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第4章
入院と家族
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2月。
煌は北海道に来ていた。一人で大丈夫だと言ったのに、母も姉も仕事を休んで、煌について来た。
「煌。入院する前に、美味しいものを食べに行こうよ。」
母がそう言った。
「別にいいよ。それに、こっちの物を食べたいのは、姉ちゃんの方だろう。」
「カニとかどう?お寿司にする?ジンギスカンもあるよ。ねえ煌、何する?」
優里が聞く。
「俺はラーメンがいい。」
「えっ、ラーメン?」
母と姉は少しがっかりした顔を見せる。
「俺が入院してる間に、2人でカニでも寿司でも食べにいけばいいだろう。」
「せっかく、煌と一緒に行こうと思ってたのに。」
優里はそれなら、ここにする?とネットでラーメン屋を選んだ。
3人でラーメンを食べていると、
病院で会ったあの男性が店に入ってきた。
「あっ、姉ちゃん。」
煌が優里を呼んだのに気がついたのか、男性がこちらの方を向いた。
「ほら、煌が余計な事するから。」
男性は隣のテーブルに座った。
こんにちは、と丁寧に頭を下げる。
「弟さん、明日入院だったね。」
「はい、そうです。」
「俺、黒木先生の助手で入るから。」
「そうですか、よろしくお願いします。」
煌が挨拶をしているのに、そっけない優里。
男性は煌の方を向くと、
「入院する前だからといって、あんまり刺激の多いものを食べるのはダメだからね。」
そう言った。
煌の真っ赤になったラーメンを見て、母と優里は笑った。
「それで、味がわかるの?」
優里が煌に聞くと
「あんまり。」
そう答えた。
「この前もそう。どうして、そんなふうにして食べるのかな。」
男性は優里に向かって、
「すごく、緊張してるんだよ。いろんな事を考えれば考えるだけ、悪い方に想像してしまって、味もわからなくなる程、不安でたまらないんだ。頭の手術を受ける時って、みんな怖いんだよ。」
優里は男性の方を見ていたが、男性が優里に視線を合わせると
「煌、早く食べちゃって。」
そう言って、優里は視線を逸らした。
ラーメン屋を出た後、3人は少し離れた宿へ向かった。
せっかくだから、3人で寝ようと、母は広い部屋を予約していた。
「母さん、大丈夫なの?」
煌は心配して、母の顔を覗く。
「大丈夫。お父さんが残してくれたものもあるから。」
「ごめん。野球も辞めて、病気にもなって、俺ばっかり迷惑掛けて。」
「それは言わないの。野球を辞めるって決めたのだって仕方ないし、病気になったのは別に煌が悪くない。」
母がそう答える。
「私があの道を通ったせいで、事故に遭って…。みんなの人生を狂せたのは私なの。ごめんなさい。」
優里がそう言った。
「姉ちゃん、誰のせいでもないんだって。こうして病気が見つかったのは、姉ちゃんのおかげなんだし、もうやめよう、この話し。」
3人は煌を゙真ん中に布団に並ぶ。
「明日、入院するんだね。」
優里が言った。
「お父さんの時は、お母さん、一人だったよね。」
「最初の入院は、すぐに帰ってくれると思ったからね。」
母がそう言った。
「さっき会った人、優里の知り合い?」
「大学病院にいた頃の人。」
「煌の手術に入るって、頼もしいじゃない。」
「そうだね。」
「優里、いい人いたら、家を出ていっていいんだからね。」
「いい人がいたら、ね。」
「はなちゃん、ちゃんと食べてるかな。」
「おばあちゃんの家に預けてきたんでしょう?」
「そう。」
「そう言えば、真希ちゃんのところ、捜査終了したんでしょう。」
「煌。寝てるの?」
優里はそう言ったか、煌はぐっすり眠っていた。
「腫瘍が見つかってから、ずっと眠れなかったんでしょう。自分から話す子じゃないから、本当は怖いんだろうなって思ってても、ゆっくり気持ちも聞けなかったね。」
「本当は野球を続けたかったのに、ごめんね。」
「優里、もういいの。こうして頭の病気が見つかったのは、いろんな偶然が重なったからだよ。優里のおかげだよ。」
煌が入院する朝。
「大きな病院ね。」
母は驚いていた。
「私、手続きしてくるね。」
