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番外編……ポールの悩み
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あの日、マーク先輩への初恋が消えてから、僕はアンドルーが大好きなことを自覚した。
彼にぐいぐい手を引かれて、中庭の木陰まで向かう。心臓がどきどきして、つないだ手が汗ばんだ。だめ…手が汗でベタベタになったら、僕かっこ悪い!そんなことを焦って考えながら、さっき自分がアンドルーに言ったことを反芻する……
うわぁ…僕って思ったこと全部口から出ちゃうんだ。アンドルーの後ろ姿を見る。濃い茶色の少し癖のある髪の毛が、首筋を隠している。隙間から見える日に焼けた肌、大きな肩。痩せて見えるけど、どこもかしこも筋肉ばっかりで、硬いって僕は知ってる。かっこいい!
僕と全然違う。僕は幾ら鍛えても筋肉はつかないし、日に焼けても赤くなっておしまい。身長だってアンドルーはまだ伸びてる。僕だって小さいわけじゃないけど、彼の隣にいるとちっちゃくなった気がする。
あ!よく見ると、アンドルー、耳、真っ赤!可愛い。僕はアンドルーの全部が好き。
木陰で、彼の腕が僕を抱きしめる。アンドルーみたいに大きくがっしりしたかったけど、そしたらこうやってアンドルーの胸の中にすっぽり入らないから、やっぱりこのままでいい。あったかくて、幸せで、そのままアンドルーの胸に耳を押しあてて心臓の音を聞いた。すごくドキドキして雷みたい。僕と一緒。胸がいっぱいになって、アンドルー大好き!そう言おうと思ったのに、恥ずかしくて「きっと、すごく好き」って言っちゃった。「きっと」じゃなくて「絶対」なのに!
アンドルーは僕をぎゅう…って抱きしめて、すっごくキスしてくれた。今までしたことないキスもして、びっくりしたけど気持ち良くって、うっとりして、ちょっと変な声出ちゃった。
まだまだずっとそうしてたかったのに、アンドルーは急にパッと離れて、それからすぐ生徒会室に戻った。もう少し……キスしててもよかったのになあ…
その時、気づいた。
アンドルーは、僕のこと、どう思ってるんだろう?アンドルーも僕のことが好き?そう思って幸せだったけど、でも、考えてみたら、そんなことは言われてない。僕が、「きっと」とか、曖昧に言ったから?だから、返事をくれないのかな?
翌日、アンドルーの様子は1日変だった。僕の不安は募った。
剣術の練習着を着たアンドルーは物凄くかっこいい。遠くの令嬢達も、あからさまにアンドルーを見ている。アンドルーは自分がどんなにかっこよくて、どんなにもててるかちっとも分かって無い!アンドルーは僕の!なのに。
後ろからアンドルーを抱きしめる。ホントは抱きしめてもらいたかったけどね。令嬢達から
「ほぉ~っ」
って、聞こえた気がした。諦めて!アンドルーは僕のだからね。アンドルーは僕の!
アンドルーにも分からせてやる!そう思って対戦を頑張った!微妙な差だったけど、僅かに僕が勝った。やった!と思ったのに、ますます彼の様子はおかしくなった。
約束してるのに、ムキになって剣の練習をしているアンドルー。いったい何?そう思ったら、わざわざ変なことを聞いてきた。耳元で急に囁かれて、何かドキドキして、顔が赤くなっちゃった。
僕がアンドルーに抱きしめられるのが好きって、当たり前!だって、すっぽり胸の中に入れて貰えるんだよ。最高に決まってる。
もっと一緒に居たかったから、僕の寮の部屋に誘ったのに、変にビックリして断られた。今まで何回も来てるのに……つまんないな…
程なくして学年末剣術大会が始まった。学園の剣術大会の優勝は一生誇れる、素晴らしい記録となる。
一学年の決勝は、やっぱり僕とアンドルーになった。アンドルーの男らしい必死なまなざしと、飛び散る汗に見惚れそうだけど、僕だって負けてはいられない。体格では負けたって、剣の腕では……と思ったのに僅差で敗れてしまった。悔しかったけど、太陽みたいなアンドルーの笑顔を見たら、もうどうでもよくなった。だけど、来年は負けないよ!
二学年の決勝は、マーク先輩とユリア姉様だった。女子の決勝進出は初めてらしい。さすが姉様だ。勝負は拮抗していた。僕ら1年生は観客席で観戦だ。
マーク先輩の大きな身体と激しい動きで乱れる黒髪。闘志で燃える赤紫の瞳。思わず僕は見惚れた。姉様もとても綺麗だ。冬の冷たい光の中、キラキラ反射する金色の髪と、宝石みたいに輝く水色の瞳。しなやかな動き。姉様の剣は柔らかくて美しいのに強い。お似合いの2人だなあと僕は思った。
ふと、隣を見るとアンドルーが物凄い顔で僕を見ていた。睨んでいる。
「え?なあに?怒ってる?」
「いや…」
「怒ってるよね?」
「いや…ポールは、もうマーク先輩は…………」
「好きじゃないよ。僕が好きなのはアンドルー。君だよ。大好き。知ってるでしょ?」
あ!また僕は思ったこと全部言っちゃった!身体じゅうぼわっと熱くなって汗が吹き出した。
「そ……そうか…」
アンドルーは、パッと周囲を見渡すと、素早く僕の肩を抱き、チュッと口付けた。そして僕の目を見て言った。
「俺も、ポール、お前が大好きだ。」
結局、試合はマーク先輩が勝ったらしい。僕はアンドルーと早く中庭に行きたくて、よく分からなかった。ちゃんと最後までは座ってたけどね。
彼にぐいぐい手を引かれて、中庭の木陰まで向かう。心臓がどきどきして、つないだ手が汗ばんだ。だめ…手が汗でベタベタになったら、僕かっこ悪い!そんなことを焦って考えながら、さっき自分がアンドルーに言ったことを反芻する……
うわぁ…僕って思ったこと全部口から出ちゃうんだ。アンドルーの後ろ姿を見る。濃い茶色の少し癖のある髪の毛が、首筋を隠している。隙間から見える日に焼けた肌、大きな肩。痩せて見えるけど、どこもかしこも筋肉ばっかりで、硬いって僕は知ってる。かっこいい!
