アオバと

neko12

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みなぎる

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王都の空が、黒く染まった。

 魔王軍がついに動き出した。
 空を覆う黒翼の魔獣、地を這う不死の兵士たち。
 そして先陣を切るのは、仮面の使徒たち──“聖女狩り”の精鋭。



 「モモナ、怖くない?」

 私がそう聞くと、モモナは短く返した。

 「アピちゃんがそばにいるから、怖くない。……それより、君は?」

 「昔なら……泣いてたかも」

 私は笑った。
 思い出す。
 学校が嫌で、よく泣いて帰った日々。
 友達とのトラブル、先生に怒られた日、心が擦り切れたような放課後。

 そして──お母さんに叱られ、泣きじゃくっていた私の横に、
 いつもモモナがいた。

 雉トラの毛並み、胸元の白いふわふわ。
 何も言わず、ただ隣に寄り添ってくれていた。

 「……だから今度は、私がそばにいるよ」



 敵の魔力が押し寄せる。
 でも、私は逃げなかった。
 モモナの尻尾──鍵のように曲がった先端に、私の手を重ねた。

 その瞬間、世界が変わった。



 光が弾け、二人を中心に金色の魔法陣が広がる。
 それは、神聖でも邪でもない──

 **“共鳴”**だった。

 私の中の力が、モモナに流れ込む。
 癒しの力が、彼女の肉体と魂を貫き、昇華させていく。

 「……すごい。アピちゃん、これ……君の力?」

 「ううん、二人の力だよ」



 モモナの髪が風に揺れ、瞳が光を帯びる。
 肩には雉トラの紋、胸元には白い光の刻印。
 そして、背中に現れたのは──銀の羽。

 それは獣人にはありえないものだった。
 神と契約した者にしか与えられない、守護の証。



 「アピちゃん、私、行ってくる。全部終わらせる」

 「うん。戻ってきたら……目の上から、いっぱい撫でてあげる」

 「約束」

 そう言って、モモナは跳んだ。
 屋根を蹴り、空へ舞い上がる。

 その姿は、ただの獣人ではなかった。

 人の心に寄り添い、泣く少女を何度も救った、一匹の猫だった。



 空中で迎え撃つ魔王軍。
 黒い雷が放たれ、モモナに襲いかかる。

 だが、彼女の手から放たれた爪撃は、空を裂き、雷を無力化した。

 「これが、アピちゃんの泣き顔を守る力」

 その言葉とともに、空が金に染まる。



 王都の民は、その光を見た。
 恐怖の夜を照らす、二人の少女の共鳴の光を。
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