王を恨んだ妃 第1章~復讐~

木継 槐

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幼少期~煌の視点~

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それから数日が経ったある日。

俺は山に散策に向かっていた。

本当は1人で動きたかったが、義母上に護衛を付けるよう勧められ、泣く泣く連れて歩くことにした。

しかし俺は知ってる。その護衛は…
劉 権の手下だ。

そんな奴らを信頼など誰ができまいか!
護衛がどんなに音をあげようとも、俺は足を緩めてやるものか。

この護衛たちは2人とも内官だ。
体力は武官より無い。

既に二人して息を切らし始めている。
いつも武官と鍛錬する俺にとってはなんとも無い。

そして歩みを進めるうちに山奥深く少し薄暗いところに来た。
ここはもう雑林と化し、全ての気がバケモノのように俺たちを見下ろして見える。

「世子様、もうそろそろ休憩しませんか?」
「そうです。世子様、体を痛めては大変です。」

「何を言っている!まだ序の口ではないか!!情のない。」

俺が鼻高々に内官達を見下していた。
その時。

ガサガサッ
「ッ……。」

少し前の茂みからなにかの通る音が聞こえた。
俺は足を止め護身用の短刀を懐から取り出した。

するとまた、ガサガサッと茂みが動く音が聞こえた。 
今度は近づいてきている。

俺は短刀を鞘から抜き取って茂みの動きに意識を向けた。

茂みはついに割り開かれて、中からは…木の皮と獣の皮で体をおおった男が姿勢を低く四つ這いしてこちらを睨みつけていた。

「なんだ……人間か……。」

俺は向けていた短刀をぶらんと下ろし1歩男に近づいた。

その時男の姿は消え、俺の頭上に影が指した。
途端に俺の体は落ち葉の上に押し付けられた。

「ッ……何をする!?」
「ウガー!!」

俺が持っていた短刀は右手を抑えられたせいでてから抜け落ち、庇おうと向けた左手は突如男に噛み付かれた。

「いぎっ!?」
「うー!……ううう……。」

どう何足掻こうとも、その男はスッポンのように口を緩めない。
……その姿はまるで獣のようで、俺はこのモノの獲物になるのかもしれないと程なくして悟った。

その間に二人の護衛は一目散に逃げていて、今は残り香すらない。

無様な終わり方だな……。俺は結局こうやって死ぬのか……。

俺は抵抗をやめた。
すると、男の唸り声がやんだ。

まだ荒い息だが、心做しか噛み付いた時よりも噛む力が弱くなったような…。

「……。」

かと思うと、男は俺の手から口を離し後ずさった。

「……そなた……俺を殺さないのか?」
すると男は首を横に振り眉間にシワを寄せた。
そして何かを言うのか口を開いたが直ぐにやめて閉口した。

言葉が通じない…それは互いに同じらしい。

男はしばらく俺と目を合わせていたけど、不意に俺に背を向けてスタスタと山道を駆け上がっていった。

それを眺めていると男は戻ってきた。
かと思うとサッと俺の短刀に顔を寄せ咥えた。

「なッ……」

男はそのまま俺の短刀を質に山道を駆け上がっていく。
……時折足を止め、俺を振り返りながら。

どうやら俺をどこかに案内するつもりらしい。
俺は噛みつかれた腕を軽く押さえ、男の後を追った。

しばらくすると男は一つの古びた建物で足を止めた。
と言うよりこれはもう既に廃れた木の集まりに見える。
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