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一回目のマリー4
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いつも欠かすことのなかった剣術や、魔法の修練、授業の予習等にあてていた時間をアリサと過ごすようになり、アルバートの成績ははっきりと下降し始めた。まずいと思ったが、一度楽をしてしまうと、元には戻れない。アリサの温もりも忘れられない。学園では普通にマリーと接していた。
遂にアルバートの父、フォルクス公爵にばれた。あまりの成績下降を不審に思った為、公爵家の影が使われたのだ。
フォルクス公爵は激怒した。ヘンリーとは親友だった。マリーの優秀さも聞いていた。レジェンド公爵家を2人で率いてほしいと思っていた。
「どういうことだ。」
「申し訳ありません。マリー嬢があまりに完璧過ぎて私ではふさわしくないと思ってしまいました。」
「ほう、それでは、わが公爵家を継ぐおまえの兄も完璧すぎるのであろうなあ。
お前が嫡男で無かったことを感謝する。
何の迷いもなく勘当できる。
お前には公爵家は無理であったな。
努力から逃げ、愚かな娘と乳繰り合う言い訳が、マリー嬢のせいとはな」
「父上、お許しください。
もう一度チャンスを下さい。」
元々公爵家次男は結婚してどこかの家に入るか、騎士として騎士爵を得るかしないと平民になってしまう。アルバートも分かっているはずだったのだが…
次に、ヘンリーとマリーの知るところとなった。マリーは生まれて初めてくらいに泣いた。こんなに辛かったことがこの世にあるとは知らなかった。
ヘンリーもまた激怒した。だが、不貞の相手は妹のアリサである。こっそりと協力していたのはメリンダであることも分かっている。どこに怒りを向けていいか分からなかった。
「だって、お姉様ばっかりいつもずるい。アリサもアルバート様と仲良くしたかったの。」
「まだ結婚前だし、アリサがあんなに好きだって言うんだからちょっとの間くらいよろしいんじゃなくて?結婚までまだ数年あるし。」
本当に浅はかであった。
婚約は公爵家同士の契約で王家も承認している。不貞は一発で婚約破棄である。
結局、婚約は解消となった。アルバートの不貞が原因であるが、相手はこちらの家の者である。喧嘩両成敗のようなもので慰謝料も無しであった。
ヘンリーは家族を愛していた。実の姉であり、娘でもあるマリーに対する、2人の所業が理解できなかった。メリンダは領地の端の別荘へと蟄居させられアリサは遠い辺境伯の後妻として嫁いだ。
アルバートは騎士科へ転科した。
「ごめん。君が完璧過ぎて辛かった。」
と、酷いことばを残して。
この後、マリーは生きていて一度も幸せだと思ったことはない。
時々、完璧過ぎってどういうこと?って考えたりはした。
学園を首席で卒業し、ヘンリーに言われるままに結婚した。
ヘンリーは愛する家族に裏切られた事実と、メリンダを僻地に追いやったこと、アリサを年寄り辺境伯に嫁がせたことに苦しみ、病を得た。マリーは何度も
「お父様、私のことは本当にもういいんです。お母様やアリサを呼び戻していいんですよ。」
と、言ったが、頑として聞かなかった。家族が家族を苦しめたことを許せなかったのだ。そして自分もまた、家族を苦しめていることを。
程なくして、ヘンリーは亡くなり、マリーが公爵家を継いだ。
ヘンリーが見つけて来た夫は、クズであった。
何もしない男だった。
マリーも最初から何も期待しなかった。
公爵家のすべてがマリーにのしかかった。ヘンリーが亡くなり、高齢の騎士団長や執事、侍女長等が、一斉に暇をもらったことも響いた。剣の腕も優れたマリーは騎士団を率い、領地を統め、家政も仕切った。
第2婦人がいつの間にか屋敷に部屋をもっていることに気づいても、マリーは何も感じなかった。何も期待していなかったから。それがまた夫を苛立たせるのである。
そして、執務室の机でペンを持ったまま、