受付で待っていると、若い看護師が煌達を迎えにきた。
「福井から来たって聞きましたけど、こっちは寒いですか?」
看護師は煌に声を掛ける。
「寒いです。」
煌はそう言った。
病室へ案内されると、優里はここは違いますよ、と看護師に言った。
「平井先生から、こちらにって、言われましたので。」
「平井先生から?」
優里が看護師に聞いた。
「手術のあとは、熱も出るだろうし、しばらく辛い状態が続くかもしれないから、周りに遠慮なく過ごせる環境にするようにって。」
黒木医師が平井を連れて病室に入ってくる。
「やぁ、よくきたね。福井からは遠かっただろう。」
「はい。」
煌は辛い状況が続くと聞いて、一気に気持ちが下がった。
「橋川くん、あとで詳しく手術の説明をするから、お母さんと一緒に外来の方へ降りてきてくれるかい?」
「わかりました。」
「あの、平井先生。」
優里が平井を呼び止めた。
「お姉さんは、あとで僕から説明するから。」
煌と母が黒木医師から説明を受けている間、平井は優里が1人残る病室へやってきた。
「個室を用意してとは頼んでませんよ。親切にしてくれるのはありがたいですけど、うちにも事情があるんです。」
優里は平井にそう言った。
「優里の家族は、みんな謝り続けて生きているね。お父さんのがんの事も、弟さんの事故の事も、自分のせいだって、そうやって責めて生きてる。」
「幸せな家庭で育った卓也にはわからないよ。」
「俺は養子なんだ。親に捨てられて施設にいた時、子供のいない医者夫婦にもらわれたんだ。赤ん坊の頃だから、覚えてないけど。」
「そんな話し聞いた事もなかった。」
優里は平井の顔を見つめた。
「ここの部屋は医者の一言で使う事ができる。費用も心配しなくてもいい。弟さんは、難しい手術をするからね。俺もしっかり勉強させてもらうつもり。」
「卓也。」
「今日、少し話せない?病院の裏に居酒屋があるから、19時に待ってる。」
平井は病室を出ていった。
手術の説明を聞いた煌と母は、エレベーターを待っていた。
「なんか、飲むものでも買っていこうか。」
「いいよ。」
「煌、思ったより長くかかる手術なんだね。今のうちにもたくさん食べておこうよ。」
「そんなに腹なんか減ってないよ。」
廊下をモップ掛けしている若い女性の方をチラッと見ると、その女性の耳が片方なかった。
「あれ、多岐?」
エレベーターが空いて、母は早くと煌を急かした。
「やっぱり、飲み物買ってくる。」
煌は次の階で降りた。階段を降りると、さっきの女性を探しに行った。息を切らした母が煌の腕を掴んだ。
「何、急に。」
「ごめん。水を買いに行くわ。」
「売店はこっち。」
部屋に戻ると、優里がどうだった?と2人に聞いた。
煌は何も言わず、ベッドで水を飲んでいた。
「手術、少し長くかかりそうなの。」
母はそう言った。
「優里は話したの?平井先生だった?ここの部屋、どうしようね。」
「先生がうまくやってくれたから、大丈夫だって。」
「そう。いい方ね。医者なのに、偉ぶらないし。」
「お母さん、今晩、少し出てきてもいい?」
「いいわよ。煌は夕飯出ないし、私は食堂で食べるから。」
「お母さん、今日はここに泊まるんでしょう。」
「そうね、ベッドもあるし。優里だけホテルに泊まって。」
「わかった。」
「手術が終わったら、次の日帰るつもりだったけど、さっき本当は少し残ってほしいって言われて…。優里、あなた、なんとかならない?」
「どれくらい?1週間は容体が安定しないって。」
「1週間かあ。所長と相談してくる。」
話しを聞いていた煌が
「別にいいよ。俺は1人で。」
そう言った。
「そういうわけにはいかないの。」
母は煌が見ている窓を眺めた。
「すごい車ね。これだけ、病気の人がいるのかしらね。」
「家族だっているから、全部が全部じゃないだろう。」
「この車の数を見てたら、病気になる事よりも、ならない方が奇跡って思うよ。」
「俺、いつからご飯食べれるの?」
「明後日から。優里に食べさせてもらって。」
「そんなの恥ずかしいよ。」
「所長、1週間、休んでいいって。」
「良かったね、煌。優里一緒にいてくれるって。」
煌は小さく、優里にありがとうと言った。
