底なしαの慈郎さんと、底抜けβの太郎君

あうる

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怪しさだって魅力です

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俺、能勢 遼太郎のせ りょうたろうと、同居人ーー里中 慧慈郎さとなか けいじろうさんとの出会いのきっかけは、何を隠そう我が家の愛猫、サブローさんだ。
簡単に言ってしまえば、捨て猫だったサブローさんを慈郎さんが拾い、それが原因で困った事態になった慈郎さんを、俺が拾った。

んでもって、その一人と一匹は、紆余曲折ありつつ、今や可愛い飼い猫と最高の彼氏として俺の帰りを待っていてくれるわけで。

いや本当に、いい拾い物したな~と。

全力で惚気けたくなるくらい幸せな日々を送っているわけなのだが、残念ながら俺と世間一般では、認識に大きく溝が空いているらしい。

そう、それは二人と一匹で楽しくカニ鍋を堪能した翌日。

「なぁ能勢、お前まだ例の怪しいαと同居してんの?」

パソコンの前に陣取り、機嫌よく備品の納品個数を入力していた俺は、背後から唐突にかけられたその声に、余裕の笑みでVサインを返す。

「最近同居じゃなくて同棲になりましたー。ラブラブですぅ」
「ツッコミ入れんのそこかよ……」
「慈郎さんの怪しさは俺も認めてるからねぇ」

なにせ同棲して3ヶ月。今だに名前と、αであるということしかわかっていないという身元不明ぶりだ。

「ミステリアスなのもまた魅力的だよね~」

不審人物ではなく、ミステリアスな不思議紳士と呼んであげてほしいのだが、我が同僚こと竹脇くんは、どうにも納得がいかないらしい。

「少しでもおかしな行動をとるようならさっさと叩き出せ」
「おかしな行動っていわれてもね~。
俺、今が幸せなら後先はわりと考えない質だし」

同い年の同期から睨みつけられた所で、全く怖くない。
そもそも考えたところでどうしようもないし、今の幸せを優先して何が悪いのだろう。
心配をしてくれているのはわかるが、余計なお世話という奴だ。

「わかった。男なら誰か俺が紹介してやるから……」
「ノンケに男を紹介して貰うほど落ちぶれてません~。てか人を尻軽扱いしないでくれる?今の俺は慈郎さん一筋なんで!」

竹脇は俺がゲイだと知っても態度を全く変えない善良なノンケだが、やはりその辺デリカシーがやや足りていないと思う。
付き合いたての恋人がいる相手に他の子を紹介するからそいつとは別れろとか、普通にドン引きする。

「俺はお前が犯罪にでも巻き込まれるんじゃないかと心配で」
「お生憎様ー。慈郎さんはαだし、犯罪なんて犯しそうなタイプじゃありません~」
「αだって人間なんだから犯罪だって犯すだろ!」
「少なくとも川に落ちた野良猫助けてずぶ濡れになって途方に暮れてるαはそんなことじゃないと思うよー」

そもそも、αというのは生まれながらの勝ち組。
国からの補助金もあるし、まず貧乏ぐらしはありえない。
というか、慈郎さんは見た感じめっちゃ育ちがいい。
着ていたものだってハイブランド品だった。

今はすっかりユニクロユーザーになっちゃってるが、それだって慈郎さんが着ると高級ブランドに見える不思議さよ。
慈郎さんは、ポリエステルの量産品をカシミアの最高ランクに変える魔法使いだ。

「てか、俺今まで慈郎さんに金渡したことないし」
「は?」
「どっから出てくんのかわからんけど、毎回生活費はきっちり出してくんのよ、あの人」

財布もスマホもなかった癖にね?

「おま……!それこそ怪しいじゃねぇか!」
「う~ん。でもねぇ」
「追求しろよそこは!実はスマホだって隠し持ってんじゃねぇのか!?」
「うーん。そうなのかなぁ?」
「どう考えてもそうだろ!」

えー?そう?

「お家の人と連絡ついてるんならまぁいっか」
「良くない!」

叩きつけるように言う竹脇には悪いけどさ、ねぇ?


なんでお前、そんなにムキになってんの?
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