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幼少期~煌の視点~
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「……ん……。」
運良く目を覚ました俺は部屋に横たわっていた。
「煌!!」
「煌!」
「兄上!!」
俺と目が合うと、王室の面々は皆涙を流した。
そこには首医の姿も…そして権もいた。
しかし座っている位置は…斬の後ろ。
その意味は、例え学のない俺でも分かる……。
劉 権は元から俺を殺すつもりだった…。
俺亡き後に斬を据えるつもりだったのだ。
その見せつけられた事実を頭では理解しながらも、心で理解するには酷すぎて…受け流すには俺の心は幼すぎた。
涙は目ではなく心に溢れた。
その日から俺は孤高に、人を信じるのをやめた。
また相反するように権はますます権力を高めて、俺はより孤立した。
俺の毒のことがあったものの王室は何不自由なく行事が執り行われていく。
その中には斬の婚約式も含まれ、俺が武道部屋に閉じこもる中、盛大に音楽が鳴り響く宮中はただの地獄だ。
そんな毎日を期待せずに過ごしていたある日のことだった。
季節は晩秋、都では『収穫祭』なる行事をやっていると聞きつけた俺は、皆の反対を押し負かして、お忍びで馬足を運ぶことにした。
馬を勧めたのは父上で毒を受けたばかりの体を酷使するなとの王命だった。
「兄上、お待ちくだされ。」
ならばと俺は一人で楽しむ予定で朝早く馬小屋を見て歩いていたにも関わらず…
「何故そなたがここにおるのだ!?」
「私も都の祭りを観覧してくるようにと母上が。」
「……あぁそうか良かったな。」
俺は斬の"母上自慢"が大嫌いだ。
実の母がいるものにはよくある話題なのかもしれない。
でも俺にとってはまだ触れたくない話題だ。
俺は斬の話を聞かないまま馬に跨った。
「兄上……私もお供します。」
「結構。馬くらいひとりでこなせる。お前はお前で勝手に妃の土産選びでもしていろ。"未来の王様"。」
「兄上……。」
俺は嫌味を吐き捨てて王室の門を馬のひづめで弾き開き、飛び出した。
……すると都では想像以上に壮大な祭りが開かれ、王室から続く直接には各々の出店が左右に列をなして地平線に向かっているのか疑うほど長く続いていた。
「素晴らしいな……。」
しかし馬で出店を回るのは少し動きずらい。
俺は馬から降りようと馬の手綱を引いたその時だった。
「ヒヒヒーンッ!!!!」
「ッ!?」
突然馬は狂ったように体をくねらせた。
かと思ったのもつかの間、今度は一直線に猛突進を掛け始めた。
「こら!止まれ!!止まらぬか!!」
体制をどうにか崩さぬよう腹に力を入れていたものの、馬は止まるどころかより速さを増していく。
そして次の瞬間。
俺の乗る馬の前に立ち止まり振り返った子供の姿が見えた。
「ッ!!」
慌てて手綱をちぎれるほど強く引き、馬の前足が上に上がった。
しかしそれは、俺の混乱から起きた操縦失念にほかならなかった。
馬のヒヅメは思いっきりその子供にあたり、子供はひたいから血を吹き出しながら前方に弾き飛ばされた。
ドシャッ
子供が地面に叩きつけられる音で俺はやっとしでかした出来事に気がついた。
子供には同じ背格好の子供が駆け寄り名前を呼んで泣き叫んでいる。
早く馬から降りて謝罪をしないとならない。
その前に医官を呼ばねば。
だが俺は今1人だ……そう……1人なのだ。
その瞬間はじき出した自分の答えに…俺は自らを疑った。
「馬が汚れたではないか!!」
「ッ!?」
俺は民を馬の上から見下し、罵声を吐いた。
そのとき俺を見上げたあの涙で震える瞳を俺は見返すことができなかった。
俺はそのまま騒ぎを聞きつけ駆けつけた武官に馬を取り返させ、何食わぬ顔をして王室に戻った。
隠さなければ……この事実を何としてでも。
さもなくば俺は……王室を追い出されてしまう。
今、この国に俺の見方など一人もいないのだ。