「家に母さんだけしかいないなら、はなくろはおやつもらえないな。」
煌はそう言った。
煌は北海道に来ていた。一人で大丈夫だと言ったのに、母も姉も仕事を休んで、煌について来た。
「煌。入院する前に、美味しいものを食べに行こうよ。」
母がそう言った。
「別にいいよ。それに、こっちの物を食べたいのは、姉ちゃんの方だろう。」
「カニとかどう?お寿司にする?ジンギスカンもあるよ。ねえ煌、何する?」
優里が聞く。
「俺はラーメンがいい。」
「えっ、ラーメン?」
母と姉は少しがっかりした顔を見せる。
「俺が入院してる間に、2人でカニでも寿司でも食べにいけばいいだろう。」
「せっかく、煌と一緒に行こうと思ってたのに。」
優里はそれなら、ここにする?とネットでラーメン屋を選んだ。
3人でラーメンを食べていると、
病院で会ったあの男性が店に入ってきた。
「あっ、姉ちゃん。」
煌が優里を呼んだのに気がついたのか、男性がこちらの方を向いた。
「ほら、煌が余計な事するから。」
男性は隣のテーブルに座った。
こんにちは、と丁寧に頭を下げる。
「弟さん、明日入院だったね。」
「はい、そうです。」
「俺、黒木先生の助手で入るから。」
「そうですか、よろしくお願いします。」
煌が挨拶をしているのに、そっけない優里。
男性は煌の方を向くと、
「入院する前だからといって、あんまり刺激の多いものを食べるのはダメだからね。」
そう言った。
煌の真っ赤になったラーメンを見て、母と優里は笑った。
「それで、味がわかるの?」
優里が煌に聞くと
「あんまり。」
そう答えた。
「この前もそう。どうして、そんなふうにして食べるのかな。」
男性は優里に向かって、
「すごく、緊張してるんだよ。いろんな事を考えれば考えるだけ、悪い方に想像してしまって、味もわからなくなる程、不安でたまらないんだ。頭の手術を受ける時って、みんな怖いんだよ。」
優里は男性の方を見ていたが、男性が優里に視線を合わせると
「煌、早く食べちゃって。」
そう言って、優里は視線を逸らした。
ラーメン屋を出た後、3人は少し離れた宿へ向かった。
せっかくだから、3人で寝ようと、母は広い部屋を予約していた。
「母さん、大丈夫なの?」
煌は心配して、母の顔を覗く。
「大丈夫。お父さんが残してくれたものもあるから。」
「ごめん。野球も辞めて、病気にもなって、俺ばっかり迷惑掛けて。」
「それは言わないの。野球を辞めるって決めたのだって仕方ないし、病気になったのは別に煌が悪くない。」
母がそう答える。
「私があの道を通ったせいで、事故に遭って…。みんなの人生を狂せたのは私なの。ごめんなさい。」
優里がそう言った。
「姉ちゃん、誰のせいでもないんだって。こうして病気が見つかったのは、姉ちゃんのおかげなんだし、もうやめよう、この話し。」
3人は煌を゙真ん中に布団に並ぶ。
「明日、入院するんだね。」
優里が言った。
「お父さんの時は、お母さん、一人だったよね。」
「最初の入院は、すぐに帰ってくれると思ったからね。」
母がそう言った。
「さっき会った人、優里の知り合い?」
「大学病院にいた頃の人。」
「煌の手術に入るって、頼もしいじゃない。」
「そうだね。」
「優里、いい人いたら、家を出ていっていいんだからね。」
「いい人がいたら、ね。」
「はなちゃん、ちゃんと食べてるかな。」
「おばあちゃんの家に預けてきたんでしょう?」
「そう。」
「そう言えば、真希ちゃんのところ、捜査終了したんでしょう。」
「煌。寝てるの?」
優里はそう言ったか、煌はぐっすり眠っていた。
「腫瘍が見つかってから、ずっと眠れなかったんでしょう。自分から話す子じゃないから、本当は怖いんだろうなって思ってても、ゆっくり気持ちも聞けなかったね。」
「本当は野球を続けたかったのに、ごめんね。」
「優里、もういいの。こうして頭の病気が見つかったのは、いろんな偶然が重なったからだよ。優里のおかげだよ。」
煌が入院する朝。
「大きな病院ね。」
母は驚いていた。
「私、手続きしてくるね。」
受付で待っていると、若い看護師が煌達を迎えにきた。
「福井から来たって聞きましたけど、こっちは寒いですか?」
看護師は煌に声を掛ける。
「寒いです。」
煌はそう言った。
