底なしαの慈郎さんと、底抜けβの太郎君

あうる

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隕石が落ちてきたので、俺は会社を辞めようと思う

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「イヤイヤイヤ、ないない!!」
「そうですか?十分考えられる話だと思いますが」
「慈郎さん、顔怖い」

怖い顔してもイケメンとか誰得?あ、俺得か?

もぐもぐと口に入れた唐揚げを飲み込んだところで、慈郎さんの爆弾発言が炸裂した。

「太郎さん、会社辞めましょう」
「わー」
「大丈夫です。この部屋から一歩も出なくても生きていけるだけの貯蓄はあります」
「それ気になってたんだけど、慈郎さんって何で収入得てんの?仕事行ってる様子ないけど、時々タブレットでなんか見てるよね?」
「はい」
「もしかして株とか?」
「はい」
「そのタブレットで見れんの?俺のお古で型遅れの泥よ?林檎ですらないよ?」
「問題ありません」

ネットさえあれば何とかなるって凄い。

「なんか詳しく聞くの怖いんだけど」
「生活に困らない程度の資金が稼げ、時間に縛られない程度の余裕が持てる仕事と思っていただければ」
「……慈郎さん」
「はい」

固く手を取り握りしめる。

「明日仕事やめてくる」
「明日はお祝いですね」

その後、大真面に指輪を買いに行こうとする慈郎さんを止めるのは結構大変だった。

「俺の宝くじは慈郎さんだったかぁ」

大金当てたら仕事なんていつだって辞めてやるって思ってたけど、生活に支障がない程度でも全然オッケー。

「老後は二人で有料老人ホームに入りましょうか」
「一緒のお墓に入る?」
「できれば」
「そっかぁ。じゃあこれからずっと一緒だね!」
「はい、ずっと一緒です。
これから一緒に退職届も書きましょうか?」
「え、いいよ!ネットで雛形拾うし」

名前と日付だけ変えればチョチョイのちょいだし。

「得意ですよ?私」
「え、そう??じゃあ任せちゃおっかな」
「はい、任せて下さい。明日出社前にお渡ししますね?」
「ありがとー!」


そして俺達は二人でほかほかのご飯を食べ、ほかほかのお風呂に入って、ほかほかの布団で一緒に寝た。

やばいくらに幸せな日々だ。



「ーーってことで、これが今朝書いた辞表」

用意された書式に名前を書いて、ハンコを押しただけであら簡単。

「待ってろ。いま消し炭にしてやる」

見せるなりライター取り出すとかひどすぎだと思わないか??

「まぁ予備あるけど」
「ふざけんな全部出せ!!」
「やーだよ」

ベーっと舌を出す俺に「ガキか!」と叫んで頭を掻きむしる。

「朝出すと色々面倒くさいことになりそうだし、帰りに部長の机においていこうかな」
「そんな我が儘が通用するわけあるか!退職届けは普通、辞職する2ヶ月前には提出する決まりだろうが。
しかも退職理由はなんて説明する気だ?え?」
「寿退社!」
「男にそんなものはない!」

酷い時代後れ発言だ。
いくらここが人気のない男性トイレとはいえ、少しは気を使って欲しい。
世の中には男性Ωという妊娠可能なイレギュラーも存在する訳だし。

「でも実際そうとしか言いようがないしなー。そもそもこうなった原因は竹脇にもあるわけだし?」
「俺はソイツと縁を切れといったのであって、嫁にいけとは一言も言ってない」 
「慈郎さんってば、ああ見えて案外独占欲強めだからさー」
「そりゃ、αなら当然だろ?」
 
αの特性として、優秀である事と共に良く知られているのが、その偏執的とも言える恋人への執着心だろう。
特に番と呼ばれるパートナーに対しては、子育て中の母グマも真っ青なくらいの庇護欲と支配欲を持つという。

「でも俺ってばしがないβじゃん?どうなのかな~って実は常々思ってたんだよね」

Ωではない、本来αの相手になどなるはずのない俺にも、ヤキモチを焼いてくれるのかな?ってさ。
そしたらどうよ。

「結果は大金星!」

まさか仕事を辞めろと言われるとはおもわなかったけど、全然オッケー。

「………αを舐めると後で後悔するぞ」

思いの外真剣な忠告だが、後悔したって構わない。

「仕方ないじゃん。だって俺、どう足掻いたって番になれないβだもん」
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