底なしαの慈郎さんと、底抜けβの太郎君

あうる

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ハイスペαに二言なし

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「うん、分かってた」
「ニャ~?」

慈郎さんは有限実行する男だってわかってたよ俺は!!

翌朝、サブローさんを預けにやってきた北川家。
慈郎さんは、サブローさんの入ったキャリーを抱えて、当然のようについてきた。
「昨日約束しましたよね?」と、涼しい顔で。

………ベッドの上で言質を取るとかもう慈郎さんどんだけ俺の事が好きなの、本当。
 

「やだ~!!タロ兄ってばめっちゃ面喰じゃん!!」
「だな、しかもαとかタロ兄スゲー」
「ニャ~オ」

αである元旦那の血を感じさせる北川家長男、まことの腕に抱かれ、ご満悦気味に喉を鳴らすサブローさん。
大はしゃぎする北川家長女みのりは、スマホ構えて慈郎さんを激写中。
ちょっと待て、お前が撮るべきはそっちじゃない。

「え~、こちら里中慧慈郎さん、俺の旦那(仮)です」
「こんにちは、いつも太郎さんがお世話になってます。どうかサブローさんを宜しくお願いしますね」

朝イチから北川家勢ぞろいのお出迎えを受けながら、まったく動じない慈郎さん。
なぜか北川兄妹と握手をしているが……それなに?ねぇ君達。

その動じなさを受け継いだのか、初めての家にも関わらず平然とくつろぎ始めるサブローさん。
この様子なら、この家に預けても特に問題は起こらないだろう。
少し心配していただけに、安心するやら気が抜けたやら。

「これまた、随分凄いのを連れてきたわね、能勢くん」

兄妹の背後に立ち、足元にすり寄ってきたサブローさんを撫でながら、呆れ半分、冷静に俺達を観察していたのは北川家のビッグマザー。
既にフルメイク、スーツ姿でいかにも出勤前という完璧装備だ。

「うちの慈郎さん。カッコよくないですか」
「胡散臭い」

ズバリ一言、歯に衣着せぬ物言いがいっそ清々しい。

「ねぇ、本当にその男で大丈夫なの?能勢くん……」
「私に何か問題でも?」
「あなたに聞いたわけでありませんが」
「ですが、ここは私が答えるべきだと感じましたので」
「へぇ……?」

俺に答える隙すら与えず、自信満々で部長に相対する慈郎さん。
部長の完璧に仕上がった口元に、その瞬間わずかなひびが入るのを俺は見た。

「タロ兄、お土産よろ!」
「温泉まんじゅうより蟹とか魚で。なんならクール便直送も可」

そんな母親をよそに、呑気に土産の催促をする北川兄妹。
この二人の勤める会社は現在在宅ワーク推奨で、二人共今日明日は自宅待機する予定らしい。
宅配便ならいつでも受け取れるよ!という遠回しのようでかなりダイレクトな注文は、『温泉旅行を楽しんできてね』という彼らなりの気遣いなのだろう。

「生物ね、わかったわかった、期待してて」
「やったー」
「タロ兄が帰ったら鍋だね、鍋!サブちゃんも一緒に食べようね~?」
「ニャ~ン!」
「お土産話もよろしくな、タロ兄。それとそこのαの……え~と、ジロ兄でいい?」
「勿論です」
「ジロ兄もよかったら一緒に食ってってよ!タロ兄の秘密とかいろいろ教えてあげるし」
「ありがとうございます、ぜひお願いします」
「ちょ!?秘密って何の話!?」

頼もしい兄妹に向け優しく受け答えをする一方、「あぁそうだ、そういえば忘れていました」と持っていた荷物から封筒に入った薄い冊子のようなものを取り出し、部長に差し出す慈郎さん。

「太郎さんには必要のないものですので、お返ししておきますね?」
「あ」

その瞬間、それがなんだかすぐに分かった。
………見合い写真。もしかして、なにげにまだ根に持ってたの?慈郎さん。

「それはわざわざどうも。……なんなら貴方に差し上げても構いませんが?」
「私の最愛の伴侶は既にここにおりますので」

先輩の釣書を前に笑顔で応酬しあう二人。
その後仕方なく受け取った釣書は、回覧板か何かのような気軽な様子で玄関先に放り投げられた。

「いいんですか、そんな適当で」
「いいのよ、どうせ毎年新しいのを持ってくるんだから。今まで一体何枚預かってきたことか……」
「あー」

見合い写真って更新されるものなのか、なるほど。
ラフな扱いの裏には、思わぬ部長の苦労が隠されていた模様。

北川兄弟も、釣書に関しては完全に見て見ぬふりの様子。
サブローさんすら避けて通るとか、なんか呪いでもかかってるんだろうか、あれ。
忙しい朝の時間でもあるし、そろそろお暇しなくては。
そう思い、辞去の挨拶を口にしてその場を去ろうとした俺。
それを引き留めたのは、意外なことに慈郎さんだった。

「すみません実は少し気になったことがあるのですが、少々お耳をよろしいでしょうか」
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