誘拐記念日

木継 槐

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4、

自首②

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悠一が駆けつけた時には同じバスに乗り合わせた皆が一緒に飛び込んできた。
「宗太!!」
「悠一……。」
「宗太君、置き手紙を拝見しても?」
「うん、これ。」
僕が手紙を渡すと、透が受け取りみんなが手紙を覗き込んだ。
「きれいになってから……か。」
「化粧するって事か?」
「悟って良いやつなんだけど……天然だよね。」
悟がぽかんとした顔を見て僕たちはみんな苦笑いをした。
透は悟の顔を見て呆れた顔で首を横に振った。
「これは影子さんが一人を自首をしたって事でしょう。」
「うわ、マジか。」
「いや、普通わかるだろお前。」
悠一は悟に突っ込みながらスマホの検索画面を開いた。
「で、宗太は心当たりあるのか?」
僕は首を横に振ることしか出来ず、悠一は顔を顰めた。
そんな僕たちを見て透は改めて手紙に目を通した。
「今は出来ることをするしかないですね。」
「そうは言ってもどこに自首したかなんてわかんねぇだろ。」
「シラミ潰しだな。まずはこの近辺の警察署とか交番に問い合わせよう。」
憲司はスマホで検索して警察署に電話をかけながら、口パクで『交番は任せた』と呟いた。
僕達は憲司に頷いてからすぐに部屋を飛び出した。
「最寄りは駅の近くだった気がする。」
「チッ、微妙に遠いじゃねぇか……」
「時間がありません、2手に分かれましょう。」
透はそう言いながら、スマホの電源をつけた。
「切ってたのかよ!」
「充電残量が少ないんですよ!」
悠一は素早くマップをグループチャットに貼り付けた。
僕達はそれを頼りに交番に向かった。
2手に分かれたと言っても奇数だったから僕と悠一、透と憲司と秋大という別れ方で行動する事になった。

駅のすぐ側の交番は警察官が3人駐在していた。
「すみません、聞きたいことがあるんですけど!」
「おう、どうした坊主。」
「ここに橘って女性が来ませんでしたか?」
「いや、来てないが……何かあったのか?」
「それッ……は……。」
警察官の一言に咄嗟に言葉に詰まった。
「どうした。あまり良い状況じゃなさそうだな。」
「……そいつが自首してるかもしんないんすよ。」
悠一の一言に警察官は目の色を変えて僅かに口角を上げた。
「自首?……どんな女性だった?」
「分かんないならいいっす、他当たるんで。行くぞ。」
警察官が次の言葉を紡ごうとする間もなく、僕は悠一に腕を引っ張られて交番を出た。
「待ちなさい!!」
「誰が待つか!俺らはあんたらみたいに暇してねぇんだよ!!点数稼ぎなら他当たれよ!」
「悠一……。」
「ほら次だ。交番ならバスで一駅だ。走った方が早い。」
悠一はグループチャット見ながら足を早めた。

僕は走りながら透に電話をかけると2コールで透の声がした。スピーカーにして透達の声に耳を傾ける。
『そちらはどうですか?』
「ダメだった、そっちは?」
『全く。むしろ点数稼ぎの餌に使われそうになりましたよ。』
「どこも一緒だな。」
「今は次の交番まで走るしかないね。」
『こちらは2駅先なのでちょうど来たバスに乗りました。チャットにはこちらから流しておきます。』
透と電話を終えて5分ほど走ると、スーパーの横に交番を見つけた。
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