「あー疲れた。ちょっと休みたい…」
と、周りが真っ暗になった。
ちょっとまずいと思った。
「ああ、幸せになりたかった…」
と声に出たかも、分からなかった。
遂にアルバートの父、フォルクス公爵にばれた。あまりの成績下降を不審に思った為、公爵家の影が使われたのだ。
フォルクス公爵は激怒した。ヘンリーとは親友だった。マリーの優秀さも聞いていた。レジェンド公爵家を2人で率いてほしいと思っていた。
「どういうことだ。」
「申し訳ありません。マリー嬢があまりに完璧過ぎて私ではふさわしくないと思ってしまいました。」
「ほう、それでは、わが公爵家を継ぐおまえの兄も完璧すぎるのであろうなあ。
お前が嫡男で無かったことを感謝する。
何の迷いもなく勘当できる。
お前には公爵家は無理であったな。
努力から逃げ、愚かな娘と乳繰り合う言い訳が、マリー嬢のせいとはな」
「父上、お許しください。
もう一度チャンスを下さい。」
元々公爵家次男は結婚してどこかの家に入るか、騎士として騎士爵を得るかしないと平民になってしまう。アルバートも分かっているはずだったのだが…
次に、ヘンリーとマリーの知るところとなった。マリーは生まれて初めてくらいに泣いた。こんなに辛かったことがこの世にあるとは知らなかった。
ヘンリーもまた激怒した。だが、不貞の相手は妹のアリサである。こっそりと協力していたのはメリンダであることも分かっている。どこに怒りを向けていいか分からなかった。
「だって、お姉様ばっかりいつもずるい。アリサもアルバート様と仲良くしたかったの。」
「まだ結婚前だし、アリサがあんなに好きだって言うんだからちょっとの間くらいよろしいんじゃなくて?結婚までまだ数年あるし。」
本当に浅はかであった。
婚約は公爵家同士の契約で王家も承認している。不貞は一発で婚約破棄である。
結局、婚約は解消となった。アルバートの不貞が原因であるが、相手はこちらの家の者である。喧嘩両成敗のようなもので慰謝料も無しであった。
ヘンリーは家族を愛していた。実の姉であり、娘でもあるマリーに対する、2人の所業が理解できなかった。メリンダは領地の端の別荘へと蟄居させられアリサは遠い辺境伯の後妻として嫁いだ。
アルバートは騎士科へ転科した。
「ごめん。君が完璧過ぎて辛かった。」
と、酷いことばを残して。
この後、マリーは生きていて一度も幸せだと思ったことはない。
時々、完璧過ぎってどういうこと?って考えたりはした。
学園を首席で卒業し、ヘンリーに言われるままに結婚した。
ヘンリーは愛する家族に裏切られた事実と、メリンダを僻地に追いやったこと、アリサを年寄り辺境伯に嫁がせたことに苦しみ、病を得た。マリーは何度も
「お父様、私のことは本当にもういいんです。お母様やアリサを呼び戻していいんですよ。」
と、言ったが、頑として聞かなかった。家族が家族を苦しめたことを許せなかったのだ。そして自分もまた、家族を苦しめていることを。
程なくして、ヘンリーは亡くなり、マリーが公爵家を継いだ。
ヘンリーが見つけて来た夫は、クズであった。
何もしない男だった。
マリーも最初から何も期待しなかった。
公爵家のすべてがマリーにのしかかった。ヘンリーが亡くなり、高齢の騎士団長や執事、侍女長等が、一斉に暇をもらったことも響いた。剣の腕も優れたマリーは騎士団を率い、領地を統め、家政も仕切った。
第2婦人がいつの間にか屋敷に部屋をもっていることに気づいても、マリーは何も感じなかった。何も期待していなかったから。それがまた夫を苛立たせるのである。
そして、執務室の机でペンを持ったまま、
「あー疲れた。ちょっと休みたい…」
と、周りが真っ暗になった。
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「ああ、幸せになりたかった…」
と声に出たかも、分からなかった。
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