元兵士その後

ラッキーヒル・オン・イノシシ

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床下からこんにちはする

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 時間を少し巻き戻し。

 王都東門の警備を見て正面突破は少々面倒そうだと判断したダンは、仲間を引き連れてとある場所へと移動をしていた。

「……ってなんなんですか?」
 誰かがそう漏らした言葉に、ダンはあっけらかんとした様子で答える。
「ん? 王都のですけど?」

 そこは王都から見れば下流に当たる場所の川の中ほどに接続された、明らかに人の手で作られた人工物のトンネルであった。そしてそこから川へと水が吐き出されているのがその目に見える。
 とはいえダンに案内されなければトンネルの存在すら分からないように偽装された造りをしており、よくよく見れば明らかに人の手で植えられたようなトンネルを隠すような周りに生えた不自然な植樹や、人の視覚の隙をつくように傾斜をつけて作られたトンネルの出口部分の構造など、よほど注視して見ていなければ見落とすようなカモフラージュをされていた下水排水口。
 さらに表から見えないような位置には侵入防止用として鉄柵が作られているソレは、王都へと無断で入ろうとする人や動物を防ぐための物であり――

「え? まさか――」
「仕方ありませんので、を使わせていただこうかなぁ、と」

 サササッとトンネルの入り口まで降りたダンは、トンネルの入り口に付けられた鉄柵の中の1本を握りしめると、グリグリと回すように捻り始める。
 連結されているように見えて、その一本は元々外すことを想定されていたのだろう。よくよくダンの手元を見れば同じ方向へと回していることから、その棒はねじ込み式にて固定されていたのだろうと分かる。
 そしてダンがしばらく回していた棒がトンネルから抜けると、その棒を取っ手のように奥へと押し込む。するとそれにつられて2,3本ほど連結されたように動いた。
 まるで扉の様だ。

「職人技の仕掛けだな」
「まあ見てすぐに分かってしまう様では、悪人達に良いようにされてしまいますからねぇ」

「……私が生きていた頃から在った仕掛けなのか?」
「噂はありましたけどね?」
 ルフがボソリと呟くと、アレックスが苦笑交じりに答える。
 ちなみにエミリーは知っていたが、元々の性分ゆえにか、いつか自身が使えるかもしれない情報はあまり他人へと教えたことは無かった。
 『何』に使うつもりだったのかは本人の胸の内にしか分からないが。

 とりあえず全員がトンネルの内側に入った時点で、またダンが鉄柵を元通りの状態へと戻す。
 そしてトンネル内の壁に隠されるように備えられていた、油の染みた布が巻かれた松明を取り出すと『炉の火入れ』と小さな火種(超高温)を生み出して着火する。

「さて、記憶を思い出して――こっちの方角ですね」
 トントンと頭を叩き、そう宣言した下水トンネルを歩き始めるダン。

「思い出して。って無事にたどり着けるんだよねダンさん?」
 思いっきり不審な事を言ったダンに、確認するように質問するファーニ。手には念のためにとマッピング用に手帳を開いていた。
「あー、たぶん? 何せしか利用したことが無いものでして」
「……それ、いつの話?」

「えー……。2、いや3年前?」
 ダンの答えを聞くなり、他にも手帳を開いてマッピングを始める者が出た。
「だ、大丈夫だと思いますよ? そう複雑な道では無かったはずですから」
 そう言ってダンはトンネルを進んで行く。

 下水トンネルは基本円形に作られているが、その後のメンテナンスなどの為に人が入ることを想定して足場となる床が作られており、ダン達はそこを歩いていた。
 しばらく進んでいるとリルとロウキが何かに気づいたのかダンへと質問する。

「ちょっと聞いてもいいダンさん?」
 ダンが首だけ振り返って「何か?」と視線で問いかける。
「入るときに感じた臭いだが……、奥に進んでもそれほど臭いが強くなった気がしないのは何故だ?」
 リルとロウキの2人は強い臭いというのは嫌いではあるが、元々野生で生きてきた経験を持っているので排せつ物などの臭いぐらいで参ることは無い。
 ……嗅ぎたいかどうかは別問題だが。

 だが普通考えれば臭いの元に近づけば更に臭いが強くなるはずと考えていた2人には、トンネルを奥へ奥へと進むのに臭気が変化していないことに疑問を感じていたのだ。

 その疑問にダンがちょっと言いづらそうに答える。
「う~ん。実は王都の排水って、本当は造りになってるはずなんですよね~」
「「え? 臭いがしない?」」
「ふむ。それは私が説明しようか」

