つめると、ダンは照れたように頭を掻いていた。
「まあ確実に1つ目の理由の方が引っかかると思いますよ? ちょっと遠目ですけど、あそこに立っている彼らは第2軍軍団長派ですから。ま、第2軍のほとんどがそうなんですけどね?」
ダンの知らぬところでの話ではあるが、ダンを慕う(強烈な訓練による洗脳とも言うが)第2軍の少数派は全員漏れなく第3軍に再編されているため、現在の第2軍には軍団長派しか存在していなかったりする。
「それって――」
ダンを訓練の途中で虐めていた? とマロンが視線で問いかけるとダンが頷く。
「ええ。――各種属性の耐性を鍛えるのにご協力いただいた皆さんです」
「やっぱり訓練感覚だった!」
ダンの返しにマロンは小声で叫んだ。
「とはいえ、訓練場と同じノリで魔法を使われても騒ぎになりますからね。とりあえず偵察に行ってきますから、皆さんはここで待っててもらえますか?」
そう言うとダンはボケ~としていたタマモを掴むと自分の頭の上に乗せ、「な、なんじゃぁ!?」と訳が分からずに狼狽しているタマモと一緒に、両手両足を使って伏せたまま東門へと接近していく。
「あの姿勢であの速度か……。エミリーは行けるか?」
「正直あの姿勢で移動するとなれば遅れますね。というか人がしていい動きなのでしょうか?」
ダンが遠のいていく姿を見てルフは隣にいたエミリーに問いかけるが、エミリーも無理だと首を横に振った。というかサラッとダンを人外だと評していた。
そうこうしているうちに、ダンが門に居た警備の人員に気づかれずに東門近くまで接近することに成功すると、やおらその場で仰向けに体を回転させ、右手にタマモを掴むと一瞬動きを止めた。
その時点でおおよそを察した仲間達が「あ~」と合掌をタマモに送った。
次の瞬間、ダンが再度うつ伏せの状態に体を回転させる勢いを利用して、右手を思いっきり振り回してタマモを空高くへと打ち上げた。
「ぎにゃ――」
悲鳴を上げたタマモであったが、その姿が猛烈な勢いで遠のいた為、空耳かと警備の人員の興味をそれほど引くことなく空高くへと飛んでいった。
しばらくして落ちてきたタマモをつかみ取ったダンが仲間達の下に戻ってくる。
「ふぅ、タマモがやらかしたおかげでバレたかと思いましたよ」
「碌な説明もせずに人を投げ飛ばしておいて、よく言うわ!……とりあえず上から見ても、門の内側にもそれなりの人数がおったぞ。街中までは分からんかったが」
最低限の偵察を行ったタマモが言う。
ちなみに確認作業が出来たのは頂点の位置に居た時間だけで、上昇時は風圧とスピード、下降時は落下の恐怖から確認作業どころでは無かったと後日仲間に語っていたタマモであった。
「やはり強行突破すると大事になりそうですね」
「「「強行突破を考えてたんかい!!」」」
「まあ案のひとつとして? では次の案を選択しますか」
ツッコミをスルーすると、ダンはニカリと笑って言った。
クロフォード王国の中心に位置する王都ではあるが、いつの間にか発生している魔物の襲撃などが考えられるため、王都の四方に設けられた門には夜でもかがり火が焚かれ周囲を照らし、兵士が周囲を警戒していた。
「……一応、第2軍がいつも通りに警戒しているようですねぇ」
「それが何か変なの?」
その様子を見てダンが言った言葉に含みがあるように聞こえて、キョーコがダンへと問いかける。
「あー、そのー……。警戒自体はいつも通りなんですけどね? そのいつもやっているのは輜重部隊――つまりは『現』第3軍が人員を出しているんですよ。あいつら『軟弱』だから、『夜通し警備をやっているとまともに戦えない!』とか何とか言って、隊舎から出てこないんですよねぇ。おかげでコッチが割りを食って……」
ブチブチと、今にも唾を吐きだしそうな顔をしながらダンが愚痴る。
「あ~、ダンさんが大変なのは分かったよ。でもそれじゃあ何で今はその第2軍が警備に出てるんだ?」
「さぁ?」
現在ダン達が居る場所は王都東門がギリギリ見える丘の影。
そこに全員が伏せて隠れている状態だ。
隠れると言っても道からそう外れていない場所であり、丘といっても膝丈くらいの起伏である。
正しく、誇張しなければただの地面の起伏だ。
目ざとい人間ならば人の頭がポコポコと地面から出ていることに気づけるはずである。
