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最終話
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冒険者は楽しかった。依頼をこなすのは達成感があった。エクスカリバーの厳しくも楽しい指導のおかげで、剣の腕もぐんぐん上達した。勇者のチートは有効だった。
何よりもアオとずっと一緒だった。いつも幸せで、いつも笑っていた。
こうやって、このまま旅を続けて行けると思っていた。忘れていた。アオはフェンリルで、俺は人間だ。
背が伸び、身体がたくましくなり、少年から大人になって嬉しかった。それで終わりでは無い。少しずつ、でも確実に、俺は剣を振れなくなっていった。それを受け入れるのが、辛かった。何も言わないアオが、もう終わりを見ているようで悲しかった。
剣は振れなくなっても、エクスカリバーとは、たくさん話した。勇者アキラの始まりから終わりまで、ずっと傍にいたエクスカリバーは、俺の真の相棒だった。
俺が、おじさんになり、遂におじいさんになり、ベッドから起き上がれなくなっても、アオは俺を愛している。アオにとっては、本当に俺だけが唯一の運命の番だ。アオを残して先に逝くことが、本当に苦しい。俺はアオも、妻と同じように残して行ってしまうのだ。
『おまえの人生には後悔が多すぎる。
アオとおまえは世界を越えて出会った。それ は奇跡であろう?アオも、おまえも、我も、素晴らしい時をともに過ごした。
無限のものなどない。いつか必ず終わるのじゃ。アオもそれは分かっておる。お前と番った時から分かっておったはずじゃ。
それでもやつは、お前を選ばずにはいられなかったのだぞ。
アキラ、悲しく、逝くな。
後悔しながら、苦しみながら、死ぬのは辛いぞ。』
エクスカリバーの言葉は俺の心に染みた。
時を同じくして、ウィルも病の床にいた。ソラは片時も傍を離 れず、抱きしめて手を握り、意識の無いウィルに、話しかけ続けた。それでも徐々に浅い呼吸になり、冷たくなっていく番を目をそらすことなく、しっかりと見送ったとのことだ。
その半時後、側近達が部屋に戻った時には、ソラの魔力が尽き始めていて、瞬く間にサラサラと消えていったそうだ。
それを聴いて、俺は泣いた。
「あいつの魔力は、とうに尽きていた。それをウィルとともにいたくて、何とか留まっていた。もう、留まる理由もなくなったのだろう。
幸せであったと思うぞ。」
「そうか…幸せか…俺もだ。俺もソラと会えて、番になれて、本当に幸せだ。」
「おまえには幸せを与えてもらった。俺はそれを抱えてずっと生きる。だから、アキラ、俺のことは心配するな。寂しいが、俺の魔力はまだ尽きそうにない。」
俺のやせた肩をアオがそっと抱いた。懐かしい、枯れ草みたいな匂いがして、鼻の奥がツーンとした。アオの胸に顔をくっつける。泣くな。俺よりもアオの方が寂しいんだ。
ああ、俺、もう逝くな。
アオが俺を抱きしめる。
「アキラ、愛している、おまえだけを。俺が生きている限りずっと。もし生まれ変わったとしても、俺は絶対にアキラを見つける。できるなら、帰ってこい。俺のもとに。」
アオ、おまえも泣くんだ。初めてみたぞ。
その涙を拭うのは俺の役目のはずなのに……
やっと声を出す。
「ありがとう、アオ。俺、しあわ……せ…だ。」
『お前の後悔、一つ、我が減らしてやる。』
は…何言ってんだ…エクスカリバー、こんなときに。
「武内さん!武内さん!聞こえますか?」
「パパ!パパ!聞こえる?」
何だ?俺はアオに抱えられて死んだんだよ!天国に行くんだよ!あ、天国か?
目を開ける。
「パパ~、パパ~!」
妻の声だ。身体はうまく動かない。
どういうことだ。全部壮大な夢だったのか。
『そんなわけあるまい。左手に何を持っておる?』
青灰色の石がついた銀の指輪。
フェンリルの指環。
無意識にきつく握りしめていた。
アオ、アオ…アオ………
おまえは本当にいたんだな……良かった……
涙が溢れた…
『おまえの後悔、一つ減らしてやる。こっちで、しっかりやるのだぞ。』
100年しないとだめなはずじゃ…ウィルの説は嘘か?まだ数十年しかたってない。
『我の力じゃ。
間もなく我の魔力も尽きる。おまえと出会えて、我は本当に楽しかったぞ。今度は後悔せずともよい人生を過ごせ。………』
おい!待て!エクスカリバー、おまえは俺の相棒だろう。おい!
もう、なんにも答えてくれない……
俺は家の玄関の前で倒れ、1ヶ月近く意識不明だったらしい。もう少しで生命維持装置を外されるところだったそうだ。
今、リハビリを頑張っている。
妻に助けられている。こんなはずじゃなかったんだけどな。
エクスカリバー、チャンスをありがとう。武内章として後悔しない人生を送るよ。
アオ、大好きだ。俺もずっとおまえを思うよ。
もし、この人生が終わって、本当に魂があって生まれ変われるなら、俺は何としてでも、アオに会いに行く。運命の番だからね、できないことなんてないはず。
アオ、待っててくれ。
あとがき
ここまで読んでくださってありがとうございます。結ばれてハッピーエンドでも良かったのですが、寿命の問題は避けて通れないと思いました。
ミミのことや、生まれ変わったアキラとアオの再会なども、いつか、書いてみたいなと思います。今度は人間同士だったら完璧ハッピーエンド!
♡くださった方、ありがとうございます!
とっても励みになります。
何よりもアオとずっと一緒だった。いつも幸せで、いつも笑っていた。
こうやって、このまま旅を続けて行けると思っていた。忘れていた。アオはフェンリルで、俺は人間だ。
背が伸び、身体がたくましくなり、少年から大人になって嬉しかった。それで終わりでは無い。少しずつ、でも確実に、俺は剣を振れなくなっていった。それを受け入れるのが、辛かった。何も言わないアオが、もう終わりを見ているようで悲しかった。
剣は振れなくなっても、エクスカリバーとは、たくさん話した。勇者アキラの始まりから終わりまで、ずっと傍にいたエクスカリバーは、俺の真の相棒だった。
俺が、おじさんになり、遂におじいさんになり、ベッドから起き上がれなくなっても、アオは俺を愛している。アオにとっては、本当に俺だけが唯一の運命の番だ。アオを残して先に逝くことが、本当に苦しい。俺はアオも、妻と同じように残して行ってしまうのだ。
『おまえの人生には後悔が多すぎる。
アオとおまえは世界を越えて出会った。それ は奇跡であろう?アオも、おまえも、我も、素晴らしい時をともに過ごした。
無限のものなどない。いつか必ず終わるのじゃ。アオもそれは分かっておる。お前と番った時から分かっておったはずじゃ。
それでもやつは、お前を選ばずにはいられなかったのだぞ。
アキラ、悲しく、逝くな。
後悔しながら、苦しみながら、死ぬのは辛いぞ。』
エクスカリバーの言葉は俺の心に染みた。
時を同じくして、ウィルも病の床にいた。ソラは片時も傍を離 れず、抱きしめて手を握り、意識の無いウィルに、話しかけ続けた。それでも徐々に浅い呼吸になり、冷たくなっていく番を目をそらすことなく、しっかりと見送ったとのことだ。
その半時後、側近達が部屋に戻った時には、ソラの魔力が尽き始めていて、瞬く間にサラサラと消えていったそうだ。
それを聴いて、俺は泣いた。
「あいつの魔力は、とうに尽きていた。それをウィルとともにいたくて、何とか留まっていた。もう、留まる理由もなくなったのだろう。
幸せであったと思うぞ。」
「そうか…幸せか…俺もだ。俺もソラと会えて、番になれて、本当に幸せだ。」
「おまえには幸せを与えてもらった。俺はそれを抱えてずっと生きる。だから、アキラ、俺のことは心配するな。寂しいが、俺の魔力はまだ尽きそうにない。」
俺のやせた肩をアオがそっと抱いた。懐かしい、枯れ草みたいな匂いがして、鼻の奥がツーンとした。アオの胸に顔をくっつける。泣くな。俺よりもアオの方が寂しいんだ。
ああ、俺、もう逝くな。
アオが俺を抱きしめる。
「アキラ、愛している、おまえだけを。俺が生きている限りずっと。もし生まれ変わったとしても、俺は絶対にアキラを見つける。できるなら、帰ってこい。俺のもとに。」
アオ、おまえも泣くんだ。初めてみたぞ。
その涙を拭うのは俺の役目のはずなのに……
やっと声を出す。
「ありがとう、アオ。俺、しあわ……せ…だ。」
『お前の後悔、一つ、我が減らしてやる。』
は…何言ってんだ…エクスカリバー、こんなときに。
「武内さん!武内さん!聞こえますか?」
「パパ!パパ!聞こえる?」
何だ?俺はアオに抱えられて死んだんだよ!天国に行くんだよ!あ、天国か?
目を開ける。
「パパ~、パパ~!」
妻の声だ。身体はうまく動かない。
どういうことだ。全部壮大な夢だったのか。
『そんなわけあるまい。左手に何を持っておる?』
青灰色の石がついた銀の指輪。
フェンリルの指環。
無意識にきつく握りしめていた。
アオ、アオ…アオ………
おまえは本当にいたんだな……良かった……
涙が溢れた…
『おまえの後悔、一つ減らしてやる。こっちで、しっかりやるのだぞ。』
100年しないとだめなはずじゃ…ウィルの説は嘘か?まだ数十年しかたってない。
『我の力じゃ。
間もなく我の魔力も尽きる。おまえと出会えて、我は本当に楽しかったぞ。今度は後悔せずともよい人生を過ごせ。………』
おい!待て!エクスカリバー、おまえは俺の相棒だろう。おい!
もう、なんにも答えてくれない……
俺は家の玄関の前で倒れ、1ヶ月近く意識不明だったらしい。もう少しで生命維持装置を外されるところだったそうだ。
今、リハビリを頑張っている。
妻に助けられている。こんなはずじゃなかったんだけどな。
エクスカリバー、チャンスをありがとう。武内章として後悔しない人生を送るよ。
アオ、大好きだ。俺もずっとおまえを思うよ。
もし、この人生が終わって、本当に魂があって生まれ変われるなら、俺は何としてでも、アオに会いに行く。運命の番だからね、できないことなんてないはず。
アオ、待っててくれ。
あとがき
ここまで読んでくださってありがとうございます。結ばれてハッピーエンドでも良かったのですが、寿命の問題は避けて通れないと思いました。
ミミのことや、生まれ変わったアキラとアオの再会なども、いつか、書いてみたいなと思います。今度は人間同士だったら完璧ハッピーエンド!
♡くださった方、ありがとうございます!
とっても励みになります。
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