誘拐記念日

木継 槐

文字の大きさ
72 / 99
3、

開示①

しおりを挟む
そのあと、僕はすぐに伝文さんのSMSに連絡を入れた。

伝文さんからはすぐに返事を返ってきた。

「来た!」

「『おぉ、ついに結果出たか!アポ取ってやるから駅最寄りのファミレスに今週の土曜日、午前の10時な。』……ですか。」

「相変わらず糞な物言いしやがってあのくぞジジイ。」

「まぁまぁ、とりあえず話は通ったんだから良かったじゃないか。」

悠一が舌打ちをしたのを憲司が肩を叩きなだめた。


当日、ファミレスに着くと伝文さんがすでに席を取ってこちらに手を振っていた。

「よく来たな~。」

僕達は座るが先かテストを渡すのが先か、机が6人分の手の圧で少し揺れた。

そのまま睨みつけると、伝文さんは僕達のテスト用紙を見下ろした。

「ほぉ、497点ねぇ。まぁ平均82点なら努力賞なんだろうな。」

「気が済んだかよ、クソじじぃ。」

「悠一……。」

「あぁ、妥当なんじゃないか?一人も追試補修にひっかからず足を引っ張ることもなくってなら十分だ。」

それでも予定の半分もいかない合計点に緊張が走る。

視線を送ると皆も同じなのか表情は固い。


凍りついた空気の中、伝文さんだけがヘラヘラと笑っている。

「しょうがねぇ、相応の情報をやるよ。影子の居所は……”田中麻実”が知ってる。」

「母さんが?……なんで……?」

「宗太、お前おかしいと思わなかったか?……なぜお前は影子から逃げなかった。」

「それは……。」

それは僕が唯一自分のことなのに分からない自身の行動だった。

「そんなの、お前と影子は腹違いの姉弟だからに決まってるだろ。」

「……え?」

「兄弟である共鳴みたいなやつだろうな。だからッ」

僕は驚きのあまり一人ファミレスを飛び出した。

……

僕はとにかく走り抜けて、でもあっという間に息が詰まって、むせ込みながら視界に映ったベンチに腰かけた。

「ケホッ……はぁ、はぁ……クッ、ケホッ!」

「宗太!」

張り裂けるほどの叫び声に振り返ると、悠一がこちらに走ってきていた。

悠一の顔を見た瞬間、今までの色んな思い出が一気に心になだれ込んできて、押し出されるように涙が零れた。

「……。」

「大丈夫か?」

僕が顔を伏せると悠一は僕の横に座って背中に手を置いた。

「僕、影子さんを嫌いになれないんだ。」

「…あぁ。」

「あんな爆竹みたいな人……僕は絶対に寄りたくないくらいきらいなはずなのに、どうしてなんだろうって……どうしてこんなに影子さんに事信じていたいのか……ずっと分かんなかったんだ。」

「宗太。」

「僕の姉さんだからなんだね。僕と血がつながってるんだって……ハハッ……。」

ボロボロと膝に落ちる涙を集めるように手のひらを瞼に寄せると、指先まで熱くて余計に涙が溢れた。


「宗太はどうするんだ?」

「僕は、やっぱり影子さんに会いたいよ。」

「あぁ。」

「会って、いろいろ……。」

胸が詰まって息が荒くなる。

すると背中に置かれていた手がバシンと僕の背中を叩いた。

「絶対に、絶対に影子を見つけるぞ。」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...