しかし今は門からの距離と、日も落ちてきたゆえ周囲の明るさが無いおかげで隠れられる状況であり、ダンの記憶にもここ以上の隠れるのに適した場所が思い当たらないので、全員揃って伏せて見つからないようにしているのだ。
「というか、ダンさん第なん軍? とかいう部隊のえらい肩書を持ってるんだから、堂々と門から入れるんじゃないの?」
マロンの指摘にダンは唸りつつ首を傾げる。
「う~ん……。正直通れるかどうかと言われると、十中八九、確実に諍いが起きる気がするんですよねぇ。主に2つの理由が挙げられるんですが」
「1つ目は?」
「僕と第2軍の相性がとてつもなく悪い」
第1の理由に相性と言ったダンの口調は真面目そのものだ。正直ダンの過去の話や、ダンと長い付き合いをしていてダン自身の性格などを知っていなければ鼻で笑ってもいい理由だが、そこはグッと堪えてもう一つの理由を聞く。
「……もう一つの方」
「ぶっちゃけ『第3軍』の肩書は勝手に決められた意趣返しみたいに使ってるんですけど、そもそも設立理由自体を僕が知らないので行動方針が実は合ってない可能性があって、どう強気に出て良いか分かってないんですよねぇ」
「いや、ここまで来てソレを言うの?」
結構ホイホイと『肩書』を使っていた記憶があるのだが? とマロンがダンの顔を見つめると、ダンは照れたように頭を掻いていた。
「まあ確実に1つ目の理由の方が引っかかると思いますよ? ちょっと遠目ですけど、あそこに立っている彼らは第2軍軍団長派ですから。ま、第2軍のほとんどがそうなんですけどね?」
ダンの知らぬところでの話ではあるが、ダンを慕う(強烈な訓練による洗脳とも言うが)第2軍の少数派は全員漏れなく第3軍に再編されているため、現在の第2軍には軍団長派しか存在していなかったりする。
「それって――」
ダンを訓練の途中で虐めていた? とマロンが視線で問いかけるとダンが頷く。
「ええ。――各種属性の耐性を鍛えるのにご協力いただいた皆さんです」
「やっぱり訓練感覚だった!」
ダンの返しにマロンは小声で叫んだ。
「とはいえ、訓練場と同じノリで魔法を使われても騒ぎになりますからね。とりあえず偵察に行ってきますから、皆さんはここで待っててもらえますか?」
そう言うとダンはボケ~としていたタマモを掴むと自分の頭の上に乗せ、「な、なんじゃぁ!?」と訳が分からずに狼狽しているタマモと一緒に、両手両足を使って伏せたまま東門へと接近していく。
「あの姿勢であの速度か……。エミリーは行けるか?」
「正直あの姿勢で移動するとなれば遅れますね。というか人がしていい動きなのでしょうか?」
ダンが遠のいていく姿を見てルフは隣にいたエミリーに問いかけるが、エミリーも無理だと首を横に振った。というかサラッとダンを人外だと評していた。
そうこうしているうちに、ダンが門に居た警備の人員に気づかれずに東門近くまで接近することに成功すると、やおらその場で仰向けに体を回転させ、右手にタマモを掴むと一瞬動きを止めた。
その時点でおおよそを察した仲間達が「あ~」と合掌をタマモに送った。
次の瞬間、ダンが再度うつ伏せの状態に体を回転させる勢いを利用して、右手を思いっきり振り回してタマモを空高くへと打ち上げた。
「ぎにゃ――」
悲鳴を上げたタマモであったが、その姿が猛烈な勢いで遠のいた為、空耳かと警備の人員の興味をそれほど引くことなく空高くへと飛んでいった。
しばらくして落ちてきたタマモをつかみ取ったダンが仲間達の下に戻ってくる。
「ふぅ、タマモがやらかしたおかげでバレたかと思いましたよ」
「碌な説明もせずに人を投げ飛ばしておいて、よく言うわ!……とりあえず上から見ても、門の内側にもそれなりの人数がおったぞ。街中までは分からんかったが」
最低限の偵察を行ったタマモが言う。
ちなみに確認作業が出来たのは頂点の位置に居た時間だけで、上昇時は風圧とスピード、下降時は落下の恐怖から確認作業どころでは無かったと後日仲間に語っていたタマモであった。
「やはり強行突破すると大事になりそうですね」
「「「強行突破を考えてたんかい!!」」」
「まあ案のひとつとして? では次の案を選択しますか」
ツッコミをスルーすると、ダンはニカリと笑って言った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる