愛はリンゴと同じ

turarin

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他人の気持ち

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  妾や、第二婦人は貴族にとって普通のことで、離婚の原因にはならない。それは頭では分かっているが、どうにも辛くて仕方がない。理由もなく悲しくて身の置き所が無いような気がする。

 父と母は昔から仲睦まじく、自分もそういう夫婦になるのだと思っていた。両親にはロバートが妾を囲ったとだけ伝えた。
 父は、
「辛いのか?よく休んで、ゆっくりしていけ」
 とだけ言った。聡い父のことなので状況を把握していないわけはなかった。

母は、黙って抱きしめてくれて、
「いいのよ。時間はたくさんあるから。」
と、耳元で優しく囁いた。
そうだ。何も急ぐことは無い…何だかとても疲れてしまった。久しぶりに、深く息が吸えた気がした。



 ロバートは本邸でぽつんと過ごしていた。自分はナタリーを愛しているし、約束も守っている。きっと彼女も幸せだと思っていた。それが彼女の返事も聞かず、言い捨てただけの約束とはちっとも思っていない。

 食事も1人で取り、執務も1人でした。生真面目な彼は、本邸の日は本邸で過ごした。ナタリーが居なくても予定外には、別邸へは行かなかった。

 そして、初めて感じたのだ。
 
 ナタリーがいないと寂しい…こんなにも味気無いと。それから生まれて初めて他人の気持を慮った。自分が別邸で過ごしている時、ナタリーも寂しかったのか……と。夜も、彼女は昨夜の自分のように、1人で眠っているのか……と。
 鼻の奥がつーんとして涙が出そうになり、そんな自分に戸惑った。

 メイリンは、お気に入りの愛玩動物ペットのようなものだ。彼女は、みすぼらしくて、哀れで、愚かで、でも、どことなくかわいくて放っておけない捨て猫のような存在だ。彼女への気持はナタリーに対するものと全く違う。ただ本邸には置いておけないのであんな形を取っただけだ。ほんの軽い気持ちだった。

 ロバートは途方にくれた。あんなにいつも愛をくれたナタリーが自分から離れてしまった。


 ともあれ、別邸の日になったので、メイリンの所へ向かう。そこで、恐ろしいことを聞いた。
「旦那様、旦那様のお子ができました…」

 血の気が引いた。平民の妾との子だと?
 ナタリーに約束したのに…義父上には、何と…

 しかし、落ち着いて考える。避妊には徹底的に注意していた。避妊に絶対的な信頼のある由良の花粉も、必ず使っていた。そんなはずは無い……

「わかった。身体をいたわってくれ。」
 言いおいて、その日は本邸に帰った。すぐさま公爵家の影に命じる。メイリンの素行を調べよと。

 結果は火を見るより明らかだった。別邸の庭師の若者と通じていた。ロバートが来ない夜はその若者と過ごしていた。メイリンにもリンゴは2つあったらしい。

 ロバートは愕然とした。愛されて当然で生きてきた人間が、妾に裏切られ、妻は実家に帰っている。

 メイリンと若者は領地から追放となった。鞭打ち等、厳しい処罰も有り得たのだが、ロバートにその気力はなかった。別邸の使用人達の話によると、先に熱を上げたのはメイリンの方だったらしい。とことん、どこが良かったのかわからない娘であった。




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