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鍵尻尾の記憶
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あの戦いの夜から、私は変わった気がしていた。
手をかざすと、微かに暖かい光が滲む。
モモナに触れると、彼女の力が明らかに増していく。
「これは、私の力……? でも、どうして今まで気づかなかったの……?」
モモナは黙っていたけれど、私にはわかった。
彼女は気づいていた。ずっと前から。
⸻
「昔から、不思議だったんだ」
私はモモナの尻尾をそっと包んだ。
カギ状にくるんと曲がった、その先端。
「この“鍵尻尾”に触れると、いつも気持ちが落ち着いた。悲しいとき、苦しいとき、何も言わずに寄り添ってくれて……」
「鍵だったんだ。アピちゃんの心を守る鍵」
モモナがそう言ったとき、部屋に光が溢れた。
私の手から、彼女の尻尾から、柔らかく、深く、あたたかい光が。
そして──記憶が蘇る。
⸻
私の幼い頃、よく学校が嫌で泣いていた。
お母さんに叱られた時も、間に入って庇ってくれていた。
胸元が真っ白で、ふわふわで、
ぺろりと舌を出す癖のあるあの子。
「モモナ……ずっと、見守ってくれてたんだね」
「ずっと、そばにいた。死んでも、アピちゃんのことが忘れられなかった。だからここに来た」
「モモナ……ありがとう」
私は、彼女の頭をそっと撫でた。目元から額まで、ゆっくりと。
モモナは、少しだけ目を細めた。
昔と同じ、満ち足りた表情で。
⸻
そのときだった。
部屋の空気が震え、天井に魔法陣が浮かぶ。
「……また来たか」
モモナが立ち上がる。
でも、今回は違った。
私の手が、自然とモモナの背中へと伸びる。
「モモナ、行こう。一緒に」
「……いいの?」
「私の力は“癒し”じゃない。あなたの力を、完全に引き出す“鍵”なんだ」
次の瞬間、私たちの体が金色に包まれる。
モモナの姿が、淡い光とともに変わっていく。
雉トラの紋が肩に浮かび、白い胸元の印が輝いた。
──これは、ただの転生じゃない。
魂ごと、生まれ変わったんだ。
⸻
外では、魔王の使徒たちが王都に向けて進軍していた。
でももう恐れない。
私は一人じゃない。
そして、モモナはただの獣人じゃない。
“鍵尻尾”が導く絆は、二つの命を繋いだ、真実の力だった。
手をかざすと、微かに暖かい光が滲む。
モモナに触れると、彼女の力が明らかに増していく。
「これは、私の力……? でも、どうして今まで気づかなかったの……?」
モモナは黙っていたけれど、私にはわかった。
彼女は気づいていた。ずっと前から。
⸻
「昔から、不思議だったんだ」
私はモモナの尻尾をそっと包んだ。
カギ状にくるんと曲がった、その先端。
「この“鍵尻尾”に触れると、いつも気持ちが落ち着いた。悲しいとき、苦しいとき、何も言わずに寄り添ってくれて……」
「鍵だったんだ。アピちゃんの心を守る鍵」
モモナがそう言ったとき、部屋に光が溢れた。
私の手から、彼女の尻尾から、柔らかく、深く、あたたかい光が。
そして──記憶が蘇る。
⸻
私の幼い頃、よく学校が嫌で泣いていた。
お母さんに叱られた時も、間に入って庇ってくれていた。
胸元が真っ白で、ふわふわで、
ぺろりと舌を出す癖のあるあの子。
「モモナ……ずっと、見守ってくれてたんだね」
「ずっと、そばにいた。死んでも、アピちゃんのことが忘れられなかった。だからここに来た」
「モモナ……ありがとう」
私は、彼女の頭をそっと撫でた。目元から額まで、ゆっくりと。
モモナは、少しだけ目を細めた。
昔と同じ、満ち足りた表情で。
⸻
そのときだった。
部屋の空気が震え、天井に魔法陣が浮かぶ。
「……また来たか」
モモナが立ち上がる。
でも、今回は違った。
私の手が、自然とモモナの背中へと伸びる。
「モモナ、行こう。一緒に」
「……いいの?」
「私の力は“癒し”じゃない。あなたの力を、完全に引き出す“鍵”なんだ」
次の瞬間、私たちの体が金色に包まれる。
モモナの姿が、淡い光とともに変わっていく。
雉トラの紋が肩に浮かび、白い胸元の印が輝いた。
──これは、ただの転生じゃない。
魂ごと、生まれ変わったんだ。
⸻
外では、魔王の使徒たちが王都に向けて進軍していた。
でももう恐れない。
私は一人じゃない。
そして、モモナはただの獣人じゃない。
“鍵尻尾”が導く絆は、二つの命を繋いだ、真実の力だった。
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