誘拐記念日

木継 槐

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4、

轍を辿る④

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「リサは幼少期から母親から虐待を受けていました。」
「ッ……。」
この施設に来た時点でなんとなくわかっていたけど、やっぱりリサさんはひどい目にあってここに来たんだ……。
「児童相談所が保護されたのは近所の人の通報がきっかけだったようです。」
「ようですって……?」
「こちらは細かいところまでは確認しません。ここに来る子はみんな問題を抱えていますから。」

三船さんは僕たちの表情を見て話を続けた。
「リサはあんな状況で過ごしていたにしてはあまりにお人よしです。」
僕がうなずくと三船さんはわずかに目を伏せた。
「でもその優しさはあの子を壊してしまった。」
「壊したって?」
「以前、この施設にはあの子に対して感情を抱いている文士という男性がいました。今思えば女児に対する性的感情に外ほかなりません。」
三船さんの一言に僕はこぶしを強く握った。
「私から見て文士は人一倍協力的なボランティアでした。どんな子にも同等の愛情をかけているように見えていましたが、それもあの男の策略だったのでしょう……。」
「最低な野郎だな……。」
悠一の歯ぎしりは静まり返った室内でははっきりと聞こえてくる。
僕が視線を向けると、悠一だけでなくほかの面々も顔を曇らせていた。

「あの子はそれなりに私たちにその恐怖を隠していました。そしてリサが10歳の誕生日を迎えて間もなくのあの日……。」
三船さんは息を吐いてお茶を口に含んだ。
「あの深夜、私が食堂に行ったとき室内から聞き覚えのない音がして覗き込んだとき、あの子はすでにあの子ではありませんでした。」
その言葉の続きに僕たちは一気に体を凍らせた。

***

…三船百合子視点…

私が食堂を覗くと、そこには倒れこむ文士とその上にまたがり包丁を振り下ろすリサの姿だった。
「ッ?!」
私が後ずさるとその音に気が付いたリサがこちらに振り向き、にやぁと口角を上げた。
「こんばんは、寮母さん。」
「リサ……。」
「リサ?いいえ、違う。あの子は気を失ってしまったんだから。」
「……何を言っているの?」
「あ~、混乱させたなら謝りますよ。何言ってるか分かんないのも無理ないもの。」
その表情も反応も私の知っているリサの姿ではなかった。
リサの笑顔はまるで何かに取り付かれたことを疑うほど全く違う人物になっていた。
「あなたが誰かは後にして、いったい何があったのか説明しなさい。」
その女は文士の上で揺れながら経緯の説明を始めた。

「リサはこの男にずっと体を触られたり気持ち悪いこと言われてたみたい。」
「それはッ……本当のことなの?!」
「嘘言って私に得なことないでしょ、寮母さん。」
「ッ……続けて。」
「ありがと。で、今日遂にこの男、リサに襲い掛かったの。この服だってほら、ボロボロ。」
女は服の襟をつまんで『ボタンって本当に飛ぶもんなのね。』と自虐的な笑みを浮かべた。
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