誘拐記念日

木継 槐

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4、

轍を辿る⑤

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…三船百合子視点…

「レイプ……?」
「そうみたいね。でもこの子なかなか頑張ったんじゃない?私が気付いた時には男の脇腹にこの包丁が刺さってたから。」
「……リサが?!」
「そう、リサが。でも正当防衛、頑張っても傷害罪ってところ。この男は私が殺した。」
「どうしてそんなことッ!」
「私が見たときにはまだ生きてたから。」
「は……?」
「だって、私たちの体を好きなようにしてきたのよ?室内に入った虫だって、不快であれば殺すでしょ?それと一緒。」
女の常識や概念は人として確実に逸脱していた。
「……リサはそんなこと言わないわね。」
「良かった、リサじゃないって信じてくれた?」
「……えぇ。」
「私は……そうね、リサの影にいたようなものだから影子とでも名乗っておこうかな。。」
影子は、意識を失った直後に生まれたのが影子でリサと入れ替わったのだ、リサはショックで胸の中で気を失っていると語った。

「あなたの言いたいことはわかったわ。……でもリサがやったのではないのならこの男はここから出さなくてはいけない。」
「そうね……私はリサの障害になる気はない。」
「手伝いなさい、山奥に運ぶわ。」
きっとその時の私もまた、人として逸脱した行動をとっていたのは自覚していた。
しかし、リサのためにも施設のためにもこの男の死は邪魔であった。
私は影子と遺体を運び山奥に埋めた。
服は土で汚れたものの、私はなぜか肩の荷が下りていた。
一方で影子は嬉しそうに含み笑いを浮かべていた。
「影子、貴方に人を殺してはいけない理由の話でもしましょうか。」
「ふむ、なぜなんですか?」
「ここからは極めて持論よ。人の魂は死ぬことで安寧が与えられる。人は生まれることで新しい人生を歩み、生き地獄の中で徳を積み、死して安寧を与えられ徳を積んだものには輪廻転生が待っている。そして、人を殺さば穴二つ……殺人者がどんなに善人でも地獄行き。人間として輪廻転生するのは困難と言われている。同じ地獄なら生きて地獄を見るべき。人間誰しも徳を積む権利はあるの。」

「そうなんだ……なら私にも徳を積む権利はあるってこと?」
「もちろん。」
「なら、寮母さん。私に生きる方法を教えてください。」

影子はいつの間にかまっすぐこちらに切望を向けていた。その強い目で、私は人として生きていく術をリサと影子に一つ一つ教育していった。
そんな中、寮に一人の男が現れた。
「影子、いるかしら?」
「はい。」
「あなたにお客様よ。」
「客……?」
影子はその男の顔を見て固まった。
無理もない、男は先日殺した男と瓜二つだったのだから。
私が応対したとき男は双子の弟だと名乗った。
「紹介するわ。先日までここにボランティアに来ていた文士(ふみひと)さんの弟さんよ。」
伝文ひろふみです。」
伝文は右手を影子に向けて、影子もそれに応じるように握手を交わした。
「影子です。よろしく伝文さん。今日はどういった御用ですか?」
「実は、8年前兄が殺されたんですよ。あなたに。」
「」
「あの日、見ていたんです。兄に刃物を何度も突き立てたあなたの姿を。」
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