保護猫subは愛されたい

あうる

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「そんなに睨まなくとも、もう何もしないわよ」
「どうだかわかりませんね」

呆れたような口ぶりで見下ろす姉を睥睨し、椅子に座って晶から手当を受けるマスター。

すべてを水に流したとはとても言えないが、subである晶の前で必要以上に張り合うつもりもないのだろう。
domの姉弟関係とは、かくもシビアなものなのか。

「過保護な親熊のようでみっともないと言っているのがわからなかったかしら」
「そうさせた責任を取るべきは誰ですか?」
「少なくとも私ではないわね」
「しばらく会わないうちに、面の皮の厚さに磨きがかかったようで」
「あなたは少しは成長したかと思えば、全然駄目だったわ」
「私のどこが駄目だと?」
「わからないところがすでに駄目ね。
少しは貴方のsubを見習ったらどう?
ただの子猫かと思ったら、腹の座った化け猫じゃない。
その子、私を殺しそうな目で見ていたわよ」
「晶があなたを?」  
「知らなかった?その気になれば猫は爪だけでも人が殺せるのよ。
普段見せないだけで、子猫だって立派な牙を持っている」

ちらりと視線を向けられた晶だか、気にせずマスターの掌の消毒を続けた。
幸い傷はそこまで深くはなかったようで安心する。
着いてそうそう、まさかこんなことになるとは。

「すみませんマスター、とっさのことでリボンが……」
「いや、構わない。元から明日にでも新しい君の首輪を用意しようと思っていたんだ」

すっかり血に染まり、一部分がどす黒く変色したリボン。
捨てても構わないと言われたが、とてもそんなことはできない。
短く切れば十分再利用可能だ。

「明日……ですか?」
「怪我を指したのが左手で良かったよ。
でなければ今日中に帰れなくなるところだった」

詳しいことは濁したまま、治療の済んだ掌を何度か握り、具合を確かめるような仕草を見せるマスター。

「何を軟弱なことを。大げさね」
「私も年を取ったんですよ」
「そんなことで貴方のsubを守れるの?自分と対等のdomに対してどう対抗するつもり?」
「私達の何を知っているんですか?姉さん」

含みをもたせたセリフに真正面から切り込めば、「さぁ?どうかしら」と素知らぬ素振り。

「いらぬお節介もその為で?」
「ただの気まぐれ、では通じないかしら」
「彼をけしかけたのもあなたですか?」
「彼?」
滋賀威人しがたけと、あなたのお気に入りでしょう?」
「あら嫌だ。あの子は貴方の群れの一員じゃない」
「それ以前にあなたの子飼いだったことを今思い出しましたよ」

滋賀といえば、と。
視線をリボンに落とす晶。
あれ以来晶は滋賀の姿を見ていないが、マスターは彼と連絡を取っていたのだろうか。
マスターを挑発したあの姿が、彼女の差金によるものだった?

「疑り深い人間は幸せになれないわ」
「私が不幸に見えると?」

見せびらかすように晶の肩を抱き、微笑むマスター。

「あなたから惚気を聞かされる日が来るなんてね」

呆れた、と口では言いながらも、その顔にはどこか満足げな笑みが浮かんでいる。

「それで、実際の所はどうなんですか?」
「少しお願いをしただけよ」

「………何を?」

「さっきも言ったじゃない。
あなたの可愛い子に、私から首輪カラーをプレゼントしてあげようと思って」
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