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4、
轍を辿る③
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次の日、僕たちはバスを利用して、施設のある駅で待ち合わせた。
駅の案内には『ゆりひめ寮』があり、その施設が土地の中で重視されていることが分かった。
「あ、来た。」
「お前ら、おっせぇぞ!!」
「バスの時刻表の通りですから遅いといわれても困ります。」
「この土地じゃ、頻繁に動いてるわけじゃないしな。」
「そんなカリカリしなさんなって。待ち時間でコンビニのから揚げ買えたんだぜ?」
悠一の額に青筋が立ち始めて、僕たちは慌てて児童養護施設『ゆりひめ寮』の地図に目を向けた。
「お、来たか。」
すると、駅の外の売店から出てきた姿に僕たちは驚愕の声を上げた。
「伝文さん?!」
「なんでおっさんがここにいんだよ!」
「なんでって、お前らが来ると思ったからだよ。」
伝文さんはへらっと笑って一緒に地図を覗き込んだ。
「あ~、今はいいな。スマホだけで行先が分かるんだからな~。」
「いったいどういう経緯で……。」
「細かいところはいいんだよ。さ、行こう行こう!!」
伝文さんは先にすたすたと言ってしまって、僕たちは慌てて後に続くように施設に向かった。
「生徒手帳は持参できていますか?」
「もちろん。」
僕が答えると、面々も頷いて反応した。
その施設は地図で確認したより大きく見えて、足が竦んだ。
悠一は僕の肩を肘でつついた。
「宗太、お前が先陣にいろよ。お前がいて俺たちは後に続けるんだから。」
「……うん、そうだよね。」
僕は気合を入れて玄関のチャイムを押した。
「何か御用でしょうか?」
「「「「「「うわぁぁあああ!!!!!!」」」」」」
その瞬間、背後から女性の声がして、僕たちは叫び声をあげた。
「御用でしょうか?」
「あ……僕たち、こういうものです。」
僕が咄嗟に生徒手帳を見せると、面々も慌てたように生徒手帳を見せた。
女性はジッと生徒手帳を視認すると、軽くうなずき口を開いた。
「田中麻実さんの息子さんでしたか。失礼しました。私は、寮母を務める、三船と申します。」
「え、あ、どうも……。」
「稲辺様、毎月お越しいただきありがとうございます。」
「あ、いや、そりゃ妹の顔くらい、いくらでも見に来たいですから。」
伝文さんは軽く手を挙げて、三船さんは会釈を返した。
そんなに関わりがあるって事なのかな……。
僕たちが答えると、三船さんは手で中に入るように促した。
客間に通されると、全員分のペットボトルの飲み物が色違いのように並べられた。
「好きなものを取っていってください。」
「お気遣いいただきありがとうございます。」
透が笑顔を見せると、三船さんは表情一つ変えないまま口を開いた。
「本日はどういった御用でしょうか?」
「あの……母から聞いて、リサさんと影子さんがここにいるって……。」
「……えぇ。」
「教えてください。影子さんに何があったのか……母さんに聞いても分かったのはきっと少しだけだから。」
三船さんは僕の顔を見て、影子とリサのエピソードを話し始めた。
駅の案内には『ゆりひめ寮』があり、その施設が土地の中で重視されていることが分かった。
「あ、来た。」
「お前ら、おっせぇぞ!!」
「バスの時刻表の通りですから遅いといわれても困ります。」
「この土地じゃ、頻繁に動いてるわけじゃないしな。」
「そんなカリカリしなさんなって。待ち時間でコンビニのから揚げ買えたんだぜ?」
悠一の額に青筋が立ち始めて、僕たちは慌てて児童養護施設『ゆりひめ寮』の地図に目を向けた。
「お、来たか。」
すると、駅の外の売店から出てきた姿に僕たちは驚愕の声を上げた。
「伝文さん?!」
「なんでおっさんがここにいんだよ!」
「なんでって、お前らが来ると思ったからだよ。」
伝文さんはへらっと笑って一緒に地図を覗き込んだ。
「あ~、今はいいな。スマホだけで行先が分かるんだからな~。」
「いったいどういう経緯で……。」
「細かいところはいいんだよ。さ、行こう行こう!!」
伝文さんは先にすたすたと言ってしまって、僕たちは慌てて後に続くように施設に向かった。
「生徒手帳は持参できていますか?」
「もちろん。」
僕が答えると、面々も頷いて反応した。
その施設は地図で確認したより大きく見えて、足が竦んだ。
悠一は僕の肩を肘でつついた。
「宗太、お前が先陣にいろよ。お前がいて俺たちは後に続けるんだから。」
「……うん、そうだよね。」
僕は気合を入れて玄関のチャイムを押した。
「何か御用でしょうか?」
「「「「「「うわぁぁあああ!!!!!!」」」」」」
その瞬間、背後から女性の声がして、僕たちは叫び声をあげた。
「御用でしょうか?」
「あ……僕たち、こういうものです。」
僕が咄嗟に生徒手帳を見せると、面々も慌てたように生徒手帳を見せた。
女性はジッと生徒手帳を視認すると、軽くうなずき口を開いた。
「田中麻実さんの息子さんでしたか。失礼しました。私は、寮母を務める、三船と申します。」
「え、あ、どうも……。」
「稲辺様、毎月お越しいただきありがとうございます。」
「あ、いや、そりゃ妹の顔くらい、いくらでも見に来たいですから。」
伝文さんは軽く手を挙げて、三船さんは会釈を返した。
そんなに関わりがあるって事なのかな……。
僕たちが答えると、三船さんは手で中に入るように促した。
客間に通されると、全員分のペットボトルの飲み物が色違いのように並べられた。
「好きなものを取っていってください。」
「お気遣いいただきありがとうございます。」
透が笑顔を見せると、三船さんは表情一つ変えないまま口を開いた。
「本日はどういった御用でしょうか?」
「あの……母から聞いて、リサさんと影子さんがここにいるって……。」
「……えぇ。」
「教えてください。影子さんに何があったのか……母さんに聞いても分かったのはきっと少しだけだから。」
三船さんは僕の顔を見て、影子とリサのエピソードを話し始めた。
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