僕と全然違う。僕は幾ら鍛えても筋肉はつかないし、日に焼けても赤くなっておしまい。身長だってアンドルーはまだ伸びてる。僕だって小さいわけじゃないけど、彼の隣にいるとちっちゃくなった気がする。
あ!よく見ると、アンドルー、耳、真っ赤!可愛い。僕はアンドルーの全部が好き。
木陰で、彼の腕が僕を抱きしめる。アンドルーみたいに大きくがっしりしたかったけど、そしたらこうやってアンドルーの胸の中にすっぽり入らないから、やっぱりこのままでいい。あったかくて、幸せで、そのままアンドルーの胸に耳を押しあてて心臓の音を聞いた。すごくドキドキして雷みたい。僕と一緒。胸がいっぱいになって、アンドルー大好き!そう言おうと思ったのに、恥ずかしくて「きっと、すごく好き」って言っちゃった。「きっと」じゃなくて「絶対」なのに!
アンドルーは僕をぎゅう…って抱きしめて、すっごくキスしてくれた。今までしたことないキスもして、びっくりしたけど気持ち良くって、うっとりして、ちょっと変な声出ちゃった。
まだまだずっとそうしてたかったのに、アンドルーは急にパッと離れて、それからすぐ生徒会室に戻った。もう少し……キスしててもよかったのになあ…
その時、気づいた。
アンドルーは、僕のこと、どう思ってるんだろう?アンドルーも僕のことが好き?そう思って幸せだったけど、でも、考えてみたら、そんなことは言われてない。僕が、「きっと」とか、曖昧に言ったから?だから、返事をくれないのかな?
翌日、アンドルーの様子は1日変だった。僕の不安は募った。
剣術の練習着を着たアンドルーは物凄くかっこいい。遠くの令嬢達も、あからさまにアンドルーを見ている。アンドルーは自分がどんなにかっこよくて、どんなにもててるかちっとも分かって無い!アンドルーは僕の!なのに。
後ろからアンドルーを抱きしめる。ホントは抱きしめてもらいたかったけどね。令嬢達から
「ほぉ~っ」
って、聞こえた気がした。諦めて!アンドルーは僕のだからね。アンドルーは僕の!
アンドルーにも分からせてやる!そう思って対戦を頑張った!微妙な差だったけど、僅かに僕が勝った。やった!と思ったのに、ますます彼の様子はおかしくなった。
約束してるのに、ムキになって剣の練習をしているアンドルー。いったい何?そう思ったら、わざわざ変なことを聞いてきた。耳元で急に囁かれて、何かドキドキして、顔が赤くなっちゃった。
僕がアンドルーに抱きしめられるのが好きって、当たり前!だって、すっぽり胸の中に入れて貰えるんだよ。最高に決まってる。
もっと一緒に居たかったから、僕の寮の部屋に誘ったのに、変にビックリして断られた。今まで何回も来てるのに……つまんないな…
程なくして学年末剣術大会が始まった。学園の剣術大会の優勝は一生誇れる、素晴らしい記録となる。
一学年の決勝は、やっぱり僕とアンドルーになった。アンドルーの男らしい必死なまなざしと、飛び散る汗に見惚れそうだけど、僕だって負けてはいられない。体格では負けたって、剣の腕では……と思ったのに僅差で敗れてしまった。悔しかったけど、太陽みたいなアンドルーの笑顔を見たら、もうどうでもよくなった。だけど、来年は負けないよ!
二学年の決勝は、マーク先輩とユリア姉様だった。女子の決勝進出は初めてらしい。さすが姉様だ。勝負は拮抗していた。僕ら1年生は観客席で観戦だ。
マーク先輩の大きな身体と激しい動きで乱れる黒髪。闘志で燃える赤紫の瞳。思わず僕は見惚れた。姉様もとても綺麗だ。冬の冷たい光の中、キラキラ反射する金色の髪と、宝石みたいに輝く水色の瞳。しなやかな動き。姉様の剣は柔らかくて美しいのに強い。お似合いの2人だなあと僕は思った。
ふと、隣を見るとアンドルーが物凄い顔で僕を見ていた。睨んでいる。
「え?なあに?怒ってる?」
「いや…」
「怒ってるよね?」
「いや…ポールは、もうマーク先輩は…………」
「好きじゃないよ。僕が好きなのはアンドルー。君だよ。大好き。知ってるでしょ?」
あ!また僕は思ったこと全部言っちゃった!身体じゅうぼわっと熱くなって汗が吹き出した。
「そ……そうか…」
アンドルーは、パッと周囲を見渡すと、素早く僕の肩を抱き、チュッと口付けた。そして僕の目を見て言った。
「俺も、ポール、お前が大好きだ。」
結局、試合はマーク先輩が勝ったらしい。僕はアンドルーと早く中庭に行きたくて、よく分からなかった。ちゃんと最後までは座ってたけどね。
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