 話を聞いていたルフが進み出て説明を始めた。
「王都で出された生活排水は、王都の地下に張り巡らされた下水網に落ちてくる。それは更に複数個所作られた『処理槽』と呼ばれる水槽に一度入り、そこで処理された水の『うわ水』が最終的に外へと流れ出る構造になっておるのだ」
「「『しょりそう』?」」
「ああ。正式名称は『スライム式処理分解水槽』と名付けられた場所だ。水の中のモノをスライムに食わせて、残った水が溢れて外に流すように設計されているのだが……。臭いがするという事はスライムの処理能力を超えているのか?」
 ルフが自信満々に言うのは、王都を作る際に上下水道や道などを初代王族時代から、王族が主体となって計画的に作ってきたという経緯があるからだろう。

 しかし――
「あー、たぶん臭いがするのは『誤接続』があるからだと思いますね」とダンが言った事に、ルフの顔が「まさか!?」といったモノへと変わった。
「ご、『誤接続』だと?」
「または工事ミスとも言いますか……。ほら、あそこを見てください」

 そう言ってダンが指さす方を追う。ダンが松明を上に掲げると、そこには色のついた水が落ちてくる細い管が見えた。

「本来ならスライムが居る場所まで持っていくはずが、途中で繋ぎ間違えたんでしょうね。そう多くはありませんけど、割と見かけますね」
「な!? そういった事が無いように、工事をする際に審査する部署があるはずなのだが?」
「形骸化してると言いますか……。ぶっちゃけ現場確認をしてないんじゃないですかね?」

 ダンの言葉にガックリと肩を落とすルフ。
 ここが下水トンネルでなければ跪きそうなくらいに気落ちしていた。

「ま、そういった事は全て解決した後で――ふむ?」
 そんなルフを慰めていたダンが何かに気づいて前方を松明で照らす。
 松明で照らされた範囲に、黒い色をしたスライムが侵入してきた。
「またスライム池からのですか。――定期処理もしてないんですかね?」

 スライムを利用した汚水処理では、定期的に増殖したスライムを間引く必要がある。公共施設である下水道も王国軍の見るべき管轄なのだが、最近は冒険者ギルドへ『下請け』を出していたはず。
 まあ好き好んで受けたい依頼でもないから後回しにされてしまった可能性もあるかと、ダンは武器ポーチから剣を抜いた。

『――我は暗闇の中で生まれたモノ。そしてこの暗闇に住むスライム達の王であり、頂点の』
「よいしょ!」
 バンッ! と『鞘』の広い面を生かして叩き潰すダン。闘気オーラも併用して、容赦なく擦り潰されたスライムが生命活動を終えた。

「え? 今なにか喋ってなかった? そのスライム??」
「たま~に喋る個体が出てくるんですよねぇ。何か怪しい魔法薬を下水に流してる人でも居るんでしょうか?」
「「「いやいや、え? 今のは違うんじゃ?」」」

 などと言いつつも、ダンの記憶が確かだったのか、無事に王都へ通じる隠し通路に到着した。
 壁の一部がスライドして開いた通路の先にある小部屋。
 その壁の一面に設けられた階段を登って、ダンが天井の板を何やら小刻みに動かすと、パカリと蓋が開くように天井の板が持ち上がった。
 途中何か声が聞こえた気もしたが、ダンがそのまま開けたのだから問題ないだろうと全員が見ていると、なにやらダンの動きが止まったように見えた。

 何かあったのか? と訝しんでいると、ダンが普通に動き出し上に上がった。そして手だけが突き出されると「コイコイ」と手招きされる。

 そして全員が上に移動をすると、そこは大きな建物の中のようであった。
「皆様お疲れさまでした。そして王都冒険者ギルドへようこそ」
 全員が上がり終えると、ギルド職員の制服を着た人物が丁寧な挨拶をする。

 誰だろう? と皆が思っていると、
「昔、僕が助けた子ですよ」と紹介にもなっていないダンの紹介がされた。

「「「いや、ちゃんと紹介してくださいよ!」」」
 仲間だけではなく、そのギルド職員からもツッコミが入ったのだった。




ーーーーーーーー

 何とか更新速度を戻せるように頑張ります。

 年度末進行が尾を引く><
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