元兵士その後

ラッキーヒル・オン・イノシシ

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してぃーあどべんちゃー

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「うん。まったく理解の範囲外だね? 究極的に訳わからんね!?」

「やれやれ……。『英知』などと大層な2つ名を名乗っておきながら、この程度の理解すら及ばないとは」
「まったくですね。この『変態』が」
「仕方ありませんよ。うつけ者ですからこの『変態』は」

「だから辛辣ぅ! 抉るような言葉が心に痛い!?」

 なぜか会議室を借りた説明という名の漫才を見せられたダンは果たしてどうするべきなのか悩んでいた。

「師匠とそのお連れ様。お茶が入りましたよ」
「ああ、いただきますね」

「サラッと呑気にお茶飲んでないで、この人たちの説明の捕捉プリーズ!」

 何やら喚き続けるホビットの男性。
 ギルド相談役で、かつてルフ達のパーティにも一時的にいたことのある人物らしいのだが……

「え~と? 『変態』さんに何を説明すればいいんでしょうか? 前もって言っておきますけど、ウチのメンバーへの変態行為は認められませんからね?」
「だから『変態』じゃなくて『英知』! ホビット族の中でも魔法斥候マジックスカウトとして、昔はそれなりに有名だったんだよ!?」

 と言われてもダンは知らない。そもそも名前すら聞いていない人の事をどう判断するべきなのか?

「はぁ。それで、僕の名前は知っているようですけど? 誰かいただけますか?」

 ダンの言葉にルフが「ああ」と手を打って説明をしてくれる。

「こいつは『クルチャック』変態といって言ってな。まあ自分で言った通り、私達がの時に斥候職として活動していたホビット変態族だ」
「名前と2つ名が逆ぅ! じゃなくて『英知』が正しいから! そしてホビットを変態のように言わないでぇ! 全ホビットから命狙われちゃうからぁ!!」

「ふむ? ちなみに『変態』の理由は?」
「こいつが現役時代に娼館通いの常連だったからだ。そしてダンジョンの罠で、『不老』のに掛かったまま、その後呪いを解かなかった事も原因の一つだな」

「あれは――うぐぐ」
 さすがに呪いに掛かったままで生活していたのは、ぐぅの音もでない真実だったようだ。

「ねぇねぇダンさん?」
「ん? どうしましたキョーコさん?」

 キョーコがダンへと問いかける。

「その、ってなの? お得感しかない罠っぽいんだけど?」
「それは違うぞ。不老は間違いなく呪いの一つだ。確かに老いが無いことは利点に思えるが別の呪いは重複して掛かる場合があるし、そして解呪リムーブカースをした際に、呪いを受けていた期間の老いが加算されるからな。……そこの『変態』に解呪魔法を掛けたら、おそらく一発で老衰するだろうな?」

 キョーコの問いかけにダンに変わってルフが説明してくれる。
 聞けば確かにリスキーな欠点だ。

 ダンも内心『へー、そうなんだ』と心の中でメモをした。

「そこまで正確に事情を知ってるということは、やっぱり本当に『魔道狂』なんだね? セレスティナ皇后にって伝えたら、僕、その場で八つ裂きにされちゃうかも」

「「「え? 元王妃様ってデンジャラスなの!?」」」

「どうだろうな? 褒美として解呪魔法でも使ってくれるんじゃないか?」

「それやっぱり僕が死んじゃうやつ! ……ふぅ。とりあえず話が進まないから、その話は横に置いておこうか。今は王都中が戒厳令を出されている状態なんだ」
?」
「どうも第2軍が暗躍しているみたいだね? 第1とは連絡が取れず、第3もメンバーのほとんどは監視下に置かれているようだ。そして主要メンバーの居所は、目下冒険者ギルドでも探している最中だよ」

 ダンはそこまで聞いて疑問に思ったことを聞く。
「ふむ? そのとは?」
「ん? 君が育てたっていう、剣姫けんき雷弓らいきゅう・聖女・城壁フォートレス走槍スピードスピアの5名だよ?」
「……誰?」

 ダンの記憶にあるのは、剣の訓練でボコボコにしてもへこたれない女兵士や、隠形や超長距離の弓の腕は良いので弱点となりそうな接近戦をとことんまで(地獄の訓練で)仕込んだ弓兵、なんか防御にだけ闘気オーラを巧みに扱えたので徹底的にを鍛えたキョーコの弟や、元行商人で輜重部隊隊長のおっさんをひたすら追い立てて逃げ足の強化をしたことくらいだ。

 聖女とやらはまったく分からないが。

「ともかく、冒険者ギルドの高ランク冒険者の顔は手配されてしまっているようで、ギルドとしてあまり自由に動けないんだ」
 クルチャックの言葉に、ダンは横に控えている弟子のルーシーを見る。確か記憶では彼女はBランクだったはずだ。

「たとえ元Bランク冒険者でも、ギルドの看板受付嬢として顔が知られてしまっているから動くとバレるんだよね?」
「なるほど。それでは僕らのパーティなら比較的自由に動けるのかな?」
「そう! ご明察! 特に僕ら世代でもなけりゃ、そこのだって無名だしね?」

 ルフ達もが過ぎてるから問題は無い、と。

「それで? は有りそうなんですか?」
「もちろん、それはね――」

 *

「王城、貴族の屋敷、そして下町ね」

 ダンは装備類を外し、ギルドで借り受けた普段着に着替えて王都を歩いていた。

 王城、貴族の屋敷には第1や第3の主要メンバーが囚われている可能性が高い場所であり、下町の方は第3軍のメンバーが匿われている可能性のある場所だそうだ。
 特に構成メンバーのほとんどが平民の輜重部隊時代の団員は、同じ平民が匿っている可能性が極めて高いらしい。

『くれぐれも第2軍の兵士達を刺激しないでね? まだ情報が集まり切ってないんだからさ』
 ギルドの出がけにクルチャックから言われた言葉だ。

 ダンだって分かっている。

「まあ、まずは下町から行きますか」
 王都の平民が暮らしている場所となると、ほぼ王都と同じ面積になる。
 なにせ中心に王城、その周囲が貴族街、そして貴族街と外壁の間が平民が住めるエリアだからだ。

 ドーナツ型のエリアは広大だ。だがある程度まとまった人数が匿われるとなると、大型の商店や施設と絞り込めるらしい。ダンはその1つに足を向けていた。

「お風呂お風呂~」
 ――調査に向かっていた!

 ルンタルンタ♪ と軽い足取りで目的地の1つである、王都に数ある公衆浴場の1つに到着したダンは、その入り口の光景にとっさに近くの建物の影へと身を隠した。

「――だからそんなやつは居ないって言ってるだろうが!」
「へたな隠し立てをすると、ただでは済まんぞ!?」
「「そうだそうだ!」」

 そこには公衆浴場の管理人である高齢の男性と、鎧を着た第2軍の兵士と思われる者達とが押し問答をしている場面であった。

「うちは代々王国から正式に許可をもらって営業してるんだ! 国王様に背いた事なんざしたことねぇよ! つうか、公衆浴場の使なんざとっとと撤回しろよ、このクズ兵隊が!」
「! おのれ平民風情が!!」

 管理人のヒートアップした口上に、こちらもヒートアップした兵士が腕を振り上げ――

 殴った。
 次の瞬間、殴った兵士の顔面が横にひしゃげる。

 何が起こったのだろうか?

「公衆浴場の使用禁止なんか、が許さん!!」
 手拭いを口元に巻き、両足を揃えたドロップキックを兵士に食らわせたダンがそこに居た。


―――――――――

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