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最終話
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「リック、お母様はお父様とお話しがあるから、お庭でちょっと遊んでいられるかしら。」
ロバートの腕の中で不服そうなリックに、侍女が、
「リック様、エレンも共に遊びますよ。」
と、声を掛ける。
「リック、アランおじさんと遊ぼう!」
アランは両手を広げてリックを招く。
「うんっ!」
リックはロバートの腕の中から飛び出してアランの方へ勢いよく駆け出した。
客間には、義父母も待っていた。ロバートは、リックの温もりを惜しみながら、勧められるままに腰掛けた。
「さて、色々な経緯は、全て知っている。君が今回ここに来た目的は何だ?正直に言うと、妻も私も君の顔など見たくもないと思っている。」
「お父様……」
窘めるナタリーだが、父の隣を見ると母も憤然とした表情をしている。
「大変申し訳無いことをしました。不徳の致すところです。ナタリーを愛しています。是非戻って来て欲しいのです。また2人で力を合わせて公爵家を」
ロバートが言いかけると
「私、幾つもあるリンゴは要りませんの。」
「?」
「?」
「?」
「あなたの愛は、リンゴのようにたくさんあって誰にでも与えられるものなのでしょう?私のリンゴは1つ。そして私1人にだけもらえるリンゴが欲しかったですわ。」
「ナタリーすまなかった。僕が間違えていた。僕の愛は君だけだったんだ!愛しているんだ、君だけを。」
「ロバート、私はあなたを愛していました。」
「なら、戻って来てくれ!また2人で!」
「今は、もう………愛していませんわ。だから、私のリンゴはあなたにはあげられない。」
「ナタリー………」
「というか、私のリンゴ、どこかへ行ってしまいましたの。ある日、突然。」
「離縁しましょう、ロバート…」
「待ってくれ…」
「君の弁解は聞かない。ナタリーが公爵となる。事の経緯を広めて、君を潰してやろうとも思ったのだが、リックの父親だからな。路頭に迷わせるわけにもいかない。ナタリーも望まないそうだ。君には公爵家が持っている男爵位を譲ろう。今まで、ご苦労だった。」
「…………わかりました。ありがとうございます。」
実は覚悟はできていた。路頭に迷う覚悟すらしていた。賢い男なのだ。
数日後、ナタリーとリックは本邸に戻り、入れ替わりに屋敷を出て行くリックを見送った。
「父上、また会えますよね?」
涙目のリックは、子供ながらに何となく離縁と言うものを理解している。
「もちろんだ。愛しているよ。リック。」
ロバートはリックを抱きしめ頬に口付けをした。
「貴方はリックの父親なんだから、時々会いに来てもいいのよ。」
ナタリーは言う。いつものように綺麗だ。
「ハグしてもいいだろうか?親愛のバグだ。」
変な理屈で正当化する。ナタリーは眩しい金の瞳を少し細めて笑った。
「いいわ。」
嘗て、思う存分に抱きしめられた細い肩を緊張しながらそっと抱く。そして耳元で囁く。
「ナタリー、僕は君を愛している。諦めないからね。」
「ふふふ…ご自由に。」
ロバートは、とことん楽観的である。
数カ月後、爵位の継承などの手続きが終わり、漸く通常の日々が戻ってきた。公爵邸の中庭に笑い声が響く。そこには、ナタリーと、リック。そして、ロバートと、アランの姿が……。
なぜか、頻繁に『リックに会いたい』と遊びに来る2人であった。
ロバートの腕の中で不服そうなリックに、侍女が、
「リック様、エレンも共に遊びますよ。」
と、声を掛ける。
「リック、アランおじさんと遊ぼう!」
アランは両手を広げてリックを招く。
「うんっ!」
リックはロバートの腕の中から飛び出してアランの方へ勢いよく駆け出した。
客間には、義父母も待っていた。ロバートは、リックの温もりを惜しみながら、勧められるままに腰掛けた。
「さて、色々な経緯は、全て知っている。君が今回ここに来た目的は何だ?正直に言うと、妻も私も君の顔など見たくもないと思っている。」
「お父様……」
窘めるナタリーだが、父の隣を見ると母も憤然とした表情をしている。
「大変申し訳無いことをしました。不徳の致すところです。ナタリーを愛しています。是非戻って来て欲しいのです。また2人で力を合わせて公爵家を」
ロバートが言いかけると
「私、幾つもあるリンゴは要りませんの。」
「?」
「?」
「?」
「あなたの愛は、リンゴのようにたくさんあって誰にでも与えられるものなのでしょう?私のリンゴは1つ。そして私1人にだけもらえるリンゴが欲しかったですわ。」
「ナタリーすまなかった。僕が間違えていた。僕の愛は君だけだったんだ!愛しているんだ、君だけを。」
「ロバート、私はあなたを愛していました。」
「なら、戻って来てくれ!また2人で!」
「今は、もう………愛していませんわ。だから、私のリンゴはあなたにはあげられない。」
「ナタリー………」
「というか、私のリンゴ、どこかへ行ってしまいましたの。ある日、突然。」
「離縁しましょう、ロバート…」
「待ってくれ…」
「君の弁解は聞かない。ナタリーが公爵となる。事の経緯を広めて、君を潰してやろうとも思ったのだが、リックの父親だからな。路頭に迷わせるわけにもいかない。ナタリーも望まないそうだ。君には公爵家が持っている男爵位を譲ろう。今まで、ご苦労だった。」
「…………わかりました。ありがとうございます。」
実は覚悟はできていた。路頭に迷う覚悟すらしていた。賢い男なのだ。
数日後、ナタリーとリックは本邸に戻り、入れ替わりに屋敷を出て行くリックを見送った。
「父上、また会えますよね?」
涙目のリックは、子供ながらに何となく離縁と言うものを理解している。
「もちろんだ。愛しているよ。リック。」
ロバートはリックを抱きしめ頬に口付けをした。
「貴方はリックの父親なんだから、時々会いに来てもいいのよ。」
ナタリーは言う。いつものように綺麗だ。
「ハグしてもいいだろうか?親愛のバグだ。」
変な理屈で正当化する。ナタリーは眩しい金の瞳を少し細めて笑った。
「いいわ。」
嘗て、思う存分に抱きしめられた細い肩を緊張しながらそっと抱く。そして耳元で囁く。
「ナタリー、僕は君を愛している。諦めないからね。」
「ふふふ…ご自由に。」
ロバートは、とことん楽観的である。
数カ月後、爵位の継承などの手続きが終わり、漸く通常の日々が戻ってきた。公爵邸の中庭に笑い声が響く。そこには、ナタリーと、リック。そして、ロバートと、アランの姿が……。
なぜか、頻繁に『リックに会いたい』と遊びに来る2人であった。
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