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オメガ、駄目絶対2
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「太郎さん、これは一体ナンデスカ」
渡したいものがある、といってこたつの上に置かれたそれに、思わず片言になる俺。
「お守りです」
「いやいやいや、どう見てもヤバい物にしか見えないんですか!?」
「私の魂を守るものですので、太郎さんに持っていて欲しくて」
「魂…………」
目の前に存在感マシマシで置かれたのは、よくドラマなんかで見かける、怪しいお注射(2本入り)。
こじゃれたアルミケースなんかに入って、持ち歩きには便利そうだが、いやこれ本気で何?
「あ、わかった。もしかしてこれって抑制剤ってやつ?」
αがオメガの発情に対して、突発的に引きずられてしまった場合、それを抑制する為の薬が存在する、という話はβの俺でも聞いたことがある。
不本意な番事故を防ぐ為という名目で、駅やデパートなどの人の多く集まる場所には、大抵この薬が常備されているらしい。
勿論そうした場合でも、αは特別待遇で手当てをされ、手厚くもてなされ。
逆に不用意に人の多い場所で発情を起こしたΩは、きつく叱責を受けるもの……らしい。
そう聞くとなんかΩの人が可哀そうになるが、ΩはΩで発情を抑える抑制剤というものがあるらしいので、結局はそれを飲んでこなかったΩが悪い、という話で。
発情期、というのは本来ある程度予測のつくものらしいので、まぁそれも仕方ないかとは思う。
ベータの俺でも納得できる言い方とすれば、いわゆる公共のマナーという奴なんだろう。
「片方、そっちの青い方はそうですが、こちらの無色透明な方は強心剤です」
「きょーしんざい」
って、なぁに?と、ふざけて聞ける雰囲気でもないので素直に尋ねる。
「ちょっとまって慈郎さん、強心剤って、もしかしてニトログリセリン?」
「そちらは錠剤でいつも常備していますが、その注射の中身は違います」
「持ってんの!?ってまたこれは別ってどんだけ…!?」
「そちらは私用に調合してもらった薬液が入っていて、首筋の静脈に注射をしてもらえば、どんな状況であろうとほぼ一発で意識を失います」
「何それコワい」
というか、副作用とかめっちゃ怖いんだけど、大丈夫なの?
「多少の意識混濁はあるでしょうが、数日で回復するかと」
「うん、ヤバい物なのはよくわかった」
んで、それを俺に渡すってのはどういうことなのかな?
「使用方法は後でまた詳しく説明しますが、もし私がΩの発情に充てられておかしくなった場合、まだ理性があるようでしたらこちらの青い抑制剤を」
「ふむふむ」
「既に理性がなく、太郎さんに対して少しでも敵意を向けるようでしたら、ためらいなくこちらの透明な方の薬剤をここに向かって打ち込んでください」
ここ、といって自らの首筋を晒す慈郎さん。
「外出中、少しでも何かの兆候を感じた場合は、躊躇わずお願いします」
真剣なその懇願を、一体誰が断れるっていうんだ。
βである俺には、Ωの出すフェロモンなんてのは全くわからない。
でも、慈郎さんの様子がいつもと違っていれば、それにはすぐに気づく自信がある。
あぁ、なるほどだから俺なのか。
「慈郎さんの首っておいしそうだよね、なんか。
ちょっと齧ってみたくなるっていうか」
何となく現実逃避で吸血鬼じみたセリフを吐いてみたが、さすがに慈郎さんはレベルが違った。
「太郎さんの血肉になれるなんて、考えてだけで興奮します」
さぁどうぞ、やや興奮気味に差し出されたうなじは、全くの無防備で。
目の前にあるブツが、どう考えても誤って使用すれば慈郎さんの命を奪いかねない劇薬であることとか。
そんなものを俺に預けてくれるっていうことが、どういうことなのかとか。
ぜーんぶひっくるめて、無性に慈郎さんが愛しくて。
「大好き、慈郎さん」
目の前にある首筋に、思い切りカプリ、と噛み後を残す。
今日という日の教訓はひとつ。
『オメガ、駄目絶対』だ。
渡したいものがある、といってこたつの上に置かれたそれに、思わず片言になる俺。
「お守りです」
「いやいやいや、どう見てもヤバい物にしか見えないんですか!?」
「私の魂を守るものですので、太郎さんに持っていて欲しくて」
「魂…………」
目の前に存在感マシマシで置かれたのは、よくドラマなんかで見かける、怪しいお注射(2本入り)。
こじゃれたアルミケースなんかに入って、持ち歩きには便利そうだが、いやこれ本気で何?