病室へ案内されると、優里はここは違いますよ、と看護師に言った。
「平井先生から、こちらにって、言われましたので。」
「平井先生から?」
優里が看護師に聞いた。
「手術のあとは、熱も出るだろうし、しばらく辛い状態が続くかもしれないから、周りに遠慮なく過ごせる環境にするようにって。」
黒木医師が平井を連れて病室に入ってくる。
「やぁ、よくきたね。福井からは遠かっただろう。」
「はい。」
煌は辛い状況が続くと聞いて、一気に気持ちが下がった。
「橋川くん、あとで詳しく手術の説明をするから、お母さんと一緒に外来の方へ降りてきてくれるかい?」
「わかりました。」
「あの、平井先生。」
優里が平井を呼び止めた。
「お姉さんは、あとで僕から説明するから。」
煌と母が黒木医師から説明を受けている間、平井は優里が1人残る病室へやってきた。
「個室を用意してとは頼んでませんよ。親切にしてくれるのはありがたいですけど、うちにも事情があるんです。」
優里は平井にそう言った。
「優里の家族は、みんな謝り続けて生きているね。お父さんのがんの事も、弟さんの事故の事も、自分のせいだって、そうやって責めて生きてる。」
「幸せな家庭で育った卓也にはわからないよ。」
「俺は養子なんだ。親に捨てられて施設にいた時、子供のいない医者夫婦にもらわれたんだ。赤ん坊の頃だから、覚えてないけど。」
「そんな話し聞いた事もなかった。」
優里は平井の顔を見つめた。
「ここの部屋は医者の一言で使う事ができる。費用も心配しなくてもいい。弟さんは、難しい手術をするからね。俺もしっかり勉強させてもらうつもり。」
「卓也。」
「今日、少し話せない?病院の裏に居酒屋があるから、19時に待ってる。」
平井は病室を出ていった。
手術の説明を聞いた煌と母は、エレベーターを待っていた。
「なんか、飲むものでも買っていこうか。」
「いいよ。」
「煌、思ったより長くかかる手術なんだね。今のうちにもたくさん食べておこうよ。」
「そんなに腹なんか減ってないよ。」
廊下をモップ掛けしている若い女性の方をチラッと見ると、その女性の耳が片方なかった。
「あれ、多岐?」
エレベーターが空いて、母は早くと煌を急かした。
「やっぱり、飲み物買ってくる。」
煌は次の階で降りた。階段を降りると、さっきの女性を探しに行った。息を切らした母が煌の腕を掴んだ。
「何、急に。」
「ごめん。水を買いに行くわ。」
「売店はこっち。」
部屋に戻ると、優里がどうだった?と2人に聞いた。
煌は何も言わず、ベッドで水を飲んでいた。
「手術、少し長くかかりそうなの。」
母はそう言った。
「優里は話したの?平井先生だった?ここの部屋、どうしようね。」
「先生がうまくやってくれたから、大丈夫だって。」
「そう。いい方ね。医者なのに、偉ぶらないし。」
「お母さん、今晩、少し出てきてもいい?」
「いいわよ。煌は夕飯出ないし、私は食堂で食べるから。」
「お母さん、今日はここに泊まるんでしょう。」
「そうね、ベッドもあるし。優里だけホテルに泊まって。」
「わかった。」
「手術が終わったら、次の日帰るつもりだったけど、さっき本当は少し残ってほしいって言われて…。優里、あなた、なんとかならない?」
「どれくらい?1週間は容体が安定しないって。」
「1週間かあ。所長と相談してくる。」
話しを聞いていた煌が
「別にいいよ。俺は1人で。」
そう言った。
「そういうわけにはいかないの。」
母は煌が見ている窓を眺めた。
「すごい車ね。これだけ、病気の人がいるのかしらね。」
「家族だっているから、全部が全部じゃないだろう。」
「この車の数を見てたら、病気になる事よりも、ならない方が奇跡って思うよ。」
「俺、いつからご飯食べれるの?」
「明後日から。優里に食べさせてもらって。」
「そんなの恥ずかしいよ。」
「所長、1週間、休んでいいって。」
「良かったね、煌。優里一緒にいてくれるって。」
煌は小さく、優里にありがとうと言った。
「家に母さんだけしかいないなら、はなくろはおやつもらえないな。」
煌はそう言った。
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