こうして愚かな心の俺は自身の保身に意識を走らせてしまった。
運良く目を覚ました俺は部屋に横たわっていた。
「煌!!」
「煌!」
「兄上!!」
俺と目が合うと、王室の面々は皆涙を流した。
そこには首医の姿も…そして権もいた。
しかし座っている位置は…斬の後ろ。
その意味は、例え学のない俺でも分かる……。
劉 権は元から俺を殺すつもりだった…。
俺亡き後に斬を据えるつもりだったのだ。
その見せつけられた事実を頭では理解しながらも、心で理解するには酷すぎて…受け流すには俺の心は幼すぎた。
涙は目ではなく心に溢れた。
その日から俺は孤高に、人を信じるのをやめた。
また相反するように権はますます権力を高めて、俺はより孤立した。
俺の毒のことがあったものの王室は何不自由なく行事が執り行われていく。
その中には斬の婚約式も含まれ、俺が武道部屋に閉じこもる中、盛大に音楽が鳴り響く宮中はただの地獄だ。
そんな毎日を期待せずに過ごしていたある日のことだった。
季節は晩秋、都では『収穫祭』なる行事をやっていると聞きつけた俺は、皆の反対を押し負かして、お忍びで馬足を運ぶことにした。
馬を勧めたのは父上で毒を受けたばかりの体を酷使するなとの王命だった。
「兄上、お待ちくだされ。」
ならばと俺は一人で楽しむ予定で朝早く馬小屋を見て歩いていたにも関わらず…
「何故そなたがここにおるのだ!?」
「私も都の祭りを観覧してくるようにと母上が。」
「……あぁそうか良かったな。」
俺は斬の"母上自慢"が大嫌いだ。
実の母がいるものにはよくある話題なのかもしれない。
でも俺にとってはまだ触れたくない話題だ。
俺は斬の話を聞かないまま馬に跨った。
「兄上……私もお供します。」
「結構。馬くらいひとりでこなせる。お前はお前で勝手に妃の土産選びでもしていろ。"未来の王様"。」
「兄上……。」
俺は嫌味を吐き捨てて王室の門を馬のひづめで弾き開き、飛び出した。
……すると都では想像以上に壮大な祭りが開かれ、王室から続く直接には各々の出店が左右に列をなして地平線に向かっているのか疑うほど長く続いていた。
「素晴らしいな……。」
しかし馬で出店を回るのは少し動きずらい。
俺は馬から降りようと馬の手綱を引いたその時だった。
「ヒヒヒーンッ!!!!」
「ッ!?」
突然馬は狂ったように体をくねらせた。
かと思ったのもつかの間、今度は一直線に猛突進を掛け始めた。
「こら!止まれ!!止まらぬか!!」
体制をどうにか崩さぬよう腹に力を入れていたものの、馬は止まるどころかより速さを増していく。
そして次の瞬間。
俺の乗る馬の前に立ち止まり振り返った子供の姿が見えた。
「ッ!!」
慌てて手綱をちぎれるほど強く引き、馬の前足が上に上がった。
しかしそれは、俺の混乱から起きた操縦失念にほかならなかった。
馬のヒヅメは思いっきりその子供にあたり、子供はひたいから血を吹き出しながら前方に弾き飛ばされた。
ドシャッ
子供が地面に叩きつけられる音で俺はやっとしでかした出来事に気がついた。
子供には同じ背格好の子供が駆け寄り名前を呼んで泣き叫んでいる。
早く馬から降りて謝罪をしないとならない。
その前に医官を呼ばねば。
だが俺は今1人だ……そう……1人なのだ。
その瞬間はじき出した自分の答えに…俺は自らを疑った。
「馬が汚れたではないか!!」
「ッ!?」
俺は民を馬の上から見下し、罵声を吐いた。
そのとき俺を見上げたあの涙で震える瞳を俺は見返すことができなかった。
俺はそのまま騒ぎを聞きつけ駆けつけた武官に馬を取り返させ、何食わぬ顔をして王室に戻った。
隠さなければ……この事実を何としてでも。
さもなくば俺は……王室を追い出されてしまう。
今、この国に俺の見方など一人もいないのだ。
こうして愚かな心の俺は自身の保身に意識を走らせてしまった。
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