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偽りの愛と真実の愛
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夜空に浮かぶ赤い月は、不吉の兆しだった。
リエンヌは、王宮の書庫で古文書を読んでいた。
王家からの正式な“婚約内定”を受け、王妃教育を始めるよう言い渡されたのだ。
だが心は、晴れなかった。
(……セイラン様の瞳が、あのとき揺れていた)
ほんのわずかに、彼の心が“魅了”の影響を受けたのではないかという疑念が、リエンヌの胸にしこりを残していた。
(もし、ほんとうに彼の心が魔力に影響されたのなら……あの言葉も、愛も、全部――)
「いいえ、信じましょう。あの人は……自分の意思で、わたしを選んでくれた」
そう呟いたとき――
不意に背後から、微かな魔力の波動を感じた。
「誰……?」
振り返っても誰もいない。
だが、それはすでに始まっていた。
⸻
■ 禁術・偽りの魅了発動
王宮地下にある忘れられた魔導礼拝堂。
そこにフローラとその姉・ミレイユが立っていた。
「“感情逆転の魅了”。これが完成すれば、第二王子はリエンヌに対し恐怖と嫌悪しか抱かなくなる」
「……ふふ、王子さまの瞳が、わたくししか映さなくなりますのね!」
ミレイユが冷たい声で言う。
「この術は、対象の“記憶と感情”を入れ替える。王子の中で“リエンヌへの愛”を“憎悪”へ、“わたしへの拒絶”を“愛情”へ変えるのよ」
術式が完成し、巨大な魔法陣が淡く赤く輝く。
標的は――セイラン王子。
術が放たれた瞬間、王子の胸に激しい痛みが走る。
「……っ、これは……!」
(リエンヌ……リエンヌは、危険な存在だ……)
違和感が心を満たしていく。
だが――
「……違う」
セイランの魔力が、何かを拒絶するように反発した。
「こんなものに……騙されるか……っ!」
歪みかけた記憶のなかで、リエンヌの涙と笑顔が脳裏に浮かぶ。
それはあまりにも温かく、あまりにも優しかった。
「リエンヌの笑顔を、疑うものか……!」
彼の精神が、禁術の支配をねじ伏せたその瞬間――
王宮が揺れた。
⸻
■ 王宮炎上と、囚われの姫
フローラの仕掛けた魔術は暴走し、王宮の東棟に炎を上げた。
混乱の中、リエンヌは“危険因子”として、侍従たちに幽閉されてしまう。
「リエンヌ・アレストール嬢は、王子を惑わす術を放った容疑者である。
一時的に拘束し、記憶操作の有無を調査する」
「違う……わたしじゃ、ない……っ!」
誰も信じてくれなかった。
唯一、セイランを除いては。
「リエンヌ、すぐに行く。絶対に、信じている」
幽閉された部屋の外で、彼の声が聞こえた。
⸻
■ 真実の愛の証明
その夜。
セイランは王に直談判した。
「フローラ・セルフィーナと姉ミレイユは、古代魔導の禁術を使用しました。リエンヌは無実です!」
「証拠はあるのか、セイラン」
「……彼女を、俺の手で救えなければ――俺が王位を継ぐ資格などありません」
その言葉は、もはや“王子”ではなかった。
“恋する男の、誓い”だった。
父王はしばし沈黙したのち、言った。
「三日以内に証を掴め。でなければ、リエンヌ嬢は国外追放とする」
セイランは深く頷いた。
リエンヌは、王宮の書庫で古文書を読んでいた。
王家からの正式な“婚約内定”を受け、王妃教育を始めるよう言い渡されたのだ。
だが心は、晴れなかった。
(……セイラン様の瞳が、あのとき揺れていた)
ほんのわずかに、彼の心が“魅了”の影響を受けたのではないかという疑念が、リエンヌの胸にしこりを残していた。
(もし、ほんとうに彼の心が魔力に影響されたのなら……あの言葉も、愛も、全部――)
「いいえ、信じましょう。あの人は……自分の意思で、わたしを選んでくれた」
そう呟いたとき――
不意に背後から、微かな魔力の波動を感じた。
「誰……?」
振り返っても誰もいない。
だが、それはすでに始まっていた。
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■ 禁術・偽りの魅了発動
王宮地下にある忘れられた魔導礼拝堂。
そこにフローラとその姉・ミレイユが立っていた。
「“感情逆転の魅了”。これが完成すれば、第二王子はリエンヌに対し恐怖と嫌悪しか抱かなくなる」
「……ふふ、王子さまの瞳が、わたくししか映さなくなりますのね!」
ミレイユが冷たい声で言う。
「この術は、対象の“記憶と感情”を入れ替える。王子の中で“リエンヌへの愛”を“憎悪”へ、“わたしへの拒絶”を“愛情”へ変えるのよ」
術式が完成し、巨大な魔法陣が淡く赤く輝く。
標的は――セイラン王子。
術が放たれた瞬間、王子の胸に激しい痛みが走る。
「……っ、これは……!」
(リエンヌ……リエンヌは、危険な存在だ……)
違和感が心を満たしていく。
だが――
「……違う」
セイランの魔力が、何かを拒絶するように反発した。
「こんなものに……騙されるか……っ!」
歪みかけた記憶のなかで、リエンヌの涙と笑顔が脳裏に浮かぶ。
それはあまりにも温かく、あまりにも優しかった。
「リエンヌの笑顔を、疑うものか……!」
彼の精神が、禁術の支配をねじ伏せたその瞬間――
王宮が揺れた。
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■ 王宮炎上と、囚われの姫
フローラの仕掛けた魔術は暴走し、王宮の東棟に炎を上げた。
混乱の中、リエンヌは“危険因子”として、侍従たちに幽閉されてしまう。
「リエンヌ・アレストール嬢は、王子を惑わす術を放った容疑者である。
一時的に拘束し、記憶操作の有無を調査する」
「違う……わたしじゃ、ない……っ!」
誰も信じてくれなかった。
唯一、セイランを除いては。
「リエンヌ、すぐに行く。絶対に、信じている」
幽閉された部屋の外で、彼の声が聞こえた。
⸻
■ 真実の愛の証明
その夜。
セイランは王に直談判した。
「フローラ・セルフィーナと姉ミレイユは、古代魔導の禁術を使用しました。リエンヌは無実です!」
「証拠はあるのか、セイラン」
「……彼女を、俺の手で救えなければ――俺が王位を継ぐ資格などありません」
その言葉は、もはや“王子”ではなかった。
“恋する男の、誓い”だった。
父王はしばし沈黙したのち、言った。
「三日以内に証を掴め。でなければ、リエンヌ嬢は国外追放とする」
セイランは深く頷いた。
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