「あ、わかった。もしかしてこれって抑制剤ってやつ?」
αがオメガの発情に対して、突発的に引きずられてしまった場合、それを抑制する為の薬が存在する、という話はβの俺でも聞いたことがある。
不本意な番事故を防ぐ為という名目で、駅やデパートなどの人の多く集まる場所には、大抵この薬が常備されているらしい。
勿論そうした場合でも、αは特別待遇で手当てをされ、手厚くもてなされ。
逆に不用意に人の多い場所で発情を起こしたΩは、きつく叱責を受けるもの……らしい。
そう聞くとなんかΩの人が可哀そうになるが、ΩはΩで発情を抑える抑制剤というものがあるらしいので、結局はそれを飲んでこなかったΩが悪い、という話で。
発情期、というのは本来ある程度予測のつくものらしいので、まぁそれも仕方ないかとは思う。
ベータの俺でも納得できる言い方とすれば、いわゆる公共のマナーという奴なんだろう。
「片方、そっちの青い方はそうですが、こちらの無色透明な方は強心剤です」
「きょーしんざい」
って、なぁに?と、ふざけて聞ける雰囲気でもないので素直に尋ねる。
「ちょっとまって慈郎さん、強心剤って、もしかしてニトログリセリン?」
「そちらは錠剤でいつも常備していますが、その注射の中身は違います」
「持ってんの!?ってまたこれは別ってどんだけ…!?」
「そちらは私用に調合してもらった薬液が入っていて、首筋の静脈に注射をしてもらえば、どんな状況であろうとほぼ一発で意識を失います」
「何それコワい」
というか、副作用とかめっちゃ怖いんだけど、大丈夫なの?
「多少の意識混濁はあるでしょうが、数日で回復するかと」
「うん、ヤバい物なのはよくわかった」
んで、それを俺に渡すってのはどういうことなのかな?
「使用方法は後でまた詳しく説明しますが、もし私がΩの発情に充てられておかしくなった場合、まだ理性があるようでしたらこちらの青い抑制剤を」
「ふむふむ」
「既に理性がなく、太郎さんに対して少しでも敵意を向けるようでしたら、ためらいなくこちらの透明な方の薬剤をここに向かって打ち込んでください」
ここ、といって自らの首筋を晒す慈郎さん。
「外出中、少しでも何かの兆候を感じた場合は、躊躇わずお願いします」
真剣なその懇願を、一体誰が断れるっていうんだ。
βである俺には、Ωの出すフェロモンなんてのは全くわからない。
でも、慈郎さんの様子がいつもと違っていれば、それにはすぐに気づく自信がある。
あぁ、なるほどだから俺なのか。
「慈郎さんの首っておいしそうだよね、なんか。
ちょっと齧ってみたくなるっていうか」
何となく現実逃避で吸血鬼じみたセリフを吐いてみたが、さすがに慈郎さんはレベルが違った。
「太郎さんの血肉になれるなんて、考えてだけで興奮します」
さぁどうぞ、やや興奮気味に差し出されたうなじは、全くの無防備で。
目の前にあるブツが、どう考えても誤って使用すれば慈郎さんの命を奪いかねない劇薬であることとか。
そんなものを俺に預けてくれるっていうことが、どういうことなのかとか。
ぜーんぶひっくるめて、無性に慈郎さんが愛しくて。
「大好き、慈郎さん」
目の前にある首筋に、思い切りカプリ、と噛み後を残す。
今日という日の教訓はひとつ。
『オメガ、駄目絶対』だ。
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